第五十二話「彼女から見た私の姿」
――アリア・ユリシフタ。
今回の魔王討伐に際して、一番の立役者であり、そして、
『あなたたちが? 三人であれを倒したんですか!?』
私の仲間の中で、いちばん無名な青髪の少女。
ジェイドが酔っぱらったときに大声で叫んでいたことから、私たちがあの魔王を倒したことは、この世界中に段々と広まっていった。
時には通行人から声を掛けられたり、あの時いた海辺の町で祝勝会が開かれたり。
だけどそこには、いつもアリアの姿は無かった。
あの魔法陣は、はるか古代に失われた術式で発現されたもの。
半分だけエルフの血が入っていないが故に、殺されることを免れた私は、その事をこの世で一人だけ知っている。
一定時間、周りの人間を無敵化する技。
だけど、発動者には多大なダメージが降りかかる諸刃の剣。
――剣というよりは、盾といったほうが正しいのかもしれない。
彼女の肉体は、若くして死したという姫騎士……アリア・ローズヴェリスのものだ。
事実、何度か本来の持ち主であるローズヴェリスの精神を再び宿しているし、
特殊な魔力の集合体であるという魔王の姿が見えなくとも、その攻撃が躱せたのは、前に一度戦ったことがあるお陰だろう。 最も、中身である今のアリアには、それは自覚できていないだろうけど。
ローズヴェリスは魔王の出現当時、あれよりももっと大きな魔法陣を発現させた。
それは人間の限界を大きく超え、この時代に至っても、まだ超えられていないものであったが――。
――今までの時代にない程、力を溜めていた魔王には敵わなかったらしい。
今でもその場所には、ぽっかりと大きな穴が空いている。 渾身を大きく超えた防御でさえ打ち破られ、人々の殺されていく様を見ていたローズヴェリスがどういう気持ちだったか、私には到底わからない。
だけど。
今回は、覚醒の寸前に召喚できたことや、力を溜めていた期間がたったの千年だったことなど、
色々な偶然が重なって、それをどうにか防ぐことができた。
全ては偶然で、それだけでしか無いのかもしれない。 だけど、千年だけの期間だろうと、
あの魔術が無ければ、きっと世界は今頃無かったもの。
それはきっと、はるか昔に魔王と戦い敗れた彼女――ローズヴェリスが、今の私たちに残してくれた突破口だと思う。
だけど、私はそれに、一つだけ不満があった。
言ってしまえば、仕方ないことなのかも知れない。 だけど、この戦いに触れられるたびに思っていた。
まだ、アリアは帰ってきていない。
だから私の戦いも、まだ終わってはいないんだ――と。
「……ぼーっとして、どうしたんだよ」
「――!」
そんな事を考えていたら、いつの間にか動きが止まってしまっていたようだ。
目の前で浮いているこのイスは、遠隔操作だって出来る、私がそこそこ頑張って作った優れもの。
だから、別にゆっくり移動している理由も無いのだけれど、
「あ――ごめん。 貴女が目覚めたこと、まだ信じられなくて」
「それは……うん、私だって同じだ。 正直、二年もおねんねしてたなんて理解できないし」
……そう。 二年も話せなかったんだから、少しでも長く一緒に居たい。
「そうでしょうね――、気付いたらもう17歳になってるんだもの」
「えっ……そんなに年食ってたの!?」
「ジェイドなんてもう21よ。 若干は大人っぽくなってるかも」
「老けたのか」
「言ってやらないの」
泊まらせてもらっている、VIP専用らしい宿まではあと少し。
それまではこうやって、時間を無駄にしないように話しておこう。
私はそう思いながら、また夜道を一歩踏み出した。
たぶん今日はもう一回更新すると思います




