第三十一話「打ち上げの待ち時間」
青い髪はポニテにされて、そのまま色々されて、この格好に丁度見合う良い感じに。
そして浴衣は紫色。 シオンはむらさき、尊い色!
ほら、あっという間に浴衣を着た美少女の完成である!! 私が可愛くてよかった!
……それはそうと。
――花火大会で、一番暇なとき。
それはいつだ?
一つ――、会場についたばかりのとき。
二つ――、屋台を巡っているとき。
三つ――、花火の場所取りをしているとき。
四つ――、終わったあと。
否。 断じて否。 それは、巡る屋台がなくなってしまった時である。
その気まずさたるや、語ろうとすれば頭が痛くなってくるレベル。 前世の記憶はほとんど鮮明じゃないってのに、そこだけは覚えてるくらいに。
必死に話題を見つけようと、「あー」とか「うー」とか唸る私。
……の横で、優雅にクソ長い……もう、びっくりするほど長いフランクフルトを、
一時間くらい食べ続けている、ちょっと太った友達。 口のまわりを赤くしながら、それにも構わずフランクフルトにむさぼり付く、そんな友達……。
「否ッ!! 今年こそッ、そんなことをさせてはならないッ!!」
「な、何よアリア……?」
ちょっとライズは引いているっぽいし、クリスは浴衣だなんだとはしゃいでこっちを見てないし、ジェイドに至ってはもう既に逆ナンパされてる……けど。
私の決意は、まあそこそこ強固なものなのである。
「ようしクリスちゃん! ライズ! ……ついでにジェイド!!」
孤高の騎士と名高いジェイドだけど、多分あいつハブられたら『ふん……我の内なる脅威に怖気づいたか、虫けらどもが』とか言いながらトイレで泣くタイプだし。
仕方ないから、連れて行ってやろうじゃないのさ。
「まずどこ行く? 私は牛串」
「私は……パンデモニウムかしら。 たまには生で食べたいし」
……えっ? さっき、どっかのアニメで聞いたことあるような単語が飛び出してきたんだけど……。 しかも、ライズちゃん『生で食べたい』とか恐ろしいこと言ってるよ?
「ボクは何でもいいや。 強いていうなら――きゅうりの一本漬け!!」
「あ、ぇ……。 ジ、ジェイドはどうだ?」
「え、あ、あはははは……俺は焼き鳥とか、そのあたりで……」
困ってる。 こいつ、絶対知ってたんだよ。
この惨状――というよりは、異世界ゆえの出店の違いを……。
そうだった。 忘れてた、ここって地球じゃないもんな。
魔力使えないし、浴衣存在してるし、街並みはまんまどっかの外国だし、魔物出てこないし、
正直そういう意識が薄れてた。
こういう慢心が原因で、竹のモンスターに突き上げられたりするんだよな。 突き上げるって、そっちの意味じゃないよ。
「……なあライズ、パンデモニウムって何なんだ?」 震える声で尋ねてみる。
ジェイドが『やめとけ!!』みたいな視線をものすごく送ってきているが、危険は承知の上。 私だって、そんな――明らかに食べ物じゃないって分かる名前のもの、
こうやって深入りしたくはないんだ。 でも、なんか好奇心に負けてしまったんだ。
「あら、アリア知らないの? 良かったら食べてみる?」
「え…………え?」
予想外の方向に話が動いた。 ライズが指さす先には――。
「アリアーっ、天国でもお幸せにー」 「俺たちは先、行っといていいか?」
「おい、待ておまえら……うぎゃああああああああっ!?」
とってもモキャモキャしてブキュブキュした、
R-18G指定は免れないような顔の、パンデモニウムさんがおりました。




