第四十九話「Good Morning!」
朝の日射しを受けて、カーテンが明るくぼんやりと光る。
……あれっ、この入りどっかで見たことあるような。
っていうかこの展開だってどっかで見たことが。 あれ、気のせいかな。
気のせいだな。
あれ、やっぱり全然気のせいじゃないな。
まあ良いや、とりあえず起きよ。
たしか、えーと……魔王倒したんだっけ? それとも負けた?
負けたとか言わないでよ。 そう言えば、私すっごい魔法陣出してたけど死んでないの?
とにかく――、
「……ヴェボゥェ」
――あれ?
えっと……。 おはようございます。
「え゛っ……ゲホッ」
何故か声が出せない。 おかしい。
さっきの潰れた蛙みたいな声は、確実に私ほどの美少女が出して良いものじゃないもの。 例え中身が私みたいなアホだとしても。
で、今のところは喉が可笑しくて、身体も何故か動かない。
焦る。 すごく、ものすごく焦る。
とりあえずもう一回寝よう。
もしかしたら夢かもしれないし。 ね、夢だよね? 植物人間化とか勘弁してよね?
◆
……そして、さっき目覚めてからだいたい三時間が経過致しました。
『もう一回寝る』なんて言ったけどさ、やっぱり無理だった。 神経が尖ってるみたいに、些細な音でもビクッとなるんだよ。
これじゃ、快眠なんてのは夢のまた夢である。
まあ、それは置いといて……だ。
ここでじっくりゆっくりボーっとしてると、何かと解ってくることもあってね。
だって皆さん、私を誰だと思ってます?
今までに(これを含めたら)三回死にかけてるアリアちゃんだぞ。 やべ、フルネーム忘れたかもしれない。
まず、私が居るこの場所!
――うん、全く知らない町だ!
とにかく至るところに花が咲いてて、私が座っているこの……えっと、日本じゃ車椅子って呼ばれてたやつ。 だよな。 ――にも、散ってきただろう花びらがチラホラ付着している。
ちなみにものすごく春っぽい雰囲気だけど、気温はけっこう低い。
あと花粉症が割と心配な風景だ。 綺麗なものにはトゲがある……とか言うじゃん。
つぎ、私が座ってるこの謎マシン!
さっきも言ったけど、たぶん車椅子!
……違うな。 乗り心地的に考えて、明らかに地面から浮いて移動してる。
後ろには桃髪のロングヘアーが美しい、まるで桜の花を思わせるように可憐な女の子。
たぶん私が乗ってるこの謎マシンを操作してるのが彼女だ。 機械に強い子ってカッコいいよね。
どこかで確実に会ったことがあるような気もするけど、首を動かしたら尋常じゃないくらい痛いから、その姿をハッキリとこの目で捉えることは出来ない。
でもツインテールじゃないし、ライズじゃ無さそうだな。 あいつの80%くらい、ツインテで出来てるとこあるし――いや無いか。
つぎ、今はいつなのか!
――全くわからない!
時系列についてはね、もうお手上げ状態なんだ。
いちばん最近の記憶が、ええと……。
でかい三重バリアを出現させて、何故か周りにしか能力強化の効果がなくて、私が踏み台みたいな扱いになって、(たぶん)魔王を倒して、グヒャアアアってなったところ。 それまで。
たぶん色々あって、数日くらい意識が飛んでたんだ……と私は推測してるけど、もしかしたら数時間くらいの短いヤツかもしれない。
もしかすると、今までいた異世界とは別の世界にまたワープしちゃったのかもしれないな。
……うん、自分で考えても訳わかんない。
「……ぅ」
とりあえず、声が出るようになるか、誰かに気付かれるまではこのまま様子見でもしとこ。
今のこの町を見る限り、あの時に魔王討伐に失敗して、世界が滅亡……みたいなことは無さそうだしな。




