11-4 CANDY
「四界大戦終戦して以来か…お前に会うノは…」
「相変わらずデカいなぁ…有楽…」
「お前もあの頃と比べたら…大きくなったノだよな」
「あ!当たり前だ!何千年…いや1億年くらい前の俺と比べたらそりゃそうだろ!」
推定1億歳。人間でも70〜を超えたら年齢を数えるのがダルくなるのに…1億なんて数えれる訳がなかった。
ツッコむ霊愛なんて初めて見たかも知れない。…あの有楽ってやつ相当やるみたいだ。ボケ力推定74くらい。
「まぁそれは良いとして…霊愛」
「笑伝の命令で俺を捕えに来たノだろ?」
「流石…察しがいいな」
「ふッ…」
「いつまでアイツの元へいるノだ?」
「あの…戦争したがりの神の元に…」
「有楽…お前は笑伝様を勘違いしている」
「…お前くらいなら…神の授業参観"模範囚"くらいにはなれると思うんだが…」
「…お…俺今神の付き人"見習い"なんだけど…」
「あ…」
気まずい空気が生ぬるい風と共に流れる。
この空気何かに似ている…。
あ…そうだこれは確か「何歳だと思いますか?」って聞かれて実年齢の7歳くらい上を言った時の空気に似てる。…まぁほとんどおんなじだけど…。
勇と風華は目を合わせて苦笑する。
「と…とにかく…!俺はお前を捕まえに来たッ!」
「ひゅ〜!霊愛さんかっこいい〜!」
「じゃあ俺たちは観戦って事で…」
「…ッな訳ないだろ!」
「俺が1人で有楽と戦っても勝てる訳ないだろッ!」
「良くて敗北!悪くて生まれ変わりッ!」
「てことで手伝ってくださいッ!」
霊愛は頭を下げた。
サラサラな長めの金髪が首元に垂れる。おじさんが嫉妬して狂いそうになるだろう。霊愛と近しいハゲに笑伝がいたことを思い出した…。
…笑伝の部屋に育毛剤があったんだった。
「まぁ別に良いよね?風華」
「いいけど…あの筋肉マッチョさんどのくらい強いの…?」
「うーん…俺ら3人がカピバラだとしたら…」
「キュルキュル…」
「有楽はアナコンダかな…」
「くぅ…!わ…わかんない!」
「よし…!作戦成功!」
「ひ…!酷いよ!霊愛さん!もっとわかりやすく例えてよ!」
霊愛の腕を掴んで振り回す霊愛。もう我儘な彼女にしか見えない。これを素でやってんだからもう何がなんだか分からない。
LGBTQで言い争うのでは無く!風華について話す時間を国連で用意して欲しい。多分世界平和に近づくと思う。
「…霊愛…その人間は彼女なノか?」
「こいつは立派な男だ」
「…世界というのは多種多様なノだな…」
「コイツがおかしいだけで他のやつらは…」
「ふ…普通?普通と言ったらしばかれるか…」
「いやでも自分を普通だと思ってるなら…しばく事で普通ではないと認めてるんじゃないのか?」
「結局自分が特別だって言いたいのか…?認めさせたいのか…?」
意図せずに多様性の本質をついてしまう霊愛。
このまま行くと霊愛が消されてしまう…!
勇は苦悶の表情を浮かべる。…霊愛の周りには黒サングラスのスーツ姿の人物が幻覚で見える。
勇が変に動揺している事気づいた有楽は動き出す。
ソ…っと腕を真ん前に差し出す。
「夕幻…」
明らかに厨二病ネーム。
そしてその差し出した手の中に渦が巻き…
その"夕幻"であろう武器が現れる。
"夕幻"…どんなマジックのようなファンタジーな武器なのだろう…!と内心期待していた。
…だが目の前の"夕幻"は剣のような見た目をしていて…でも剣の鉄の部分はいわゆる棍棒のようになっていた。それ以外は普通の剣みたいだ。
「分かってないなら教えてやるよ…霊愛…」
「笑伝の元にいたら未来なんて無いって事をな…ッ!」
「と…!とりあえず勇と風華!サポートよろしく!」
「…よし風華…負けそうになったら逃げよう」
「うん…!痛いの嫌だもんね」
「聞こえてるぞ」
「冗談っす…!」
「…行ってもいいノか?」
「こ!来いッ!」
「じゃあ…お言葉に甘えて…ッ!」
有楽は重そうな夕幻を軽々振りかざす。
シュンッ!
