14-1 hallelujah
あの紅恋によって起こされた事件から2週間が経った。
学生の本分は戦闘…などでは無く学業でしかない。
もちろん夏休みの課題が終わってない勇と風華は夏休みの課題をやっている。現在8月20日。
「はい勇ちゃん風華ちゃんこれジュースだからいっぱい飲んでね」
この綺麗な人は…勇の母親ではない。
勇の母親はもっと茶髪でボブのヤンキー系の顔をしている。…まぁメイクをすればギリ美人だ。
…対してこの綺麗な人は黒髪のロング…それに少し巻いた髪の毛。少しのシワなんて目立たないくらいには美人だ。このシンプルなジーンズでさえも美人さを際立たせる。
「ママ!勝手に舞の部屋入っちゃダメだよ!」
「あぁごめんなさいね舞ちゃん」
…今現在この2人+霊愛は何故か舞の家に泊めてもらっている。あの事件からずーっと舞の家に泊めさせてもらっている。
同じ屋根の下…ムフフな展開が…!
なんてのは無くって…部屋を貸してもらっているだけだからたまにこうして舞の顔を拝むくらいしか娯楽がない。
舞の家は和風でかなり広い。畳の良い匂いが家中に広がっている。
玄関から見て右側にリビングがあって…その奥にはキッチンがある。もっと右側にはトイレと風呂場がある。風呂場はかなり広いし…ここだけ洋風だ。
そして玄関から見て左側には四つの大きな部屋があって…一番玄関に近い所には…特に何もない。その左隣の部屋には仏壇がある。
そしてその奥の部屋に…現在勇たちがいる。
その隣には舞の父親の仕事部屋がある。
この四つの部屋は襖で仕切られている。…だから変なことをしようものなら…リスクも伴ってしまうのだ。ただでさえ舞の父親は怖いのに…変な気すら起こせない。
この家には階段が二つあって…玄関に近い方の階段を上がると舞の両親のイチャイチャ部屋と、舞の母親の個人の部屋がある。
そして…鬼門のキッチン付近にある階段。
そこを登ると舞と…舞の弟の部屋があるらしい。リビングの真上が舞の部屋らしい。
ここの二つの部屋はリフォームされてるらしくって…和風の部屋じゃ無くって洋風の部屋だ。
舞の部屋と舞の弟の部屋はちゃんと壁で仕切られている。
舞の部屋を見てみたいが…見たら最後…舞の父親に殺される事はほぼ確定だろう。
「ま…舞ちゃん!」
舞の母親はテンションぶち上げ気味に頬を染めている舞のことを部屋の外へ連れ出す。
…なんか仲の良い親子を見ていたらほっこりしてしまう。…幸せとはこういうことも言うんだろう。
「あの可愛い子が風華ちゃんなのっ!?」
襖越しだから普通に声が聞こえる。
「そ…そうっ!」
「あらぁ…良い子そうな子だねぇ〜!」
「ママぁ!声大きいよっ!」
「今日お父さんがいるんだから…!」
舞の父親は警察で警視って役職らしい。
よく分からないが…平均的な出世具合っぽい。
さっき風華が慌てながら調べていた。
でも…上からも下からもかなり信頼されているようで…休みの日にも関わらず仕事を任されている。これは素直にすごい。
「…ほらほら舞ちゃん!風華ちゃん困ってるから勉強教えてきてあげなさい!」
「う…うんっ!分かったぁ!」
舞の母親に背中を押された舞ちゃんは風華と勇の目の前に現れる。…アワアワしててかなり可愛い。
だがすぐにどこからかメガネを取り出して…スチャ…っとメガネを掛ける。…メガネを掛けるだけで舞の顔がかなり美人に思える。メガネパワーと舞の顔面の強さがかなり窺える。
「ふ!風華くん!」
「まっ!舞せんせいですっ!」
相当恥ずかしいのか顔が真っ赤になっている。
…風華も相当顔が真っ赤になっているはず。
だが風華の顔面はその真逆で…ブルーベリー色に顔が染まっていた。
「…むぅっ!」
「舞のメガネ姿がそんなに気持ち悪いのっ!?風華くん!」
「もういいもんっ!」
舞はメガネを外して頬を膨らます。
