11-3 es
今現在新潟県。
雪国だから寒いと思ったが…あっつい。
今11時だと言うのに33℃くらいになっている。今この状態でも働いてくれる会社員…そして工場勤務の方々には頭が上がらない。
ここは新潟の田舎の方みたいで平日という事もあってほとんど人がいない。魚沼というところらしい。
「霊愛さん!お腹減りました!」
人は腹が減ったり漏れそうになったり…普段とは違うピンチな状態となると本心が現れるものだ。
ちなみに風華は霊愛に抱きついている。上目遣いで霊愛のイケメンフェイスをじーっと見てるから…多分本心は赤ちゃんだ。
「新潟といえば…海鮮か…ラーメン」
「どうする?どっちにする?」
「…勇どっちが好き?」
「ん?海鮮」
2人はあざとく瞳を輝かせながら霊愛を見る。
キラキラな星が霊愛の瞳に入ると…痛くない…むしろどんどん心が豊かになっていく気分だ。
「…風華はね!風華はね!」
「海鮮が良いんだけどぉ風華今お金無いから…どうちよどうちよ〜!」
可愛い子ぶるのに味を締めてしまっている。
この状態になった風華はおそらく…いや絶対に止まることはない。
風華に甘えられた霊愛は「はぁ…」と一つだけ息を落とす。
「わぁ〜!美味しそ〜!」
風華と勇の目の前には海鮮丼。
霊愛は500円くらいの蟹の味噌汁。でもでも!この味噌汁には蟹の足が三足身付きだ。しかもなかなかにでかい…。これで500円は安すぎる。赤味噌のカニの味噌汁に緑色の小ネギが最高。
それとは真逆の5800円の海鮮丼を頼んだ風華。
ボタンエビが二つに…イクラにマグロ…そして炙りサーモン…ホタテ…。見てるだけで涎が出てしまいそうになる。全部新潟産の海鮮だ。しかも鮮度抜群。…まぁちょっと許せないのは大盛りにしたのが許せない。まぁ500円くらいだから許せるが…
そして許せないのは勇だ。
勇も海鮮丼を頼みやがっている。しかも風華よりも高い6500円の海鮮丼だ。風華みたいに甘えてもないのに…。
ちなみに具材はボタンエビにカニ…そしてウニ…イクラ(少量)にマグロ…炙りサーモン…ホタテ…。風華の海鮮丼よりも豪華になっている。酷いもんだぜ。
霊愛の今日の出費はだいぶ嵩んでいる。タクシー代7000円×2、500円…そして海鮮丼…計12300円。合計26800円。多分ホテル代も1人4500円くらい。カプセルホテルだからまだ良かった。
「あ…そういや有楽の見た目を教えて無かったな」
「ほれこのオレンジ髪の人が有楽だ」
海鮮丼をぱくぱく食べる無邪気2人の前に、最新型のスマホで自慢する様に写真アプリを開く。
そこにはオレンジ色の長い髪の毛を持つ優しそうな青年がいた。だがなかなかに筋肉隆々で体には無数の傷跡がある。
そんで右目にものもらいでもできてるんだろうか…伊達政宗の様に眼帯をしている。…いやまぁ伊達政宗が眼帯していたのかは分からないが…。
「これいつの写真ですか?」
実は有楽の隣には金髪の可愛いbabyと少し暗めの赤の綺麗な女の人がいた。人間でいうと中学生くらいのあどけなさの残る女の人だ。
「も…もう何億年も前だぞ?」
「だってこの金髪のめちゃくちゃに可愛い子が俺の子供の頃だもん」
自画自賛に天界では写真が何億年も前からある事…結構ツッコミどころが多い。
「…」
「そう考えたら俺も年取ったな…」
「霊愛って何歳なんだ?」
「も…もう覚えてない…」
「でも四界大戦中に生まれたから…俺はそんくらいだな…」
「いつなのかもあんまり覚えてないけど…」
「じゃあじゃあ!」
風華は海鮮丼の皿を持ちながらピョンピョン跳ねる。風華の顔が小さすぎるの…大盛りの皿が大きいのかが分からん。
「この美人な赤髪の人誰ですか?」
その言葉に霊愛はソッと目を背ける。
…何やらマズイ気がした。
だが少し時間が空いた後…霊愛は静かに口を開く。
