第四十八話「決着」
「あっ、やべ……」
「なっ――あれは」
「知っているのかライズ」
後ろで謎の茶番劇が繰り広げられている。 でも、そんなの今はどうだって良い。
よし、ここで皆さん考えてみましょう!
前はしょぼい火の玉使っただけで、あそこまで気持ち悪くなって、おまけに死んだかと思った――とかボロクソ言われてた私。
それが、それが――。
「……あれは、常人が使えば魔力を消費しきって死んでしまうという諸刃の剣。 数分間の間、周りにいる『仲間』と認識された人物の力を格段にアップさせるという――」
「何っ……すると、アリアは」
待って、こんなの使おうとした覚えないよ……待って待って。
「……初級魔法以下のレベルでも、あれだけの反動を喰らっていた。 つまりは……くっ」
待って。
「馬鹿な――死ぬ、だと?」
待って!!
やめてよ。 変な解説しないでよ。 気にしたらホントに死んじゃう気がするから止めてくれよ。
あとクリスちゃん、ライズとジェイドの二人がこれだけ出張ってるんだし喋ってよ。
あなたの声だけが、今の私にとっては唯一の救いなんだよ――。
……え、でもどうしよう。
っていうか、よりによって『仲間と認識された人物の力を格段にアップ』ってさ。 もしかしてさ。
「な、なぁライズ……一つ聞いていいか?」
「アリア――えぇ、でも手短に」
うん。 私だって早く知りたいもん。
勿論のこと、手短に話してやるよ。
「……これ、私自身に効果は?」
「無いわ」
「――――」
驚くほどの即答だった。
つまり私は、命を犠牲にしてまでヤツの舞台装置と成り下がったわけか……。 せめて実況役とか、人間ポジションにはなりたかったなぁ。
……でも、今はそんな事言ってる場合じゃないな。 カッコつけないと。
「――行け! 私がここに居るうちにッ!!!」
『死』という物の感覚が、まだまだ明確に掴めていないせいなのか、
驚くほどに恐怖という感情は、心のどこにも見当たらない。
だから、まともに喋れるうちに言っておく。
元の世界に居る時に、何度も(頭の中で)練習したこの言葉を……。
「ここは私に任せて、お前らはヤツに攻撃を!」
……あれっ、さっきと言ってること若干被ってないかな。 気のせいかな。
まあ良いや。 大事なのは、そんな大技を使って、元々バケモノじみた私の仲間たちがどうなるかっていう話。
カッコいい……といえば、魔王とやらの姿はまだ見当たらないな。
どうしよう。 せっかく見えると思ったのに。
「……ちなみに、ここに魔王居るか?」
「――居るわよ。 少なくとも、私の目にはハッキリと映ってる」
ぼそっと呟いた質問に、双剣を握って踏み出したライズが凛とした声で答える。
「そうか。 その目ちょっと分けてくれや」
「貴女は攻撃の必要も無いでしょう。 それは発動さえ出来れば勝ったような物だから」
「マジでか」
「そうよ」
そしてふとクリスちゃんを見ると、すっかりマジな目で、マジなオーラを放ちながら、謎の元気な玉っぽい魔力砲を錬成し始めていた。
ねえ、あなた癒し担当じゃ無かったっけ? どう見てもただの魔術師になってるけど、それは私の職業だったはず……。
と、そうこうしているうちに、今度はジェイドのほうから凄まじい爆音が聞こえてきた。
肩をビクッとさせながら振り向いてみれば、そこには身長の十倍はあるだろう斧を構えている彼が、まるで覇王のごとくに両足を広げて立っている。
とにかくデカくすれば強くなるだろう……そういう単純な発想、嫌いじゃないよ。
「私が先に行くから!」
ライズがそう叫びながら、魔王(が居るだろう、私には何も見えない場所)に向かって飛んでいく。
その剣が振り下ろされたとき、
「邪魔者はどかした! 後は――」
……邪魔者? 想像するに、たぶん暗黒の霧的な何かだろうか。
そして、それに頷いたクリスちゃんが、まずは清々しい笑顔で、
「はぁぁあぁぁああぁあぁぁっっ!!」
雄叫びを上げながら、その玉をドーンと(しつこいようだが、私には何にも見えない場所に向かって)飛ばす。
そして、今度は何の間も置かずに、
「とりゃあああぁああああぁっぁあああああぁ!!!」
ジェイドの無駄にでかい斧が、魔王に直撃した。 らしい。
そしてその直後、無音の世界が数秒間続き――。
いきなり不意打ちみたいに襲い掛かってきた爆音のせいか、それともさっきのバリアの代償か、
私の意識はクレヨンで塗り潰されたみたいに、汚く真っ暗になっていった。
一ヶ月ぶり




