16-1 DREAMIN'
「あぁ!あれも欲しい!これも欲しい!」
「もっと欲しいもっともっと欲しい!」
初っ端THE BLUE HEARTSな勇。
今現在Amazonesっていう大手の通販サイトを見ている。そのサイトでゲームを見ている。最近のゲームは6000円とか平気でする。
リビングだから家族がみんな見てくる。
「…なんかバイトしようかな」
「無理無理勇がバイトできるわけないじゃん」
厳しすぎる姉の言葉。…だが説得力があるのは、この姉もバイト続いたことがないからだろう。姉弟は似るものだ。
ちなみに勇の前の席には杏が座っている。
…あまりにも最高で至福の時間だ。
「え勇そんなキモい顔見せたら杏ちゃんが可哀想だよ」
「大丈夫ですよ!愛さん!」
愛とは勇の姉の名前だ。
…多分これ以外で名前が出てくることはない。
杏と愛は名前がちょっと似てるから仲がいい。この前なんて二人で焼肉に行っていた。
もうほとんど杏は勝俣家の家族だ。父さんもこの前杏とラーメン行ってたし…お母様とは一緒に買い物に行っていた。
「杏ってどこでバイトしてるんだっけ」
「ラーメン屋さんだよ?」
「…も…もしかしてフロルがいるとこ…?」
「違う違う!」
「やっぱあんな花の化け物がいる所は人気ないよなぁ」
「いや逆〜」
「あの人がいる所人気すぎるんだよね」
…フロルは人間じゃないというのに…"人"っていうのはかなりの疑問だ。
「でも…流石に見た目受け入れないんじゃない?」
「最初はね!でもあの人かなり仕事できるらしいし!」
「面倒見いいし…!いい人らしいし!」
「な…なるほど…人は見た目じゃないんだな…」
昨今…〇〇人や〇〇は…って一括りにすることが多々あるが、それは本来の人間としては間違っているのかもしれない。
…フロルはこのことを伝えるために地球に来てくれたのかも知れない。…な訳なかった。普通に殺しに来てたことを忘れていた。
最近普通に人間みたいに過ごしてるから…
「…ちょっと遥真に聞いてみよ」
…それから数十分の間…
したくもないが遥真とLINUをした。…風華も入っている三人のグループLINU以外で遥真とLINUしたのは久しぶりだ。
なんと最後にLINUしたのは2ヶ月前の詐欺URLを遥真が送ってきたのが最後!
もちろんそれはスルーした!
「ふ〜むふむ」
「なんかいいの見つかった?」
遥真とLINUをしている間に姉は自分の部屋に行っちゃった。上から声が聞こえるから…多分彼氏と話しているんだろう。うちの姉はかなりモテる。でもここだけの話…今の彼氏にしか体を許してないみたいだ。…こーゆーところは尊敬できる。
「即日即金!高額報酬!簡単作業!」
「そ…それ絶対にやめた方がいいよ!」
「でも一日20万って書いてある…」
「なおさら!」
「でも…警察が出してる広告だけど…」
「え?なにそれ?」
杏は体を乗り出してスマホの画面を覗く。
…そこにはこう書かれていた。
『高校生大歓迎!1日20万以上稼げる高額バイト!』
『未経験大歓迎!』
「ガチの警察のホームページだし…」
「あれ?でもなんか条件あるよ」
杏は勇のスマホを下にスクロールする。
…このスマホ絶対に洗わないにする。…いや普通スマホは洗わないか…
『条件は能力者であること!』
「…こんなの条件満たせる人いない…事はないのか」
「俺に適任か…」
「風華と一緒に行っちゃいなよ」
「え危ないから止めるとかないの?」
「…だって遊園地での借金が残ってるし…」
「…忘れてなかったのか」
「昨日の事だからね?」
「はぁ…じゃあ面接に行ってくるかぁ…」
「いってらっしゃーい!」
あまりにも冷たい杏だが…それがいい。
でも言葉では冷たいけれど玄関まで送ってくれたから…綺麗な嫁さん感がある。
最高な気分でコンビニに行って風華と合流し、警察署に向かえた。なんと幸せや。
そして現在…ここは警察署の中。なんとか室。
「面接したいんですけど」
って言ったら普通に通してもらえた。
この警察署クソちょろい。
風華は勇の後ろに張り付いてきて受付を突破してきた。…多分受付の人はコアラかと思ったんだと思う。
「ねぇ勇〜?どんな仕事か分かってるの?」
「え?何も知らないけど」
「え?何も分かんないのに俺誘ったの!?」
「ほら…俺らって一心同体じゃん?」
「えぇ…嫌なんですけど」
「んな生意気な…」
適当な会話を繰り広げていると、このなんとか室の入り口の扉がガチャっと開く。
どんな金髪美人な人が対応してくれるのだろう…なんて考えその目の前の人物を見たらすぐに消え失せることとなる。
赤髪に筋肉隆々の高身長。自分の大胸筋ってやつで座っている勇や風華の姿なんて見えてないだろう。
…これはもう確実に舞のおとうちゃんだ。
これ以外に筋肉マッチョの赤髪がいたら日本は終わりだ。いや別に終わりではないか。
「…はぁ」
明らかに嫌なため息をしてくる舞のパピー。
だが反抗=死。だから口角だけをあげて笑っているふりをする。
「最初な5万…次は10万…その次15万…」
「これでも応募者がいないから20万にしたが…」
「来たのがお前らとはな…」
「あはは…」
「…そしてお前はちょっと色気づいて…うちの娘の可愛い可愛い舞を!」
「この…!このやろ…!この野郎…!許せん…!」
舞パピーの顔からはかなりの葛藤が見える。
多分風華との初デートから帰ってきた舞の表情が、舞パピーには見たことがなかったんだろう。…だからそんな表情を見せてくれた風華への感謝も疑える。