また舞と風華のイチャコラからの喧嘩か…
もうこれには慣れてしまった。…風華もそろそろ舞がぷくぷく天使だって気づいてほしい。
…達観している勇。
だが勇の真後ろの襖がガーッ!と音を立てながら開く。…この部屋のすぐ隣の部屋は舞の父親の部屋。…勇の顔と風華の顔が一気に真っ青に変わる。
「舞の怒った声が聞こえたぞッ!?」
「ま!まさかあの男に変なことをされたんじゃッ!」
「そ!それは許せんッ!」
「俺の舞にはまだ純朴でいさせなくてはならないッ!」
「俺の舞は未だに少女漫画にふわぁ〜!って言いながら見てもらいたいんだァァッ!」
「パパぁっ!?それ言っちゃダメだよっ!」
「風華くんのイメージだと…舞は大人なお姉さんなんだからっ!」
熱くなってしまっている親子。
風華は舞の言葉を否定しているのだろう…ブンブンと首を横に振っている。だがそれに気づいていない舞。…かわいい。
「あ!あと風華くんはそんなえっちな人じゃないもんっ!」
「じゃあなんでさっき怒った声を…?」
あんなに話していた舞は急にシュンとなる。
困ったような顔をしてキョロキョロとわざとらしく風華の顔と自分の父親の顔を見比べている。
「ちょっとあなた!」
…あの美人な舞の母親の声。
こんな怖めの声も出せるのだなぁ…。
「舞ちゃんが困ってるでしょ!」
「で…でも気になって…」
あんなに身長がある大男が…風華とおんなじくらいの身長の自分の妻を前にして縮こまっている。今度何かあったら舞の母親の後ろに隠れようと思う。妻の尻に敷かれるタイプの父親。すなわち良い父親っていうことだ。
「あ…あなた…私との思い出を忘れたのですか…?」
「おモテだったあなたを落とすために私がやった技の…」
「怒って気を引く!をやっているんです!」
「だから黙ってそっとしておくのが…」
「…む…むぅぅぅっ!」
突然ほっぺを真っ赤にしながら呻き声をあげる舞ちゃん。口に空気を溜めて目を瞑っているからか…心なしか団子みたいに見える。良い意味だ。
「ママもパパも嫌いだもんっ!」
「そ…そんなぁぁ…!」
「私にその技教えてって聞いてきたのに…」
「あわわぁぁっ!言っちゃダメなのぅ!」
「…うちの娘可愛いすぎるわね…」
幸せすぎる山下家。
ほっこりはしないものの…楽しそうだなぁっとは思う。
「とりあえず!もう出て行ってね!」
舞は父と母の背中を押して部屋から追い出す。
母親の方は娘の可愛さにホワホワしていて…父親の方は風華を睨みつけながら部屋から追い出された。
「…で!風華くん何か分からないところあった?」
今度はメガネをつけずに風華の隣に座る舞。
今の舞は完全に部屋着…!薄い半袖短パン…少し間違えれば胸が見えそうなくらいにはラフ!
近づく舞の顔から15cmくらい顔を離す。
勇は出来もしない課題を真剣な目で見つめている。ちゃんと見つめているだけだ。シャーペンすら持っていない。
「…風華くん?」
首を傾げる舞…顔を背ける風華…。
舞は多分アホの子なのかもしれない。服の上から普通に胸が見えちゃいそうになっている。
「舞のこと無視するの…?」
うるうるお目目で風華を見つめる舞。これはズルすぎる。去勢している男でさえも振り向くようなあざとさを持っている。
「舞さん…!」
「ひゃっ…!?」
突然舞の肩を掴んで目と目を合わせる風華。
「舞さんは…」
「も…もうちょっと自分の可愛さを…分かってほしいなぁ…」
「そうじゃないと…こっちの気が持たないっていうか…」
「…だ!ダメぇっ!」
「そんなこと言われたら舞照れちゃうよぉ…」
「…」
なんでこれで付き合っていないんだろう。
もう普通に街中にいるバカップルを超えてしまっている。…でも風華も可愛い顔してるからなんか不快感がない。風華が俳優並みのイケメンなら多分今頃縁切っていた。
ピコンっ!
