第十六話「ゲーム&異世界」
「なあ、ジェイド……。 ちょっと話いいか?」
私はそう言って、こっそりジェイドに質問を投げかけようとした。
もちろん、先ほどの時間停止問題のことである。 地味に気になって、今夜は眠れる気がしない。
質問の詳しい内容?
そりゃ、あれだよ。 こいつはびっくりするほどのテンプレ主人公。
……まあ、アンチテンプレもテンプレの一つって言ったりするし、そういう意味では私だってテンプレ主人公だけど。 それは置いといて、だな。
私の中の異世界転生テンプレ通りに行けば、トラックに轢かれた後は神様に会って能力をもらい、そして異世界へと旅立つ……ってな感じだ。
で、ちょくちょく神様に会って、『こいつに気を付けろ』だの『ちゃんとしてるか』だの小言を言われるイメージもある。
つまり、さっきの時間停止は神様の仕業かもしれない! いや、想像だけど。
例えばさ、時間を動かす対象が『日本人のみ』だとしたら、中身ジャパニーズガールな私は動けるわけだ。
――とまあ、ともかく聞いてみるのが早いでしょ。
クリスとかライズとかに聞かれても困る話かもしれないし、私は前述の通りギルドへ出発する前の時間に、
それはそれはこっそり聞きにいったわけなんだけど……。
「あぁ……悪いがそういうのはNGなんだ」
だいぶあっさり断られてしまった。 しかも、『またそれか……やれやれ』みたいな目付きで。
もしかして、転生者ってこの世界ではだいぶ浮いてるわけ?
そりゃ顔平たい族そのまんまの顔立ちだもんな。 浮くのも納得だ……。
というわけで、NG宣言を聞かされた、(心は)顔の平たい私。
「そうか……。 わかった」
本当になんとなくだけど、『そのまま転生』の苦労がわかった気がして、深くは追求しないでおいた。
……今夜、ちゃんと寝れるかな?
◆
「……えー、と。 ようこそ、我がギルド、『OVER COME』へ!」
ぱちぱちぱち、と、ギルドに拍手が響き渡る。
質問を終えた私と愉快な仲間たちは、予定通りにギルドへと来ていた。
そろそろ資金が底を突こうとしているのだ。 一刻も早く稼がねば……。
「……あ、ちなみに三人とも」
「なーに?」 「何かしら」 「何だよ」
ちょっとタイミングをずらして、クリス&ライズのヒロイン二人と、ヒロイン(笑)の私が返事をする。
「今の時点で、もう借金あるから……みんなドラゴンくらいなら倒せるよな?」
え、借金って……。 どのくらいだよ?
「だいたい……そうだな、A級クエスト四回行けば終わるくらいだ」
えー……。 Aだけにえー……。
そもそも、A級クエストってなんだよ? モンスターをハントでもするのか?
「そうだ」
その時、ライズが横からお得な情報を持ってきてくれた。
「そうそう、実技試験の評価が高かったし……数回はけっこうボーナスあるみたいよ」
「よしきた」 思わずガッツポーズを決める私。
「……えーとね、具体的には……」
冒険手帳をめくりながら、ライズは続ける。
(チラっと見えた限りでは)どうやら、ポスターの内容を手帳に転写しているようだった。
……へー、意外と便利だな、魔法。
「あ、B級でA級並みの報酬がもらえるみたい」
「おー! すごーい!」
クリスが無邪気に喜んで、目を輝かせながら嬉しそうにジャンプした。 回りにいるギルドメンバーたちの頬がゆるんでいるように見える。
へへーん、うちの子かわいいでしょ? あげないよ。
「……じゃあ、B級でもいけるらしい。 目的地までの往復はワープジェムでいけるし、OKだな?」
「うん! 大丈夫だよー」
「ええ、じゃあ早速依頼でも受けましょうか」
――ワープジェムって何だべ。 何やらゲームっぽい名前の移動装置が登場したぞ?
あー、あれだろ、わかるわかる。 一度でも行ったことのある町に瞬間移動できるけど、ごく稀に違う場所に飛ばされちゃうとかそういうのだろ。
多分ワープオーブとかもあって、ジェムのほうは消費品なんでしょ? ゲームとかアニメとかで見たことある。
とまあ、そこまで考えて、ふとギルドの入り口のほうを見たら。
「……あ、あれか」
中に魔法の聖水っぽい液体が入った宝石が、扉の横にぎっしりと並べられていましたとさ。
まるで『ご自由にお持ちください』って書かれたショップカードみたいに。
やめてくれ! そんな綺麗でロマンと魔力のつまった宝石を、石ころみたいに扱うのは……。
異世界よ、君は私の幻想をどれだけぶち壊せば気が済むんだ?