「この人は…紅恋…」
「俺の実の姉だ」
「え…?紅恋って…」
「そうだ…堕落者のな…」
「…じゃあこの写真の霊愛さん以外の2人は…堕落者ってこと…?」
「不甲斐ないが…その通りだ」
「ホントバカな姉だ…」
「俺1人だけ残して…」
霊愛が悲しそうな顔をしているのは初めて見た。…でも泣きそうな顔とかじゃなくって諦めも含んでいる…そんな顔をしているように見えた。
「あ…悪い美味しい物を食べてるのに嫌な気分にさせたな」
「…霊愛さん…」
風華は自分の財布のまさぐる。風華らしい黒色のちっちゃな財布だ。多分綺麗に纏められている。
そしておそらくお金を取り出した風華はソッと拳を閉じて、下手くそな笑みを見せる霊愛の前に出す。やっぱりこの子はいい子だ…女の子より男にモテそう。
「はい…霊愛さん」
「無理やり連れてきたんだから良い…」
ちょっと期待していた霊愛は薄目で風華の手の中を見る。…三千円…いや二千円か?
どちらにしろ少し払ってもらえるのはありがたい。
…だが風華の手に握られていたのはレシートと323円。多分コンビニで何かか買った時のおつりだろう。普通なら全く足りない!と怒るとこ…でも風華の心配そうな顔はそれ以上に嬉しく…何も言うことができない。
「あ…俺は出さないぞ」
勇はもう許さない。
店のバカ高い飲み物も頼もうとしてたし…
気持ちだけでもくれる方が嬉しい…いやいっそ払う気がない方が割り切れるのか…?
「よし…食べたか?」
「は〜い!」
でもこんな無邪気な2人の笑顔を見たら許せてしまう…。
霊愛は満足そうに2人に背中を見せる。
霊愛に弟がいたらめちゃくちゃいいお兄さんになりそう。
やっぱりここも霊愛が奢る事になった。
「次どこ行く〜?」
「笹団子食べたい!」
「風華…笹団子は帰りでいいか?」
「お土産としてって事ですか?」
「そうだ」
「大丈夫です!」
「美味しい物はみんなで食べなきゃだもんね…!」
見た目は美少女、中身は優しい少年。
あまりの可愛さに霊愛は風華の後ろから抱きついて腕を組む。これは好意ではなく…ただただ可愛かったからだ。
「なんだ?もしかして…!」
「あぁそうだ…有楽がこの近くにいるらしい…」
「ど…どうするんですか?」
「…第一に捕える…」
「捕えられない場合は…殺す事も許可する」
「殺すのか…」
「お前らはバカがつくほど優しいからな…」
「神様が許可してても…殺す事はしない…」
勇と風華はおんなじ笑顔で頷く。
なんかこんなキャラいた気がする。二人組の可愛い系のキャラ。1人は可愛い系で1人はクール系…多分動物のキャラになったら可愛い。
「ここから歩いて数分の所にいる様だ…」
「走っていくぞついて来い…!」
「はい!」
3人は青春アニメのopの様に走り出す。
「ついて来い…!」と言っていた霊愛は足が遅かった。だから走り始めて二秒後にはもう越してしまった。
そして霊愛は体力が無いから、走っても10分掛かった。途中途中休憩を挟んでいたから…。
とある団子屋…
「あむ…あむ…」
「ばあちゃんこの団子うんメェなぁッ!」
「う〜ん…みたらし…いやアンコか…?」
「まだ食うんかい…?」
「当たり前ジャろ!」
「オイラ二日間飯抜きなノじゃ!」
ぱくぱくと両手に花ならぬ両手に団子を食べているオレンジ髪の男。まさに花より団子。
パッと見は女の子にすら見えるほど綺麗な瞳をしているが…右目は真っ黒の眼帯で覆われている。
「はいはい…じゃあみたらしアンコセット300円ね」
「おうサンキューな」
「…あんた本当に払えんのかい?」
「今どんくらいなノじゃ?」
「8700円…」
「団子屋で1万円近くになるのなんて初めて見たぞ…」
「…こ…これって…吐いたら払う額はへるノか?」
「な訳なかろう!」
バシッ!
