第十一話「不正手段のつかいかた」
どう見てもゲーム世界っぽい、このギルドや謎の覚醒イベント。
ロリにエルフに空から落ちてきた私……となれば、主役のハーレム男はやっぱりチートだろう。
「……どういう仕組みだ?」
ふと質問してみる。 どうせ詳しくは知らないんだろ……女神にもらったー、とか言うなよ?
「これが、か? いや、俺にも良く解らない」
「空気も、光も止まってるのか?」
「それはないと……も言いきれないな」
「重力も? だったら飛べるんじゃっ!!」
「飛ぶのは不可能だと思うぞ。 研究してみた結果だ」
研究。『(笑)』って付けたら丁度いい感じ。
「……とにかく、動く人と止まる人は選べる! それがこの能力だ」
「じゃあ、なんだよあの春雨」
「あれは魔力の結晶体だ。 知らないのかアリアは……小学校レベルだぞ」
「黙れ。 忘れたんだよ」
「はいはい」
そう言ってジェイドは、また『やれやれ……』といった感じのため息をついた。
ふざけんな。 私は普通の日本人です、魔法使えるのだって奇跡……って、あれ?
「これも魔法の一種類とか、そういうのなのか?」
私、魔法使ったこと無い気がするんだけど……。 だとしたらまぁ、これを使ってあんなこととか、こんなこととかしてみたいなー…なんちゃって。
「いや、俺が特別なだけだ。 特殊体質。というか、マジで神様にもらった」
「うそつけ」 私は即答する。 ――だって、だとしたら何で私は貰えなかった!?
「本当だって。 俺が前世持ってるから」
「うそつけ」 私だってそのくらい持ってるし。
「いやいや、希少なのは解ってんだよ。 なんかアリア、前世とか興味ありそうだし」
「良いから効果聞かせろ」
「はぁ……。 わかったよ、嘘だってんならそれでもいい」
またお得意のやれやれ顔。 男のくせに『あー振り回されてる俺かわいそー』とか思うなヘナチョコ。
◆
で、結局数分間待ったんだけども、ろくな説明は出てこず。
多分異世界人……クリスやライズたちに説明するなら解りやすいんだろうけど、私にゃさっぱりだったよ。
「とにかく、殴っても効果はない! でも時が動き出したときにダメージがいく!」
聞き取りにくーい異世界語で、ジェイドはノリノリで叫んだ。
なんかアレだし、私もノリノリでいくことにする。 一応戦闘中だけど楽しむぜ。
「イエッサー! それでジェイドッ、おっぱいはもめるのでしょうか!」
「試せッ!!」
「でもライズはぺったんこですッ!!!」
「じゃあ自分自身を使えッ!!!!」
「私は『時間停止したときの』おっぱいを言っていますッ!! カチカチなのかむにむになのかッ!?」
「うるさい! 殴ってみろッ!!」
よく解らなくなったのか、ジェイドは話の方向をさりげなーく切り替えた。
動かないままの竜を指差して、熱血コーチみたいな勢いで叫ぶ。
「イエッサ―ッ!!!」
私も、うら若きJC(元)がそんな話をしちゃいけないような気がしていたので、
全力で叫んでから、これまた全力で走って、竜に飛びかかった。
前に『試練の塔』(……だっけ?)でやったみたいに、両足を揃えて地面を蹴り飛ばす。
失速してきたころに、左足で空気を踏み台にジャンプ。 全速力のスピードをこめて、籠手を思いっきり竜にぶつけた。
「そうだ! これで停止をとくと、だな……」
ジェイドはそう言って、竜の前に着地した私に『下がれ』と合図をして、クリスとライズを抱えて自分も下がる。
私が戻ってきて、空気を踏むことがおかしい、と感じ始めたころに、
右手でぱちり、と指を鳴らした。
とたんに、辺りが命を取り戻したように動き出す。
静かだった世界に、いつも聞こえていた雑音が、再び。
「――ほら、見てみろ」
いつの間にかジェイドが私の後ろに立っていて、肩をぽん、と叩く。
言われてから竜のほうを見てみると、あいつは(ちょこっとだけ)痛そうに、額から赤い血を流していた。
私がついさっき、殴りに行った部位の肉が抉られている。
(――殴っただけで血が……) そう思って、次は殴った籠手のほうを見た。
「……あっ」 予想通りに、血がべっとり。
時間が止まってたときには……いや、私が気付いてないだけで付いてたか?
にしても、何となく罪悪感が……。
襲ってきたやつを一対一で、とかならまだ正当防衛だけど、チート使って無双ってのはなぁ……。
「あー! またジェイドがやってる……。 もー、勝手に終わらそうとしないでよ」
不満げに言ってから、クリスは竜からジェイドへと視線を向ける。
そしてもちろん視線は、ジェイドの隣に立っていた私にも向けられることになるわけで。
「……って、アリアがやったのー? すご~いっ!」
血がのっぺりの右手を見て、クリスは犯人が私である、と理解して、
ライズも私がやったとは思っていなかったみたいで、珍しそうに私のほうを見詰めた。
――クリスちゃん、流血とか慣れてるの……?
アリアお姉ちゃんは見慣れてないから気持ち悪いし、こわくてたまりませんよ……。