「…まぁいい」
「これから詳しい仕事の内容を話すぞ」
「はーい」
「まずこの画面を見ろ」
舞パピーはポケットからスマホをとりだして勇と風華に写真アプリを見せる。
…どんな怖いものが写っているんだろう。
覚悟しながらそれを見てみると…
そこには舞がほわほわな表情をしている写真だらけだった。舞とのツーショットもある。
…あまりにも可愛い表情で風華の口唇が震えている。…別に舞を好きじゃない勇でさえも「可愛い」って言ってしまうほどだ。
加工なしでもこれってやっぱり舞の顔はすごいのだ。
「…」
「舞さんのお父さん…!LINUを!LINUを交換しましょう!?」
…舞にはこんなこと全く言えなかったのに、舞のパピーにははっきりと言えている。
人間の欲というのは、やはり時に人を変えてしまうのだ。
あまりのプレイボーイさ加減に舞パピーは眉を顰める。
「…普通に無理だ」
「え!なんでですか!」
「…俺はお前を信用していない」
「あとそこの短髪も」
「いや…俺は交換しなくていいし…別に信頼されなくていいし…」
「生意気なガキだな…」
「…いやいや俺兄貴に気に入られたいっすよ!」
勇は三下ムーブがかなり上手い。
勇の淡彩な顔立ちからは考えられないほど前歯が出ていて、あまりにもイケメンな顔がネズミのようになっている。
「…まぁキショいから早くお前らこれを見ろ」
元はと言えば自分がミスったのが悪いのに…!なんて舞パピーの目を見たら言えずに、大人しく膝に手をついてその画面を覗く。
この二人…流石に先生に気に入られているだけのことはある。大人を怒らせない方法を心得ている。
「ほらこれ二人で一緒に読み上げてみろ」
「あはい」
「せ〜の」
「穂部実庵町成人連続誘拐事件?」
「…舞パピーさんなんですかこれ」
「…漢字が多すぎますよ…」
「…」
「…」
「スベったなチビ男…」
「…」
「連続誘拐事件なんだそれ…?」
流石主人公と言ったところか、親友のスベったところを簡単にスルーできている。
つまんない人間ならスベったことをいじるがそんな安いお笑いをしない。流石…!涙がちろりちろり
「最近テレビ見てるか?」
「…まぁご飯食べてる時にそこそこ見てるけど」
「ならなんで知らないんだ…?」
「いや俺んち今リモコンないからテレビ点かないんだよね」
これが本当のボケというもの…そう思いながら勇はわかりやすいドヤ顔をする。
しかし目の前の二人は冷めたような表情をしている。…多分お笑いのセンスがないんだろう二人には。
「じゃあ一から説明するか…」
面倒くさそうにスマホをスクロールする舞パピー。多分ya-ho!ニュースを見ているんだろう。
しかもかなり昔のようで怒涛のスクールロールだ。
そして目当てのものを見つけたのだろうか満足そうにそれを見せつける。
「読み上げろ」
「はい」
「8月27日23才の男性が行方不明に…」
「8月24日…26才の男女が行方不明…」
「8月23日…35才の会社員が行方不明…」
こんな感じの行方不明の報告がざっと20件以上並んでいた。
それは年齢層は20代〜40代前半くらいで…普通の行方不明、および誘拐の事件としては年齢層が上だった。
「なるほど…だから成人連続誘拐事件なんだな」
「…んでこういうのって警察が解決するんじゃないの?」
「…いや実はな」
「実は?」
「最近色んなところで事件が起こっててその後始末を俺ら警察がすることになってるんだよ」
「へ…へぇ…」
舞パピーは面倒くさそうな顔をしながら、勇と風華の両方を見ている。
多分昨日の炎尾のことを言っているんだろう。
お化け屋敷の燃えカスとか忘れて帰ってしまった。しかも紅恋の時も警察に頼りっきりだったし…かなり忙しそうだ。
「人手が足りないからお前たちにはこの事件を担当してもらおうと思っている」
「何言ってるんだよ!俺たち能力者だぞ?」
「殺人事件でもなんでも完結できるぞよ!」
「お前らが言っても無駄死にが増えるだけだ」
「ひどい!」
「本当に有能な能力者には殺人事件を担当してもらっているが…お前らみたいなハンパもんはこういう事件を対応してもらっているんだ」
「…俺らがハンパもんか」
異様な雰囲気を見せる勇…
初めて見るような悍ましい雰囲気の勇に風華の体には鳥肌が駆ける。
舞パピーも少し背中が縮まっているように見えた。
「いやそりゃそっか」
「よく考えれば俺ら高校生なんだから命懸ける訳にも行かないな…」
「うん!そうだね!」
「俺らまだ彼女もいたことないし!死ぬわけにはいかないよねッ!」
「死ねッ!」
「えぇ!?」
舞パピーの厳しいお言葉。
風華は我を忘れて驚いた顔をしている。
「じゃあお前らにこの犯人は任せたぞ」
「は〜い!」
「じゃあ犯人の情報を…」
「よしじゃあ俺は別の仕事があるからな」
「え」
トコトコと足音を立てながら部屋から出ていく舞パピー。ちゃんとガチャって扉の鍵を閉めている。この扉…中からじゃなくって外から閉めるタイプのようだ。なんでだ。
そして机の上に目を向けてみる少年二人。
「…も…もしかしてこれ俺らが…?」
机の上には無数の資料が並べられている。
一枚ペラっとめくってみると…細かい文字がズラーっと並んでいる。
…少年'sは気づいてしまった。
面倒臭いことを投げ渡されただけなんだって…
次の投稿は月曜日です
やっぱ水曜日




