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チョロイン☆デビュー!  作者:
海辺の町
47/83

第四十六話「『見える』という幸せ」

「……いくわよ。 皆、準備はいいわね?」

「うん――」

「ああ」

「……おう」


ライズの問いかけに、クリス、ジェイド、そして私の三人が、

こくりと頷きながらそう声を発す。


『何もないから』との理由で、召喚場所に選んだこの砂浜。

美しい海は少し干上がっていて、少しだけ――本当に破滅が近付いているような気分にさせられた。


小さなさざ波の音に、ふと誘拐犯な海賊娘のことを思い出す。

それにつられて、最近見ていない人魚のことも。 ……あ、なんか残念がられた記憶も思い出したわ。


まあ、そんな私の一人ごとは置いておいて。

「……半径50m以内に結界を展開」

ライズがぼそっと口ずさむと、辺りがいきなり赤色の光に包まれた。 夜の闇と相まって、浜は地獄のような雰囲気に塗り替わる。


――結界と展開をかけたのか……と、そんなことを思ってるのは私一人だけだろう。 クリスちゃんとジェイドの二人を見てみても、その表情は真剣そのものだった。



「魔方陣の形成、別次元へのアクセス開始」

詠唱はまだまだ続き、今度は光がだんだん魔方陣っぽい形を成していく。

こういう……なんていうか、実況的な詠唱かっこいいよね。 『○○を開始しています……』みたいな、ちょっと機械的なやつ。



「アクセス完了……転送開始ッ!!」

そして決め台詞っ! くぅ、痺れるぅ……。


赤色の魔方陣はより一層強く輝きだし、だんだんとその中から、外の景色が見えないようになっていって――。

「……あれ、こっちが転送されるのか?」

「向こうの心臓まで乗り込むんだと。 それに、この世界に召喚したら、万が一の時に大変だろう?」


――そんなジェイドの言葉を聞いていると、がらりと魔方陣の中の雰囲気が変わった。

立っているだけで気分が悪くなるような、ちょっと汚染されてそうな空気に……。


と、そのとき。


「――ッ!?」

「……! アリアっ!?」



唐突に襲い掛かってきた、喉の奥を食い破るような激痛に、

私は思わず地面に両の膝を付けた。


「ぁ……っ、ゔ――」


痛くて、苦しくて、だけどこれは……、

どこかで体験したような感覚。

この世界に来てから何度か味わったことのあった、妙な既視感が、今そこにある。



『――果たしてくれ。 その姿で、我が民の仇を……』


苦しみの最中、私の目の前には、

少し悲しそうな微笑みを浮かべた『ありあ』の姿が浮かんでいた――ような気がした。


そして、痛みがゆっくりと引いていくと。

「……っ、ふぅ――」


辺りには、禍々しい色をした、

何もない……少なくとも、私にはそう見える空間が広がっていた。



「……あそこの繭の中、か」

「――なんだか、今さら怖くなってきちゃったかも」


えっちょっと待って、みんな何が見えてるっていうの?



「……いくわよ。 ジェイド!」

「OKッ!」


出張ることと目立つことが大好きなジェイドくん、

そのバカみたいにデカい斧を引っ提げて――。



「おらぁッ!!」


なんにもない空中に、全力らしき攻撃を仕掛けた。

……なんなの、ついに頭が可笑しくなっちゃったの?


「……くるよっ、二人とも!」

えっちょっとまって! まって!!



そして、何もないところから大きな砂煙が舞う。

この風景は、まさしく――。


「――魔王降臨、といったところだな」



……あ、うん。



「……なあライズ」

「どうしたのアリア?」

ちょっと緊迫した声で返答するライズ。


……やっぱりここには何かが居るんだな。 ただただ私が見えていないだけで。



「……魔王って、どこにいるんだよ――」


顔文字にある『しょぼーん』みたいな顔で、私は必死に問いかけた。

だけど。


「――っ」

ライズの表情がいきなり変わって――きっと何かの攻撃を避けたのだろうか。

危なそうだったので私も場所を変えたその途端、


「うわっ……」

引くくらいには大きなクレーターが、さっきまで立っていた位置に、

一瞬で作られる。



――えっ、嘘だ。 ほんとに何かいるじゃん。

もしかしてアレ? 『アリアは置いてきた。 はっきり言ってこの戦いには着いてこれそうもない』ってやつなの??


「……確かに一筋縄ではいかない相手、ね」

「ああ――だが、俺たち四人で勝てない相手では無いだろう」


うんそうだね。 だって、

かっこいいほうのアリアちゃんでも勝てなかった相手だからね。

いくら最終形態より前だからって、雑魚なわけなかったんだよね。



だけどね。



「……ねえ」


そこに居るはずの魔王に向かって、私は臆することなく一歩足を踏み出した。

……いや、そもそも臆す対象が捉えられてないんだけどね。



「何にも、見えないんですけどっぉおおぉおおぉぉぉぉおっ……」


異様にビブラートを聞かせた声で、そう叫んでみる。

ごめんよ私……。


我が民の敵、討てないかもしれない……。


記念すべき四十六話きりがわるい

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