14-3 シーラカンス
迎えた始業式当日…
明らかに大人の人が多いし…先生じゃなさそうな人もいて…久々に登校した生徒たちは困惑していた。勇と風華の2人は知らん顔をしていた。
ちなみに勇のクラスには1人霊愛くんが来ている。…制服も全く違うが…イケメンだから許されている。
…今現在霊愛は囲まれている。
「LINU交換して〜!」
「ここにスマホ置いておくから…」
「勝手に登録して置いていいよ」
「きゃー!」
心なしかいつもよりカッコつけている。
霊愛はサラサラな金髪を揺らしながら勇たちの元に来る。…香水の匂いも撒き散らしている。
コイツ金髪も香水も校則違反だと言うのに…!風紀委員だったら確実に坊主だ!
「な…!なんか不安になってきた…」
「大丈夫大丈夫!」
「霊愛が紅蓮を倒して…俺らはそれを見学する…ッ!」
「ば!バカ!一緒に戦ってくれよ!」
「だって…俺ら弱っちぃし…」
「遥真は強いから良いと思うけど…今日に限って休んでるみたいだし…」
「じゃあ作戦の確認するぞ…」
霊愛はポケットからボロい紙を取り出す。
紙が日焼けしていて…アニメのような宝の地図だ。…そこには色んな文字が書かれているが…かなり字が下手くそだから読めない。
「まず紅恋が襲撃して来たら…」
「多分外にいる警察の人たちが合図を出す」
「…警察の人たちは大丈夫なのか?」
「なんか能力者がついてるみたいだから…大丈夫だと思う」
「なんで能力者いるんだろ…」
「んで…合図が出たら体育館にいる人たちを裏口から逃す…」
「そして体育館に誘い込まれた姉さんを…そのまま殺…ッ!」
「ばーか」
霊愛の言葉が終わる前に勇は食い気味に入ってくる。かなり年季の入ったボールペンをクルクルしながら真面目な表情をしている。いわゆるペン回しという奴だが…勇は半回転で大体机の上に落ちている。
「こんなところで殺すなんて言ったら周りの人がビビるだろ…ッ!」
「あ…そっかそっか…」
「てかこの紙なんで出したんだ?」
「これ雰囲気作りだぞ?」
霊愛の阿呆さに呆れる勇。
霊愛も勇の阿呆さに呆れている。…多分なんでも意味を求めてしまうということに呆れているんだと…そう思いたい。
だが風華だけは真面目な顔をして時計を見ている。
「…ねぇ霊愛さん?」
「ん?どうした?改まった顔面しやがって」
「え」
「…前々から思ってたんだけどさ」
「霊愛さんのお姉さんに取り憑かれた人の体はさ…怪我はしないの?」
「…」
「もしかして…分からないの?」
「あ…うん…」
「…じゃあさ颯さんが痛い思いをするかも知れないの…?」
「…かも知れないな」
「風華…」
風華は楽しそうに杏と話している舞を見る。
その目はいつもの風華とは違って少しカッコよくて…飲み込まれそうになる程の青黒い瞳をしている。
「お前…フロルに言われただろ?」
「情を捨てなきゃ姉さんには勝てないって…」
「でも…」
「…お前が止めても俺は姉さんを…いや紅恋を俺の手で殺す」
「例えその颯ってやつが死ぬことになろうともな…」
「…それはダメッ!」
風華は机を叩きながら勢いよく立ち上がる。
風華のそんな姿を初めて見た生徒たちは驚いた目をして風華を見ている。
「お前はバカなのかッ!?」
それに対抗するかのように霊愛も立ち上がる。
現在怒った顔をして立ち上がった2人の真ん中に座っている勇。あまりの気まずさに消えてしまいたい…。
「お前はたった1人の命と…数100人の命…どっちが大事なんだ…?」
「…俺はどっちが大事かなんて分からないよ!」
「でも…!俺にとって颯さんは大事なんだよッ!」
「…そうか」
あの怒りに満ちていた霊愛の顔は…
徐々に緩んでいき…次第には笑みを浮かべる。
そのきしょくの悪さに風華はドン引きする。
「な…何ですか…?気持ち悪い…」
「そ!そんなはっきり言うなッ!」
「急に笑い出したら気持ち悪いでしょ!?」
「だって…俺…姉さん殺したくないし…」
「なんか最近みんなに期待されてるから…ちょっと強がって殺してやるッ!って言ったけど…」
「正直…またいつか姉さんと一緒にご飯を食べてみたい」
「霊愛さん…!」
「やっぱ大好きちゅっちゅっ!」
風華はここは学校だって事を忘れているのかも知れない。霊愛に抱きついてほっぺとほっぺを合わせている。
普通にバカップルみたいで…クラスメイトたちは写真を撮り始める。ナチュラル美男美女カップル。
「は…ッ!」
「ほれ早く行くぞ風華」
「もうすぐ始業式が始まるぞ」
「あ!うん!」
時計は9:45を指していた。
一方その頃体育館の外では…
無数の人が体育館を囲んでいた。
体育館の中では校長の長話が続いている。
この校長は言葉の意味を無理やりに捻じ曲げた説明をよくしている。…今回は"楽"について話している。
「…なんで俺始業式に出ちゃダメなんだ?」
遥真は体育館ではなく…体育館の外にいた。
そしてそこにはモカやその仲間たちがいる。葉月翔や魚塚虎之助だ。
遥真は日陰で寝転がっている。虫さんトコトコで草。
「あんたはウチの大事な戦力なんだにゃ!」
「俺より勇とか風華の方が戦闘慣れしてるだろ…?」
「…あの2人はちょっと変な奴らにゃからダメなのにゃ」
「まぁそりゃそっか」
今ごろ勇と風華はくしゃみをしてるだろう。
「てか俺なんも知らないんだけど…」
「なんかのオフ会なのか?」
「はぁ…あんたは本当にバカにゃね…」
バカと言われてキレない男はいないはず!
