11-1 everything
現在7月26日
現在夏休みの真っ最中…黒焦げ陽キャ共は海に行ったり、BBQをギャルたちとしているのだろうが…。
冷房ガンガンの部屋のベッドの上で寝転がっている勇。シーツがひんやりしてて気持ちいい。
久しぶりのゲームを堪能していた。
「I've pricked my heart!」
「I am the trigger…!」
有名バンドの歌を歌いながらゲーム。最高な瞬間として動画配信サイトで無断転載されそう。
何故こんなうるさくできるのかなんて簡単な話。今現在家には誰もいないのだ!
両親は朝から仕事に出ていて、姉は友人と遊びに行っている。普段は大学生だ。
そして隣の部屋にいるはずの杏は…夏休み中まともに家にいない…。朝飯時、夕飯時は家にいるが…ほとんど玲那の家や舞の家に遊びに行っているみたいだ。
…夏休み中ってより1週間くらい前のあの海に行った帰りからほとんど家にいない…。
ま…まぁでもこうして楽しめるのだから…良しとしよう。
「風華暇かな…」
遥真は絶対部活をしていて…颯も部活中…。
舞と玲那とはプライベートで遊びに誘うことはない。やっぱり風華だ。
夏休みになると毎回風華と遊んでいる気がする…。小…中…そして高も…。
本来なら彼女と遊んでいる予定だった。
風華に連絡をしてみると…
『うん!遊ぼ!』
二つ返事でOKしてくれる。
最近では冷凍食品をやめて簡単な料理を作ってるらしい。レバニラが大好きらしくていっつも写真を送ってくる。たまに映るエプロンにお団子姿は女の子にしか見えない。しかも不器用で真面目な女の子。
午前11時
最高気温は35℃らしいが…もうこの時点で37℃くらいになっている。天気予報はやっぱり嘘つきだ!
駅前で熱々のスマホの液晶をポチる勇。
周りには同じくらいの歳の人がデートしている。あまりにも羨ましい…。
白い服に黒いズボン…シンプルすぎる服装。シルエットクイズに出たらオセロと誤解される。
「あ!いたいた!」
手を振りながらこっちに向かってくる風華。
そういえばこの男…ロングからボブになったんだった。しかもかわい子ぶってるのかちっちゃなツインテールにしてる。
あまりの華やかな顔面に彼女持ちの男すら振り返る。…はっきり言ってノーメイクなのにメイク有りの女性にすら勝ってしまっている。
女性の疎ましそうな顔が怖い。
しかもオーバーオール…多分これ女物のやつだと思う。服屋に行って…女の子と勘違いされて紹介された…風華は人見知りだから拒否できなかったんだろう。
「ねぇねぇ!勇!見た!?」
「見てない」
「聞いてよ!」
「何をだ?」
「さっき電車から降りたら霊愛さんいたんだよ!」
「そりゃ霊愛くらいいるだろ」
「あ…あの人あんな感じだけど…一応神の使いなんだよ?普通にいるのおかしくないッ!?」
「最近天国も物価高らしいからなぁ…」
「な!なんでそんな適応できちゃうの!?」
多分風華の見間違えだ。
霊愛くらいのイケメンはちらほら…はいないが、俳優レベルになるといるレベルだと思う。山田涼介レベルの誰も近づけないレベルのイケメン。まぁ山田涼介みたいに親しみやすさは霊愛には無いが…。
「まぁとりあえず行こうぜ」
「え!?霊愛さんに会わなくていいの!?」
「どうせ見間違えだ」
「そ…そうかなぁ…」
すぐに弱気になっちゃうよわよわな風華。
気弱なところもあるが優しいからこそ弱気なんだろう。
「ほれいくぞ」
「おーい!勇ッ!そして女ーッ!」
後ろから声が聞こえる。
なんか闘牛でも来ているかの様にドタドタ音がしている。…嫌な予感がした。
勇と風華は恐る恐るその方向を振り向く…。
そこには霊愛がいた。また髪の毛が伸びてウルフになっていて…金髪ウルフセンター分けだ。
そんなことどうでも良かった!
霊愛の後ろには無数の女の子。おデブ系もクール系も地雷系も…坂道系も色んな種類の女の子がいる。
しかも等しく霊愛のことを追いかけている。
ここに床発電システムがあったら1日分くらいの電気は賄える。
「助けて〜!」
助けを求めているが声音は嬉しそうだ。
イラッときてしまうが…ここは優しい2人。
霊愛の為には見て見ぬふりをしなければならない。苦渋の決断だ!