「さぁ…」
「死ノうか…ッ!」
ブゥゥンッ!
「ブヘ…ッ!」
振り下ろされた夕幻は霊愛の鼻先を掠める。
鼻先に当たっただけ…なのに霊愛はフラフラとその場を動き回る。フラダンスのようだった。
「うわ…痛そ…」
「まともに当たったら鼻潰れちゃいそう…」
「た…助けろよぉ…ッ!」
「…前々から思ってたが…」
「霊愛…お前には戦闘の才能が全く無いな…」
鋭い眼光で霊愛を睨みつける有楽。
だが霊愛はそんな事どうでも良さそうに慌てている。
「…うわ…鼻血出てきたし…」
実は霊愛の今日の服はシンプルなダルダルの白Tシャツ。ここで鼻血が出てしまう事は、カレーうどんを食べている状態と同じだ。
つまり死。
霊愛はいつか貰ったポケットティッシュを取り出して、ティッシュで鼻を抑える。シミシミになってくるティッシュ…尽きていくポケットティッシュの残量。
有楽…そして勇と風華はそんな霊愛をずっと見ている。
「よし!止まったぞ!」
「…お前はいつもそんななのか?」
「…そういえばコイツらと出会ってから…俺さらに弱くなった気がするな…」
勇と風華を睨みつける霊愛。
…だが2人は知らんぷりをしようとしているのか口笛を吹く。
「ま…まぁいいや!第二ラウンド行くぞ!」
「…ちゃんと手伝わなきゃだね」
「流石にノリが長いか…」
「さぁ…その人間2人もやる気になったようだし…」
「本気で…殺しに行くぞ…」
圧倒的なオーラに3人は気圧される。
…いや3人だけでなく…もう1人有楽も気圧されている。なぜなら…
「アンタらがそこにいると邪魔なんじゃよい…」
多分歴戦の猛者の老婆の声。
この状況で口出せるのは…ただ1人あの団子屋の店長のおばあちゃんだけだった。
辺りを見渡してみると…周りにはスマホを片手に4人を撮影している若者たち。
この団子屋はたしかSNSアプリのオンスタグラム(略:オンスタ)に投稿されてから、老若男女問わず来店するようになった店だ。オンスタ映えも何もないのに味だけでのし上がった団子屋だ。
この店のモットーは「回転命ッ!」
カフェのくせに回転率を大事にしてるくらい変だ。
…回転命…でもこの男4人がいると入ろうにも入れないのだろう。おばあが怒るのもわかる。
「…この5分で5000円の損害じゃ」
「ウキョォォッ!」
突然奇声を上げながら走り出した有楽。
向かってくる有楽…またここで戦うしかないのか!?と身構えるが、有楽は両手を広げながら向かってくる。
久しぶりの家族との再会みたい…感動シーンのようだが有楽の顔面はギャグシーンの顔だ。全く有楽からは敵意を感じられない。
「あっ!待つんじゃ!チャラ男っ!」
請求書を持ちながら走りだしたおばあちゃん。
だが…流石の歴戦の猛者でも年には抗えないというもので…3m走ったところでおばあちゃんは足を止める。
「…こんくらいで勘弁してやろう…ぜぇぜぇ」
憐れむような目でおばあちゃんを見ている若者たち。多分常連客であろうおじいさんは、「お前たちもいずれこうなるんだぞ」と悟った様な目をしている。やっぱり世界は単純で残酷だ。
そしていつの間にか団子屋から500mくらい離れた山奥へと辿り着いた4人は…
「はぁ…はぁ…」
有楽は肩で息をしていて…他3人は何もせずにただその様子を見ているだけだった。
決して有楽の体力がない訳ではない。
他3人が疲れてないのは、3人は有楽に抱きしめられながら山奥に連れて行かれたからだ。
「だ…大丈夫か…?有楽…」
「色々面倒な事に巻き込まれたくないノだろ?」
「それに…俺は人間を殺す気なんて無い…」
「…なぁ霊愛…この人…?この天使っていうのか?」
