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ANCIENT -無代譚-  作者: 美朱太
未開の少年たち
8/15

1-7 ヴォア襲来

冒頭はつまらないかもです。

社会人、学生の人GW明けお疲れ様でござる。

おばちゃんに怒られた二人は公園に移動した。

理由は単純!ここには誰もいないからだ!

…いないと思っていたが深夜徘徊してるおじいちゃんがいた…。だが何も聞いていないと言うことにしておこう。

 「…諦めるってのも手じゃないか?」

 「じ…実は俺…好きな子にカッコつけちゃったんだよね…」

 「お前も私と同じで背水の陣だったのか…」

 「戦うしかないようだな…」

 「そのようだ…」

二人して雑魚のオーラを醸し出す。なぜか腕を組み大御所ぶっているが…。戦闘経験が全くない二人だ。

 「あ!良いこと思いついたぞ!」

 「な!なんだ!?」

 「驚かしてビックリさせて倒す!」

 「お…お前…」

 「その道で食っていけるぞ…」

 「よしゃ!メモだメモ!」

 「か…勝てるぞ…」

 「あ…!」

…戦闘経験も戦闘能力も皆無に等しい二人。

この作戦会議が本当に意味があるのかは分からない。もしかしたら無駄な時間かもしれない。


そしていくつか時間が過ぎ…

いつの間にか太陽は真上にまで昇っていた。

今日は休日ということもあって、公園には小学生くらいの少年少女で溢れかえってる。

真ん中で作戦会議をする二人を囲むように…。

は…恥ずかしい…。だが勝つためには作戦会議を…。

 「あ…もしもし…警察ですか?」

スマホを耳に当て電話をする主婦。

明らかにこちらを見ている。しかも汚い物を見ている様な目で…。

しかも「警察」と言っていた。これは確実に通報されていることに違いない…!

我が子が公園で遊んでいるのにヤバそうな見た目の二人がいると気が気でないのだろう。

しかも霊愛は片乳首が完全に見えている。

霊愛はよくある神様の服装をしているのだ。

これは…マズイです。


どこか休憩スペースを探しても人で溢れかえっている。逃げようにも家には帰ることもできない。カッコつけなければ…。

そして逃げ場を失った二人は…

休校中の学校に忍び込んでいた。

コンビニで買った商品が入ったレジ袋を手に。


 「とりあえずカップ麺でも食べるか」

 「私の世界にはこんな食い物ないぞ」

コンビニでお湯を入れてきたおかげでもう食べ頃になっている。コンビニが近いのはなかなかに嬉しい。

体育館に備え付けられた放送室…男二人。

二つのカップラーメン…。何も起きないはずがなく…。

 「で…では頂くぞ!」

 「本当に頂くぞ!」

 「ズゾゾッ…」

本当に初めて食べる様で下品に麺を吸い込む。

ご飯を食べるリスの様に頬に麺を詰め込んでいる。こいつ暑さを感じないのか…?

 「アッツァッ!」

感じてた。今ごろ口の中ズタボロだろう。

 「だッ!騙したな!」

 「騙してないわッ!」

 「てか熱湯入れたら熱いことくらい普通の人なら分かるだろ!」

 「残念だな…俺は神の使い人ではない」

 「アチョォ…アチョすぎるだろ…」

 「そんな時はこれだよ」

 「ゆずレモンジュース〜」

某たぬき型ロボットの様に先ほどコンビニで買った飲み物を出す。これは本当に美味しい。

甘酸っぱいのが好みだ。初恋みたい。

 「く!くれ!」

 「ほい」

 「ゴクゴク…」

 「ぷはァァッ!イッツェェッ!」

ズダボロの口の中に酸味が染みるだろう。

針千本飲ます〜。ていうのを疑似体験させてみたかったのだ。

…火傷…火傷。

 「あッ!いいこと思いついたぞ!」

 「はぁ…はにゃんだ…言ってみろ…」

 「この熱湯をかけてみるとかどうだ!」

 「お前さぁ…」

 

