↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANCIENT   作者: 美朱太
天地獄のはぐれ者
PR
42/95

7-9 夏色

アンラッキーな風華は良いとして…

話は遥真と海熊の戦いに戻ろうと思う。


勇たちが逃げてから…遥真と海熊は何度も何度も水中でぶつかり合った。

しかし…海熊は無傷…。ちなみに遥真も無傷だ。

 「な…何がしたいノダ?」

 「ヒッティングアンドアウェイング作戦…」

 「…な…なんなんだお前は…他の能力者どもと…違いすぎルゾ…」

 「ふッ…俺が強すぎるって事か?」

 「それ以前の問題ダ…」

 「あまりにも戦いにくすぎるノダ!」

その衝撃なセリフに遥真はショックを受ける。

仲のいい女友達に告白したら「私彼氏いるから」って言われてフラれたくらいのショック。

遥真は失恋マンだから余計に感じやすい。

 「元来人というものは…自らを犠牲にして何かを護ろうとするもノダ…」

 「それは歴史が証明してイル…」

 「死ぬのは怖くないッ!とか俺がみんなを守るッ!とかか?」

 「そウダ…」

 「人はもうすでに動物ということを忘レ…」

 「生き残るより発展を選んできた種族ダ…」

 「己の命の価値を理解していない者の集まリダ…」

 「つ…!つまりなんだぁ?」

 「人は驕っているのダヨ」

 「わぁ!ありがとう!」

 「それとはお前は全く違うのだ…」

遥真は視線を落として小さく笑う。

主人公覚醒シーンの様だ…。ちゃんとカッコいいのが憎いね。

 「まぁ俺はまだキスもした事ないし…彼女もいないし…」

 「献血行ったら喜ばれる種族の方の人間だゾ!」

 「だから絶対に死にたくないんだゾッ!」

 「戯言ヲ…」

 「や…やっぱり俺ってイケてるのか?」

 「ううんイケてなイゾ」

 「ひ!酷いゾッ!」

 「だがお前の様に面白い者は初めて見ダゾ」

 「な…!なんだ!?急に顔面に対するDISなのかメーン?」

1人で爆笑している海熊。

やはり年配の人だからなのだろうか…笑いのツボが変だ。野球観覧とかで突然笑ったりするのとおんなじ感じだ。

 「何かに取り憑かれた様に戦い…死んだ様な目のまま死んでイク…」

 「だがお前は少し違うノダ…」

 「第一に仲間を考え…二つ目に逃げる事を考え…戦うことなど二の次だ」

 「二つ目…二の次…」

 「フハッハッハッ!」

また1人で大爆笑をする海熊。

普通に引いてしまい遥真も愛想笑いだ。

そんな事どうでもいいのか海熊は笑いながら遥真に近づく。

若干警戒するが…もうすでに海熊からは殺気が感じ取れなかった。

 「今はその様な人間の方が多いノカ?」

 「うーん…昔はそういう人が多そうな印象だったけど…」

 「今は自分と家族の事優先で…たまに仲間!とかいう奴がいて…」

 「なんかまぁ良い意味で今の人間なんて自分勝手なんだよなぁ多分」

 「人という者は…私が思うよりも何倍も早く進化していくものダナ…」

 「四界戦争の時…地球崩壊を目的として送ラレ…」

 「講和後も1000年おきに文明崩壊のために動く私の方ガ…」

 「何も進化をしていなかった様ダナ…」

 「まぁこれが進化ってより退化だと思うけどなぁ…」

 「ふっそウカ……」

なんだかイケメン感が増してしまった遥真。

イキリビビりな風華や、女の子みたいな風華よりも遥真の方が主人公感がある。

あんなに笑っていた海熊は今度は何かを悟った様な表情をしていた。

 「どうやら私は命を奪い…恨みを買い過ギタ」

 「…かと言ってこの星に送られた時から…私の星に帰る事もできナイ」

 「私の居場所は何処にも無かった様ダナ…」

 「だが最期に良い人間を見タナ…」

 「一思いに…私を討伐セヨ…!」

何だか都合よく解釈された気がする。

1人で熱く語る海熊を止めれない遥真。

海熊は両手を横に広げて清々しい顔をしている…なんだかキツイ。イケメンなのにちょっとキツイ。正義感強すぎる奴に引くのとおんなじなんだろう…。


遥真は若干笑いそうになりながら海熊に近づき…また離れるのを繰り返す。ピストンの様だ。

目を閉じていた海熊は片目を開く。

 「私の心が変わらぬ間に…!早く殺セ!」

 「いやぁ別に殺す気なんて無くって…」