2人は手を繋いでカップルのフリをする。
「楽しみだね〜風華ちゃ〜ん」
「うん!アイラブユ〜!」
「ウォ〜アイニ〜」
近くの珈琲屋さんに入ろうと…ドアに手を掛けると…力強く肩が掴まれる。多分風呂入る時に、ふと鏡で背中みたら幽霊にでも触られたのか!?と思うくらいの手形がついていると思う。
「逃がさないぞ…ハァハァ…!」
「きゃっ…!なんですかぁ〜?」
あざとく腰をクネクネさせている風華。
いつの間にかサングラスを掛けていかにもヤバい奴ぶっている勇。…大人数の女子を前にキョドる事で人間としての脆さが普通に出てしまっている。
「な…なんなんですか…う…ウチの彼女に…」
流石に風華を彼女というのは抵抗がある。
ビジュアル的には満点なのだが…普段の感じを思い出すとやっぱりダメだ。
「あ〜ん!だ〜りん!怖い〜ん」
やっぱ風華は演技派なんだ。
正直可愛すぎて困ってしまう。
「そんなふざけてる時間はないんだッ!」
「頼むッ!元のお前らでいてくれ!」
「…なんだ霊愛?」
「そうだよ早く要件を話してよ霊愛さん」
さっきまであんなふざけてたのに…
こんな被害者ヅラでこちらを見つめてくる目の前の2人に怒りが湧くが…
これ以上話がごっちゃになったら大変だ…と自分を静める。自分を偉いって褒めてあげたい。
「実は…」
「あ〜ん!イケメン様〜LINU交換して〜」
「私も私も!」
LINUとは老若男女みんな使っている連絡するアプリだ。実在するやつと名前が似ているが…まぁほんとに同じ性能をしている。スタンプも送れたり…通話もできる。ちなみに風華と舞は繋がっていない。2人とも頑張って交換しようとしていて尊い。
…ていうか神の使いがスマホなんて持ってるわけがないだろ!…と言いたいがこの女の子たちは霊愛を人だと思っているから仕方ないか…。
「あ〜もうッ!今インストールしてるって!」
ポケットからスマホを撮りだす霊愛。ドヤ顔。
スマホ持ってるらしい。しかも最新の機種だ…。勇も風華も一昔前のやつ使っているから羨ましい…。
どこからそんなお金が出ているんだろう神の使いって給料良いのかな…?
「…とりあえず天道を開く」
「お天道様ですか?」
「バカッ!よしみだろ!」
「両方とも不正解…」
「…天国へと続く道だ」
「そのまんまですね…」
「普通過ぎてボケれない」
「…コイツら」
霊愛はまた拳を握る。
…今回は勇と風華の鼻先まで拳が進んでしまったが…また寸前のところで矛を収める。
風華の泣き顔の演技がブッ刺さった…。と言うのは墓場まで持っていこうと思う。
霊愛はその拳をパッと開き目を瞑る。
「天創道臨…開ッ!」
モワワワワァァン
ピンクの煙の中から謎の白い道が見える。
いかにもって感じの天国へと続く道に、誰も驚くなんて野暮な事はしない。
女の子たちも「あ…なんか変だね」と誰も触れる事はせず…キラキラとした瞳で霊愛を見る。
「じゃあね…」
「可愛い子猫ちゃんたち」
クサ過ぎるセリフでキショい…と思いたいが、こんなイケメンの片手ピースなら許せてしまう…。なんてイケメンなんだろう。
「じゃあ行くぞ2人とも」
「は…はい」
女の子パワーですっかりおとなしくなった勇と風華は、縮こまりながらその天道へと入る。
女の子たちも入ろうとするが…その前に天道は閉まってしまう。
そして男3人…案外窮屈な天道を歩く…。
不思議と汗臭くはない。むしろイケメンとほぼ美少女に挟まれて良い匂いがする。風華と肩と肩がぶつかると…風華はニコニコする。
「狭いですね…」
「俺の天道は安物だからこんな狭いんだ」
「俺より位の高い役職についてる人たちはもっと広いぞ」
「100人入っても大丈夫って書いてあった」
「ていうか…神の使いってどんくらい稼げるんだ?」
「あ…俺神の使いから神の付き人になったから」
「…それ位としては下?上?」
「上だぞ」
「あそうなんだ…」
神の使い→神の付き人→次はなんなのか気になる…。言葉的にはだいぶ地位が下がっている気がするが…。
「いや〜ヴォアとの戦闘で天界でだいぶ評価が上がってね〜」
「給料も月35万くらい…貰っちゃって〜」
「1500年くらい月18万くらいで暮らしてたからな〜」
「もう使っちゃって使っちゃって…!」
天界の人間はだいぶ下積み時代が長い様だ…それとも霊愛のセンスが無いだけなのか…?…まぁおそらく後者だろう。
