第二十七話「人魚の追跡者と自称語り手の少女」
――あの後姿。 あの下半身――。
間違い無く、奴は。
「……人魚、か」
「――ん? どしたの、ジェイドー?」
「いいや、何も無いさ……」
――人魚。
以前……と言っても、今から何年か前に居た、俺の生まれ育った地――地球では、
空想上の生き物として考えられていた、不思議なものだ。
下半身は魚、上半身は人間――。 此れが逆になれば、名称も『魚人』へと変わるのだろうか?
そんな愚問を、脳の片隅――心の何処かに置き去りにして、俺は薄ら寒い洞窟の中を走り続ける。
……地面から何か生えてこないかは、充分に気を配りながら。
行き先は、きっと彼女――先ほどアリアが見つけたらしい人魚が向かったであろう、
大海原へと通じる、この洞窟のもう一つの出口。
「ジェイド、この水ー?」
「…………!」 そう、クリスが言った通りに、
この水が、まさしく海から流れる海水の一部分。 この温度ですっかり冷えて、靴の上から足の体温を奪おうとする。
「……にしても、人魚、いないねー」
「あぁ……まあ、どちらにしても、引き返すのも面倒だろう」
「うん、めんどくさい」 ……だろうな。
そんな答えは予想が付いていた。 故に、取って置きの突破口は用意してある。
否――元々用意されてあった、というのが正しいのかも知れない。
「このまま向こうへ進めば、海に繋がっている。 そこから移動していけば、すぐ町へ辿り着ける筈だ」
「およぐのー?」
「いや、浮けば良い事さ。 泳ぐのなら、また今度――な?」
少しばかり、不満そうな顔をしたクリス。 それでも『うん』と笑って頷いてくれたのだから、感謝しよう。
◆
――が、結局のところ、どこまで進もうが、あの人魚は見当たらなかった。
やはり海底の奥深くまで、既に戻ってしまったのだろうか?
それとも、俺たちが見落としていた処で、未だにこっそり息を潜めているのだろうか?
どちらにせよ、今はもう、残された時間がない。
「……クリス、引き上げるぞ」
「りょ~かいっ。 ミサイルいる~?」
「ああ、宜しく頼む」
「おっけ~!」
クリスがすっかり慣れた手付きで指を鳴らすと、途端に一瞬だけ辺りの魔力の様子が可笑しくなる。
だが、そんな違和感も一瞬で終わる事。
次の瞬間には、立派なミサイル――乗りやすいように、色々な部分が加工されているもの――が、俺の前に登場していた。
「さ~っ、乗って!」 「有難う」
このミサイルの背に飛び乗ると、クリスはまたもや右手の指を鳴らした。 そうすればミサイルにエネルギーが供給され、二台はようやく発進するのだ。
――強力な武器であるこれを、乗り物のように数えて良いのかは解らないが。
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――というわけで。
「帰ってきましたっ、宿ー!!」
「どんどんどん……何だったかしら?」
「ぱふぱふぱふ」
「あぁ、そうそう。 ――ぱふぱふぱふー」
で、こちらの童貞ライズちゃん。 ジェイドがぱふぱふしていたのを見て、自分もやりたくなったみたいだった。
なので、やってもらった。
……それはそうと、『ジェイドがぱふぱふ』って書いたら、重大な誤解を招いてしまいそうだね。
違うよ、違うんだ。 ぱふぱふというのはね、このね、どんどんぱふぱふーのほうであって…………。
――もう良いや。
それはそうとね、何だか私、出番が少ないような気がするの。
何と言うか……。 焦点があっちに合わせられてるというか、語り手なんておまけで良いでしょ? というか。
……うん。 これでもワタクシ、この旅の語り手役は、無駄に自負しておりますのよ。
それさえも降板させられたら……。 見た目以外は特に可愛くないワタクシ、このハーレム世界で生きていけませんわ!
おーほっほっほっほっほっほっほ!
…………何なんだろうか、この謎のくだりは?