 「な…何を言っているノダ?」

 「俺はあの猫ちゃんとは違って殺す気なんてさらさらないからさ…」

 「別にこの引き上がった海を下げてくれるだけで良いんだよね〜」

 「フッ…愚か者め…滅ぼすゾ?」

 「まぁそれは次お前が復活したらでいいじゃないですかぁ〜!」

 「とりあえずこの星にしか住めないんだったら海と共におとなしくさりなされ」

 「郷に入っては郷に従え」

 「ここは広いジャパーンだぞ?」

ジャケットを脱ぐ仕草をしている遥真。

テレビを見た事がないのか海熊は冷めた表情をしている。完全に滑っている。

この非国民!と言いたいが国民では無かった。

気まずい空気の中、遥真はシッシッと手を振って海熊に催促する。顔には出てないが悲しかったんだろう。

だがなかなか海熊は動こうとしない。

 「早く行きなさい!」

 「俺の気が変わっちゃったらどうするのですか!」

 「水中呼吸に…空中浮遊…その能力から推測するに…お前の能力は四聖獣を纏う能力者ダナ?」

 「…!なぜそれを…!」

 「幾度となくその能力者が私に挑み…この海の塵と化していった…嫌でも覚えてしマウ…」

 「一見最強に見えるその能力の唯一の弱点…」

 「それは効果時間…」

 「短期間で一体だけなら30分…二体なら10分と徐々に効果時間が短くナル…」

 「お前呼吸が保たないのだロウ?」

その言葉に遥真はハッとした。

四聖獣の能力の注意点を読んでいなかった事に…今更気づいたのだから…。

海熊は名探偵気分でドヤ顔をしているが、当の本人はそれに全く気づいていなかった。

これはどっちがダサいのだろうか…。

 「く!くそ!おぼえていやがれー!」

三下のセリフを放って泳いで行く遥真。

しかしここは海の底。真っ暗で地面に泳いでいる事にすら気づいていない。

みるみるうちに顔が真っ青になっていきついに限界を迎える。

 「ゴボッ!」

口から大きく泡が出る。

遥真は目の前が真っ暗になっていき…最期には海熊が徐々に近寄る姿を見ながら意識を失う。

遥真の夢は胸の大きな看護師の膝の上で死ぬ…と決めていたのに…こんなところで死ぬなんて残念。

 

 「…ん?」

 「なんだこれ…餅か…?」

遥真激しい光にさらされて目を開く。

目の前には綺麗で大きな形をした大福かお餅の様なものがあり…体力を消耗していた遥真はそれに手を伸ばす。

 「うむうむ…柔らかい…」

 「なかなかに美味しそう…」


 ドンッ!


しばらく触っていると後頭部に衝撃が走る。

痛すぎて寝ぼけていた遥真は完全に目を覚ます。多分頭がナイアガラの滝になっている事だろう。ちょっとぬるい。

 「も…もうお嫁にいけないぃ…」

目の前では胸を押さえ遥真を睨みつける舞。可愛いお顔だが鋭い目つきが遥真の胸に突き刺さる。

そして舞の後ろには玲那と杏…それ以外の男女共に…遥真を今にも殺しそうな目をしていた。

まぁ男は羨ましさや恨めしさが共存していた。

遥真は舞の胸を数秒の間触ったと分かる。

その次に自分が生きている事を実感する。

均一に柔らかくて…持ち上げる事なんて容易くできそうで…舞の彼氏になる人物が羨ましい。

 「え〜っと色々聞きたい事があるけど…」

 「とりあえず舞ありがとう」

 「柔らかくって触りやすかった」

 「はっ!遥真くん!本当にお願い…!」

 「し…死んで?」

こんなアイドルみたいなビジュアルでメンヘラみたいな事を言う舞ちゃん。刺さる人には刺さるんだろうが…あまりの舞の殺意に遥真は冷や汗を流す。

 「お…!お…!お嫁に行けないなら俺の横に来ても良いよ!」

遥真は負けじとまだボケを続けている。キモが座ってると言うのかキモいが居座ってる。

周りの人物たちはそんな事興味がない。

舞が涙を流している背中を撫でてるだけだ。

男たちも流れで舞の背中を撫でようとするが…今のこのおチビな舞ちゃんは水着。触らせるわけにはいかない。玲那は番犬の様な目で男どもを睨む。怖い。

 「みんなが膝枕したら遥真くんが目を覚ますって言ってたからやったのに…」

 「初めてのパイタッチぃ…なんで遥真くんがするのぉ…」

 「うぅ…触られるならせめて優しい子が良かったよぉ…」

その言葉に先頭モードに入った女性陣。

遥真を睨みつけ…遥真はオドオドしている。

このままでは溝が生まれてしまう!

