↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANCIENT   作者: 美朱太
月面の太陽
PR
94/95

17-4 蛍

 「嵐吹くッ!この町がッ!」

 「お〜まえを抱く〜!」

…何かいい案があるのかと思ったが、今は普通にカラオケにきちゃっている。

ちなみにこの「紅」を歌っているのは霊愛と杏だ。霊愛は地声でちゃんと高い声が出せるタイプの人だ。しかもめちゃくちゃにうまい。

モノマネなんかじゃなくってちゃんと自分がある上手さだ。杏もめちゃくちゃにうまい。

 「はぁ〜疲れた〜」

 「川本杏…お前うまいんだな…」

 「え〜霊愛さんもうまいよ〜」

二人が完全にいちゃついている中…

歌が対して上手くない勇はちゅ〜ちゅ〜とコーラフロートを口内全体で嗜んでいる。う〜ん美味しいです。

でーんでーん!と点数が徐々に出てくる。

結果は96点。そんな数字見たことがない!

あまりにも高い点数だが…二人は喜ぶ様子はない。高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんな…100点を狙いに行ってるんだろう。向上心の鎌足。


 「んで…どうやって杏の親探しするんだ?」

 「あ…それはだな…」

 「じゃじーん!」

霊愛はスマホを取り出してその画面を見せつける。…なんかコイツ最新のスマホを使ってる。

その画面には[ワクワク!出会い系アプリ!]って書いてある。

 「出会い系…?」

 「え…ウチ嫌なんですけど…」

 「あーなんか勘違いしてるのか?」

 「天界での出会い系アプリは純粋に出会うだけだぞ」

 「あそうなんですか」

 「ほら川本杏こっち向け」

 「え?あ…はい」

杏は霊愛の方を向く。

…電車でいちゃつくカップルみたいに見える。

なんというか嫉妬すら湧かないくらいに美男美女カップルだ。

 「ほら笑って笑って」

 「こ…こうですか?」

 「え…えへ…」

杏は人差し指で前髪を少し上げる。

清潔感がすごくて…女優とかの写真集を今の一瞬だけで感じさせられる。しかもなんかいい匂いがしそう。…ていうかいい匂いする。

 「…川本杏…お前女優とか向いてるぞ」

 「別に私のタイプではないが…」

 「多分トップになれるくらいに顔が美しいぞ」

 「あ…ありがとうございます…」

心なしか杏のほっぺが赤くなってる気がする。

まぁでも自分が女だったら、霊愛ほどのイケメンに顔を褒められたら嬉しくなるが…こんな顔を赤らめらほどではない気がする!

 「…近いな」

 「え?勇なんか言った?」

 「いや何にも…」

 「霊愛さんこの写真はどうですか?」

 「あ…あぁ可愛いんじゃないか?」

 「や!やった!」

明らかに距離が近く見えてしまう。

結局はこの世は下馬評通りにしか進まない。

イケメンは美人と…美人はイケメンと…

悔しいが人生はそんなものだ。

悲しんだって誰かが手を差し伸ばしてくれるわけではない。自分が手を伸ばした所で…相手は自分が見えない場所まで進んでいっているのだ。

勇はいちゃつく二人を冷めた目で見る。

 「よしじゃあ早速投稿してみるな」

 「はい!」

 「…」

いつもより杏の笑顔が可愛い気がする。

年上の彼氏にしか見せない様な笑顔だ。

…見れば見るほど二人がお似合いに見えてしまって…二人が花びらで…自分が花瓶にしか思えない。

やっぱり勇は視線をカラオケのマイクに映す。

…なかなかに丸みを帯びているなぁ。

 「あ!川本杏!さっそくオファーが届いたぞ」

 「え!見てみたい!」

杏は霊愛に体を近づけてスマホを覗く。

こじんまりとした杏の胸が、霊愛の二の腕にぶつかっている。セクハラだぞ!って言いたいが…杏が気にしてなさそうだから何もいえない。ただ指を咥えてみていることしかできない。

 「うわぁ…すごい…」

 「すっごい筋肉がすごい人たちですね…」

勇もその声に気になってチラッと画面を覗く。

そこにはサングラス二ゴリゴリのマッチョの男が二人肩を組んで写っている。…見た目で判断するのはダメ!って散々教えられてきたが、こんなのをいい人だ!なんて言えるわけがない。

 「まぁでも…いい人が多いって言われてるゲンメール族だからいいんじゃないか?」

 「…そ…そうですかね…」

 「じゃあ早速…」

 「霊愛!待ってくれ!」

関係ない…!と思いながらも、体はそれに反して霊愛の画面をタップする指を止める。

霊愛は驚きのあまり目がまんまるになる。…あのマイクよりもまんまるだ。

 「え…どうしたの?勇…?」

 「そ!そんな簡単に決めちゃダメだろ!」

 「杏が変な事件に巻き込まれたら困るし…!」

 「あと…なんかこのゲンメール族の奴ら…イケメンなんだし…なんかな…」

 「…あー確かにゲンメールはイケメンしかいない種族だって話題だったな…」

 「しかも人間好みの顔だっけ…」

 「なら尚更ダメだ!」

 「…お前がそんな言うなら辞めとくか」

クソ面倒くさそうな顔をしてまたスマホを見出した霊愛。…ホっと一息。雪の日の肉まんくらいにホッとしました。

…なぜか杏がニヤニヤしながらこっちを見ている。…これに気づかないふりしてずっと見つめていたいが、いつ変なことしてしまうかわからないから杏と目を合わせる。

 「…何じゃ?」

 「ん〜?」

ニヤニヤの止まらない杏ちゃん。

…いやもうニヤケというよりふにゃ顔だ。…初めてみる杏の表情…こんな可愛い顔を人間がしてはいいのだろうか!別に良い!

 「勇がいてくれて良かった」

 「お…おぉ…」

おでんの大根より染みる杏の言葉。

勇はニヤけてしまわぬ様に奥歯を噛み…その表情を頑張って抑えようとする。まぁその代償としてブサイクになってしまっているのだが…

 「庇ってくれなかったら…あの人たちに変なことされちゃってたかもしれなかったし…」

 「ありがとうね」

勇の情けない肩にポンっと手を置かれる。

…ビクッと背筋が跳ね上がってしまう。

ボディタッチはシャイな勇には抜群なのだ。

 「でさ…!」

 「勇さっきはなんで止めてくれたの?」

 「同居人だから…止めてくれたの?」

 「それとも…それとも…」

 「…うちのこと…」

 「そ…その…」

いやー!やめてー!かわいいよー!

なんて心の中で叫んでいると…霊愛がスマホの画面から手を離しているのがわかる。

これに縋り付くしかない!…と杏からスタタと逃げ出し霊愛の元へ向かう。

…杏の話しを最後まで聞かなかったのは…ただ純粋に恥ずかしかっただけだ。

 「いい奴いたか?」

 「おう!川本杏にピッタリな奴がいたぞ!」

 「お!見せてくれ!」

 「ほれ!」

杏と勇はウキウキでスマホを覗く。

…そのプロフィールの名前を見た瞬間杏の顔から血の気がサァ…と波の様に引いていくのがわかる。

 「ヴ…ヴェール族…」

杏の歯がぶつかる音が静寂の中に響く。

思わず杏の手を握ってしまう。こんな簡単に杏の手を握りしめれたなんて…普段の自分に教えてやりたい。

 「ゆ…勇…」

その弱々しい声に…杏の手を握る力が強くなる。

次の投稿は月曜日です。

今日で私19歳になりました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。