18-1 奇跡の地球
「ポカポカ…」
「ぽかぽか…」
「ぽかぽか…」
太陽の燃え盛る真夏の8月と月が早足になってくる10月…その間にある穂の実り始めてくる9月。
一見何もないように見えるが…今年は19日〜23日までのシルバーウィークがある。
うちの学校は初日の19日は授業参観だったが…その前日に休めたのでよしとする。
阻止今日は平民のシルバーウィークの4日目の22日。国民の休日。
この長い休みの期間はシャーペンの握り方を忘れてしまいそうになるから…たまにペン回しをして対策をする。
高杉晋作も「住みなすものは心なりけり」と言っていた。これは下の句だった。
ちなみに今は久しぶりに風華と遥真と遊んでいる。
「…ほわほわ」
遊んでいると言っても日向ぼっこだが…これがなかなかに楽しいものだ。
時間を知らない忙しく生きる風を耳に感じながら、周回遅れの雲を眺めている。
本来人間というのはこうやって生きるべきなのかなぁ…なんて高校生ながら悟ったフリをする。
今日はみんなお天道様に魅入られて喋るのがゆっくりだ。
「霊愛さん…来なかったね…」
「そりゃ来るわけないだろ…」
「この時期のラーメン屋は稼ぎ時だからなぁ…」
「ぽかぽか…」
「遥真…課題終わったか…?」
「初日に終わったゾ…」
「流石…」
「やっぱ遥真すごい…」
流石遥真はバカだが勉学においては優秀。
こうやって褒めておけば遥真はアホだから課題の答えを教えてくれる。やっぱり持つべきものは友達…ではなくてアホな友達だ。
「…眠い」
「そろそろ寝るかぁ…」
ウトウト気味な風華と遥真。
ちなみにこのストレートに赤い床はというと…
体育館の屋根だったのだ。
今現在3人は体育館の屋根で日向ぼっこしている。絶対に先生に怒られることだが…誰も登ってこれないから怒られない。
…風華と遥真は飛べるので余裕でこれたが、どっかの誰かさんは飛べないから黒縄でボルダリングの要領で壁を登ったらしい。その証拠に足が絆創膏まみれだ。
「…」
ぶー
「遥真…空気がいいのにかますなよ…」
「俺じゃないゾ!」
「じゃあ風華…」
「俺アイドルだからこかないよ!」
「じゃあ俺…」
「いや違うでしょ!普通にスマホがなったんでしょ」
「最近のスマホってこくんだな…」
「勇のスマホはかなり古い奴でしょ…」
「そっか…」
くだらない話を繰り広げながら上半身だけを起き上がらせてスマホを覗く。誰かからメッセージが送られてきている。
「誰?」
「誰って…俺も分からんのだが…」
「クシュってやつらしいけど…」
「なんて来てるの?」
「『クシュデ〜スっ!』」
「『知り合いかもにいたので登録させていただいた次第デス〜!』らしい…」
「ギャル…」
「…あ!コイツもしかして海行った時にあったやつ」
「あ…もしかしてあのギャルの声がクシュ!?」
「俺分からないゾ!」
「いや…声はギャルだったけど見た目は白髪の美人だったぞ?風華と身長一緒くらいの」
「どチビじゃん!」
「いや女の子にしては高い方だぞ?」
「どチビって本人の前で言うッ!?」
「てかそれよりその次なんて来たんだ?」
「え〜と…」
「『今からお兄さん殺しに行っちゃいマ〜ス』だって」
「え?」
3人もいると言うのに静寂が訪れる。
どんな偉大な人がいたとしてもこんな静寂は金輪際訪れる事はないと思う。
今日は結構涼しいというのに…3人から汗が流れ出てきている。
「今からっていつ!?」
「え〜と…と!とりあえず逃げるゾ!」
「逃げるってどこにだよ!」
「地面!いやモグラか!」
つまんないセリフツッコミにもツッコめない。それくらい焦っている3人は体育館の屋根の上でアワアワと走り出している。
遥真や風華は何回か転びそうになっている。
…体育館の屋根は晴れの日でもスケートリングのように滑るのだ。
「とりあえず降りるぞ!」
「そ!そうだね!」
3人はケツを屋根につけて滑り出す。
ちなみに体育館の屋根はクッソ熱い。正直に言って降りてる時は一瞬痔にでもなったのかと思うほどケツが熱かった。これが本当の血圧だ。
スタ!ドテドテ!
