9-6 胸がドキドキ
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数億年前の地球では…
今と比べて地球には緑が多く自然に生まれた川の水は澄んでいた。魚はどこを見ているか分からないものの楽しそうに泳いでいた。
その付近には人々が家を建て、野生動物たちが切磋琢磨しながら生きていた。
決して平和で争いは無かった。…とは言えないものの人類と野生動物は各々の方向へと進化を遂げっていた。着実な文化の成長を感じ取っていた。
その頃になると地域の王を名乗るものが現れ、人々は"強者には逆らわない"と脳内に自然と刷り込まれていた。
それからいくつかの時が過ぎた地球では、人間には動物だという意識が薄れていた。自分たちに逆らえる種族はいないと過信していた。
だがその過信も一人の迷い人によって崩壊し…この地球に混乱を招くことになる。
その迷い人の名前はタフラ・ケイン。
容姿は顔が人類の2倍ほど大きく、カンナで顎は削ったのかと思うぐらいに尖っている。
細く目も濡れ潰したようは真っ暗で大きな目をしていた。
言語も違い格好も鎧のような姿に人々はタフルを軽蔑し白い目で見ていた。
この頃の人々は今と変わらずに、自分と違う者は認められずに排斥しようと言う考えは変わらなかった。
それからと言うもの…タフラに向かっての暴虐無尽な人々の態度は目に余るものだった。
例を挙げるとタフラに耳が無いことを良いことに罵詈雑言を浴びせ侮辱を繰り返し、家で出たゴミを家の無いタフラに投げつけた。
それすらまだ良いと思うほど集団で暴行を繰り返し、汚物を投げつけるのでさえ日常茶飯事だ。そしてまだ幼い少女や少年はそれを見て笑っていた。それはとても幸せそうに。
…しかしそれもある事件で終わりを迎える。
いや新たな地獄が始まったと言った方がいいのかもしれない。
タフラのことを耳にして一度見たくなったその当時の王は側近のチェイス・ケルにタフラがいる街に訪れることを命令した。
王の考えは安直でその不気味な容姿を一度見て息女や愛人と笑い飛ばしたかったからだろう。
チェイスはすぐにその街に入るが…
そこでは異様な腐ったような匂いが街を包んでいることがわかる。
奥へ…奥へ…と進んでいくとともにその臭いは強くなり…鼻の奥を抉るような臭いにチェイスは白色の吐瀉物を吐き出す。
少し楽になったものの…数分後にはまた吐き気がやってくる。
王様の命令によって半ば無理やり来ていたチャイスはこの時一度帰宅することを考えた。
だがこの当時のチャイスは敗戦から信頼を失いかけていて困窮を極めていた。
…つまりチャイスはどうにか王の命令に従わないともうこの先生きていけるかすら分からない状態だった。
チャイスはいつの間にか王に都合よく使われる奴隷へと成り下がっていたのだろう。
ある一軒の洞穴へ訪れてみると…
その衝撃的な目の前の状況に曇りかけた空の様に青ざめチャイスは一気にその場を走り去る。
…その民家の中にはタフラがいたのだ。
それも尖った尻尾を手の様に使って器用にまだ生きている人間の手足や内臓を食べていた。それもかなり美味しそうに…。
人間は声を漏らすこともなくただ死んだ。
走っている最中に気がついたのは…ウジやネズミが群を成して地面を駆けていた。それもまだ綺麗な洞穴から出てくるネズミは真っ赤に染まっていた。
おそらく…この村の住民は全員…
考えるだけで恐ろしくなり自分の保身の為にただその場から走って逃げる。叫び声を上げずに地獄から走り逃げる。
まだ生きているかもしれない人間が横目に見えた。…しかしその人は下半身がちぎれていて…もう助かる見込みは無かった。
転ぶ様に走りながら王の待つ洞穴へ辿り着く。
ただ生きたい。…ただ生きて褒美を貰いたい。その一心だけでその王と向き合う。
チャイスは王にタフラのことを説明した。
「A person with unknown abilities」
意味は簡単で"未知の能力を持つ人"
チャイスはあの異常な姿のタフラを人だと誤解してしまっていた。
この勘違いが地球…いや天国地獄宇宙…全世界を巻き込む混乱へと発展し、人々を予想打にしない進化の方向へと運んでいく。
なんと世界はあろう事か…奴隷の身分の層を使って人体実験を始めた。何も目標が決まっていない訳ではなかった。
ゴールは決まっている。
その人体実験は"未知の能力"を得るための実験だった。別に能力の作り方なんて分からない。
その能力造りに反対する者はいなかった。
