第二十五話「平和ボケした二人の転生者が吊り下げられるまで」
洞窟。
それは、冒険者たちが挑むべき最大の宿敵であり――。
「うぅ……さぶっ」
気温の高いところで入ったら、とてつもない寒さに襲われるトラップである。
はい、ここでアリアちゃんのスーパー豆知識コーナー~~~。
洞窟……ってか地下って、いつでも十五度前後の温度らしいよっ。 だから、夏に入ると涼しくて、冬に入るとあったかいんだね~っ♪
……涼しい? 何の寝言だ。
ふつうに寒いよ。 がくがくぶるぶる……。
◆
――さあて、始まりました洞窟探索!
期待してたのとは裏腹に、びっくりするほど魔物がいない、平和なこの世界。
だけどもこの洞窟なら、
地面から……なんか、竹の魔物だっけか? が、大量に生えてくるらしい。
今は昔、竹取りの翁というものありけり。 野山に交じりて竹を取りつつ、よろづのことにつかいけり……。
名をば、さぬきの……ええと……。 ……うどんだっけ?
――うん。
まあ私の学力がとんでもなく低いのは、前世の記憶がほとんど無いからという言い訳が使えるので問題ない。 むしろ問題あるけど、そこは気にすることじゃない。
「ねえ、なんでも出てくる便利なライズー」
「はいはい、何でも出しちゃうライズですよ」
クリスがピシっと手をあげて、いきなり便利屋さんなライズに話しかける。
「地図ないの? ここ、広すぎて迷っちゃそう」
「ううん……今から作るから、数十秒くらい待ってて」
……そういえばそうだな。
ライズって、頼めば何でも出してくれる……し、今みたいに自作することだってある。 一家に一人は欲しいし、パーティーにも一人は欲しい逸材だ。
ということで、ライズはポケットから振り子を取り出して――うわ、すごい。 この振り子、すっごいキラキラしてると思ったら宝石で出来てるんだ――、
真っ白な紙の上で、ブランブランと振り回しはじめる。
すると、なんということでしょう。
何もなかった紙に、するすると茶色の線が伸びていくではありませんか……。
「うお、ものすごい技術……」
「すごいでしょ? 私の一族に伝わる……まあ、便利グッズみたいなものね」
ライズはそう言って、その高そうな振り子を見つめる。 その目には、自慢げなだけじゃなく、ちょっと哀愁も漂っていて――。
「さっ、行きましょう。 道はもう開けたわ」
「やったー! やっぱり、ライズってすごいんだねー」
「ああ、ほんと……あんな奴より、よっぽど頼りになるな」 そう言って、私がニヤニヤしながら見つめる先には――もちろんジェイドの姿。
地面から生えてきただろう魔物に、その黒い服が引っ掛かっているのか、
洞窟の天井近くで、ものすごく慌てながらぶらぶらぶらぶらしている。
何を叫んでるのかは知らないが、口もすっごくパクパクしていて、
もう本当に愉快ゆかい……ねぇジェイドくん、誰がバカだったかなぁ? ほら言ってみてよ、そのパクパクしてる口で。 へっへっへっへっへ!!
そんなふうに、ジェイドの高い鼻がポキっと折れたのを見て、思いっきり楽しく大爆笑していると。
……うんうん。 『人の振り見て我が振り直せ』とか、良く言うもんだよね。
「竹を笑うものは竹に泣く……」
「アリアー、うしろうしろ」
「あはははっははっ…………。 ん?」
クリスの言葉通りに、後ろを向いてみたら。
「げぶろっぱああああああああああっ!?」
「アリアっ!」 「たかい、たかーい」 いきなり視線が舞い上がると同時に、
私が着ている、このワンピース的な何かが、ぐいっと持ち上がるような感覚。
しかも胸元をつかまれるような形でぐいっと行ったので、何かもう、ね……。 いろんなものが丸出しになっている。
ま、この身体は天使ちゃんのであって、私のじゃないし。
それにジェイドだって、いまだにアワアワとしてるから、こっちを向いてはいない。
残るは同性だけだから、何の問題もない……って、
「わ、あわ……わわわわ、あわわわわっ」
――問題、ありました。 真っ赤っか~になっている、純真というか、童貞というか……な女の子が一人。
茹でダコの如くにして、膝からぽかっと崩れ落ちてしまいました。
ちゃん、ちゃん。
――って、ちょっと待て! ライズが落ちみたいになってるけど、私はここでぶら下がったままなんだが……っ。
魔物が少ない平和な世界。 その平和さたるや、
一応魔物討伐のプロである冒険者でさえ、不意打ちされてぶら下がるくらいである(意味不明)。