だがモカの今日のビジュは完璧に近い…!
黒髪ロングでカチューシャをしている…あと今日は黒いショートパンツを履いていてかなり可愛い。美形が際立つ。
「紅恋って奴を倒すんだにゃ!」
「あ〜なんか勇と風華がそいつについて話してたわ」
「にゃっ!?そうにゃのかにゃ?」
「なんか強いらしい」
「あ…浅すぎるにゃ…」
適当な話をしていると…
目の前から赤髪の男がやってくる。
「にゃ!健一さんにゃん!」
「だ…誰?」
「私らを雇ってくれている警察官の方にゃ!」
「え…モカちゃんって学生じゃないの?」
「学生にゃけど…警察官手伝いもしているんだけどにゃ」
「月どんくらい稼げんだ…?」
「仕事にもよるにゃけど…」
モカは首を傾げながら考えている。
これを天然でやってしまうのだから…本当にモテる女の子ってのは怖い。
「人助けとかだと数千円にゃけど…」
「海熊とか手強い敵ににゃると数十万は貰えるにゃ」
「あ…あれ?モカちゃんたち海熊の時なんかしてた…?」
「…私海熊と会ったにゃ!」
「…」
つまりなにもしてないという事だが…
こんな可愛い言い訳されちゃったら許すしかない。モカも珍しく口角ぶち上げ状態だ。…作られた表情なのだが…天然を超えるほどの顔面パワーを持っている。
「ていうか…警察って能力者のこと把握してたんだなぁ…」
「まぁ表立ってはやってないがな」
せっかく視界の全てにモカの欠点一つ無い綺麗な顔が溢れていたのに…イカつい系の赤髪の男が視界を占領する。…確かに健一っぽい顔をしている。
「…ここでアピールすれば稼げるッ!」
「お小遣い1万円生活からの脱却…ッ!」
「お…俺強いですよ!」
「お前が強かろうと…俺はお前を雇わないぞ」
「え!?何でだよ!俺一応能力者としてここにいるんだろ!?」
「だって…」
「だって…?」
「お前は俺の娘の集合写真に写ってたからな…ッ!」
「娘…?」
「山下舞…それが俺の娘だ…」
「いやウソつけぇ!」
「舞はもっとぷりぷりなプリンセス感ある顔面しとるやろがーい!」
「こんなゴリラみたいな男…!」
「は…ッ!」
気づいていなかったが…
赤髪の男…ではなくって舞の父に肩を掴まれてしまっている。…遥真からしたら驚きだろう。だって自分よりも身長の高い人が目の前にいるんだもの…
しかもだいぶ力が入っていて、舞の父の腕は血管がバキバキに出てしまっている。
「痛い痛い痛いッ!」
「…お前はあの女みたいな男と…ヒョロヒョロの男よりはマシだが…」
「な…なんか顔が気に入らんッ!」
「だからウチの舞には絶対に近づくなッ!」
「健一さんにゃん…?」
モカはツンツンと舞の父の背中を突く。
まぁ舞の父というのはあれだから…健一と呼ぶことにするが…
健一は眉を顰めながらモカを見つめる。
…だがモカの顔を見た健一は静かに頷く。
体のデカい健一の横からモカの顔を見てみると…モカのその表情は抱きしめたくなるほど恐怖に歪んでいた。
「…紅恋がやってきたようだ」
「お前ら配置につけッ!」
健一は指だけで警察に指示を飛ばす。
多分この中にも能力者がいるんだろう…みんな凛々しい表情のまま体形を組む。
日陰の隅でスマホゲームをしていた翔と虎之助はあくびをしながら立ち上がる。
「モカ…お前も配置につけ」
「はいにゃ…」
「お前の危機管理能力は俺らの組織の要だ」
「倒れてもらっては困る」
モカは頭を抑えながら歩き出す。
…モカは今にも倒れそうで遥真は自然と足が動き出してしまう。気づいても止めようとは思わない。
「にゃんにゃんは弱みを見せちゃダメだゾ」
「…んにゃ?」
モカは揺れる瞳の中で…
真っ直ぐに前を向いている遥真がいた。
「でも私がいにゃいと…」
「俺の能力にも危機管理能力がついているやつがあるんだゾ!」
「にゃっ…!」
「私の専売特許じゃにゃいのにゃぁ…?」
「モカちゃんには可愛いその猫耳も尻尾もあるにゃよ〜」
