第二十八話「えっ」
――ジェイドとクリスが、私を差し置いて、人魚を探しに行って、未だに帰ってこない。
ライズと私は、もうとっくに――というかさっき、宿に到着したというのに。
「ありがと……あれ? あのイケメンとちっちゃい子は?」
「サボリです。 黒いほうが幼女を連れ回しています」 これはチャンス、とばかりに即答する私。
それはそうと、さり気な~くイケメンとか呼ばれてんじゃねえよ。 そういう変なところでの謎アピールいらないから。
まあ、思うのは自由だけど、私にはそれを伝えないでほしい。
どうせさ、世界中の女の子から好かれる運命にあるんでしょ? だったら私の一人や二人くらい、ボロクソ言ってても構わないよね。 むしろそっちのほうが釣り合うし良いよね。
と、そんな風に、
さっそく心の中でボロボロクソクソに言いまくっていたら。
「……あの二人が帰ってくるまで、私たちが二倍くらい働きますから」 いきなりライズが、とっても大変な提案を口にした。
「えっ」 戸惑ってクソマヌケな声を漏らす私。
「ねぇ、アリア?」 そう言って、ほほ笑みを浮かべながら私を見つめるライズの姿に、
私はとてつもない威圧感と恐怖を感じずには居られなかった。 ただ笑ってるだけのはずなのに、なんか……そっち系のこわい人に詰め寄られてるような、
そういう感覚を味わされる。 怖い。 こわい。
「あ、ぁ、あ……あぁっ! ももももちろん、せ、精一杯働かせてもらおうじゃないかあはははは」
数回くらい舌をガブっといきながら、私はハキハキと……してるつもりで答えた。
「おー、頼もしいねぇ。 それじゃ……」
そんな私の恐怖を知ってか知らずか、のんきにその手に持った謎の手帳をめくる宿子さん。
あるところでページをめくる手は止まり、視線もとある場所に、固定されて――。
「よしっ、じゃあさっき運んでくれた荷物」
「はい!」
「宿の二階まで持って上がって! 終わったら、良いこと教えてあげるからさ」
「はい!! ……はい。」
また荷物持ちかよ、と言いたい気分を抑えながら、私は荷物をよいしょっと担いだ。
……こういう時、クリスちゃんみたいに乗り物作れたら便利なんだろうなぁ。 なんで魔術師なのに無理なんだろう。
◆
ドアが開いて、風鈴の音がして、外からあっつい空気が流れ込んできて、
「すいません、少し用事があって……」 「ただいまー! お仕事、ありますかー?」
可愛い声と、イケメン(……?)らしい声が聞こえてきた。
「おぉ、待ってたよイケメンくん」
宿子さん、だからイケメン呼びはこいつに相応しくないというか。
まあ、確かにテレビ番組とかもあんまりないこの世界。 イケメンのハードルは、予想外にけっこう低いのかも知れない。
「でも、ちょっと遅かったかしらね」
「ふっふっふ――私は『仕事の出来る女』と名高いアリア様。 このくらいの仕事、ジェイドが居なかろうが楽勝の話。 そしてそして何と……」
――さっき、宿子さんから教えてもらった『良いこと』。 それは別に、そっち系とか大人の良いコトとかそういうのでは無かったので期待外れだったけど、
夏と言えばそれだよねー的な、あの大会についての話だった。
――ので、この私の口から直接言ってやろうと思ったのに。
「あぁジェイドくん、クリスちゃん。 今日花火大会あるから、もし興味あるなら行ってみたら?」
「ほんとー? いくいくっ!!」
「……花火、か。 まあ、偶には遊んでいくのも悪くないだろう」
えっ。
言ってやろうと、思ったのに…………っ。
なつやすみですね!! 夏休み!
たぶん更新ペースとか、あと文字数も上がると思います! たぶん。




