11-2 侵食
「お…良い人物に注目したな」
「有楽…そいつは神の地位を奪おうとした罪で収監されていた男だ」
「元々の位は確か神の代行…だったかな?」
「どんくらいの地位の方なの…?」
「下級は神の授業参観…そして神の使い…神の付き人」
「中級は神武官…神の代行…神の側近…」
「上級は神の候補…準神…」
「そして最上級はたった2人…神と大神官だ」
「…なんか拍子抜けだね」
「最上級で神の塵とかになると思ってたのに…」
「それな…」
こいつらは本当に不敬罪で訴えられてほしい。
神というものを舐め腐り過ぎている。
神ってのはもっと偉大で…尊敬されるべきものなんだ。本来は…。
「じゃあ霊愛の2個上なんだな」
「まぁそれぞれの位になるためには徐々にミニミニ位を上げなきゃいけないんだけどな」
「あ…結構前に神の使いの見習いとか言ってたよな」
「うん」
「俺知らないッ!」
「見習いがミニミニの最低地位」
「一般人がミニミニの真ん中の地位」
「模範囚がミニミニの最高地位だ」
「霊愛は今どんくらいですか?」
「神の付き人見習いだ!」
「なったばっかなんですね…」
「でも…結構出世頭って言われてるけどな…」
悲しそうにしょぼくれる霊愛の背中をそっと優しく撫でる風華。良い子すぎて騙されそう。
…まぁそんなことに興味ないほど引っかかっている点が勇にはあった。
「最上位って神様1人だけじゃないんだな」
「あ!確かに確かに!大神官って人はそんなに偉い人なんですか?」
「大神官…大神官とは現神の父の一番歳の近い人がなれる役職だ」
「笑伝様の叔父様が今の大神官様だ」
「…すごい!」
「大神官様は唯一神様を殺せる能力を持っている」
「ぶ…物騒だな…」
「…もし仮に神様が暴走した時…それを止めれる人物がいなければ困るだろ?」
「確かに…」
「まぁ神様も大神官様を殺せる能力を持つんだがな…」
「じゃ!じゃあさ!大神官?が神様を殺す為に能力を使ったとして…神様が大神官を殺す能力を使ったらどうなるんですか?」
「それは…多数決がとられて多数派の方の能力が認められる」
「なんか…ボロが出そうだね…その体制…」
「まぁ古くからの伝統だから仕方ない…」
半ば諦め気味の霊愛。
「…とにかく有楽は俺の何倍も強いし…何倍頭が良い…」
「…か…帰る?」
「そうだな…」
「お前バカやろう」
ダブルチョップをされて2人の頭にタンコブ。
上目遣い気味で霊愛を睨みつけてくるが…なんも悪いとは思えない。
風華の髪はサラサラで勇の髪はワックスをつけてるのか少しベタっとしてた。
「俺が有楽を捕まえたらな…」
「捕まえたら…?」
「神の付き人模範囚になれるんだよ!」
「俺らにメリットは?」
「まぁ強くなれるんじゃない?」
「…適当すぎじゃない?」
「ほれほれそんな事どうでも良い」
「もうそろそろ天界に着くぞ」
「天界どんな所なんだろ!」
ウキウキワクワクしてぴょんぴょんする風華。
欲しいおもちゃを買ってもらえる子供の様で、思わず風華と腕を組んでしまう勇。
…これは仕方ない逸れたら困るからだ。
白いモヤが掛かり光輝く場所が見える。
多分おそらくきっと勘違いかもしれないが…あそこが天界ってやつなんだろう。
およそ予想通りの場所だ。
「一応目瞑っておいた方がいいぞ」
「眩しいからさ」
「はーい!」
2人は目を瞑る。目を瞑っても白く光っていて…きっと直視したら目が痛くなるんだろうなぁ…。
風華は眩しいからか勇の肩に顔を付けてる。
赤ちゃんかな?
