13-3 kiss me
だがしばらく経っても…
風華の唇は舞に触れる事はない。
舞は緊張しながらゆっくりと目を開く。
…するとそこにはジーッと舞の顔を見ている風華がいた。相変わらず…女の子のように綺麗で…やっぱり顔面は別格だと思い知らされる。
顔も近くて…風華と舞の2人は顔が赤くなっていく。…その姿はあまりにも尊くて…勇も霊愛は思わず見入ってしまう。
こいつら2人だけ恋愛漫画をしている。
「…風華くん」
「…?」
「き…キスしないの…?」
「大丈夫…」
風華は舞の肩に手を置いて顔を近づける。
舞は慌てて目を閉じて少し顔を上に向ける。
…舞のあまりの可愛さに風華は思わず息を呑んでしまうが…理性を捨てないように舞の顔に近いていく。
「まっ…まだ?」
「舞も恥ずかしいの…っ」
「もう大丈夫…」
「能力…解除…」
舞の手足の手錠がガチャ…と音を鳴らしながら取れる。そして少し上の方に縛り付けられていた舞は、フワッと落ち風華の体に委ねる形となって…
風華と舞は抱き合う形になった。
その尊い姿に霊愛はメモをとってしまう。
ロミオとジュリエット(成功例)の様だ。
舞は風華との近すぎる顔に驚きながら…風華の唇をずっーと見つめている。
「…あ…あれ風華くん…」
「唇が…寂しいよ…?」
「え…?大丈夫だよ?キスしないから…」
「…あっ」
「…しょ…しょかしょか…しょうだもんね」
「ファーストキッスは…大事だもんね」
「ちゅ…チュウはえっちなことだから…みんなに見せちゃダメだもんね…うんうんっ」
「…?」
首を傾げる風華に…舞は頬を赤らめる。
そして抱き合っていることに気づいて…下を見てみると上目遣いの舞と共に、風華の大胸筋に舞のお胸が当たっていることに気づく。
風華は慌てて舞の体から離れる。
また舞に変態呼ばわりされてしまう…
だが舞は眉を顰め少し口を尖らせる。
「ご…ごめん…!」
「…う…うん…だ…大丈夫」
「良かった…」
「ふ…風華くんは舞とキス…やなの?」
「…だって舞さん俺に近づくなって…」
「あ…!そうだった!」
「…あの人は取り憑いた人の恋愛感情を利用して強くなるのっ!」
「だから近づくなって…!だから舞は風華くんの事嫌いじゃないし…」
「…なんだ…良かった」
風華は「ふぅ…」と一息を吐くが…
トンッ…と風華の両肩に左右非対称大きさの違う手が置かれる。
風華は恐る恐るその後ろの方を振り向く。
ゆっくりと…ゆっくりと…振り返ると…
そこにはおでこに怒りマークがついている霊愛と勇がいた。
「あ…あれ?まさか強くなっちゃってる…?」
「な…な訳ないか…!」
「舞さんとキスもしてないし…ちょっと触れちゃっただけだからセーフなはず…」
「…ちなみに…俺らから見たら完全にイチャイチャしていたとは言っておく…」
「…ま…舞たち!変な事してないよっ」
「あ…その一人称舞も…かなりアウトよりだから…」
「だ…!大丈夫っ!大丈夫だと思うもんっ!」
「ねっ?風華くん?」
上目遣い&首傾げ&キラキラお目目で風華をみる舞。…もう禍々しいオーラが部屋中に溢れてしまっているが…もうどこまで行けるかの方が気になり、勇は呆れた様な目で2人をみる。
ていうかこの状況でまだ舞と風華の体は近いのだから…これはイチャイチャをしようとしているようにしか見えない。
「あ…それもかなりアウトかも…」
「…えっ!?なんでなんでなの?風華くん」
「そ…それはま…!舞さんが…」
「むぅ…舞が悪いのぉ?」
「あ…それアウト…そろそろわかってくれ2人とも…」
「全く…天然2人が居ると困るなぁ…」
…勇の肩はトントンと二回だけ叩かれる。
霊愛は無関係を気取って勇から目線を外している。風華は舞に問い詰められている様で…ぷっくりほっぺな舞とてんやわんや風華。
またいつもの無意識なイチャイチャか…とため息を吐く。
「…早く後ろを向け男」
紅恋の声…っていうか取り憑かれた颯の声が後ろから聞こえる。…また面倒ごとを押し付けられてしまうのか…とため息をついてしまう。
勇はゆっくりと後ろを振り返る。
「…ッ!?」
颯の姿は…普段を知っている人からすれば…月とスッポンくらいの差があるほど、見た目が変化していた。
その容姿はイケメンな颯とは真逆の、尖り横に大きくなった目…体の色は真っ赤に変色していた。
…頭からはコブが出来ていて…口には大きな牙ができている。よく昔話や、怖い話に登場する様な赤い鬼が…そこにはいた。
体も地面が割れている様にひび割れている部分があって…そこからは真っ赤な血が流れている。
およそ人間とは思えない様な見た目に、勇は思わず腰を抜かしてしまう。
「…颯ッ!?」
「フハハハハハッ!」
「この力…どんどん溢れてくるぞ」
「私の人間への復讐の…」
「始まりだァァッ!」
およそ颯の声とは思えないほどのしゃがれた声。…その声はこの地域一帯を揺らした。
パリンッッ!