…いや反対できる者がいなかったと言った方が正しいのだろうか…。人々は自分が道具にならない様にただ奴隷を差し出す。騙されて強制的に奴隷にさせられた人もいた。
そしてその実験は数百年にわたって続く。
その間に王も変わり文明も新たに始まった。徐々に医学者はこの実験を批判した…だがその医学者も犠牲者になっていった。
もうこの時点で数十万の犠牲者が出ていて、誰の目にもこの実験は失敗だと分かっていた。
しかし…人類は独自の能力の開発に成功した。
…人々は歓喜した。能力の開発すなわちそれはこの地獄からの脱却を意味していた。
だが人々の考えとは反対に王の能力開発の欲はさらに加速していく事になった。
この頃は各国での戦争も加速していきその能力が頼りとなっていた。
その理由は単純で能力開発の弊害で経済が停滞し、人口も全盛期60%にも落ち込んでいた。
進化とともにこの世界は病んでいた。
経済の停滞も人口の減少も能力を使えば一瞬にして全盛期以上になると踏んでいた。
そしてさらに能力者の製造は加速していく…
もう既に一般人も実験対象になり…農作業の効率を上げる能力…植物の成長を早める能力。そしてそれ以外にも戦争用の腕を鉄砲に変える能力、尖らせる能力…世界は能力者を作りすぎた。それゆえに攻めてこられる事に恐怖していたのだ。
そして人類のこの動きは今まで目を瞑っていた他の場所も流石に動き出す様になる…。
その場所は特定の国でも…離れた島でもない。
地球の外の…宇宙、地獄…天国…普段なら絶対に関わる事のない世界。戦争能力を作り上げてしまったことで接点が生まれてしまったのだ。
人類はあまりにも早く進化しすぎた。
宇宙、地獄…天国の地球以外の三界はそれぞれ固有の能力を保有していて均衡を維持していた。それも数千年もの間…。
だがそこに地球が無意識にも参加してしまった事により…良くも悪くも安定していた均衡は崩れさった。
皆考えることは同じで…第四勢力として対等してきた新参者を取り込むこと…そしてあわよくば自分たちの勢力拡大を狙っていた。
まず天国は地球と界交しようと使者を送り込んだ。だがその画策は地球側の使者が排除された事により失敗した。
そして地獄では地球に圧力をかけて属界にしようとしたが…猛反発に遭い交渉戦に失敗する。
一番最後まで静観を決め込んでいた宇宙は…天国と地獄が作戦に失敗したのを見て動き出す。
いや…本当は宇宙側が一番最初に行動していたのだ…それがそのタイミングで意図的に発動されたのだ。
その作戦はタフラの頃まで遡る事になる。
タフラの頃…宇宙の戦力を密かに地球の人口の少ない部分へと送り込んでいたのだ。
その情報源は最初に宇宙から地球へ送られていたタフラだった。タフラは地球人の弱点と強点を探るために迷い人を演じていたのだ。
人類が自滅や寿命によってバタバタ死んでいく中…タフラは人類の住んでいた地域を乗っ取り生きていたのだ。それも宇宙から送られてきた仲間と共に…。
だがタフラにとっても地球が能力を新たに創り出す事は予想外の事だった。
宇宙の狙いはただ一つ…地球を平和的ではなく一瞬にして強引に奪い去ろう…そんな考えだった。
しかし思った以上に地球人の進化が早く…その人類史…宇宙史に刻まれた"世界最悪の戦争"は
宇宙側の焦り…そして地球側の血気により…突然訪れた。
ある地球の大地で燃える物体が墜落してくるのが見え…ただ事ではないと戦争をしていた国同士は停戦を結ぶ。
だがその飛来物体は一つではなく…数百という数が存在していた。まるで側溝に無数にいる虫の様だった。
だが少し違う事はどれも人類に考えられないほどの巨体だった。
飛来物体が地面に堕ちると…
そこからはタフラの様な見た目の化け物が続々と現れ…地球人が作った大地を踏み荒らしていく。それもタフラの様な見た目の化け物だけでなく…腕が四本ある化け物…顔が尖っている化け物…この地球には似合わないほどの化け物が数千と現れた。
…だが地球もただでやられる訳がなかった。
戦争兵器となった能力者はその地球外生物と戦い、一進一退の攻防を繰り広げる事になる。
しかし焦っていたのは地球や宇宙の勢力だけではなかった。
先を越されたと思った天国と地獄は、その日のうちにそれぞれの世界に大群を送り込んだ。
…そして歴史に刻まれる四界大戦は始まった。
その戦争はシャボン玉が破裂する様にすぐに終わることはなく…数万年続くこととなる。
目的はいつの間にか地球の支配ではなく、さらに強い能力を奪い合い…民間人でさえも多くの被害が出た。
その間も地球は新たな能力者を作り続けた。
その中には"浪華家"や佐東家"など自然に能力が宿った能力者たちもいた。