勇は完璧な着地をする某スパイダーマンのようだ。だがその上から風華…そして体重90kgありそうな遥真が降ってくる。
つまり1番下の勇は合計140kg以上の重荷を一身に背負わなければならない。物理的なヒーローだ。
グギィ…
えげつない音…骨の数本は折れてそうだが…なかなか骨は折れやしないんだなこれが。
ちなみに1番上の遥真は二人の屍の上で決めポーズをとっている。完全にふざけている。
「ど…どいて…」
「あ…悪い悪い…」
ボロボロな体で勇と風華は立ち上がる。
遥真は全く反省していなさそうな表情だ。
だがその表情は風と共にすぐに消えていく…
「…多分そろそろ来るな」
「お〜お兄さん凄〜イ!」
「…う…頭の痛くなる声だな…」
「キャハっ!お兄さんサイテ〜イ」
「んで…早く出てこいよ」
「ん〜?あそっかお兄さん今見えてないンダネ〜!」
「どうゆうこと…?」
「ホ〜ラ!」
ニョッキッ!と突然隣から白髪美人フェイスが現れる。あんまりに綺麗な顔だから幽霊!?とかビビる前に顔近ッ!って照れることしかできない。
「キャハっ!お兄さん楽シソ〜!」
「あ…あんたの能力は確か振動だったはずじゃ…?」
「この能力は誰の…」
「あ!教えてなかっタネ〜!」
「これは〜私たちのボスの能力〜!」
「ぶ…ブスぅ?」
「え〜耳腐っテル〜!」
隣からシュン!と美人フェイスが消える。…いや消えたと言うよりは引っ込んだと言う方が正しいいなくなり方をしていた。
「ブージア爺じもう私たちを外の世界に出シテ〜キャハっ!」
ブージア…なんて美味しそうな名前なんだろう。イタリアの郷土料理とかにありそうな名前をしている!
「了解じょり…」
えげつない語尾。ブージアは髭剃りのメーカーなのだろうか…?
そんなことを考えて瞬きをすると…
「キャハっ!」
めちゃくちゃに美人な顔でギャル笑いをしていはクシュ。そしてその隣にはあの館にいた武士がいた。あそこに忘れたと思っていた炎の刀は持って帰ってきたようで、太陽とおんなじようにボウボウと燃え盛っている。
「キャハっ〜!」
「うお…美人だな…」
「ってか婚姻届忘れてきたな…」
「え〜坊主のおっちゃんとは結婚無理なんだケド〜」
「お…おっちゃん…俺まだ高校生…」
「あれ〜?そこの可愛いにゃんちゃん髪の毛伸ばシタノ〜?」
「こ…これカツラだから!」
ぷくぷくと頬を膨らませて怒っている風華。
おっちゃんと言われてショックを受け…自身の頭をなでなでとしている遥真。
目の前のクシュはこう言うところが厄介だ。
全ての雰囲気を破壊されてしまう。
「ねぇ〜お兄さ〜ん?」
「なんだ…」
「前回は〜助けてもらったから許したケド〜」
「今回はブージア爺じも見てルシ〜」
「ちゃ〜んと殺しちゃウネ〜?」
「後の二人モっ!」
クシュの青い瞳は深海のように暗くなっていく。空気を揺らしているのかクシュの綺麗な白髪は浮き上がり風を受けているようになる。
「遥真…風華…アイツはふざけてるが…かなり厄介な能力を持ってるぞ」
「キャハっ!それはお兄さんたちもデショ〜?」
「四聖獣に…SOZOに…」
「あれ?お兄さんだけ弱いねっ!キャハっ!」
「仕方ない…」
「俺も戦いたいが足手纏いみたいだ…風華…遥真…ここは任せた」
「ビビってるだけじゃん!」
「て言うかブージアってやつは…?」
「安心シテ〜」
「爺じは攻撃とかは出来ない人だかラネ〜!」
「キャハっ!」
