第二十六話「ぎょぎょっと半魚人」
「うああああぁぁぁあぁぁあぁぁああっ!!!」
「さむいぃぃぃいぃぃいいいぃぃぃいっ!!!」
広い洞窟の中に、二人の絶叫がむなしくこだまする。
あ、寒いって言ってるほうが私ね。 この竹モンスターにワンピース全部めくられてんので、とっても寒くて仕方ないんだ。
……って、何をちょっと冷静になってるんだよ私は。 身体も頭もすっかり冷えたみたいだな。
とにかくこのピンチを脱出するには、生えてきたこの竹をどうにかしないと……。
でも、私って魔力使えないし。 使ったら死にかけるし、前だって死亡扱いだったし。
っと、そんな事思いながら、いろいろ模索してたんだけどね。
「アリアーっ!! ジェイドーーっ!!! うごかないで、ねっ!!」
語尾が力強くなったのは、ぴょーんと上空に踏み出したから。 クリスは高く飛び上がると、そこで指をぱちーんと鳴らした。
出てきた乗り物は……もちろんミサイル。
「いっくよー……落ちても、自分でどうにかしてねー」
「えっ……な、なあクリス。 そのミサイル、って」
「えいっ!! 出発、しんこー!!」
私の言葉はガン無視して、クリスは可愛く右手を振り上げた。 いや、可愛いんだけど、今はそれどころじゃな……。
「おっちろー♪」
「え……あっ、ちょっ」
――ざくっ。
竹の魔物が、鋭い断末魔をあげた。 そしてその身体は炭となって、崩れ落ちていく――。
あ、あと私も、突き刺さっていた服が元に戻って――。
やっぱり、真っ逆さまに落ちていく。
「まっさかさああぁまあああぁぁにいいぃぃぃいっ!?」 歌いながら……というか、半ば絶叫しながら私は堕ちる。 炎のように、は――もちろん燃えなかった。
もはやここまでか……。 そう思った瞬間。
シュパっと風を切る音がして、気付けば私はミサイルの上にいた。
「……へへへっ、だいせいこーっ♪」
そう言ってにかっと笑って見せるクリスちゃんには、若干どころでなく、将来イケメンになりそうなオーラが漂っていた。 というか、もう既にイケメンだった。
◆
っと、だいぶ尺を食ってしまったので、
ジェイドのことと、童貞ライズちゃんの救出劇は割愛しようじゃないか。 まあ面白味もなかったし、別に問題ない。
「よし……荷物はもう、全部持ち終わったわね?」
ライズは地図を眺めながら、すっかり落ち着いた様子でふふ、っと微笑んだ。
――前にも言った気はするけど。
こうして見てみるとライズって、わりと可愛いんだよなぁ……。
「なっ……い、いきなり何言い出すのよっ!?」
あ、声に出てたらしい。 褒められるとすぐ照れたり、ちょっと胸が見えたくらいで気絶したりするのは、女性経験一切なしの童貞にしか見えないんだけどね。
……あれ? ライズって女だし、女性経験ってことは……。
「――むふふふふふっ」 これはこれは、良い妄想ネタが出来ましたわよライズさん。
最近、この異世界でアリア・ユリシフタという人になってからは、
とてつもなく食糧に不足していたのですわ。 飢餓を救ってくださりまして、まことにありがとうございまして……。
――って、あれ?
「……どうした?」
「いや、あそこに謎の人影が……」
海に繋がっている、この洞窟。 そんな中で、辺りを水に囲われた岩に、一人座っている人。
長くて、ちょっと色素が抜けてて、それでも美しい髪の毛が印象的な、
後ろ姿だけでも、ものすごく美しい人――。 たぶん美少女。
「ねージェイド、もしかして……」 クリスがとっさに聞いた相手は、私じゃなくてジェイドだった。
「ああ、もしかすればもしかするかも、な……」
不気味にニヤリとした後に、ジェイドはいきなり荷物を投げ出して走り出す。
「アリアっ、ライズっ、この荷物頼んだ!」
「あっ、ボクも行ってくるーっ!!」
二人の元気な声が遠ざかっていき、代わりに降ってくる、おもーい荷物。 荷物。 荷物。
「ぐふっ……」
どさっと落ちてきたそれを、何とか全部無事に受け止めると、
私は大ダメージを負って、床にペターンと座り込んだ。
「……行っちゃった、みたいね」 見かねたらしいライズは、私の持っていた荷物を半分担ぐと、
立ち上がるのも億劫なほど、なんでか色々と疲れた私に手を差し伸べる。
「へへへ、二人きりで運べってか」
ありがたく私はその手を握り返して、よいしょっと声をあげながら、なんとか立った。
「ふふ……ジェイドもクリスも、じきに戻ってくるでしょ」
「先に戻っとくか?」
「そうね」
――ということで、我々二人は、
人類の大進歩であろう人魚との接触チャンスに立ち会えず、ただただモブキャラとしての役割を全うすることになったのだった。
いやいやいや、第一発見者って私じゃないの?
何を自分が見つけたみたいなツラしてんのジェイドくん? 挙句の果てに、私のかわいいクリスちゃんまで連れて?
……うん、これもまたモブキャラの宿命。
主役が無理ならば、せいぜいメインヒロインにでもなれるように、私は……まあ、機会があれば努力しておこう。
眠れないので、とりあえず更新……