声の籠った颯の部屋の窓が割れ…
外の木々は動揺を隠せないようで、木の葉を落としながら揺れている。
風華は舞の耳を抑えて紅恋を睨むが…そのあまりの音圧に動く事は叶わない。
「地獄に…還してやる…」
「ま…待てッ!」
紅恋は窓枠に手を置いて街に飛び立つ。
未だ残り続ける不快な反響音。
霊愛も勇も耳を抑えることをしかできず…
その飛び立った紅恋の背中を見送る事しかできない。
「…ッ!」
それから数分が経った…
あの紅恋の叫び声は少しだけ部屋に残るくらいで…もう耳を抑えずとも耐えれるほどになっていた。
街は嵐でも来たかのように阿鼻叫喚に包まれていて…部屋の中の男3人は冷や汗を流す。
舞も申し訳なさそうに風華から離れて俯いている。
「どこに行っちゃったのかな…」
「…あ…あの人!人間に復讐したいっ!って言ってた…」
「…姉さんは人一倍人間への恨みを抱いている…」
「なぁ…前々から気になっていたんだけどさ…」
「なんで霊愛は人間と仲良くしてて…その霊愛の姉さんは人間が嫌いなんだ?」
「…俺と姉さんは人間に父と母を殺された」
「そして姉さんは父と母が殺されるところを目の前で見てしまったんだ…」
「…」
その言葉に霊愛以外の3人は押し黙る。
「…父は目の前で人間に撲殺され」
「…母は拷問と陵辱の末に殺された」
「その姿を姉さんは偶然見てしまったんだ」
霊愛は少し声のトーンを落としながら話を続ける。
…その映像を想像するだけで涙が出そうで…声を出そうにも喉につっかえてしまっている。
「…そこからだな…姉さんが壊れたようになってしまったのは…」
「…四界大戦のせいで…あんなに優しかった姉が消えてしまった…」
霊愛は多くは語ろうとせずに下を向く。
風華は颯のベットに座りため息を吐く。
「…俺らがやろうとしてるのは正しいのかな」
「霊愛の姉さんがやろうとしているのはただの復讐だ…」
「復讐は復讐しか生まない…とは言われているが…」
「復讐をしなければ気は済むことはない…」
「天使と人間とそれは一緒なのかもな…」
完全に意気消沈してしまった男3人。
…だがしかし舞だけは怒ったように眉を顰めていた。
「…でも私はおかしいと思うよ」
久しぶりに聞いた舞の怒った声。普段の高く愛くるしい声からは想像できないほど低めな声だ。
「だってその四界大戦に颯くんは関係ないじゃん…!」
「他の人たちもその時代には生きてなかったはずでしょ?」
「…なのに無差別に人が襲われるなんておかしいよ」
「確かに昔の事を大事にするのは…間違えじゃないと思う」
「でも…それを今に持ってくるのは違うと思うの…っ!」
「…」
その言葉に男3人はしんみりと頷く。
ベッドに座っていた風華も静かに立ち上がって、言いたい事が終わってアワアワし出した舞の元へと向かう。
霊愛と勇も何か準備体操をしているようだ。
「…!ごめんね!」
「私何もできないくせに…変な事ばっかり言っちゃって…」
「ううん…変な事じゃないよ」
「え?」
「舞さんありがとうね」
「ひゃ…ひゃい…」
笑顔を見せる風華と…その笑顔を見て頬を赤らめる舞。舞のこの感じがモテモテ要素の一つなんだろう。全部表情に出てしまっちゃうところが圧倒的に可愛い。あの面食いの霊愛もほっこりしてしまっている。
「よしじゃあ行くか…」
「姉さんは人が多い通りにいるはずだ」
「…じゃあここら辺ならあの商店街か」
「…舞さんは待っててね」
「いやっ!」
「え?」
「…風華くん…私も連れてってほしい」
「え…?」
「…私も連れてってほしいの!」
「えっとそれは」
「…はいっ!四の五の言わないでっ!」
舞は風華の背中に飛び乗る。
風華は一瞬、顔が歪むが…流石に舞に悲しい顔をさせまいと踏ん張って耐え切る。
ムニュ…と背中に当たる舞の胸を見た霊愛は風華を羨んで見ている。本当にデカい胸だ。
舞の息遣いが耳元に触れる。
多分少し横を見てしまったら舞と顔がくっついちゃうくらいに近くに舞は居ると思う。
「…それじゃあ行こうッ!」
「てかこの巨乳娘は誰が守るんだ?」
「あ…大丈夫…舞は俺らの10倍強いから」
「わ!私か弱い乙女だよぉ…!」
「ねぇ風華くん…!」
「え…えぇっと…」
「ね?風華くん?」
今現在風華は舞に背後を取られてしまっている。…しかもおんぶの体制だから下手な事したら締め殺されてしまう。ほとんどアナコンダ。でもビジュが可愛すぎる天使のようなアナコンダ。
「舞さんは俺が守ります…」
「ありがとうぉ…」
「は…はい…」
風華の目は今見えてはいないが…
多分目がうるうるしている事は確かだ。
一方その頃商店街では…
「キャー!!」
「あなたっ!」
血に溢れている商店街。
「…もっとだ…もっと殺してやる…」
「…んっ?なんだこの殺気…」
「天使っていうのはこんなに暴れ回るんだコロねぇ…」
「…?お前は…確かフロルか…」
「まさかお前も人間の味方をするのか?」
「…私はあくまで宇宙側の者だコロ…」
「関わる気は無かったコロが…」
「ここで暴れ回るのは…私が許さないコロ…ッ!」
その瞬間一気にフロルの殺気が上がるッ!
「…どうせお前ら宇宙の者とも戦うつもりだった…」
「ちょうどいい…殺してやる…っ!」
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