2人のイチャイチャの雰囲気を遮るように、舞のスマホが音を鳴らす。
我を取り戻した舞は急いでそのスマホを取る。
「…あっ!もうすぐ杏ちゃんと玲那ちゃん来るって!」
「え…?」
「あ!2人には言ってなかったけど!今日は杏ちゃんと玲那ちゃんもお泊まりに来るんだよ!」
「みんなでお泊まり会楽しみだねっ!」
「私も服着替えなきゃっ!」
満面の笑みで自分の部屋に走っていく舞。
…勇の顔は徐々に青ざめていく。
「マジか…」
「どうしたの?」
「あ…杏と仲直りするチャンスが…!」
「まさか舞ん家でやってくるとは…!」
「家では全く話せなかったけど…!こっちでは…!良い風に話してやるッ!」
「…?勇って杏の家に行くくらい仲良いの?」
「何言ってんだ?」
「俺と杏は一緒に暮らし…」
「あ…」
「え?」
忘れているかも知れないが…
杏は今勝俣家に居候として住んでいる。悪い意味での居候じゃない。
…だがこのことは杏と相談して誰にも言わないことにしていた。…もちろん風華にも言っていない。
風華の頭には今ハテナマークが大量発生している事だろう。めちゃくちゃ目が大きくなっている。
「え?どうゆう事?」
「…ま…まさか同棲!?」
「い!いや!そんなんじゃない!」
「あ…杏はヴォアのせいで両親が亡くなったから…」
「今は俺の家に住んでるんだよ」
「えぇッ…!?」
「で…でもなんか点と点が繋がったかも」
「最初に勇が振られたクセに…なんか逆に仲良くなってたし…!」
「なるほどぉ…」
「ほ…!他の人には絶対に言うなよッ!?」
「だ!大丈夫!多分言わないッ!」
風華はこう言う時はちゃんと何も言わない。
でもたまに口を滑らすが…下手くそな嘘を重ねて誤魔化すから…多分大丈夫だろう。
…ガラガラと突然襖が開く。
押し入れから霊愛が顔を覗かせる。
某四次元のたぬき型ロボットのように霊愛は押し入れに寝ている。
霊愛の顔は…性格が悪そうにニヤニヤしている。…勇は嫌なことを察してしまう。
「勇…俺ラーメンってやつ食べたい」
「…俺の奢りか?」
「?それ以外にあるか?」
嫌なやつに聞かれてしまった。…まぁ自分が口を滑らせたのが一番悪いのだが…
「…あ!そうだフロルさんがやってるラーメン屋行こうよ!」
「あ〜あそこの商店街今日から再開したのか」
「…杏たちと一緒に行こ!」
「…そうだな…!杏と霊愛には奢ろ…」
そうしてしばらくすると…
「舞ちゃむ〜」
「きゃっきゃっきゃっ!杏ちゃん久しぶり〜」
お猿さんみたいな舞でもかわいい。
「玲那ちゃんも久しぶり〜!」
舞は杏に抱きつく。
玲那もその2人を抱きしめる。
…その様子を見ている男性陣。
日中は襖を全部開けているから…この奥の部屋からでも玄関が見えるのだ!
久しぶりに見た杏は少し髪の毛が伸びていて…首元まで髪の毛が伸びている。
「…可愛いな」
「この光景…ずっと見てられるな…」
「あっ!風華〜久しぶりだね〜!」
…多分だが杏は勇をいないものとしているんだろう。目と目が合ったのに勇ではなくその後ろにいる風華に話しかけている。
でも目と目が合ってめちゃくちゃ笑顔だから…それだけで僕のすべてなのさ〜
「そのままじゃ暑いでしょ?」
「ウチが髪の毛結んであげるよっ!」
「お邪魔しまーす」
トコトコとこちら…ではなく後ろの風華に走って向かってくる杏。
でもこっちに向かってくる気がして…ドキドキしてしまうッ!