今までの感覚でそう感じ取った勇は女性陣の前に立つ。

 「…!?」

視線が痛すぎる。正座をして立ち上がった時の足の痺れに似ている。それくらいに女子の視線というのは刺激が強い…。

 「は…遥真海の中でいったい何があったのですか!?」

女子が怖くて敬語混じり。

 「海熊と戦って…でなんか海熊が勘違いして…平和的に解決しそうになったんだけど…」

 「能力が切れて気を失ったんだよ」

 「で…目が覚めたら体が縮んでしまっていた!…訳では無く舞のパイパイを触る事になったんだよ」

 「てかなんで俺は生きてるんだ?」

 「なんか海熊がお前を水中から引き上げたんだぞ?」

 「そんで海熊が全部を元通りにして帰った」

 「えッ!?」

遥真は慌てながら海があった方を見る。

やはりそこには今にも迫りそうな海が…なんて事はなくなっていた。

白い砂浜が広がっていて、水面は元通りになっていた。しかも流されたはずの海の家や、パラソルが砂浜には携わっていた。もちろんクーラーボックスも復活していた。

 「俺が寝てる間に何があったんだ…!?」


-----

それは遥真が倒れた後のこと…

海熊の目の前で気絶した遥真。

上半身裸…その筋肉ボディ…。海熊は遥真の顔と体をジロジロと見ている。

 「…バカ者メ…」

海熊は一度ニヤけると、すぐに遥真を背中に乗せて一目散に上へと泳いで行く…。

 「私も随分魚を殺してしまったようダナ…」

海の中には魚の死骸が浮いていて水槽の微生物視点の様な気持ちになる。

 「このままではこの男の命が保たなイカ…」

 「…確かあの猫娘(クゥニャン)と呼ばれていた女…」

 「あの小娘に自然エネルギーで言葉でも送ってみるか…」


 「…っ!?」

 「頭が痛いにゃぁ…!」

通常の状態に戻ったモカは、激しい頭痛によってまた猫ちゃんに変化してしまう。今はビキニではなくって制服でまた別の可愛さがある。

それと同時に脳内にメッセージが送られてくる。おばあちゃんと連絡してるのかと思うほど遅く、一文字一文字丁寧に送ってきている。

 『小娘…私この男に敗北し身を引ク』

 『男呼吸出来ていない…私が処置すれば命は助カル』

 『私の元へ飛べる者を寄越セ』

モカはすっごく…それはすっごく焦っていた。

なぜならモカは自然エネルギーの簡単な事を知っているものの…メッセージを送り返すことなんてできない。まずそんな機能知らなかった。

そんな事知ってか知らずか海熊は淡々とメッセージを送り続けている。

 『すぐに寄越セ…』

 『信用なら無いなら私がそちらは向カウ』

 『私の処置の邪魔をするんじゃナイ』

そのメッセージの後…しばらく海熊からメッセージは来なくなる。


モカは急いで勇や風華の元へ走る。

少し離れた所にいたモカはスピードを上げながら走っていく。

だが現在の風華は…モカの馬乗り事件後で、舞に完全に嫌われていて意気消沈している。

 「お二人にゃん!」

 「え?」

 「…え?」

 「あ!猫ちゃん!ちゃんと舞さんにッ!」

 「そんな事どうでも良いにゃっ!」

 「あうぅ…」

 「あの筋肉坊主いたにゃろ?」

 「あ〜遥真のことか?」

 「アイツが海熊を倒したにゃけど…」

 「でもなんか海熊は討伐されてなくて…で今なんか呼吸出来てないみたいにゃぁで…」

 「…?」

キョトンとしている勇と風華。

"ありのまま今起こった事ニキ"はこんなもどかしい気持ちを抱えていたのだろうか…。

 「あぁもうよく分からないんにゃけど!」

 「とりあえずアンタ飛べるでしょにゃ!」

 「早く行ってきなさいにゃぁっ!」

 「…ひ…人使いな荒すぎる…」

 「じゃあ頼んだにゃよ!」

風華は悲しみを背負って飛んでいく。

だが風華は重大な事に気づいてしまった。

後ろを振り返るともう2kmくらいは離れてしまっている…。もう後戻りはできない。


 「2人カ…」

だがそこに遥真を背負う海熊が現れる。

寝てしまった子供を背負っている親の様な愛を感じています。

 「お前ら私をあの丘へ連れてイケ…」

 「な…!何をするつもりなの!?」

 「この男に入っている自然エネルギーと…体に余分に入っている水分を抜ク」

