第十五話「主観チョロイン」
外に出て、私はクリスと共に、とある文房具店に来た。
そして適当な日記帳と、すごくロマンが詰まった見た目のペン、あとインクを買って、店を出た。
ちなみにお会計はこの手帳を使って、である。 クレジット手帳だ。
……でも、クレジットとかって消費額がわかりにくいじゃん? 使いすぎちゃいそうで怖い。
で、武術大会のポスターを再発見して、ときめきを思い出したところ……なのだが。
「――あれ?」
どうしてこうなった。
何故か、回りの動きが完全に止まっている。
クリスなんて、ジャンプした途端にストップしたから……浮いたまんまの状態だ。
それにしても……良くもまあ、ロングドレスでそれだけ飛べるね、君。
ミニスカだったら下から――い、いや。 別に中身が見たいとか、そういうわけじゃ……ないよね?
まさか――時間停止!? だったら何で私が動いてるの!?!?
いやああああああああああああッ!!!
◆
……とまあ、さっきはだいぶ驚いたものの……別に非常事態でもないだろ。
ちょっとジェイドがコントロールミスっただけかもしれないし、私の中の眠っている能力が開花しようとしているだけかもしれないもんね。
とりあえず、ジェイドが犯人だったら……? 何してるか気になるな。
もしや神様と話してるとか? あはははは、そりゃないか。
……でも確率あるにはありそうだし、後で聞いてみよっと。
うーん……。暇だし、時が動き出すまで、私は魔法の練習をすることにした。
力を集めて……握りしめて……、っと。
◆
「…………!」
結果。 そんなに時間は経たず(時間、止まってるんだけど……)に、世界は正気を取り戻したようだ。
ジャンプしてたクリスが着地して、何も無かったかのように動き出している。
クリスにとっては、確かになんにもなかったんだがね。 なんかややこしいなぁ……。
「……ん? アリア、瞬間移動してる」 「そういう魔法だ」
私はそう言って、近くのベンチに置いていた荷物を持ちあげた。 もちろん、中身はノート&ペンだ。
ちなみに、形状がカッコいいペンは……確か、ガラスペンというらしい。
「へー、そーなんだ。 早く帰ろうよっ、二人とも起きてるかもよー?」
「あ、そういえばそうだな」
そう言われて、ふと時計を出してみた。 もちろん魔法で。
時間ややこしくて、体内時計狂いそうだったけど……一応、宿を出た時刻から数十分は経っているようだ。
あんだけ熟睡してたグータラ二人が、こんだけの時間で起きるとはあんまり思えなかったけども。
「よし、クリスっ! 宿まで競争なっ」
「あー、ずるい! フライングなんて禁止だよーっ!!」
私は起床してるほうに賭けて、アスファルトも敷かれていない道を走り出した。
こっちの常識はけっこう違う。 私も違いすぎないように、キッチリ適合しないと……。
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「はぁ……」
俺はため息をついて、ようやく歯車を再び回し始めたこの世界を見詰めていた。
どこか一点を見ているわけでもない。 焦点を定めないのは、考えだけに精神を集中させるためだ。
隣の布団には、いつもは俊敏に動きまわっている双剣使いがひとり。
希少種族であるエルフの、少ない生き残り――。 ライズが、俺以上にそのだらしなさを晒しながら眠っている。
やれやれ……全く、いつまで眠っているんだ?
とは言え、俺が時間を止めていたからな……。 多少、体感との違いはあるかもしれない。
被っていた布団を撥ね退けて、いつものように魔法で衣服を身に纏う。
ちょうど腹も減って来たころだ。 そろそろ、外出中の二人も帰ってきてほしいのだが……。
「起きてるかー? ふたりとも」
「たっだいまーっ! お腹すいた、早く何か食べよーよ!」
と、そんなことを思ったとたんに、部屋の扉が開かれた。 日本では見かけることのなかった、D字の形をした扉。
噂をすれば何とやら……だな。
それから数時間後、朝飯を食い終わって少し。
「なぁ、ジェイド……。 ちょっと話いいか?」
パーティーの一員であるアリアが、こっそり俺に話しかけてきた。
ちなみに、彼女は大怪我をして空から落ちてきたという、エルフと同等かそれ以上に希少な経歴の持ち主だ。
しかも意識を取り戻してすぐ、(もしかしたら、の話ではあるが)惚れられた。 全く、そんなアニメみたいな話があるか。
俺自身の名誉のためにも言っておくが、『惚れられた』と言うのには根拠がある。
そういうことになってくると、経験上は魔力の流れが俺に似てくるのだ。 転生したときの話によれば、典型的な日本人のタイプになってくる。
どうやら地球からの転生者は俺一人だけらしく、そうなれば、似てきた、というものは恋とか愛とかの理由に違いないだろう?
だが、恋愛を面倒なこととしか捉えられない俺。 折角、ここではチャンスが溢れかえっているのにな。
今回もどうせ告白やら、そんなことだ。
悪いが、俺は今の『パーティーメンバー』としての関係を保ちたいからな。
「あぁ……悪いがそういうのはNGなんだ」 「そうか……。 わかった」
俺は迷うこともなくそう答えた。
迷ってはいないのだが、この罪悪感は慣れたものではないな……。
ささやかなチョロイン要素




