第五十話「ぞんび?」
あー。
あー。
あー。
あー。
あー。
……ひまだ。 あれだけぼっちで過ごしてきたと言うのに、誰かと話せないことがこれだけ苦痛になるとは思わなかった。
っていうかクリスちゃん。 クリスティア・フォーサイスちゃんに会わせて。
じ――えっと……何だっけ。 そう、ジェイドだ。
あいつはまあ、どうせ英雄だ何だと持て囃されてるんだろ。 私知ってるぞ。
だから、私一人くらい冷たい態度で居たってバチは当たらないと思うんだよね。
ああいうエセイケメン男より、正直な話をすれば、かわいい女の子に囲まれてたほうが私は色々と幸せだしね。
……さてと、現在私は――キノコっぽい素材で出来た橋の上を通っております。
目覚めてから約五時間。 ライトアップされた椎茸(仮)は幻想的でものすごく綺麗です。 あと、そろそろ夜なので暗いです。
小学生の日記みたいな文章やめよう。
で、私の見立てじゃそろそろ声帯が回復するころだと思うんだけどなぁ。 何となく、本能が私にそう告げている気がするんだ――ふっ。
というわけで、レッツチャレンジ。 何事も挑戦だよ、ちょ・う・せ・ん♪
「あ――」
あ、普通にでた。 これぞ挑戦の力だ。
すると、この声に反応してくれた人がひとり。
「……アリア?」
例の桃髪ロングで、ライズっぽいけどツインテじゃないお姉さんである。 略してライズっぽいお姉さん。
ちなみに、私の記憶が正しければ、声はそのままライズだった。
ツインテがもげてるせいで80%くらいライズ成分が失われてるけど、これはもうライズと呼んで良いんじゃなかろうか。 というより、どう考えても彼女でしかない。
もうそれでいいや……次からライズっぽいお姉さんのことは、そのままライズと呼ぶことにします。
「……あ、あー」
まずはちゃんと声が出るかの再確認をする。 生半可な喜びは、違ったときのダメージがクソみたいにデカいだけで利益は何にもないからな。
「嘘……ホントに貴女なの?」
おう。
私だよわたしワタシ、覚えてるー? 覚えててくれたら有り難いね。
「え……アリア? 嘘でしょ――」
うん。 嘘じゃないよ。 たぶん。
「嘘――」
だから嘘じゃないって。
「はぁぁあ――嘘でしょ、えっ……嘘、うそ」
待って。 何でそこまで頑なに信じてくれないの。
ここは私から呼び掛けてやるしかないな……。 ライズって、こうなったらもう一人じゃストップ掛からないところあるし。
「ラ゛イ゛ズゥぁぁ――」
「……えっ、あら――? もしかしてゾンビだったの? 生きてないの?」
あっ、逆効果だ。
今のライズは頭のクルクルパースイッチがONになっちゃってるし、ゾンビくらい簡単に信じ込むんだ。
っていうか私の声、相変わらずかすれ過ぎだな。
「ちが……うっ、ゾンビ違う……」
やっとまともな声が出てきた。 きっとこれで、彼女もまともに――。
「えっ……ゾンビじゃないの? じゃあ只の死体?」
「違う」
「じゃあ幻術?」
「違う」
「じゃあアリア?」
「ちが……違わなかった」
……ライズが壊れた。 普段ごくマトモっぽい言動をしてるだけに、ちょっとネジが外れただけで物凄くアホに見える。
これは多分アレだな。 不良が犬拾ってたら、異常な程いい人に見えるのと同じような原理だ。
「とにかく、私はこの通り生きてる! 目を覚ませライズ!」
――アピールのために、車椅子から勢い良く直立してやろうとしたら、
「おっとっとっとっと――」
それはまだまだ無理があったみたいで、足元がフラッとして安定しなかった。 ……というより、キノコの床歩きにくすぎだろ。
でも、やっぱりライズはライズだったみたいで、
「――!」
とっさに反応して、ささっと私の両肩を支えてくれる。 支えるだけにささっと。 ――あっそう、寒い。
「ん……すまん、ありがと」
「良いのよ。 でも、そんなに無理しないの」
このさ、有事の際には切り替えが異常に速いアナタ。
別に嫌いじゃないのよ。 っていうかむしろ尊敬する。
だけど、ここまで今までの態度忘れられるのは凄いな。 別人レベルじゃないのか、これ……。
◆
「……で、私はゾンビ?」
いちおう確認のために聞いてみると、
「え――、アリアがゾンビ? 冗談よしてよ」
ちゃんと正気に戻ってるらしい。 それでこそお前だ、Mission Complete!
でも、さっきまでその冗談をマジな顔して言ってたのは誰なんだろうね。
――とにかく、現状を確認することが最優先かな。 ちょっとライズと話したら、今の状況でも尋ねてみることにしよう。




