第四十七話「実況担当として……」
「……えっ」
「ふっ、ふざけてる場合じゃないのよ――」
凍り付く空気。
普通にぎょっとした顔をしている、ひねりの無い反応のジェイド。
ちょっと『本気かもしれない』って思いながら、それでも一応否定してみた……みたいな雰囲気漂うライズ。
事実を言った、ただそれだけだと言うのに、
どうして私、こんな思いをしなければならないのだろう……。
全く、現代日本で暮らすってのは、どうにも肩身が狭いぜ――。
……いや、現代日本に魔王なんて居るわけないけどさ。
「――そういえば、聞いたことがある」
「知っているのかクリス」
と、いきなりジェイドとクリスの二人が、どこかで聞いたことのある寸劇を繰り広げ始めた。
まあいいや。
クリスちゃん可愛いんだし、魔王とやらに私が殺されないうちに聞かせてほしい。
「……綺麗なアリアが、このごつい人に負けた原因。 それは――」
「それは……?」
生唾を飲んで、私が全神経をクリスちゃんの声に集中させていた時。
……いきなり爆音と砂煙が発生する。
「――っ!!」
「えっ」
やめて。 ねえ止めて。
私を置いていかないでください。
「くそっ……話は後だ!」
いや待って待って、今すっごいパニック状態なんですけど。 お願い早く言ってよ原因だけでも解ってればどうにかなるじゃん!
とか思ってたら、
「――避けなさい、アリアっ!!」
ライズの声が横から素早く飛んできて、取り敢えず避けてみると、さっきまで居た場所にでっかいクレーターが現れた。
やばい、ほんとに当たったら死にそう。
――というかライズ、某ポケットなモンスターのトレーナーみたいな台詞吐かないでちょうだいよ。
◆
そして、見えないクレーター製造機の攻撃を避けまくること一時間くらい。 たぶん一時間で合ってるはず。
当たる直前にバリア張ったらOKとか、
バリアも貫通する魔法だとか、
それもガートできるバリアがなんたらかんたらとか、
三人は小学生の鬼ごっこみたいな会話を繰り広げながら、
たまに攻撃を仕掛けて、跳ね返されたのか、すっごいダメージを受けて帰ってきて。
……迫真の戦いごっこにしか見えない。
でも問題は、私がバリアどころか魔法すら使えないこと。
だけどこのままじゃ死ぬし……。
どこに攻撃来るか解らないし、皆も毎回指示できるわけじゃないから、今までずっと止まらずに走り続けてるんだけれど、
そろそろ冗談抜きで死にそうになってきた。
「くっ……やはり完全復活前とはいえ」
ライズがかっこいい顔をして、口に付着した血を乱雑に拭いながら呟く。
正におっぱいの付いた……あれっ、あんまり付いてないけどイケメンである。 私がそっち系の人だったら、確実に惚れてただろうなぁ……。
――でも、実況担当を勝手に自負している私が、このざまで良いんだろうか。
クレーターしか見えてないせいで、三人が避けて、反撃しようとして、吹っ飛ばされているようにしか見えないけれど、
実際は超強そうな人が、ど派手なエフェクトの付いた魔法で、超かっこよくダークな感じで戦っているはず。
「…………」
――確か、魔法を使ってからばたんきゅーするまでは、それなりにタイムラグがあった気がする。
倒れる直前の、妙な気分の悪さは、
思い出すだけでちょっと足が竦むくらいにはとんでもなかった。
……けど、たぶん大丈夫だよね。
例え死んじゃっても、今流行りの死に戻りとかそういうのあるよね。 大丈夫だよね。 ね。
「……よしっ!」
ぜぇぜぇはぁはぁ五月蠅い息を整えようと、私は一旦走るのを止めて立ち上がった。
そして、いつか練習してた気がする感覚を思い出して、
――右手に力を溜めて、そのまま魔力に練成して……。
「解き放つっ!!!」
自分に気合を入れる感じで、私は叫んで両手を宙にかざした。
魔王とやらが居るはずの場所から、私たちの居る場所に攻撃ができないように……。
イメージはでっかくて、カッコよくて、
めっちゃ作画の良いアニメに出てきそうな、超細かく描き込まれた魔法陣の三重バリア。
……ちょっと誇大妄想しとけば、実体化するときに劣化しても何とかなるしね。
だけど。
「――!」
日光にも似た眩しい光が、形取っていったのは、
そのイメージまんまの、燃費の悪そうなかっこいいバリアであった。
挿絵でも描いてやろうか




