第十話「説明回がはじまるまで」
「では、試合を始めようか…四人同時でいい、こいつは強いぞ」
「……こいつー?」
ギルドマスターが、イヤミに口角を上げる。
それに比べて、やっぱりクリスはかわいいや。このままずっと幼女でいてもらいたいね。
…いや、でも意外と成長したほうが可愛いかもしれんぞ…?
ちなみにこのギルド…長いから略してギルマスさんは、肌は全て布で隠してある、暑そうな格好をしている。
どんな理由かは知らないけど、彼女からは日焼け止めっぽいニオイがぷんぷんしてるぞ。
「――○△□☆×●◎×★……」
意味不明な、異世界語っぽい言葉を早口で呟くと、ギルマスさんの回りに魔法陣が現れた。
近寄ろうとするクリスをジェイドが止めて、ギルマスさんは華麗に飛んで、陣の上から離れる。
「……おっ…!」
陣から何か、バカクソでかい生き物の頭…っぽいものが出現した。
ゆっくり、少しづつ、地上へと上がってくる。
よし、予言するぞ。 でっかい竜が出てくる。
「……あっ」
ギルマスさんは『あ、失敗した』みたいな顔で、魔方陣から出てくるそいつを見詰めている。
――って、失敗……あれ?
一瞬、不安が胸をよぎったが、『まぁチートいるし』で大体片付いた。
ジリ貧すぎるのも余裕すぎるのもアレなもんであるが、余裕のほうがいくらか良いだろう……多分。
と、まぁそんな事を考えている途中に、そいつの頭が全部、魔方陣から出てきていた。
――予想的中。
「やったぜ。」
「うわああぁっ!! ドラゴンだーっ!!」
赤色の、二足で立つかっこいいドラゴンである。
……ドラゴンと竜って、だいたい同じ意味だよな? セーフだ、セーフ。
◆
「そ、それでは……試合開始」
(やっぱり間違えた顔してる……さては強すぎんのでも召喚したのか?)
竜(ドラゴンかもしんないけど、予想的中って言っちゃったし……)が動き出すと同時に、
ギルマスさんはしょぼーんっとなった顔でそう宣言した。
よーしっ、戦闘二回目っ! 気合い入れていこう、異世界ライフの第一歩だ。
……チートが効かなかった場合とかで私が活躍してやれば、百合ハーレムだって不可能じゃないんだからな。
そう考えた途端、ジェイドが何故かぴったしのタイミングでこっちを見てきた。
やべ、人の脳みそ覗く能力だったのか?
(……ふっ、聞いてるんだろ? ジェイド)
少し待っても返答らしきリアクションは無かったので、この線は消えた。
「よかったー……、」
ちょっと余裕すぎる感じで私が呟き、続きを言おうとしたとき。
「うわっ!?」
下から何かに、足を掴まれた。
――何これ、触手? 春雨の太いバージョンみたいな、ぬるぬるしたもの。
(……っ!) 敵の攻撃だっ!
そう思って、余裕すぎたと後悔しながら竜を睨みつけてみた……が、
「……あれ?」
動いてない。
というか、ギルマスさんも、クリスもライズも動いてない。
「ふふふふ……驚いたかアリア、これが俺の能力こと時間停止だ」
「え……じゃあ、この触手は? ――まさかっ!?」
言っておこう。私は前世も現世も十五で、十八禁などは見ていないはずなんだ。
だから無罪です、そんなアレなことは想像していません。
そもそも知らないんだから、想像できるはずもございません。
「この人痴漢ですッ!!」
勢いに任せて、右手を振り上げながら叫ぶ。
「なっ……、そんなんじゃない! 信じろ!」
「うるさいハーレム男っ! この外道めが!!」
「違うって! そもそも、そんなんだったらアリアの時間も止めてるはずだろ」
「あ……、それもそうだな」
『まったく……』みたいな、『やれやれ……』みたいな顔で、ジェイドは触手を引っ込ませた。
ここから時間停止中はずっと、チート能力(自称)の説明を聞かされるんだろう。