 「さっきから思ってたんだけど戦いの天才なのか…?」

 「前世は上杉謙信なのかもしれない…」

 「確かに…風格あるな…」

 「ふ…ふっふっ…」

嬉しさのあまり笑みが溢れてしまう。

特に何をしても伸びることはなかった…。

だがこの才能だけはどんどん伸びている気がする。

下手でも続けりゃ以外と当たる…。そんな言葉を思い出した。


そして数時間が経った。

 「よし…作戦は決まったな…」

 「あぁ…」

不適な笑みが溢れる二人…。

悪の組織の幹部が密談している様な雰囲気だ。

 「戦闘場所は…近所の公園…時間は午前9時」

 「プランAは熱湯大作戦」

 「そしてプランBはビックリトラップ大作戦…だな」

 「あぁ…」

二人の足元には無数の生活用品が散らかっている。やかんやカセットコンロ、エナジードリンクの空き缶など…。

ゴミとさえ取れる様なものも一応残しておいてある。


霊愛のポケットから通知音が鳴る。

神の世界にスマホなんてあるのか…。

霊愛はスマホをポケットから取り出すと片手でその画面を見る。顔とポーズだけ見ると駅前で待ち合わせをするイケメンだ。

ただ服装が片乳首が見える服装なだけで…

何も変なところは無い。

 「私の同僚からの情報だ」

 「ヴォアは杏という少女がいた家に住み着いてる様だ」

 「…そうか」

怒りで頭がおかしくなりそうだ。

人間というものを舐め腐っている様にしか思えない。一つの家庭を壊しているのにその壊れた家庭に住み着くとは…シリアルキラーとしか言いようがなかった。

 「送り込んでやろうじゃないか…」

 「地獄の戦場への招待状を…ね」

 「ちゅ…厨二病…」

 「黙れ」

二人は赤いマットに横並びに寝転ぶ。

丸一日、目を開いて頭を使っていたこともあって寝転がるとすぐに眠気が襲ってくる。

今後の展開など考られない…。

だが不思議と焦りは無く自信が体を包みながら眠りにつく…。


 「は….ッ!お前起きろ!」

 「わ…私はぁ…神のつ…んがぁぁ…」

気持ちよさそうに眠っている。

イビキを掻いて涎まで垂れている。

この固すぎるマットで良く寝れるな…と軽く感心してしまうが、事態はそれどころではない。

 「おい!約束の時間が!」

 「ふが…なんだぁ…もうすぐか…?」

 「おうッ!」

 「もう30分過ぎてた!」

 「な!何ぃッ!?」

 「お前!起こせよ!」

 「お…俺も今さっき起きたばっか…」

 「じゃ…じゃあヴォアは…」

 「あぁ…」

勇はギャラリーを指差す。

だがそこには蛾すらいない。

 「何もいないじゃんか」

 「バカ!とりまギャラリー登るぞ」


 「う…嘘だろぉ…!?」

真夏のカエルの様に、窓に張り付いて外を見る霊愛。

その視線の先には…

ヴォアが腕を組みながら待っていた。

しかも相当イライラしてそうで、小刻みに足を動かしている。

 「あ…謝るか…」

本当に怖がってそうで霊愛の額からは汗がダラダラと垂れている。そして何か異様な匂いがすると思ったら霊愛の股間には大きな地図が出来ていた。

元から威厳は無かったが…さらに威厳を感じない。

言い得て尿…。

と使いたいがいい例えが思いつかなかった。

 「…バカ!」

 「ヒィッ!」

多分今の状態の霊愛は時計の針の音でもビビる。それくらいにはヴォアを怖がっている。

 「相手がボーっとしてんだからチャンスだろ!」

 「でも卑怯だろ!」

 「卑怯もへったくれもあるかッ!」

 「早速プランAに移るぞ!」

 「お…おう!」

カセットコンロに火をつけ、その上に100円均一ショップで買ったやかんを乗せる。


 「よしッ!」

二人の声が奇跡的に揃う。

 「時間稼いで来い!」

再び声も被り、二人とも人任せ…

初対面だが心が通じ合っている!

