12-2 BABY BABY
食べ終わった2人はまたショッピングモールに戻ってきていた。やっぱりショッピングモールの近くには何もない。
「お腹いっぱいにゃ…」
「凄い食べてたもんな」
こんなほっそいほっそい体なのに…遥真とおんなじくらいの量をモカも食べていた。
舞はどこにその食べたものがいくのかは大体は予想がつく、9割胸で1割がお腹だ。
でもモカだけは本当に分からない。シュッてスタイリッシュでぴちぴちの全身タイツすらも似合いそうなくらいのスタイルしてる。服の上からだが胸も控えめだし…
「何みてるにゃっ…?」
しまった。思わず全身をじーっと見てしまった。…正直あまりにも綺麗で見惚れてしまっていた。
「い…いや…猫耳引っ込まないなぁって思ってたんだゾッ!」
「別に細いなぁ…なんて思ってないゾ!」
「…あんたにゃぁ!」
「…ぐぬぬぅ」
モカは爪が伸びて暴走しそうな腕を抑える。
流石に傷つけたくないんだろう。それかそろそろ慰謝料請求されるのが怖いのか…。
でもモカなりの優しさだと受け取っておきたい。
「なんかあんたと居ると…猫耳も猫のヒゲも…猫の尻尾も消えないのにゃっ!」
「…別にあんたの事を警戒も何もしてにゃいのに…」
「この状態の時はマスクと帽子と尻尾を隠すためにブカブカの服を着なきゃいけないのにゃ…」
「ほ〜ん」
あまりにも興味のなさそうな返事。
遥真は頭の上で腕を組んで歩いていく。
その態度にムカついたのか…モカは尖った人差し指を背中にブッ刺す。
「アガッ!?」
「もっと興味を持つんだにゃっ!」
「いや…モカちゃんはファッションとか興味無いタイプだろ」
「だって今だって私服じゃなくって制服着てるし…どーせ家でもジャージっしょ?」
「わ…!私だってもっとおしゃれもしたいんにゃよ!?」
「ほ〜ん」
「…次は深くブッ刺すにゃよ」
「…ッ!おしゃれすればいいじゃん」
「…だって!私…そんなタイプじゃないじゃにゃい!」
「私服なんて二着しかにゃいし」
「…よし!じゃあ服でも買いに行くか!」
「わ…!分かったにゃんっ!」
…何か大事なことを忘れている気がする。
でもモカと遥真が楽しそうに遊んでるから…それはそれで嬉しい。あとテンションが上がっていて、隠していた尻尾が服から出てぴょこぴょこしている。圧倒的に可愛い。
「ほらこれとか似合うんじゃないか?」
「…これ…!知ってる!知ってるにゃんっ!」
こんな綺麗な容姿してるのに…あからさまにテンションが上がったり姿を見せてくれる。…こんなん惚れてまうやろ!
「パフスリーブってやつにゃん!クラスメートが話してたの聞いたにゃんっ!」
「あ!こっちはフレアスカートってやつにゃんねっ!」
「ちょっとミニスカートにゃけど…」
遥真が手に取ったのは灰色 黒色の小さな四角が、連なっている柄のパフスリーブ。首元のところには手を広げたくらいの大きさの黒のリボンがついてる。
そしてスカートはフレアスカート。黒色のやつで誰が着ても可愛いやつだ。
おそらくクラスに友達も少ないモカは…勉強しながらそういうのに耳を澄ませているんだろうなぁ…なんてことが容易に想像できてしまう。
それで知らない単語があったら家に帰って急いで調べて…納得して…1人で盛り上がって…その日の検索履歴はそれでいっぱいになってるんだろうなぁ…。可愛い…。
美人なくせに可愛い要素…系統で言ったら吉岡里帆とかだろうか…綺麗なのに可愛いってのは…。
「はやくそれ寄越すにゃん」
「あ…悪い…」
…よく考えればこれってデートなのかも知れない。健全なデートだけはこなしてきた遥真。しかも今回は相手が相手だ。
容姿もスタイルもテレビに出ててもおかしくないレベルの美人さんの服を選んでるんだ。
…そう考えてしまうと、考えたくなくても意識はしてしまうもので…。
「…どうにゃ?」
「…うん…いいと思う。」
遥真はモカを直視できずに目を逸らす。
いつものデートのように、ピュアボーイを発動してしまっちゃう可愛い遥真くん。
多分勇とか風華は、遥真がノンデリを発動してそれ以降がない!と思っているんだろうが…むしろ逆だったのだ。
デートを意識してしまうと話せなくなって、普段の遥真を良いなぁ…って思ってる女子は冷めてしまうのだ。
「わぁ…」
「お…!お客様っ!?」
「にゃ…!にゃんですかっ!?」
突然ギャルみたいな容姿の店員に、話しかけられたモカ。思わず尻尾がピンってなってしまう。
その店員の手には沢山の服やズボンが積み重なっている。帽子もあるし。
これら完全な予想でしかないが…あまりのモカの容姿の良さに店員さんのプロ根性が燃え上がってしまったんだろう。
遥真もついウンウン…と頷いてしまう。
だって今まで見たことのある女の子の中で一番綺麗なのだもん。舞や杏とか玲那より…この人たちには顔以外にもまた別の良さもあるから一概にはモカの方が上なんて言えないが…。
「こ!これとっ!これっ!」
「あとこれもっ!是非!着てみてくださいっ!」
半ば無理やり服を押し付けられて、試着室のカーテンを閉め切られたモカ。多分試着室の中のモカは冬場の猫のように固まってるんだろう。
「彼氏さんはここに座っていてください!」
「あ…彼氏じゃないです」
「ただの飼い主です」
「え…」
ただならぬ異質な雰囲気に…店員さんは固まる。…SMプレイの一環だったのか…?と思っているんだろう。
