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チョロイン☆デビュー!  作者:
海辺の町
44/83

第四十三話「わたし」

走る衝撃波。 立ち昇る煙の間から、微かに見えるジェイドのドヤ顔。


『……やったか!?』

――うん、やっぱり奴にはこういうのが似合う。

私には出番の一つもくれず、たまーにライズやクリスに活躍させながら、良いところは掻っ攫っていき、そして自分でも見せ場を引き寄せる……っていうヤツが。


……でも、ドヤ顔を崩す時ってのは一番興奮するもんだ!

別にリョナラーとかドSとか、そんな属性は持ち合わせていないけども。 興奮っても、そっちの意味じゃないんだよ。


それに、こういうフラグは回収してやらねば、彼にも主人公らしさが無くなってしまうだろう。

「ムハハハハ、残念だったなジェイドとやら――」

『何ッ――!?』

今の私は、気分だけだが物凄く強い魔王。 だから、私は一回くらいはヤツに敗北を味わわせてやる。


「さあ、全力で掛かって来るが良いぞッ!!」

『くっ……』

両手を広げて、カッコ良く高笑いする私。


そして目を開けると――。

「……あれ?」

目の前に、もうジェイドが居なかった。 うわッ、ものすごい既視感とデジャヴが……。



でも、同じ手が二度通じると思うか。

ここは私の夢の中、何度も確認しておいた事だろう。


「――上かッ!?」

そうやって叫んで見上げてみれば、ほら。


『――!』

しまった、みたいな顔をするジェイドが居る。 あははは、こういうのもたまには気持ち良いもんだな。


……で、まあ色々と戦いは続くわけだ。

進も退も全く無い、凄いようで退屈な展開が延々と……。


あのー……竜玉どらごんのぼーる漫画であるじゃん、ヤ○チャ視点。

そんな感じのシュパパパパパーが、それはそれは終わりの予兆をも感じさせないくらいに続くんだ。

途中からは、夢の中なのに眠たくなってくる。


『…………』

――と思っていたら、ジェイドがふと攻撃の手を止めた。

すっかり機械的に反撃していた私は、それにも気が付かずに一回殴り掛かった……が避けられる。


「……ん?」

『――俺は所詮、片手間に拳を交わせる程度の相手だと云うのか……』

……あ、めんどくさい事になっちゃった? ここは素直に謝っておこう。


「……ごめん、考え事してた」

『良いだろう――』

何がいいんだろう?


『――俺は、貴様如きが舐めた口を利ける相手で無いと思い知れ。 格の違いってもんを教えてやる』

「――――」


……うん。

何だかとっても、面倒なことになりそうです。



■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■



「あっ、アリアおはよーっ!」

「……ようやく目覚めたか」

薄く開いたその瞳を擦りながら、ゆっくりと半身を起こすアリア。

そんな、妙に既視感も覚えるような、だらしなく頼り無い姿は、普段の彼女そのものであったのだが――。


「――! これはこれは、クリスティア殿」

「……どのー?」

一言でも話して見れば、彼女はアリアであって、アリアでは無かった。



「……そうか。 貴殿がジェイド・アラバスター。

 話には聞いていたが、中々どうして腕の立つ戦士だそうだな」

まるで天高く伸びた竹のように背筋を伸ばして、宿に置かれた座布団に座っているアリア。


先ほど、俺やクリス、そして寿命を縮めそうな体制で眠っているライズについて、

名前や職、そして疑問などをひとしきり質問した後だ。

この不可解なロボット――アルロッタ君、だったか――はともかく、クリスやライズは今日や昨日に出会ったばかりでは無かろうに。


「――あ、あぁ……どうしたアリア? 今日はやけに表情が締まっているが」

おまけに、非常に不可解なこと、奴が真面目な顔をしている。

正直、初めて出会ってから、このような表情は全く見たことがなかった。


まあ数回程度ならば、一応見たことはあったのだが――。

何と言えばいいのだろうか。 性根がもうすっかり腐りきっているのか、心の底から偽りもなく真面目な表情である――とは、とても言い難かったのだ。


「――?」

だが、彼女自身には、全くその自覚が無いようで。

『嘘偽り無く心当たりがない』とでも言いたげに、そのイメージに似つかわしくない生真面目な顔を、軽く右向きに傾ける。


「……おー、アリアなんとなくかっこいいっ♪」

「か、かっこ……っ」

それに加えて、少し褒めた程度では調子に乗らない。 むしろ褒められる事が苦手かとでも思わせるように、耳まで真っ赤にして、聞き取りにくい早口の言葉で反論してくる。


「――あ、ありがとう……っ」

そして、最後は一応褒め言葉を認めて――認めたのかは知らないが、折れる。


こんな状況の中で、俺の心は一つだけ。


「……どうしてこうなった」

と言うよりも、お前は誰だ。 誰なんだ。

疑問の数々は、彼女に届くことも無く砕け散っていった。


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