第二十話「職業柄、仕方ない」
「はぁ……なんか疲れたー」
宿に到着するなり、私はふっかふかのソファーに飛び込んだ。
だるいとか身体が重いとか、そういうのもあるけど……無茶苦茶喉が痒い!!
口の中に腕を突っ込んで掻き毟りたい気分だけども、そしたらどうなるかは解るので止めておく。
しかも眠い。 昼間なのに、猛烈に眠たい……。
何となく息もしずらいし、最悪の気分になりそうなところではある。 ――死ぬ前には、袋いっぱいの金貨に埋もれたいなぁ……。
「アリアー、ほんとに顔色おかしいよ? すっごい青白い」
そう思っていたら、クリスがまた話しかけてきた。
……心配とかの云々は、こういう眠たさの原因を感じてたから? だとしたらだいじょばなかった。
でも眠気と喉が痒いだけ! 風邪にでもかかって、息苦しさは鼻づまりかなんかだろ。
「青……白……? 髪が反射でもしてるんじゃないか」
「いやいやいやいやっ、鏡見てみてよ! ブルーチーズみたい」
ぶるーちーず。 青と白の斑点模様?
そう思いながら、クリスに言われた通りに鏡を見てみると。
「…………」
服とか髪とかだけでなく、肌や目まで青っぽくなった、全身全力ブルー女が。
「……え? これ私なの?」
本当にめちゃくちゃ顔色を悪くして、立っておりましたとさ。
◆
「――――!」
私は目を開けた。 気分は爽快だが、何か回りの雰囲気は暗い。
……って、良く見りゃ何これ。 枕元に花が飾られているのが見えた。
病院特有の嫌なにおいもするし……。
やべ、早速気分がげんなりしてきた。 私病院大っ嫌いなんだよ!
だいたいさ、病院で死んだのかもしれないし、好きになれるわけないだろ!! 白衣のおっさんおばさん見るだけで怖いわ!
……これはどっちの性格由来だ?
とにもかくにも、私が今どうしているのかは良く解らないな……。 状況を整理しよう!
起きる前の記憶は――、顔色の悪い自分の姿を見て、その後は何にも覚えていない。
……おいおい、夢オチか? でも髪は青いまま。
暇なので、手帳を取り出して読む。
お薬手帳みたいな役目もしてくれてるなら、ここにカルテも記載されてたり……。
「……あった」
綺麗な筆記体のアルファベットで綴られた、いくつもの文字。
普通だったら絶対に読めない、異世界語か英語か知らないけど難しそうなそれだったが、今の私の身体は異世界人。
何も勉強せずとも言葉が話せるのと同じように、それも(すらすら、とは行かなかったけれど)読めてしまった……。
ありがとう空の天使。 ありがとう青髪。
どれどれ?
「……診察、結果。 魔、ちから……魔力アレルギー?」
アレルギー……? 魔術師が、魔力アレルギー??
――そもそも、そんなアレルギーが存在するわけ? 珍しい、ってこの体質のことを言ってたの?
私って、あの後はどうなったの? 死んでないの? 身体に影響は無いの?
一気に疑問が、後から後からあふれ出て止まらなくなる。
その文字が信じられず、何回も読み返してはみたものの、どこからどう見ても『魔力アレルギー』としか綴られていないのだ。
魔術師なのに。 職業柄、魔力に触れるのは必然であり致し方ないことです!
私の戦闘スタイルが殴る蹴る中心だったり、魔力がものすごく減ったりしていたりすることは差し置いても、
そういう職業やってるんだから……。 武術だけで戦えてはいるんだけどさ。
とにかく、信じられないや。 転職も考えようか。 アレルギーって……多少は我慢できるもんなの?
――この一生、私が憧れてた、
『全力で鍛えた武術に、天性の技術を持った魔法を掛け合わせ、最強と化す』……みたいなバトルスタイルが出来ないってことかもしれない。
うわああああああ、そんなの嫌だ!!
私は手帳と睨めっこを続けながら、頭をフル回転させて、無双する方法を考え続けた。