なんて素敵な事なのだろう。運命かしら。


 「…私に時間稼ぎなんて出来るわけないだろ!」

 「お前神の使いなんだろ!」

 「ちょっとくらいは戦えるだろ!」

 「お前と私とどっちが強いのか…試してみるか?」

凄まじい弱者の風格…。

これが神の使いとはまるでかんがえられない。

ドヤ顔がプルプルと震えている様にも見える。

 「…俺一般人ぞ?」

 「もし俺が死んだとしたら…もし勝ったとしても責任が追求されるんじゃないか?」

 「ぐッ…ぐぬぬッ!」

本当に恨んでそうな顔をしている霊愛。

一応神の使いと言うくらいなんだから、人の幸せを望んでいて欲しい。案外神というのは一枚岩では無いのかもしれない。

…とりあえず進んで犠牲になってもらいたい。

 「卑怯者!最低!」

 「お漏らししやがって〜!紙おむつでも履いとけ〜!」

 「…!マジ帰るぞッ!」

 「帰る当てもないくせに!」

敵が下にいると言うのに…こんなに緊張感が低学年レベルの言い合いは、逆に凄いとも思えてしまう。

二人とも暴力は得意ではない様で顔を近づけては引いたりを繰り返している。

 

 パリンッ…!


突然響いた破裂音に二人の顔は青ざめる。

目の前にはガラスの破片と思われるものが舞う。奇跡的に怪我はないが…。

 「お…お前顔青いぞ…」

 「おま…お前の方こそ…」

ネモフィラの様に顔が真っ青になってる。

確かあの花言葉はポジティブな意味が多い気がしたが…今回の気持ちは悲しいほど真逆だ。


二人は恐る恐るその音が鳴った方を見る。

なにか普通に蜂の大群が窓にぶつかっての轟音…ならよかった。よ…良くは無いか。

 「なんだァ?またせやがッてェ…」

く…臭すぎる息。二人とも1日は歯は磨いていないが、そんなに臭いとは思えない。

しかもこの酒焼けした様な声。

霊愛でも…勇のものでも無かった。


 「お前がヴォア…!」

勇の魂からの叫び声。

窓の淵に手を置いてのド派手な登場。

その声にヴォアは裂けた口角を上げる。

 「俺の名声が広がッてんのかァ…?」

 「ふざけた事…言ってんじゃねぇぞッ!」

怒りに身を任せてヴォアの顎目掛け拳を放つ。

その拳はまさかの…!