「…まぁそんな事どうでも良いんだけどさ」
「なんで俺たちが天界に向かわなきゃならんのじゃ?」
「お前ら2人暇だろ?」
「人間界の学生って今夏休みだろ?」
「どうせ暇なんだろ?」
「…それは…まぁそうだけど…」
「よし…じゃあお前らの夏休みの1週間くらいもらうぞ」
「えぇ〜!そんな勝手な〜!俺にも宿題が…」
勇は知っている。風華は最終日に急いで答えを見てやるタイプの人間だ。しかも大体終わらずに先生に怒られている。
勇はそれを見て笑っているタイプ。なぜなら勇は答えを見ても集中力が続かないから終わらないから諦めの笑いだ。確かまだ中2の頃の夏休みの課題が残っているはずだ。
「まぁ俺は家にいるのも…あれだからいいぞ」
「あ…そっか…今杏と喧嘩してるから勇からしたら丁度いいのか…」
「言うな…ッ!」
「…本題言っていいか?」
相変わらず仲の良いこと…。
「実はな…今天界ではマズイことになっていて…」
「雑魚の手でも借りたいんだよ」
「はっきり言いますね…」
「風華はともかく…俺は強くなってると思うけどな…」
「にゃんでッ!?」
猫の耳を生やしながら勇に掴みかかる。
…でも遥真は純粋に能力も強くて身体能力も元から高い。
それに対して風華はちんちくりんで身体能力も無く…単体能力は強いものの、能力は頭を使ったり少し工夫しなきゃいけないものだ。創造だってSランクらしいが…普通に使ったらパンツを出したりできるだけだ。あと食材とかも出せるらしい。…が商品として出てるのは創造できないらしい。野菜や肉とかはいけるがスーパーの惣菜とかはできないみたいだ。
それでもかなり食費が浮く。一人暮らしでバイトもしていない風華からしたら神の様な能力だ。
「だって俺また新しい技考えたし…」
「え?あの…あ…あれでしょ?」
風華が口を抑えて目をチラチラと見てくる。
可愛らしいが…多分小馬鹿にしている。目を見ただけでわかる。大きな瞳には分かりやすく「厨二病」って書かれている。
「し…疾怒の…舞…ってやつ…」
「ぷフゥッ!」
ついに吹き出してしまう風華。ムカつく。
笑いも収まらない内に勇の肩を叩く。
「…で…!次の技名はなんなの…?」
「こ…拘羅って技なんだけど…」
「え…え?どうゆう技なの〜!?」
メスガキみたいにクネクネこちらに近づく。
まぁその顔が可愛いのなんので怒りすら湧かない。
「ま…まず黒縄で相手を掴むじゃん?」
「そしてこっちに引っ張ってそのまま拳とか足に当てる技なんだけど…どう?」
「…逆ロボットパンチみたいな感じ?」
「そうそうッ!」
「う〜ん」
風華は顎に手を当てて首を傾げている。
顰めた眉は男とは思えない。
「もっと勇なら厨二病っぽい名前つけた方がいいんじゃない?」
「例えば…?」
「漆黒タッグオブレジェンズ…とか?」
「長過ぎるだろ」
「技名ってのは短くて言いやすいやつなんだぞ」
「…俺もなんか技欲しい!」
「能力が戦闘ッ!て感じじゃないから無理だろうな」
「刀とか使った技とか考えれば良いのに…」
「はッ!それいいね!」
「何が良いかな…怒髪バンバン斬り…スパンスパン斬り…う〜ん困っちゃう〜!」
「んで天界で何があったんだ?」
技名のセンスがなかなかにトントンな風華はもう無視した方がいいと思う。風華は一個のことに熱中しちゃうタイプの子だ。
「実はな…天界の堕落者たち…」
「人間で言う犯罪者が何者かによって解放されてしまったんだよ」
「…犯人は分からないのか?」
「…まぁな」
少し含みのある溜めだ。
…だがあちらの事情に首を突っ込むのは良くないだろう。知識無いくせに語るみたいだし…個人的に嫌だ。
「まぁ…風華の修行と…勇のその…こ…こ…拘羅?」
「ブフッ…それの練習と思ってくれ…」
「もう技名変えようかな…」
「ま…まぁ疾怒の舞よりはマシだから!」
「俺もよく分からないけど技名はそれより全然マシだからな!」
フォローにもなっていないフォロー。
しかもこれをマジの優しさだと思って言ってるのが怖過ぎる。
「ほれ…これ特定堕落者リストのメンバー」
霊愛はポケットからいろんな文字の列で成っている一つの紙を取り出す。
「…う…有楽ぅ…?」
勇と風華は仲良く声が揃う。風華がハモリで勇がメインで声を出している。ほぼゆず。
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