第四十二話「ちょっとだけ主人公」
「――で、ええと……」
誰からでも良いって言っちゃったんだけど、いったい誰から掛かってくるんだろうか。
ジェイドかな? それともクリスちゃん?
……あ、意外とライズが参戦表明する展開とかもあったりしてな。
『……先、良いか? クリス』
『えー……このお姉ちゃん、何だかつよそーだよ? ボクも気になるよ〜』
よし、強そう発言いただきました。 ありがとクリスちゃん、ありがとう……。
――っと、もしやこれは……。
「……で、誰から?」
『――俺から、だな』
…………。
き、きき……、
き、き、ききき……キタアアァアアァアアアアッ!!
◆
……で、そこからは記憶があやふやになって。 良くあるじゃん、夢ってそういうこと……。
『準備は良いか? 死なない程度にはしといてやる』
「はっはーん、ここではお前の主人公補正も効かないぜ。 それに私のご都合展開だろうから、きっと私が勝つこと間違いな……」
――あれ、居ない。
「……い」
気が付いたら、いきなりジェイドが奇襲を仕掛けてきていた。
『ほざけ! 主人公補正だの、何を下らない事を言っているッ!?』
その瞬間、私の顔面ギリギリに、例の中二くさいデザインの斧が――。
「うわっ!?」
慌てて避けようとしたら、どういうわけか身体が何回も縦に回転した。 ……さすが私の肉体だけあって、精神が身体能力に追い付いていない。
……でも。
「お前、不意打ちたぁ汚い手使いやがって――」
カッコいい主人公たるものが、そんなアホでマヌケでバカな人間で良いのか? 違う。
そう考え始めると、腹の底から怒りがメラメラと燃え上がってきて――。
地面を蹴り付けて、私はジェイドよりも上に舞い上がった。
そして右腕に軽くパワーを集めると、空気を裂いていくようにして、そのままあの大きな斧に突撃していく。
「おりゃああああぁぁああぁ――ッ!!」
『……!』
でも、やっぱりチートってのは、補正うんぬんより前に存在していたらしくて。
『――停止』
ポツリと呟かれたその言葉は、世界の動きを全てストップしてしまった。
――私と、アイツを除いては。
「へっ、そんなの効くかよ! だって私は――」
……確か、ここは私の夢の中。
だったら何をカミングアウトしたって大丈夫。 だから、このまま決めゼリフ的な感じで使ってやろう。
そう考えて、私は大きく息を吸い込んだ。
「正真正銘の日本人、なんだから」
『――――!』
ものすごく動揺した顔のジェイド。 でもチョコマカとゴキブリの如くに素早く動くのは相変わらずで、この右腕パンチは見事に避けられてしまう。
で、次は向こうのターンだった。
『……知るか、そんな事――。 時間停止が効かなくたって、お前を倒すことなど――圧倒的にッ、容易ィッ!』
そんなセリフと共に、素早く斧を振るったジェイド。
その刃先からは、鋭く青く光る衝撃波が、まるで鎌のようにその身を剃らせながら、私の首を確実に狙ってきていた。 ……あれ、殺さないってのは?
「くっ――」
でも、今の私は主人公だ! そう簡単にやられるわけにはいかない。
そう思って身体を地面に下ろし、そこからまた蹴って、あの衝撃波に追い付かれないように走るスピードもアップして――。
……だが、私はまだ甘かった。
奴のその言葉には、とある呪いが掛けられていたのだ。 そして私は、そんな事にも気が付かずに、何も警戒しないままにその言葉を耳に入れてしまって――うっ。
『お前を倒すことなど――圧倒的にッ、容易過ぎているッ!』
圧倒的に、圧倒的に容易すぎている。 すぎて……。
――。
「ブフォッ……」
思わず気持ち悪い笑い声をあげてしまった私。
『何を笑っている! 余裕ぶっていては、まだ俺には敵わないぞッ――!!』
そして、それに逆上する圧倒的容易さん。 ……あ、まずい。
『これが俺の――』
「……やべぇ」
『実力、だあああぁぁぁあああぁッ!!』
そんな叫び声と共に、もう一発放たれた衝撃波。 同時に時間停止も解除されたのか、遠くからカラスっぽい何かの鳴き声も聞こえた。
――と同時に、ジェイド曰く『俺の実力』らしい衝撃波が、私にクリティカルヒットした。
昨日は寝ていて、明日からは祖母の家……。
以降の二、三日くらいは更新無いと思います。 ごめんなさい。