 「痛ッァ!」

ヴォアの顎に当たった拳がヒリヒリする。

血は出ていないが皮が薄く剥がれて痛い。

まるで凹凸のある壁を殴っている様な感覚だ。

もろに当たったはずのヴォアはどこ吹く風で、拳をもう一方の手で抑える勇を見つめる。

…本気で殴ったのに無傷。力の差をもろに感じる。ちなみに霊愛はヴォアが来てからピクリとも動かない。気絶しているのか死んだフリでやり過ごそうとしているのか…。

 「ふざけてんのはお前ェらだろォ?」

 「え…えと怒っていらっしゃいます?」

 「いやァ…?キレちャねェ…」

 「ほ…」

安堵からか生ぬるい息が漏れ出る。

 「グチャグチャにしてやりてェ…だけだァ…!」

咆哮の様なヴォアの叫び声。

しかも近距離でその声を聞いてしまったものだから、体が萎縮してしまっている。


だが…それだけで朽ちるほど勇の怒りは浅くは無かった。

 「…ッ!」

生き残るために自然と放心状態の霊愛の肩を掴んだ。これが何の為なのか自分でも分からない…。

しかし…着々と体は事を運んでいる。

 「な…なにしてんだァ?」

歴戦の猛者のヴォアといえど戸惑っている様子。それもそのはずだった。


…なぜなら勇は仲間であるはずの霊愛の体を軽々と持ち上げ、ヴォアの目の前に置いたからだ。

 「な…仲間じャァねェのかァ?」

 「…」

 「お…おいッ!聞いてんのかァ?」


 「えいッ…!」

突然、霊愛の背中を押した。

しかもそこはヴォアのいる窓際。人一人は余裕で通れるほどの大きな窓。

 「あァァ!?」

窓際にいたヴォアも霊愛の体重に押され、窓の淵から手を離して落ちていく。もちろん霊愛も…。

体育館ギャラリーはそこそこ高い確か地面と窓の高さは5mくらいある。

だが霊愛は抵抗する様子がない。それもそのはずなぜなら霊愛はビビって気絶しているのだから。


 ドスンッ!


ヴォアが襲撃してきたよりも大きな音が響く。

窓から外を見てみるとヴォアは霊愛の下敷きになっている。…だが痛がっているだけで大きな怪我にはなっていなさそうだ。最悪。

霊愛もヴォアがマットとなって無傷。

 「霊愛…自ら時間稼ぎを…」

 「ありがとう!」


 「いててて…」

目が覚めた霊愛はボヤける視界で確かに見た。

目前には目がガンギまっているヴォア。

そしてカサカサとしたものが口にふれている。

 「ウブッァッ!?」

悲鳴にも似た様な叫び声。


すぐにヴォアから飛び離れる。

 「オエェェェ…ウブッ…」

 「臭ぇぇ…!」

泥水で口を洗う。…どこかで見た気がする。

それとは対照にヴォアはゆっくりと立ち上がる

キスなんて慣れているのだろうか…。ヴォアがキスをしているシーンなど想像したら吐きそうだ。

 「ひでェじャァねェか…」

 「初キッスがこんな化け物と…」

 「思い出しただけで吐きそうだ…」

 「お前ェ!デリカシーがねェのか!」

 「お前にだけは言われたく無いね!」

 「お前ェ!俺が誰だか分かってんのかァ!」

霊愛は今日の出来事を思い出す。

そして徐々に顔が青ざめていく…。

 「へっ…へへっ!」

 「冗談ですやん…」

霊愛はわかっている…。

もう絶対に取り返しがつかない事を口走ったと言う事に。口臭いとか、化け物とか明らかに言い過ぎだ。

 「そうかァ冗談かァ…」

 「は…はい」

 「3秒数える内に見えねェところに行きなァ」

 「じャねェと…ぶッ殺したくて堪んねェんだ」

ヴォアの体はプルプルと震えている。寒さではない…まるで薬を使えないことによる禁断症状の様に激しく…。


逃げろと言われたって逃げるところがない。

なぜなら小学生の頃測った50mは20秒(フライング済み)を叩き出したから。

普通の人だったらギリギリ間に合いそうなあの、体育館の側面入り口にすら間に合わない。

多分力尽きるのが先だろう。

 「え…えと逃げきれなかったら死ですよね」

 「あァ…」

 「何があっても3秒まってくれるんですかね…?」

 「そのつもりだ…」

 「そっか…な…なら」

霊愛は意味深に腕を背中に寄せる。

 「エペッ…!」

どんな意味なのかは分からない。

だがはっきりと霊愛は「エペ」と言った。

どんな意味なのかは全く分からないが…霊愛の手には刀が握られていた。

 「じゃ…じゃあ…」

 「お願いします」

 「3…」

霊愛は生唾を飲む。

刀を握っている手は徐々に震えていく。

これからやる事でドーパミンが出ているのか、恐怖で震えているのか自分でさえ分からない。


 「…!死ねぇッ!」

油断しきったヴォアの額に刀を振りかざす。

それは運良く眉間を捉えた!


 カツンッ!