ドカンッ!
普通に杏に跳ね飛ばされてしまった。
その飛ばされる瞬間ちゃんと目と目が合っていたから…間違えたなんて事はないと思う。
杏は謝りもせずに風華の髪の毛を結んでいる。
…その様子を舞と玲那に見られていた。恥ずかしい。
「こ…こんな露骨に嫌われてる人初めて見た」
「…杏ちゃんと勇くんって混ぜるな危険だったの!?」
…流石に恥ずかしさと共に怒りも湧いてくる。
もちろん杏にだ!男として…こんなに舐められているのは流石にムカついてしまうのだ!
恥ずかしさ7割…怒り3割!普段温厚っていうか…臆病者な勇にしては珍しい。
勇は立ち上がって髪の毛を結ぶ杏の肩を掴む。
「ちょ…!ちょっと!」
「俺が何したって言うんだよッ!」
「は〜風華〜最近ね〜」
「自分から告白してこようとしたクセに別の女とキスしたクッソ男がいたんだよ〜」
「普通にありえなくな〜い?」
「う…うんそうだね」
「よし!できたから一緒に行こうね〜」
髪の毛を結び終えた杏は風華の手を掴んで玄関の方へトコトコと歩いていく。
2人の肩と肩がぶつかっていて…親友の風華とはいえなかなかにむかついてしまう。
それはあの女の子のおチビちゃん…ではなくて舞もおんなじようで…風華に嫌悪の目を向けている。
ちなみに杏の肩に触れていた勇はというと…
「何してるんだ?お前」
「あ…杏って合気道してたのか…?」
肩を掴んだ瞬間にその場に倒されていた。
ぐぅ〜!
えげつないほど大きなお腹の音が玄関に響く。
…誰だ?と確認なんてせずともわかる。
だって舞が顔を真っ赤にしてお腹を抑えているんだもん。
「私お腹すいちゃった…」
「じゃ!じゃあ!一緒にラーメン食べに行かない?」
「お!おばか!!」
「初デートでラーメン食べにいく男の子はモテないよ!」
「ち!違うよッ!」
「杏と玲那さんも一緒に行こうよ!」
フリフリと一つ結びを揺らしながら跳ねる風華。これ一つ結びだからまだあどけない中学生くらいの可愛さがある。
杏と玲那は体を擦り合わせながら悶える。
「し…仕方ない…」
「こんな可愛い風華に見られたらなら応えるしかない…っ!くぅ…」
「この子本当に男なのか疑っちゃう…」
「ま…舞さんはどう?」
「…舞チャーハン好きだからチャーハンも食べたいなぁ」
「大丈夫だよ!そこのお店チャーハンも美味しいんだって!」
「や!やったぁっ!舞いっぱい食べる!」
「大盛チャーシューメンに…チャーハンに餃子…お腹また鳴っちゃう〜っ!」
「そ…それ1人で食べるの…?」
「???」
風華に変なことを言われて困惑してしまっている舞。舞がこれくらい食べれない訳がない。
風華は舞のぷっくらしたお腹を見て納得する。
「早く行こっ!舞お腹減って倒れちゃうっ!」
「うん行こっか」
風華はハイテンションなロリ舞に苦笑する。
またしても杏と玲那は風華だけに見せる「舞」って言葉に悶え苦しんでしまう。
風華と舞を先頭にあの事件のあった商店街のラーメン屋へと向かう。
その後ろに杏と玲那…そしてまたその後ろに霊愛と勇が歩いて行く。
…なんかその後にも玄関から出てくる音が聞こえたが…おそらくきっと多分気のせいだと思う。
次の投稿は水曜日です。
長過ぎたので14話に変えました




