第三十三話「花火・後編」
(ここは……)
見渡す限り、青い空が広がる高原。
そこに私――アリア・ユリシフタ(命名・私)は、一人で立ち尽くしていた。
……あれ? これ、ほんとに私か?
というより……。 よくよく見れば、今より五、六歳くらい幼い感じなのである。
年齢で言えば、クリスちゃんと同じくらい。
その青髪を風になびかせながら、幼くあどけなく可愛らしく……な表情で、
私っぽい幼女が立っている。
凛々しく開かれた瞳は果て無い青空を見つめ、そんな雄大さとは裏腹に、どこか寂し気な陰りさえも心に秘めて……。
なんか格好良く、陰も陽も全てを抱え、そして受け止めながら幼女は立つ。
――さっきから幼女、幼女って言ってるけれども、一応これは私本人だと思う。
じゃあ、どうしてこんなに他人みたいな描写しちゃってるのか。
なんか、身体が思った通りに動かないからである。
しかも……何て表現したら良いのだろうか、前世の自分を見てるような感覚が付きまとってるし。 私、そもそも花火大会にいたはずだし。
あれ? 一体いつ、私は花火を鑑賞することさえ忘れて、クソ間抜けに寝落ちなんてした?
それとも何だ?
ここが天国で、この幼女追体験は……なんかそういうアトラクションなのか?
私が死んだというのか? もう一回死んでるのに??
あ、今幼女が両のこぶしを握り締めた。 多分なんかを決意したんだと思う……けど、思考の内容までは良くわかんないや。
「……――、――」
っと、ここで後ろから、メイド服の女の人が登場だァー!
「――了解しました、直ぐに向かいますわ」 んで、私らしき幼女は、
ロリという称号に似つかわしくない、凛々しく――でもやっぱり、ちょいとばかりあどけなさが残る感じで――あとついでに、やっぱり今の私と似たような声で――、
ガチガチのお嬢様口調で固めた返答をした。
そして彼女ら二人は、高原を去っていき――……。
いつの間にか、舞台は夜の高原に変わってて。
夜空を明るく彩る花が咲き、それから少し遅れてドカンと大きな音が鳴り響いた。
◆
「――ア、アリア! ぼーっとしないの、ほら」
「いてっ……」
デコにデコピンがピーンと決まってけっこう痛い。
――って、今度は身体が普通に動く。 しかも声だって、ちょっと成長したような……。
「もう、何をボケてるのよ? そろそろ始まるわよ――花火」
「え……ライズ?」
ってことは、つまり――。
「戻ってき」ドッカーン!
――……そうそう、この微妙に浮かばれない感じ。
まさしく、前世の私がバッチリすべてを持っていた負の要素だ! このハイスペック(魔力うんたらのアレルギー以外は)な身体でも唯一断ち切れなかった、数少ない要素だ!
「……何言ったんだ?」 「……なんでもない」
一瞬、こいつになら話しても信じてもらえるかなー……なんて思ったりもしたけれど。
そしたらキャラが薄いことで有名……なのか? ――なジェイドくんが、ますます没個性になってしまう。
みんなキャラが濃い、この異世界で生きていくのに、それはちょっと可哀想である。
ドッカーン!
「――ほうら、花火がはじまった」
まあ、ということで……。 今回のことは、私の胸の内だけにしまっておこう。
この記念すべき花火一発目に、私はそう誓った。
――ん?
「……なあ、これが一発目なんだよな?」
「えー? うん、そうだけど……」
……じゃあ、さっき私の言葉を遮った爆発音は何だったのだろうか。
「――っふ、事件のニオイがプンプンしてきやがったぜ……」
誰にも聞かれないように、私はそうつぶやいた。 某バーローみたいな声を、ものすごく意識しながら……。
関係ない話、『事実は小説よりも奇なり』って言葉、現実のほうより小説内で良く使われるよね。 そういう無駄なメタ発言けっこうあるよね。
目を瞑ったら、花火って普通にうるさい。
そんなどうでも良いことに今更気が付いた、異世界での夏祭りだった――。
たくさんストックがあると、早めに投稿したくなって・・・