ぴびゅ〜どどどろ〜
不可解な音と共に…地面と思われる硬い場所に足をつく。さっきの天道はふわふわしていた、トランポリンにでも乗っている様な気分だった。
「着いたぞ」
「うわぁ〜!」
辺り一面真っ白…いや白銀…雪の様な景色だ。
そして白い建物が辺りに散らばっていて、多分ここが日本で言う東京なんだろう。大都会だ。
色んな人…いや天使たちがいて…天使の輪っかを付けている天使や、白く大きな天使の羽を付けている天使…。あと天使っぽくはない狼の面をした天使もいる。その他色んな動物の顔の天使もいた。巨乳の天使も…
なんでも認めるタイプなのが天界なんだろう。
「うわ…ていうか親に連絡入れるの忘れた」
「やっぱ帰ろっか」
「ほれここフリーWi-Fiあるぞ」
…天界ってなんなんだろう。
地球と違うはずなのに全くおんなじだ。
しかもここのフリーWi-Fiめちゃくちゃ電波がいい。地球よりもいいところなのかも…
一通り親に連絡を入れるとまたすぐスマホをしまう。風華はエアコンつけっぱなしな事を悲しんでた。
「…綺麗な場所」
「とりあえず笑伝様がいるところまで行くぞ」
「ちびっ子男の蘇生の話も忘れてたしな」
「あ〜そんな話もありましたね〜!」
「じゃあタクシーで行くか」
霊愛はだいぶ羽振りがいいみたいだ。
歩き疲れた勇と風華はそれに甘えることしかできない。2人ともにゃんにゃんして霊愛の両腕に頭を擦り付ける。
なんて現金な子達なのだろうか…
でも2人より全然年上な霊愛は2人を甘やかす事しかできない。出来の悪い妹と弟を持った気分。
そうしてタクシーで揺れる事…約20分。料金は7000円くらい。やっぱり物価高らしい。
…霊愛は少し鼻の穴が広がったが、結局7000円はポケットマネーで出してくれた。
「…ここが笑伝様の事務所兼自宅だ」
「お前らに能力を授けた場所もここだ」
「…大きいですね」
「まぁそりゃ神様の本拠だからな」
「ちなみに神様の部屋はベッドしかないぞ」
「…神様を尊敬しちゃいそうになりました…」
「いやしろよッ!」
神様の事務所に入り…エレベーターで73階に登る。なんで73階なのか分からないが、73階が最上階らしい。
エレベーターが開くとそこは腕を組みをして社長室の椅子に座る笑伝がいた。
数ヶ月会ってなかったが…また白髪が増えてハゲが増している…。やっぱり神様ってのはストレスが溜まるものなのだろうか…。政治家と一緒でなりたくない職業だ。
無知な人からの分かった気の発言ほどストレスが溜まるもんはない。分かる分かる。
「お〜!風華ちゃん〜!髪型変えてもめごいな〜」
こんな事言っているがかなりやつれている。
シワも増えて…手の動きも鈍くなっている。
「あはは〜ありがと〜!」
「神様…有楽の動きはつかめましたか?」
「いや〜全くじゃ…」
笑伝の手元の資料にはびっしりと文字が書かれている。日本語ではないが…多分色んな情報が書かれているんだろう。
「…この天界にはアリ一匹の個人情報ですら探れる情報網が引かれている…」
「…勇くん…最近地球で変なことは無かったか?」
「最近…最近…」
「えぇ〜?なんも無いよな」
「いやあったじゃん!」
「華狢…とか海熊…とかあとなんか武士みたいのもいたんでしょ?」
「あ〜確かに…あとクシュってやつもいたな…」
「な…なんで強烈な敵たちを忘れてたのよ…」
「…クシュ聞いた事がある様な…ない様な…」
「あ…!思い出したじょ!」
「地獄の死神族の子じゃッ!」
「…そして華狢と…海熊は宇宙から送られた異獣…」
「まずいじょ…」
「霊愛…風華ちゃんと勇くんを地球に戻すんじゃ!」
「有楽の逃げた場所はおそらく…地球じゃッ!」
その言葉に勇や風華は目を見開く。
神の付き人見習いの霊愛ですら目を見開いて…額からは汗が流れている。
言った本人の笑伝ですら口をぱくぱくさせている。
「マズイ…四界大戦がまた始まってしまう…」
「霊愛ッ!堕落者は全員地球へ向かっているッ!」
「有楽…寿苦…そして」
「紅恋も…」
"紅恋"と言う言葉を聞いた霊愛は眉を顰める。
きっとその人物とは何かあるんだろう…元カノとか…愛人とか…そんな感じなんだろう。
霊愛の顔を見るに…触れてはダメだと思う。
「殺しても構わない…」
「…頼むじょ!」
「…分かりました」
「え…えと…?」
「お前ら帰るぞッ!」
「お…俺親に連絡したのに…」
「良かったぁ…冷蔵庫に賞味期限ギリギリのやつがあったんだった」
「あ…まぁ…大丈夫だ家には帰れないから」
「お前らには有楽を探す手伝いをしてもらうからな」
「えぇ…」
「それはそれでだるい…」
駄々をこねる2人の腕を握って霊愛は歩き出す。笑伝は少し成長した霊愛の後ろ姿を見て…静かに涙を流す。…ことはなく完全に兄弟にしか見えずに少しホッコリする。
またタクシーに乗って…20分。7000円。霊愛は勇と風華のキラキラした瞳に負けて奢らされた。
3人は天道の中に入ると一息吐く。
「…四界大戦について知ってるか?」
「あそれ前聞いたぞ」
「なぁ〜んだ…」
「とりあえず…笑伝様のLINUアカウント送っておくから…」
「俺たちと笑伝様の4人でグループLINU作るからな」
「笑伝様が有楽のその時その時のおおよその場所を教えてくれるから」
「それを元にして俺たちは動くぞ」
「ね!ねぇ勇!」
「今…風華と同じこと思ってたと思う…!」
「ヒーローみたいでカッコいいよね!」
「めっちゃかっこいい!」
はちゃめちゃにテンションが上がっている勇と風華…。霊愛はその姿をみて少し和む。
親の気持ちがよく分かる。
「ほら…!早速情報が来たぞ」
「場所は新潟県…だってさ」
「よっしゃ〜!行こう!」
「わーい!風華新潟大好き〜!」
「風華ね!笹団子食べた〜い!」
一人称が自分の名前だと…めちゃくちゃに可愛いく思えてしまう。
楽しそうにしている3人…。
これから起こる様々な困難など…まだ知らない。…まぁ誰も知らない。
次の投稿は水曜日19時です。