多分モカは純粋だからそう言うことも一切知らない。一生懸命カーテンの向こうでは着替えてるんだろうなぁ…。可愛い。
「あ…嘘です」
そうして…服を着替えては試着室から出てきて、また別の服に着替えては試着室から出て行き…かれこれ数十分経った。
店員もモカも服で盛り上がっていたが…男の遥真にはその良さが分からずに、ただぼーっとスマホをいじっていた。
選ばれたのは店員さんが持ってきた服四着とズボン四着。
そして最初に遥真が選んだ服とスカートだ。
「…え〜と合計3万5000円になります」
「カードでお願いしますにゃ」
3万5000円っ!?と服を親に買ってもらってる遥真は驚きの顔をしている。
服を買うことの少ないモカは平然としている。
この顔で何か察するところがある。
「カード持ってるのか」
「お父様から持たされてるんだにゃ」
「あぁそうね…」
この一言で分かった。
モカは良いところのお嬢様なんだろうなぁって…。多分お母さんは綺麗な人なんだろうなぁ…。
ごく一般的両親中小企業勤めの遥真からしたら…またモカが少し遠い存在に感じてしまう。
「次はどこに行くにゃ?」
この無愛想な言葉遣いと正反対な優しい言葉。
その可笑しさに少し遥真は口角が上がる…。
それを見てモカは汚いものを見る様な顔して先に進んでいく。
「重いでしょ」
「これくらい余裕で持てるにゃ」
「私を舐めるにゃ」
こんな可愛い語尾してるんだから舐めてしまう。でもにゃんにゃん状態じゃない時は結構キツイ口調なんだろう。それはそれで可愛いのかも?
「ていうかさ…」
「何だにゃ?」
「寿苦ってのを追いかけてるんじゃなかったっけ?」
「…!」
モカは両手の紙袋を一つを除いてバッと落としてしまう。徐々に顔を振り向かせるモカの表情は…この世の終わりを感じ取った表情で…汗が流れ出ていた。
「あ!あんたのせいで忘れてたにゃっ!」
「ずっと猫状態にゃったから…寿苦とすれ違っても分からなかったにゃっ!どうしてくれるにゃ!」
「お…俺のせいなのか…」
「責任取って一緒に探せにゃっ!」
「こういうのは探しても見つからないものなんだよ」
「だから適当に歩いていたら…」
「バカっ!」
「寿苦は半径5m以内の生物の寿命を吸い取るんだにゃ…!」
「そしてその吸い取った寿命で能力を作るんだにゃ…」
「…なるほどね」
「ここはショッピングモールだから人の通りが多い…俺らが呑気に遊んでた間に吸われまくってるかも知れないって事ね」
「そうだにゃ…!」
「…こんな重い荷物持ってたら動きづらいにゃ…」
「…ちょっと待ってるにゃっ!1分で帰ってくるにゃっ!」
「あ…はい」
一つの紙袋を持ってさっきの服屋に走って行くモカ。帽子なんてとれてしまっていて猫耳が見える…尻尾もちゃんと見えてしまっている。
そして…1分も経たないうちにモカは走って戻ってくる。
何をしていたのかなんてすぐにわかった。
なぜならモカの服が制服から遥真の選んだ服に変わっているんだもの。
思わず目を逸らしてしまう。
多分今顔が真っ赤だから…見られたくない。
「…何してるんだにゃ?」
モカは無愛想な顔をしながら顔を覗かせてくる。首元の大きなリボンが揺れている。
その眉毛ですら美人に感じてしまう顔にもっと顔が赤くなってしまう。
「あの…その…」
「にゃいっ!」
「…?」
突然目の前にはLINUのと思われるQRコード。
「これ私のLINUにゃ」
「寿苦みたいなやつを見つけたら連絡するにゃよ」
「今の状態の寿苦は…一対一で敵うような相手じゃないにゃ」
「早く登録するにゃ」
「えと寿苦を倒したあとは消した方がいいの…?」
「なんでにゃ?」
「また町中華巡りする時の予定を立てたりするときに…めんどくさいにゃろ?」
「あ…はい…」
「って!こんな話してる間にも寿苦が…っ!」
「あんたは左の方行くにゃ!」
「私は右の方を探すにゃからっ!」
「了解…!」
モカは女の子走りで走り出す。
あんまりショッピングモールを走るのは良くないが…フリフリ揺れている尻尾が可愛いからみんなに許されていた。
取り残された可哀想な紙袋たちはそっと道の端っこにでもおいておく。
「…俺寿苦の見た目なんて知らないからなぁ…」
「…ていうかモカちゃん…ワンチャン俺のこと…?」
「いやないか…コミュ症特有の距離感がバグってるだけだな」
あまりにも悲しい。いつの間にか失恋マスターになった遥真は人の感情を感じ取るのが上手くなっていた。
「…」
「…あれ絶対そうだよな」
遥真の目の前には肌が青い少年がいた。
少年もこちらに気がついたようで…目と目があってしまう。気まずい。
少年の目は二重で…瞳は真っ赤だった。
「確か近づいちゃダメなんだよな」
…確認する方法がない。
天才な遥真くんの頭はフル回転する。
そして一つの答えに辿り着いた。
両手をパーにして、そっから片手の親指を折り曲げる。つまりこれは19だ。
目の前の男の子はコクコクと何回も頷く。
「…モカちゃん…寿苦発見しました」
目の前の少年…いや寿苦は逃げようとせず…
ただずっと遥真と目を合わせていた。
次の投稿は金曜日です。
モカと遥真の年齢を間違えてました!モカちゃんが高校三年生、遥真が高校二年生だった。多分他のところでも間違えてます