皿を構えるオレンジ髪の後頭部をチョップする団子屋の店長のおばあちゃん。
流石…古い世界を生きてきた人間…あまりの威力に口に含んだ一つの団子が飛び出す。デカいスーパーボールくらいの大きさだ。
「ゴホッゴホッ!」
「おばあちゃん何するノだッ!」
「あんたが何してるんじゃ!」
「まぁでもこれで…30円くらいは値引きされたノじゃろ?」
「はよ口に戻すんじゃ!汚いっ!」
「ふぁ…ふぁい…」
霊愛率いる3人は団子屋の入り口からこっそり覗いている。
…多分このオレンジ髪の男が有楽なんだろう。
完全に変な男なのだが…なかなかに見た目がいかつくて身長も高い。…でも雰囲気はなかなかに優しそうだ。名は体を表す…。
「ど…どうする?」
「誰が言う?」
「俺声小さいからやだよ!」
「ここは霊愛が言うべきだろ」
「俺顔見知りじゃないし」
「いやこう言うのは逆に…顔知ってる方が気まずいんじゃないか?」
「いや知らない人がなんか言ってきてもさ…一から説明しなきゃいけないだろ?」
「でも顔見知りならあー!お前は!ってすぐにメインに移れるじゃん?」
「…ま…まぁいいや風華!行ってこい!」
「え…!」
霊愛と勇はキョドる風華の背中を押す。
風華は力無く店内に入ってしまう。
「お…!可愛い子ちゃんいらっしゃい」
「あ…えとぉ…」
「どこでも良いよ座わんなさい」
「ち…違くてぇ…!」
流石人見知りの風華。
多分1人じゃ店に入れないタイプの人間だろう。多分店外でウロウロして帰るタイプ。
「一回戻ってこい!」
霊愛の手招きに引っ張られる様に走って帰ってくる風華。相当恥ずかしかったのか顔が真っ赤になっている。
女客も男客も「可愛いかったね」と口を揃えて言っている。
「セリフとしては…」
「お前が有楽だろ!かかってこい!って言って…」
「ウンウン…」
「有楽の腕を掴んでこっちに連れてこい」
「できるかなぁ…」
簡単すぎる事だけどメモをとっている風華。
この子は多分仕事してもかなり可愛がられるタイプなんだ。真面目だし…反応も可愛いし…。
「じゃあ!行ってこい!」
「はい!」
今度は自分から店の中に入っていく風華。その背中はちっちゃいながらも自信に溢れていた。
「あ…あの!」
「ん?どうしたんじゃ?お嬢ちゃん」
「…あ…あの…」
「お…お前が有楽だろぉ!」
「ん?違うぞ?ワシはトメじゃ」
緊張からか間違えて店長のおばあちゃんを指差していた。
そそそ…と黒衣の様に勇が登場して、おばあちゃんからオレンジ髪の男に指差しをチェンジさせる。…そして黒衣の勇はさささ…と店外に出ていく。
「お…お前が有楽だろぉ!」
「ん?そうなノだが…なんの様なノだ?」
「か…!かかってこいぃ…」
おそらく身長190cm越えの有楽。風華と比べると30cmくらいの身長の差がある。
あまりの身長差に風華の語尾が震えている。
「…ん?なんだ?嬢ちゃん」
「つ…ついてこぉい…」
有楽の小指を掴んで店外へ連れてくる風華。
父親と娘にしか見えない…。多分欲しいものがあって泣いた後なんだろなぁ…そんな想像くらい簡単にできる。
「つ…連れてきたよ!」
霊愛と勇の前で止まると風華は手を離す。さささ…っと勇の後ろに隠れてきた。小動物みがすごい。
食い逃げか!?と心配したおばあちゃんも店内から店外の様子を見ている。
「…霊愛か」
「久しぶりだな…有楽…」
ただならぬ雰囲気に勇と風華…そして最強のおばあちゃんは置物と化す。
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