第十二話「調子にのっちゃだめ」
竜が雄叫びをあげて炎を吐いた。 攻撃範囲から逃れようと、私はすっかり得意になったらしいジャンプで華麗に移動した、
じゃないと焼かれて焦げて死ぬからな。 いくら青髪で水属性っぽかったって、大事なのは見た目より中身だもん。
「もうっ、意外と強そうね……こいつ」 ライズがそう言って、飛んできた小さな火の玉を双剣ではじき返した。
判断基準は良く解らないが、炎が吐かれたところは地面が焦げている。
土……が黒こげになるのは見たことがないし、多分これは土に似た、土じゃない何かだろう。
「おいライズとクリスにアリアッ、とりあえず倒すぞ! 無職はいい加減卒業しなきゃな」
「じゃあっ、次はボクのバンー? おっけー」
クリスが杖を握りしめて、こちらを向いてウインクを送る。
まるで『アリアに続いちゃうからっ! 見ててねっ♪』のようなその視線に私は思い切りやられかけた……が、ここでくたばっちゃあ女がすたる。
ロリコンと一緒にするな! 私はちょっとのシスコン要素が入ったロリコンだッ!!
……とまあ、そうこうしているうちにクリスが走り出した。
「回復役……じゃなかったっけ? 大丈夫なのか?」
「じゃあ私も行ってくるわ、とにかく総攻撃よッ!」
ライズも竜に向かって走り出す。
「一応俺も前衛だしな……。 ここで出張らなくてどうするッ!」 ジェイドまで。
いやいやいや、戦略も何も無しで総攻撃って……。ライズ、ちょっと脳みそまで筋肉化が進みすぎてる気がするぞ?
まあ、とりあえず一人だけ突っ立ってるのも、サボってるみたいで嫌だし……。
私も皆よりちょっと遅れて、地面と平行に進み出しましたとさ。
◆
掛け声も無しに、斧を振るときに「フンッ!!」とだけ声を出す戦士。
どうやったのかは知らないけど双剣を巨大化させて、空中で身体ごと回転し続けるミキサー系女子の剣士。
ミサイルみたいな攻撃魔法と、たまに私たちに魔力供給をひたすら繰り返すだけの回復職。
そして、暴れて前進する竜を回し蹴りやら、右ストレートやら、アッパーやら、上段蹴り、飛び蹴り、勢い余ってサマーソルトキック、
あと噛みつこうとしてきた時には、『顎を下から蹴り上げてから上から殴って』口を閉じさせたりした魔術師は誰でしょうか。
――そうです、私しかいませんよねぇ……。
白状します。 私、アリア・ユリシフタは、罪悪感やら何やらと抜かしておいて、得意げに蹴って殴って、竜のことシバいてました。
――私自身が強いわけではないこと、強く自覚していると共に反省しております。
この勝利は、『アリア・ユリシフタ』になる以前の、空の天使オリジナル様、そして掛け替えのない仲間たちが導いてくれたものであると、
決して慢心して、大きな失敗を犯さぬように精進致します。
……まぁ、でもね……。 本音は、
「ぷはーっ……、超気持ちよかった。 あんなんで金儲けだなんて、冒険者って良いな~」
「記憶喪失以前のお前が凄かっただけだろ? 普通ならボロボロだぞ」
「うんうんっ、自分で言うけど、ボクたちに着いてこれるなんてすごいよ~っ」
「私は人外だし、ジェイドも特殊能力持ちだし、クリスは才能も努力もすごかったものね」
みんなご満悦のようです。
元の人が凄かった(私の才能もあると信じたいけど)のは、あと三人が凄かったのは、
すっかり影が薄くなってたギルマスさんが呆然としてるところからも解るしな。
「……どうですかーっ、ギルドマスターさんっ! ボクたち合格ですかーっ?」
クリスが、そんなギルマスさんの心情を知ってか知らずか大声で聞いた。
「あ、あぁ……。 合格! ここまで凄いやつらは初めてみた」
正気に戻って、ギルマスさんは左手の親指を突き立てる。
◆
――とりあえず、無職はこれで卒業できた。
やりたいこととしては、三人と仲良くなるのと、クリスとは念入りに仲良く(意味深)なっとくのと、
魔法たるものの使い方を学ぼう。 ギルドって言うからには先輩もいるはずだし、講師になってもらえるかも知れない。
あとは……、何よりオリジナルの正体を探してみないとな。
才能に溢れた青髪ロングちゃんなんて、本来の性格もきっと天使なはずだ。
こう、『うふふふ……。アリアさま、ごきげんよう。 私の身体はいかがでございましょうか?』とか聞いてくれるような……。
私はそんな根も葉もありゃしない妄想を繰り広げながら、皆で予約してあった宿へと向かっていった。