四界の死者を合わせると数十億の死者をだし…同族での殺し合いも大戦の末期には見られ…まさに地獄だった。
だがその戦いは戦争が始まった当時と同じ様に突然終わることとなる。
地球のある小さな島の御華娯島の姫がだった一人の力で四界大戦を終わらせたのだ。どうやってやったのかは分からない…。その島のことなんて地球人さえも分からない。
ただ御華娯島の姫のおかげで四界が救われた。それだけが事実として残った。
突然終わったその大戦の停戦条約は簡単に結ばれ、これから世界は前に進む。全勢力大戦前の勢力維持で戦争は終わる。つまりこの大戦の間進むことも…後退することもなかったのだ。
…しかし一番の被害に遭った地球にはある問題が残っていた。
四界大戦で奪った能力はどうするのか…
…そして一番の問題となったのは大戦中に地球に送られてきた宇宙の化け物たちの処理の問題だった。
四界大戦が終わった後も…元いた場所へと戻れない化け物たちは暴れていた。
人々はこの化け物たちを異獣と呼んだ。
その場しのぎの対策として…能力者の手によって封印される事になり…その代表が"浪華家"だった。能力者同士が協力し…地球を守る。
してこれからもその子孫たちが封印が弱まった異獣たちを封印する…誰もがそう思っていた。
…だがそれは現代から数千年前に終わる。
この頃…世界各国ではあらゆる宗教が作られ皆等しく争うことが開くだと考える様になった。
そして悪の根源と考えたある宗教家によって能力者の排除運動に乗り出す事になる。
一夜にして…地球を守るために生まれた能力者たちは、英雄ではなく悪人のレッテルを貼られ地球全土から消えることとなった。
だが生物からの目を掻い潜り…細々と生きている家もあり、その後も子孫たちは封印が弱まった異獣を封印する事に没頭することになる。
誰にも讃えられずとも…ただ影で戦っていた。
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全ての話を聞いた3人は深く息を落とす。
勝手に能力者にされたものの…この血を血で洗う様にして作られてきていた能力の起源を知ルカとは気分の良いことではなかった。
それを察した老婆は勇の肩を叩く。
「ワシが言った事じゃが…過去のことを気にしすぎるのも良くはない…」
「四界大戦は全員が被害者じゃ…そしてなかった方が良かったこともはっきりしておる」
「何もしなくお主らに押し付けるつもりはない…」
「しかし…今までの奴らとはお主はは何か違う」
「無能なワシら過去人の尻拭いを頼まれてほしいのじゃ…」
あんなに気の強そうだった老婆が、目を小さくし涙を浮かべて頭を下げている。
その当時を何も知らないまま放り投げ出された勇たちにとっては特段何も関係ないこと…
しかし3人の心は偶然にも一致していた。
「そんなん俺たちには何も関係ないだろ」
「うんうん!」
「そうだゾ!」
「…やはりか」
老婆の手は小さく震えていた。
だが勇たちを恨む目はしておらず…ただ自分の力の無さを悔やんでいる様に見えた。
「俺らなんてただの高校生だぞ?」
「そうそう!」
「ぬ!」
「俺らなんて世界を守る!なんて大層な志も立てれるほどの人間じゃない…」
「目の前の奴らを守るだけで精一杯なんだよ」
「まぁ…何が良いたいかと言うとですね…」
「そ…そんなにこちらに期待されるのも困るので…世界救えたらラッキーって思ってもらえば…」
「うんうん!緊張しちゃうもんね!」
「危ない事は事務所NGだからな」
やっぱり締まらない3人。
普通に下半身ブルブルしている。それを誤魔化す様にして祭りで遊ぶ準備を始める。
その後ろ姿を見た老婆は小さく笑う。
「この世は地獄じゃが…人までは地獄ではないようじゃない…」
自信のない背中がやけに大きく見えた。
「浪華源三郎!これがワシの名前じゃッ!」
老婆はしゃがれた声で叫ぶ。
それに対して風華は驚いた顔をして振り返る。
「お…おばあちゃん!権三郎さんなの…?」
「ワシはオスじゃよ〜!」
風華の体には鳥肌が走った。
後頭部に当たった突起物の正体が老婆…ではなくて源三郎のミニマグナムだった事にではなく…。
あの挑発に低身長が妙に自分と重なってしまい…来たる将来に思わず鳥肌が立ってしまったのだ。
そして風華は両手を丸めて決心する。
「俺…髪切る…」
「えぇッ!?」
風華の一大決心に叫び声をあげてしまう二人。
風華の短い髪の毛を想像することができない!って言うかボブも良いからずっとボブでも良い!遥真は後日そんな感想を述べていた。
次の投稿は日曜日です。




