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チョロイン☆デビュー!  作者:
海辺の町
40/83

第三十九話「攻略?ばかむすめ」

「…………」

「まずはあの捕虜を助け出せば良いのか……よしッ!」

動かなくなった周囲の人々に、これまた動かなくなった海賊の皆様方。

そんな周りにつられたのか、何故か私は息を潜め、じーっとしながら、

人魚さんのほうに飛び立ったジェイドを眺めていた。


さっきまでは海風に吹かれ、ぶらぶらぶらぶらと不安定に空中を彷徨っていた縄も、

今はやっぱりピッチリ止まって動かない。


「はあぁッ!!」

でっかい斧を右から左に一振りして、

居合い斬りみたいな感じで、人魚さんが吊るされてる縄を通り過ぎるジェイド……。


でも、だからといってすぐ落ちてくるわけじゃなかった。

「……よし、これで――」

彼はキメ顔でそう言った……そして、右腕を輝く太陽の下に掲げ、


「――解除」

カッコイイキメ台詞とともに、大音量でパチーンと鳴らす。

あーあー、かっこいいねそれー。


次の瞬間。



「――――!」

「……」

「…………?」

「――、――――!?」


「うるせっ……」

「……! ジェイド」


今までの静寂から一転、

元通りに野次馬でうるさくなった浜辺に、私は思わず顔をしかめた。


「な、何だあれは!?」

「一瞬で……?」

「――! 見ろっ、人質が落ちて!?」


どうやら彼らには、一瞬でジェイドが高速移動してきたように見えているらしい。

でも、一瞬……といっても色々見え方があるだろうし。

もし残像がちょっとでも見えていたのなら、さっきの指パッチンすごく恥ずかしいと思うんだけど。 まあ、どうせ町を救った英雄様扱いなら何てことないか。


その時、ふとナゾの大歓声があがった。

「すごーい……」

クリスちゃんも、目をキラキラさせて感動してるみたいだし――。 何だかこれ、テレビ番組のクライマックスを見れなかったときの残念さに似てる気がするな。


ちょっとため息をつきながら、私は英雄様(予定)のほうに、

心も体も、ぜんぶ向き直した。

主人公にもメインヒロインにもなれないのなら、せめて有能な語り手にでも……。 ジャーナリスト魂というやつだ。 知らないけど。



「……大丈夫ですか?」

「――――!」

あ、ここでも口説くかエロオトコ……。

でもお姫様抱っこされて、免疫ないのか顔が真っ赤になってる人魚さんは可愛いから……うーん、ギリギリだけど許してやろうか。


普通の茶髪から、さらに色素が抜けて金色っぽくなってるロングヘア。

壮大な母なる海を思わせる、深イイ色の碧眼。

世間知らずっぽい感じが、何というかこう……『これが普通だよ』って言われたりしたら、すぐ騙されてしまいそうなチョロい感じをも増長させて。



……嗚呼ジェイドくん、何できみは男に生まれてきてしまったんだろう。 折角いいものが見れそうだったというのに。


気を取り直して、もう一回現場からお伝えします。


「……ふっ、ふんっ! あたしの目の前でイチャコラしやがって!」

二人がいい感じになってた所を邪魔したのは、黒ずくめの……さっきの声からしたら、

顔を真っ赤にしてるツンデレチョロイン系の女の子だった。

……ないす。


そんなツンデレチョロインは、耳まで真っ赤っか〜になりながら、

それでも何かを訴えようと話を続ける。


「い、いいか……? あたしにはひとりも……その、友だちが――」

おう、ぼっちなのか。

そこまで言いかけて、彼女はまた真っ赤になって首をぶんぶん振り回す。


「と、とにかく! 別に友だちになりたかったとかじゃなくて、ただただ人魚だからすごいって…………あ、あと高く売れるとか聞いたからっ!!」

「……わかりやすい」

「うん。 テンプレだな、テンプレ」

純真で、一般人目線が良くわかる……少なくとも、私らの中では一番わかってるだろうクリスちゃんまでもが『わかりやすい』と意見する。


――これ、けっこうつまんない展開になりそうだぞ。


「……あ、そうだクリス。 忘れ物したから、私帰る」

そう予感した賢い私は、クリスちゃんに一言そう告げて、

波の音が轟く浜辺に、クルっと華麗に背を向けた。


「え? 行っちゃうの……?」

「うっ…………」

途中で寂しそうな目線に心臓を貫かれて、ちょっと致命傷になったりもしたけど、ここでは固い信念が何よりも大切。


ついさっき、悪いパターンの、見飽きてきたし、つまんないし、

女の子がちょっと可愛いだけで成り立ってるテンプレチョロインの行く末を見てきたばかりなのだ。

いくら相手がかわいいかわいいクリスちゃんだとはいえども、

一言だけで『はいわかりましたー』と改心しちゃうような人にはなりたくない……。


でも、別に相手が可愛かったら、それでもいいや。



…………。


「…………と、とにかく私は帰っとくぞ」

ふと浮かんだ考えを、首をもげそうな程に振りまくって必死に揉み消す。

そして、極力何にも考えないようにしながら、

私は今度こそ、ジェイドが主人公してる青春の海を後にしたのだった。


ストックも尽きてきた今日この頃……。

ちょっと用事で昨日、一昨日と更新できませんでした。 ごめんなさい。

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