第二十四話「アリア・イズ・バカ!」
「……で、俺たちはまず何をしたら?」
相変わらず、謎のやる気を出しているジェイドが聞く。 率先して仕事を受けていくスタイル。
「――うーん、そうね……。 とくにやる事も、今はないんだけど……」
ジェイドのやる気の塊みたいな顔に対して、
黒くてサラサラの髪が可愛い、宿の女の子――宿子ちゃんとでも呼びましょうか――は、
多少引き気味に仕事内容を考える。
今はまだ、思いっきり昼間。 しかも平日……。
晩になればものすごく忙しくなるとは聞いてるけど、丁度暇すぎる時間帯に到着してしまったようだ。
「……あっ、そうだ!」 ――と、何かを思い付いたとか、はたまた思い出したのか、
ぽーんと両手を合わせて、ぱちーんと叩いた宿子ちゃん。
その口から飛び出た発言は――。
「ちょっと遠くなるけど……荷物、取ってきてほしいの」
……ただ『パシってこい』と、まあそういう事になる言葉だった。
◆
「……しかし、ほんと遠いわね」
「ミサイル、乗るー?」
「種類はアレとしても……魔力で乗り物作成、ってのも良いかも知れないな」
――それだと、謎ハンデ持ちな私が置いてかれることになりそうだな。 アレルギーのせいで、給食のデザートが食べれなかったような気分を味わうことにもなりそうだ。
……でも、錬成するのがダメってことは。
「なあライズ、突然だけども」
「何かしら、アリア?」
「生命活動とかのために、魔力って必要なもんなの?」
「ええ、もちろん……。 だから、今あなたが生きてるのも奇跡みたいなものなんだけど」
「バカは風邪ひかないし、大けがしても死なないんだってー。 ジェイドが言ってたー」
――ぐはっ!? クリスちゃんにバカって言われた!
主人公たる私をバカと呼び、ミサイルを乗りこなすクリスちゃん……。 ふむふむ、どこかで見たことがあるような。
「……そ、それはどっちを……ジェイドが言ってた、んだ?」
「……アリアが瀕死に」 ちょっと心配そうな顔をして、ライズがつぶやく。
「え? ジェイドが全部いったのー。 前に空から降ってきても死ななかったから、きっとあいつはバカなんだって」
「実際バカだったな」
「うるせえジェイドのくせに! かわいくて純真なクリスちゃんに変なこと吹き込むんじゃねぇっ!」
「……アリアが必死に」
ちょっとライズさん、さっきから何言ってるのかよくわからない。
「お前がバカじゃないなら、この世の誰がバカになる?」
珍しく会話に介入してくるジェイド。 ……でも、こんな話題の時に、積極的に話されてもねえ。
「るっせ……。 そんな落ち着きばらった口調で言うんじゃねえ、心に刺さる」
「おうとも、刺され刺され」 「さされー」
こうして見ると、兄妹かもしくは父娘みたいな二人。 仲睦まじい様子で、私を罵倒する――って、おい。
――と、そのときライズが立ち止まり、
「まあまあ二人とも、アリアのこといじってる間に到着したわよ」 笑いながらそう言った。
彼女の目の前にあるのは、微かに海のにおいがする、涼しげな青色の洞窟……。
……海のにおいって何だろう。 塩水?
「……お、やっぱり会話してると時間の経過は早い」
「でもつかれたー」
「クリス、バカは疲れないんだぞ……」
「おう、お前も疲れてないのかジェイド! 気が合うな!!」 さりげなく、自分もバカだと認めてしまった気がするが……。 まあいい。
この憎きジェイドを道連れに出来るのなら、この命――惜しくはないッ!!
「いいや、けっこうスタミナは消費したな」
……がっくり。
でも、でもでも……。 クリスは魔力使って疲れてるだろうけど、ジェイドは歩いてただけ。
むしろ可笑しいのは其方のほうではありゃー致しませんの? おーほっほっほっほっほっほ…………。
――ということで、何だかむなしい気持ちのまま、
私はとっても涼しい洞窟の中へとパシリに行ったのだった……。 つづく。




