第十八話「本当は怖い……」
「……!」
さっきも感じた、強烈に眩しい光がおさまっていく。
……まあ、一応無事に帰れたみたいだな。 転移失敗とかがあるのかは知らないけど。
私が立っていたのは、森でもなく夜でもない、朝の真っ青なギルド内部。
ほんと、時系列とかどうなってるんだろうな……?
私が頭を悩ませようとした、その瞬間。
「――あら、アリア」 すっかり慣れた声が、背後から聞こえてくる。
振り向くとそこには、優雅にベンチに腰掛けているライズがいた。 持っているものを除けば優雅だ。
「……ライズ! もう依頼、終わったのか?」
たたっと駆け寄って、私はライズにそう問いかける。
――といっても、彼女はところどころ赤くなっている剣と、思いっきり血のついたタオルを持っていたため、
どう考えても依頼後の処理中にしか見えない。
別に聞く必要もなく解ったことなんだけど……アルロッタさん、怖いよ。
刃物持って笑いかけないでよ。 斬られそうな迫力を感じるよ。
「ええ……、だけどアリア。 身体に異変とか、ない?」
そんな私の思考を見抜くこともなく、ライズはいきなり心配そうな顔をしてみせた。
……身体の異変? そんなに顔赤かったりするかな……?
「いや、全然大丈夫だけど……なんでそんな事聞くんだよ」
全く心当たりがなかったので、理由を聞いてみる。
……もしや、ダメージが大きすぎて痛覚がなくなってるとか! はないか。
「大丈夫って、本当に?」
「本当だよ、だって私が嘘つく理由なんてないじゃん」
「そう……てっきり私たちに心配かけないために、そうやってるんじゃないかと……」
心配? 正直される要素がわかんない。
通常運転より一割増しくらいでへらへらしてる私に、本気で心配してくれてる顔のライズが繰り返す。
「ねぇ、本当の本当? 空元気で我慢してたら、死ぬことだってあるんだからね」
「本当の本当の本当! そんなにヤバいことになってるのか?」
「……それは、ヤバいに決まってるじゃないの。 まあ座って」
ライズの言葉通り、私は彼女の横に、ちょっと間をあけて腰かけた。
剣が刺さらないくらいの距離で。
「――でさ、何がどうなってるからそう言ったの?」
改めて、ライズに質問する。 今度こそ答えてくれるかな……。
「アリアの魔力、すごい消費されてるのよ。 使い過ぎたら、どこから魔力が供給されるか知ってる?」
魔力の仕組み、ねぇ……。 私、ちょっと炎出したくらいしかやってないんだけど。
「知らないや」
「……あのね、詳しくは良く解っていないんだけれど」
「うんうん」
未解明のマジカルパワー、とな。 これは私が研究しないと……。
「魔力ってね、残量がなくなったら自動精製されるの」
「自動で?」
「そう。 普通は余ってるエネルギーから作るんだけどね、余ってるのが無ければ……」
「余ってないエネルギーから搾取される、ってことか?」
「そういうことよ。 肉を喰らい血を飲み干して、体内をぼろぼろにしていくの」
その後、ライズは魔力切れした死体がどうなってるかも教えてくれたけど、それがまぁ……想像するだけで気持ち悪いったらありゃしない。
――とはいえ、クリスは伝説の魔法使いの末裔……とかいう大層な称号を持ってるらしいし、ジェイドはジェイドで、やはり自称チート持ちだけあり魔力量は規格外ってなことだ。 死ぬことはない。
……規格外、ってさ、この手のチーレム野郎には良く使われるよね。 凡用性高いのか?
ちなみに、エルフは『一気に消費する』のはNGらしい……けど、パワーアップ用とかに『少量ずつ滲みだす』形なら最強の使い方なんだってさ。
はぇ~、魔法ってロマンだけの存在じゃないや。
下手なうちは、実戦に活用しないでおこっと……命が危ない。
――とまあ、そんなふうに私がロマンをぶち壊されていると。
「じゃじゃーん! クリスティア・フォーサイス、ただいま帰りましたーっ!!」
微笑ましくて可愛いクリスと、相変らず達観(笑)してるジェイドが、
依頼を終了させ、ギルドの中へと入って来た。




