1-5 赤いMOONCHILD (墜落)
あまり関係ないかもです。
------
今から十数年前の夏。
その日は夜が来ないのかと思うほど日が長かった。天気も悪い。
窓に風が打ち付けられ、外に出てしまえば返って来れないほどの異常気象。だが太陽は出ていた。
この日は誰も外に出ずに一日中家の中にいた。
普段なら寝ている時間も太陽が邪魔をする。
寝付けない人がほとんどだった。
家族団欒できる…。と考えれば良いのか…。
日が長いとは言えど時間は進んでいる。
風の流れによって雲が太陽を隠そうとする。
その時…異変が起こった。
眩しすぎるほどの太陽が嘘の様に消えた。
先ほどまでの太陽に電気をつけてる人はおらず世界は真っ暗になった。
消えた…と言うよりも突然雲が加速した…と言った方が正しいのかも知れない。
その時間には深夜のニュース番組をやっていた。一日の振り返りのニュース…普段なら退屈で必要もないかも知れない。
だが皆その深夜のニュース番組に釘付けになっていた。
それは流星群の様だった
映し出されていた暗闇に振り注ぐ謎の光。
大きさはまばらだが…はっきりと視認できるほどの大きさの粒が無数にあった。
「ノストラダムスの予言は本当に当たっていたんだ!」と誰もが口を揃えて言った。
世界の終わりはここなんだ…。
不思議とニュースキャスターも焦っていない。
突然の終わりに放心するだけ…。
それはテレビの前の人々も同じだった。
それから数分が経った…
その光がそのまま地球に接触する…。
誰もがそう思っていた。
だがその光はまばらに消えて行った。
しかし…ある一つの赤い光だけが残ってそのまま地球に接触した。
予想していた爆発音は聞こえない。
津波の音や暴風の音も聞こえない。
落ちたのでは無く直前で消えた様にも感じた。
…また数分が経った。
目に映る景色…耳に入る雑音…
生きているということを実感する。
緊張の糸が途切れた…皆その場に崩れ落ちる。
その事件はその時点で終わる。
…と思っていた。
だが一つの界隈がこれを機に勢いを取り戻す。
それはオカルト界隈だった。
かつて人の猜疑心を武器に栄えていた界隈。
しかし数年前には水面下を辿っていた。
この事件は誰もが不思議に思っていたことがある。それは赤い光の行方。
事件の次の日、全国的に赤い光の行方を追う者が後を絶たなかった。
しかし結果は皆同じで見つからず…。
だが皆、赤い光が落ちるところを目撃した。
そこにオカルト界隈は着目した。
オカルト界隈はその光を宇宙人の卵だと言った。別に証拠などはない。
だがそれで人々は盛り上がった。
オカルト界隈はそれだけにとどまらずその飛来物を「MOONCHILD」と名付けた。
メディアも政府も報道しない謎の飛来物を…
気になるなという方が無理だろう。
だが次第にそれも勢いがなくなっていく。
結局は「MOONCHILD」も見つからなかった。
赤いカケラ一つでも見つかればもう一度再熱する人も現れる事もあるが…それすら無かった。
「MOONCHILD」から数年…もうこの話題を出すのはオカルト界隈しかいない。
それ以外の人々はとっくにこのことを忘れて普段の暮らしに努めていた。
それから約三年後…。
とある事をきっかけに「MOONCHILD」は動き出した。
それはオカルト界隈の力では無く、ある一人のダイバーの働きで動き出した。
とある場所の深海で謎の球体が発見された
このニュースはオカルト界隈だけで無く世界に衝撃を与えた。
発表された写真には大の大人がまるまる一人入れるほどの大きな鉄の球体。
そして謎の球体を覆う海藻は焼けこげていた。
発見された場所も飛来物の墜落地域とも近い。
これはまさに「MOONCHILD」だった
そう断言したのはオカルト界隈だけではない。
あれだけ報道をしてこなかったメディアや政府も、「MOONCHILD」だと声明を出した。
ついにオカルト界隈は政府公認の組織となった。
それと同時にオカルト研究会と政府の研究者たちは、この球体の解明に努める事を発表した。
まず球体を開く事を第一の目的とした。
ダイバーが触れた際に正体不明のエネルギーに手を焼かれた出来事もあった。今の技術力じゃ到底敵わない。
球体を開くには数年は掛かると考えられていた。
だが実際は違っていた。
技術の進歩というものは果てしない。
ものの数ヶ月でこの球体を開ける事ができる様になったのだ。
この発表に各国な著名なマスメディアが研究室に集まっていた。
球体の中身に誰もが注目した。
研究員たちは重装備で慎重に動き出す。
プシュゥ…
空気が抜ける音が聞こえる。
各メディアはそれと同時にカメラを向ける。
あまりの緊張にかカメラを構えるのを忘れるものもいた。
球体が少し開く…。
中からドロ…と粘り気のある液体が流れる。
濃いピンクの様な液体。鼻に突き刺さる様な刺激臭。
火花を上げて故障するカメラも出てきた。
研究室は阿鼻叫喚に陥る。
そしてついにその中身が現れる。
その中の物に世界中は言葉を失う。
それに例外は無かった…。
謎の球体の中にはタコの様な生物がいた。
頭が大きく丸く、目は小さい。体も細い。
まさに異形だった。
幸いな事に生きている様子は無かった。
だがその手にはしっかりと操縦桿が握られていた。息絶える前まで足掻いていたと考えると、恐ろしい。
なにより人々に恐怖を植えつけたのはその造形だった。
人と全く同じ姿形をしていた。
手足の指も欠ける事なく綺麗に揃っている。
鼻の穴や耳、そして乳首やヘソ。
妊娠3ヶ月目の胎児の様な見た目。
これはまさしく"宇宙人"だった。
政府はこの宇宙人の解剖する事を発表した。
そして「MOONCHILD」を新たに発見した者には賞金が出る事も発表された。
一夜のうちにこのニュースは世界に広まる。
残された他の「MOONCHILD」を探す旅に出る者も現れた。
「MOONCHILD」は順調に見つかった。
技術の進歩もあったが政府の支援も大きかった。禁止海域にも入れる様になったり…。それだけ「MOONCHILD」というものに政府は釘付けになっていた
その中身ははっきりとしている物や液状化している物もあった。
このまま何事もなく終わる。
…だが一つだけ疑問が残った。
あの夜に皆の目にはっきりと映った、"赤い光"だけが見つからなかった。
延べ数万の人を動かした"赤いMOONCHILD"は結局見つかることは無いまま幕を閉じた。
------