金属をハンマーで殴った様な…

良い音が響き渡るが、霊愛の顔は歪む。


なぜなら霊愛ご自慢の刀の剣先は綺麗に折れていたから。あゝ無情。

その剣先は体育館の下窓を突き破っていた。

 「2…」

ヴォアはなにも効いていない様子でまた秒数を数え出す。止まらない死へのカウントダウン。

 「た!たんま!」

 「たんまはねェ…」

 「わ…わお…たまんねぇすわぁ…」

 「1…」

 「あ…!」


 「霊愛ッ!そこを退けッ!」

ギャラリーの窓が勢いよく開く。

やかんを持った勇が悪い顔をしていた。

どんなに性格が悪くてもこの顔を越えることは出来ないだろう。

 「お!」

 「オラァッ!」

 「ギャー!じにだぐねぇぇぇ!」

ヴォアに首を掴まれた霊愛はキッたねぇ声を出して手足をジタバタさせる。もうすぐ死ぬ魚みたいだ。

 「お!動くんじャァ!…ね!狙いが定まんね!」

霊愛はヴォアに全体重を支えられながらゆらゆらと揺れている。ゆりかごに揺られてる様だ。

 「くッ…これも仕方ない犠牲なり…。」

 「やっちゃえ」

勇はソーっとやかんを傾ける。

安物のやかんのせいでやかんの口でお湯が跳ねている。手の甲に当たってしまうが少し違和感がある。まぁ気にしないでおこう。


 「助けてぇぇ!勇ぅ!」


 じょぼぼぼ…


アチアチのお湯が体に触れる…。

でも抵抗を辞めたらヴォアにしばかれる。

大火傷を負ってしまうか…死んでしまうか…。…答えは一つだった。

 「やだやだ!じにだくないもぉぉん!」

 「クソクソッ!動くんじャァ…!」

ついにお湯がヴォアと霊愛の体に触れる。


…正直な感想、勇の小便が当たったのかと思ってしまった…。

それほどまでに温かった。お風呂のお湯より少し冷たいと感じてしまうくらい。


 「…な…なんだァ…?」

流石にヴォアも困惑の様子。

仲間を売ってやったことがただのぬるま湯を掛ける事だったとは…。驚いている様子だ。

戦いの極意とは隙を突くこと…。無意識にそれをやった勇は天才なのかも知れない。

それが意味のない事ならダメなのだが…。

 「な!何してんだ!ちゃんと熱湯にしろ!」

 「やったって!」

 「じゃあなんで温いんだよ!」

 「あ…途中で火が消えてた…」

 「バ!バカタレぇ…」

声が高くなって上擦っている。

霊愛も相当焦っている様子だな…。敵を欺くならまず味方から。これは何の得にもなってないが。

 「お…お前ェらァ…」

 「コントしてんじャァ!ねェぞォッ!」

その瞬間ヴォアの筋肉が揺れ動いた…。


 バキンッッ!