 「そして私の能力によって破壊した場所を直すノダ」

 「私とて万能ではない…この者の命が尽きたら蘇生はできナイ」

 「時間がない早くシロ…」

 「な…!なんでそんな遥真気に入ってるか分からないけど!」

 「とりあえずついてきて!」

海熊は風華の後ろを突いてくる形で飛行する。

ちなみに信用の証として遥真は風華の背中に預けられた。だいぶ身長差があって遥真が覆い被さっている。

そして無事に丘へ辿り着いた海熊と風華。まぁ…遥真のせいで前が見えなくなった風華は、空を飛ぶカモメにぶつかったりしていた。

 「にゃぁ!?本当に海熊が目の前にいるにゃ!」

 「しゃぁぁっ!」

明らかにブチギレているモカ。爪を尖らせているが…まだ少し濡れた土に腕を取られてしまっている。可愛いがアホなのかも知れない。

 「大丈夫なのか?風華」

 「わ!分からないけど…遥真が蘇生されるかも知れないなら賭けても良いんじゃない?」

 「まぁ確かにそっか」

 「アミョショーハーニャーギョー」

確実に日本語ではない言葉というか呪文を唱えて、遥真の胸の辺りを触る海熊。

するとみるみる間に水が体から抜けていくのがわかる。水蒸気になって体から水が抜けていっている。

真っ青だった顔色に正気が宿っていっている。

しばらくすると完全に顔色が戻った遥真。

次に海熊は片手で遥真の両頬を押さえて口を大きく開けさせる。

タコの様な顔面をしてしまっている遥真。

 「ん…」

 「え?」

普通にキスをした海熊。

辺りの人間どもは見たくもないBLに普通にドン引きしている。

しかもそれはすぐに終わるキスでは無くディープだ。舌は入ってはいない。

井上陽水でさえも驚く甘い口づけ。

そして一分ほど経ち海熊は口を離す。

その表情はどこか満足そうな顔をしていて…絶妙に気色が悪い。

 「お…終わっダゾ」

頬をピンクに染めている海熊…恋愛上手そうな男が案外照れ屋だとモテる。

 「えと…遥真目覚めないけど…」

 「数分したら目が覚メル」

 「それまで安静にさせてイロ」

 「お前はこれからどこに行くんだ?」

 「私はこの地を復旧させた後に長い眠りつくことにスル…」

 「あー!そう!じゃあね!」

勇は満面の笑みで海熊に手を振る。

 「し…信用できないとか言エヨ!」

 「まぁその時はそん時で…アンラッキーだったていうことで…」

 「…の…呑気すぎてこの星の未来が心配ダ…」

 「お前も地球人になれたんだね…」

 「…も…もう疲れダゾ…」

海熊は呆れた様な面をして海に飛び立つ。

そしてある程度の場所に行くと両手を合わせる。…いただきますをして全部飲むのかも知れない!期待の眼差しで海熊を見る風華と勇。人の不幸が蜜の味!

 「宙天地獄…全てを直セ…」

 「すいきんちかもくどってんかい…めい!」

やっぱり海熊は情報が古いみたいだ!

…しばらく時間が過ぎたが何も起こらない。

 「あ間違えてた」

 「すいきんちかもくどってん…解ッ!」

またどうせ何も起こらないのだろう。

そう思っていると海熊の言葉に答えるかの様に海面が暴走しだす。いや沸騰している様に見えた。ボコボコと海面が動きだす…


 ピカッ…!ちゅう…


すると突然目の前が真っ白になった。

その光は数秒間続いて…徐々にその光も弱まっていく。

 「ん…?」

 「な…なんだこれ…?」

真っ白な光…人々は海熊が裏切ったと思った。

この光は死んでしまったから見えるもの…。

悲しみより残念と思ってしまった。


だが目を開けてみると…そこは何の変哲もない景色が目の前に広がっていた。

パラソルが聳え立ち…海の家の旗が元気よく揺れている。

緑が際立つ山は綺麗な形をしていた。

この全てが元々は海熊の能力によって破壊された箇所だったのだ。

結果的にこの戦いでは…犠牲者が1人もおらず…影響があった箇所は一つもなかった。

この戦いで残ったのは海熊が暴走し、その行いを自分の命と引き換えに償ったという事実だった。

だいぶ駆け足になってしまった…

次の投稿は水曜日19時です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。