クシュは本当に人間だったらモテている事だろう。それくらいに笑顔が眩しくって…その心の読めない表情に無意識に吸い込まれそうになる。
「…し…仕方ないやるぞ!」
「遥真はクシュを抑えろ!」
「風華はあの亡霊武士を!」
「じゃあ勇は?」
「俺は一旦迂回してからまた戻ってくる」
「…」
「冗談!俺は…俺で頑張る!」
「じゃあ各々頑張れよ!」
「は…はい…」
「キャハっ!お兄さんリーダーっポ〜」
「だけどぉ〜!」
「一対一はあり得ないデショ〜」
クシュは隣の武士に飛び乗りその頭を抑える。
すると…あんなに静かだった武士は目の色を青くし俯いた顔を上げる。
…あの夜に見た武士よりも何故か顔が怖い。なんでも夜に見たら怖くなると言うのに…
「さぁ〜!殺しチャオ〜!」
「武振神刃神〜!」
明らかに適当な技名。
武士はゆっくりと炎の刀を振り上げる。
あまりの火力の高さに数秒経った今でも空気が焦げているのが見える。
「ハァ〜!」
ブゥンッ!
野球部のように簡単にその重そうな刀を斜めに振り下ろす。
3人と武士の距離には十分な距離が保たれている。
当たるわけがないのになぜ…?
「…ん!?」
突然グラウンドの隣の自然林が震え出す。
木の葉を落とし…細い木からは枝が落ちる。
「避けれナイヨ〜?」
「風華!遥真!飛べッ!」
「…分かった!」
「憑依・青龍…!」
「飛行!」
ビュンッ!
二人が飛び上がると…次はグラウンドが揺れ出す。
ザンザンザンッ!
グラウンドにはタイヤ痕の様な跡がつき、それは徐々に地面に足をつける勇へと向かってくる。
「…じゃあな体育館!」
ビュンッ!
どうにかして体育館を守ろうと思っていたが、よく考えたらここで恥しか掻いた思い出しかないから壊れてもどうでもよかった。
勇は黒縄を飛んでいる風華の足に巻きつける。
「勇!?重いッ!」
風華は頑張っている様で可愛い顔をしている。
それにハリウッドの映画のヘリでの逃亡シーンのように余裕そうな表情の勇。トムクルーズに見えてくる頃だろう。
ズバァンッ!
布の切れた音が広々としたグラウンドに響く。
だが勇の体には傷ひとつない。
「やっぱお兄さん面白〜!」
クシュはいつもの様に爆笑しているが、ひと足先に体育館の屋根についていた遥真も指を指して爆笑している。
…指を指している方向を見てみると…
「あ…」
「パンツ破けてる」
綺麗にズボンだけが切られていてクマさんのおぱんちゅが顔を出している.
「ぶふぅッ!」
「ちょっ!風華笑うな!高度あげろ!」
「無理無理無理!」
「面白すぎる!」
「ぎゃー!」
「て言うかもう斬撃消えてるゾ?」
「あ…あらそう?」
結局勇のズボンだけが切られて…体育館には全く被害がなかった。やっぱり優しさとは無碍になるものなのだ。
「…笑いすぎておしっこ漏れそうだった」
「今風華が漏らしたら俺の顔に全部掛かるだろ!頻尿男!」
「うるさいやい!」
「騒がしいネ〜」
「とりあえず降りるか…」
ツルンッ!
遥真は屋根に手をついて降りようとしたが…その屋根がなかなかに厄介で、普通に文字通り手を滑らせて遥真は屋根から落ちていった。
「ブフッ!」
「やばい…!やばい…!」
「ブフゥッ!」
「痛い…」
「辞めろ!風華笑うな!」
「楽シソ〜」
「あ…」
じょぼ…じょぼぼぼぼ
「ごめん….」
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