激しい轟音と共に破裂音も響き渡る。

勇は恐怖のあまり両目を閉じていた。


ゆっくりと目を開く。

ヴォアの腕を見てみると…そこに握られていた霊愛は居なかった…。

 「死んじまッたかなァ…?」

ヴォアは体育館の中を指を指す。

それに操られる様に体育館の中を見る。


 「ゴホォッ…ガバァッ…」

 「霊愛ッ!」

そこには…

側面入口の鉄の扉を背に血を吐く霊愛がいた。

立ちあがろうとするが体が言う事を効かない様子でジタバタと遅く動くだけ…。


 「よそ見してる暇があるかァ…?」

全身に鳥肌が駆け巡る。

風を切る音と共に後頭部に激痛が走る。


ふわっ…と体が浮く感覚がする。

動いていないはずなのに、地面が高速で動いていく…。耳からは風を切る音が聞こえてくる。

そこでやっと気づく…。

ヴォアに後頭部を殴られたのだと…。


 「グフッ!」


今まで感じたことの無い感覚が全身を賭けていき、口からは血が吹き出す。

首から背中にかけて激しい痛み…。

用具室の扉に体が打ち付けられた様だ。

だがギャラリーから勢いよく飛ばされた割には痛みが少ない気がした…。普通なら一発でどこか折れていたと思う。

 「霊愛ッ!」

 「あ…あいつマジだぞ…」

血を拭きながら立ち上がる霊愛。

神の使いということもあってそれなりのタフさはある様だ。

 「プランBに…」

 「ってあれ…あの缶のゴミは?」

 「あ…上のギャラリーだぁ…」

 「どうすんだよ!」

 「や…やばい…」

 「どうすんだよ!ヴォアのやつギャラリーから飛び降りようとしてるぞ!」

 「…じ…時間を…」

 「稼いでもどうせ何も出来ないだろ!」

 「そ…そっすね…」

まさに絶体絶命…。

ヴォアはギャラリーから飛び降りるとふざけた顔で笑顔を作りながら歩いてきている。

その手には勇が持っていたやかんがあった。

 「か…返してくれるのかな…?」

 「…ふ…ふざけてる場合か!霊愛!」

 「元はと言えば…!」

こんな絶望的な場面でも喧嘩をする二人。

だがヴォアは先ほどの様にそれに付き合ってくれるような雰囲気ではなかった。

歩くたびに殺気が増していていく気がして、深い怒りが足元から伝わる。

 「おォ…お前ェの言う通りに返してやるよ…」

 「ほら!言ったじゃんか!」

 「こうしてなァッッ!」

ヴォアは人智を超えた力で片手で軽くやかんを握りつぶす。バキバキッ…と金属の擦れる音もそれと同時に聞こえる。

 「オラァッヨォォッ!」

やかん…もとい鉄の塊が投げつけられる。

プロ野球選手の調子の良い投球ほどのスピード…約150kmは出ていそうだ。

それも野球ボールではなくそれよりも硬い鉄の塊。それは当たるだけで体を貫通し背後の壁も貫通しそうだった。

 「…!避けれない…!」

 「あゝ!神様ッ!」

 「バカッ!神頼みしても…!」


 それは神風の様だった


密室のはずの体育館に突風が吹いたのだ!

木の葉や木の枝を巻き込んで体育館を荒らす。

そして鉄の塊の挙動は奇跡的に勇の顔面スレスレを通り、横の壁を貫通した。

もし風が吹いていなかったら…と考えるとゾッとしてしまう。ちょびっと漏らした気もする。


だが…一度奇跡的に避けたとて状況は変わらない。

 「…正面の入り口が開いたみたいだなァ」

律儀に状況説明をしてくれるヴォア。

感謝もできない状況に震える勇。


 「お前ェ…何笑ッてんだァ…?」

不自然に余裕な表情を浮かべる霊愛。

この状況で気でもおかしくなったのか?

 「おかしいだろ…?」

 「何がだァ…?」

 「だって急に突風が吹いて…あの扉が都合良く開いたんだぜ?」

 「だがお前ェら意外人はいねェぜェ?」

 「頭でもおかしくなッたかァ?」

 「人は…な」

意味深な事を呟く霊愛。

多分最近なろう系を読んだのかも…。

 「お前が殺した人たちの…怒りが襲いかかっているんだ…」

 「そんなぶッとんだ話…信じれると思うかァ?」

 「ふっ…私とお前がこの世に存在してるんだからもう十分ぶっ飛んでる話だろ」

突然メタい。


霊愛は一度ヴォアを睨むが…顔が怖いのかすぐに目を離し、勇に顔を近づける。

 「勇…この勝負…誰かが味方してくれている」

 「諦めてふざけるのはまだ早かったみたいだぜ…」

 「まだ…チャンスはある…やるぞッ!」

先ほどまで漏らして、泣き喚いていた男とは大違いだった。その顔面と自信から感じ取れる気合い。はっきり言ってかっこよかった。

1話ラストはすぐ出ます。




関係ない可能性もありますが、トモコレとZAを買いました。

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