「俺も有楽も一応天使だ」
「でさあの天使は悪い奴じゃないんじゃないのか?」
「…パッと見はそうでも…神の座を狙おうとしてた極悪人だ…」
「…なるほど」
「これでも人間の考えられないほど生きているんだ…」
「一目で決めるなんてバカがする事だ」
「ふーん…」
ドヤ顔で振り向いてみるものの…あまり反応は良いものではない。むしろ悪い。
風華は興味なさそうにカブトムシ探してる。いつの間にか麦わら帽子と虫取り網も持ってるし。…わんぱくな少女感がある。
「霊愛…お前は俺を少し勘違いしてるノだな…」
「何がだ…?」
「…俺は戦争を止める…ただそれだけだ」
「…それが本当なら行動と言動が矛盾しているぞ」
「逆に聞くが…お前は笑伝を何故信じ切れる?」
その問いに霊愛は視線を逸らし押し黙る。
下っ端でしかない霊愛にだって思うところがあったのだろう。何も話そうとしない。
ちなみに放っておいたら風華が迷子になりそうなので、勇がしっかりと風華の横にいる。2人とも真面目に聞いているようだ。
「笑伝の父…つまり先代の平文様は四界大戦の責任を1人でとって自殺した」
「代々神というのは…先代と一番血が近いものが相続するというのが鉄則なノだ」
「だが…笑伝は平文様の末子…」
「本来ならば平文様の双子の弟の延怒様が継ぐはずだったはずなノだ」
「そして笑伝の兄の相次ぐ死…」
淡々と語っていた有楽の肩が少し震える。
別に今日は寒くない…。むしろ暑いくらいだ。
「俺はあの笑伝の笑った顔が恐ろしいノだ…!」
「…またあの戦争を起こそうと…そう考えている様にしか思えないノだ…!」
「お前や紅恋の家族を奪ったあの戦争を繰り返してもいいノかッ!?」
有楽に強く肩を握られた霊愛。
霊愛は下を向いたまま何も言うことはない。
勇も風華もただならぬ雰囲気にメモをとってしまう。勉強熱心。テストは27点。
「お…俺は…俺は…」
南極にでもいる様に震える霊愛の声。
「…笑伝様を信じる事しかできない」
「また…昔みたいに平和に笑うためには…笑伝様しかできないと…俺は何故かそう感じてしまう…!」
「お前や…!ねぇさんとまた…あの頃の様に笑っていたいんだ…」
血すら混じる様な霊愛の咆哮。
…しかし有楽の表情は一切動くことはない。
「…残念だが俺はもう戻る気はない」
「この地球に来たからには…地球を俺が支配して…笑伝率いる天使たちの精鋭たちを食い止めるだけだ」
「そうか…」
「なら…俺はお前をどんな状態にしても捕える…笑伝様に言われた命をこなすだけだ」
「光蓮…」
下に垂らした霊愛の手の中が光る。
そしてそこからは黄金に輝くファンタジーの武器の様な剣が現れる!これぞ勇と風華が求めていたもの…。
…と感動したが…目を凝らして見ると…それは金箔に覆われていた剣だった。
「ていうか…有楽さん…?も霊愛さんも俺のSOZOの上位互換じゃん…!」
能力?っていうか天界の標準の技能みたいなのが自分の能力の上位互換過ぎて拗ねる風華。まぁでもSOZOは色んなところで便利だ。黒縄なんてついででつけられる能力がメインだし…それに比べればマシだ。
「…勇…風華…手出し無用…」
「俺は有楽と全力でぶつかってこいつを止める…ってあれ!?」
「…もうどっかに逃げた様だな」
「…完全に殺気すらないノだから…本当に逃げたノだろうな…」
「勇にも風華にも舐められてたから…漢の背中見せて見直してもらおうと思ってたのに…」
「…最初に言っておくが…俺はお前を殺すぞ?霊愛…」
「…来いッ!」
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