「バカにするにゃ!」
モカは不服そうな顔をするが…
遥真に別に危害を加えるわけではなく、ただ弱々しく尻尾を揺らしたり…遥真の腕に額をくっつけたりしている。多分ちょっとでも体を冷やしておきたいんだろう。
「俺の白虎があれば…!」
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能力説明サイト[四聖獣・白虎の強点]
その1,四聖獣の中で一番の俊足を持つぞ!人の目から見たら瞬間移動のように見えるけど!実際はちゃんと移動しているんだぞ!
その2,残念ながら白虎の攻撃力は四聖獣の中では最弱…だが!ここからが強点!
攻撃力が抑えめな分攻撃量で補うんだぞ!
そして一部硬化もできるから…!実は相当な攻撃力を持っている!
その3,白虎は虎…つまりネコ科の動物。
だから強力な危機管理能力を持っているぞ!
数キロ先の殺気まで分かってしまう!
でもその代わりに体調がかなり悪くなってしまう…!
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「ずるいにゃぁ…」
「私の猫の能力が霞んじゃうにゃよ…!」
「モカちゃんの能力説明サイトにはなんて書いてあるんだ?」
「…にゃぁ?」
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能力説明サイト[ニャンコの強点]
その1,猫の状態になったら…耳が良くなって!さらに跳躍力が常人の5倍になるにゃぞ〜!
その2,猫になることで強い警戒心を持つぞ!能力者や相手の殺気を読めるほどの警戒心になるぞ!にゃ〜!
その3,爪が鋭く伸びて!体に柔軟さが宿るぞ!だから空中でも体を捻ったりもできちゃうんだぞ!あとあと!
…ここだけの話!足に力を入れることによって爆発力を得れるぞ!だからそれなりの破壊力も持っている。
その4,見た目が可愛くなる。
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「…モカちゃんくらいのビジュならその4が一番強いよな」
「ビジュ…?」
「まぁとりあえずモカちゃんは俺の後ろにいなされよ」
「舞の父さん!」
「俺でもいいでしょ〜!」
「…仕方ない…」
「じゃあ紅恋はどこにいるか教えてくれ〜!」
「は〜い!」
叫びながら会話をしている。
小学生時代を思い出す…廊下で恥も知らずに大きな声で会話をしていた頃。声が高かったから余計に響いて…大人からしたら鬱陶しかっただろう。
でも今は声も低くなってて…声が通りづらくなってしまっている。全く歳をとるというのは嫌だ。…まぁまだ高校生なのだが。
「よし…!」
「憑依…白虎ッ!」
遥真の体は白いオーラに包まれる。
多分これが白虎のオーラなのだろう。白い…というより透明に近い白をしている。
「んで…多分目を瞑ったら見えるはず…!」
目を閉じてみると…
ここら辺一帯の街並みが現れる。
…体育館には二つだけ赤い光がある。多分これ勇と風華だろう…そしてその赤い光がが能力者の証なんだろう。遥真の後ろのモカにも…翔にも虎之助にも…etc赤い光がついている人が沢山いる。
あと勇とかの隣には青い光がピカピカしている。多分これは勇とかと仲がいい霊愛だろう。
天使の証がこの青い光なんだろう。
…そして天井にはもう一つ青い光がある。
天井に青い光…ッ!?
「上だッ!」
「上?」
「体育館の上に紅恋がいるぞッ!」
「何ッ!?」
紅恋は揺れる青黒い髪の毛を靡かせる。
もうすでに颯に取り憑いてから3週間ほど経っているために…もう颯の外見は原型をとどめていない。
もうすでに怪物と化していた。
「…人間は脆い…ッ!」
紅恋は腕を振り上げるッ!
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