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ANCIENT -無代譚-  作者: 美朱太
天地獄のはぐれ者
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38/40

7-5 足音

太陽が西に傾き、日差しも弱まった午後2時。

とある男2人女1人の男女グループが、熱々の海岸近くの道路のアスファルトに立っていた!

だが3人とも高校の制服を着ていて、泳ぎに着ている様には見えなかった。

 「うひょ〜!巨乳美女がいっぱいじゃ〜!」

ガードレールに乗り出しプルンプルン揺れる巨乳美女を眺めているこのイケメン。

身長は180cm近くあり金髪センター分け、スタイルがえげつないイケメン。

普通に俳優でもやっていけそうなこの男は葉月翔(はつきしょう)

見た目通り老若男女にモテまくるが…女好きのせいで生まれてからおよそ18年間一度も彼女ができたことがない。

絶賛べっぴんな彼女募集中が10年間続いている。

友人からのあだ名は「フール」。決してHuluではないので悪しからず。

可愛くもカッコ良くもないあだ名を、変えてもらうことを希望しているが普通に却下されている。

 「あ…あんまり見たらダメだよ翔…」

少し頬を赤く染めながら、ガードレールに乗り出す翔を力いっぱい止めている魚塚虎之助(うおづかとらのすけ)

前髪が目にかかりあり足も首の付け根らへんまであるほどのロン毛。見た目通りのかなり暗い性格…だが不思議と不潔だとは思わない。普通に良い匂いもするし…ファッションセンスもある。

翔曰く、虎之助は前髪を上げるとかなりの美形のイケメンがそこにはいると言う!…ありきたりなラノベの主人公なのか!?

友人からのあだ名は「オルル」。

…はっきり言ってかなり可愛いあだ名だ。

でも本人は恥ずかしいから気に入っていないらしい。…まぁ言い出せずにいるが。

 「フールを連れて来るんじゃなかった…」

前述した2人を腕を組みながら睨みつけるこの美少女…というより美人というのが似合う少女。ストレートヘアがよく似合うこの子の名前は綺奈粉モカ(きなこもか)。

可愛らしくふわふわしてそうな名前。

…だが名前からは考えられないほど凛とした少女で…学校では風紀委員として活動している。

男女問わずに怖がられている。最恐の綺奈粉ちゃんだ。

その反面長いまつ毛に腰につくほど長い髪の毛で…性格なんて完全に上回ってモテている。…やその見た目と性格のギャップがあるからこそモテるのだろうか。

いやまぁそれにしても顔が綺麗すぎる。

友人からのあだ名は「コティ」。

前2人のあだ名を決めたのがモカだ。

そして自分のあだ名も自分で決めている。

 「良い?あんたたち!」

 「私たちは海に遊びに来た訳じゃないの!」

 「最近話題になってる海熊を倒すために来たんだから!勘違いしないで!」

 「私の足を引っ張るつもりなら2人とも帰って!」

男2人の胸ぐらを掴んだ容易く宙に浮かすモカ。あまりの力強さに引き攣った笑いしか出てこない。

 「ぼ!僕もなの!?」

額から汗ダラダラな虎之助。額に前髪もかかっているから余計に汗がダラダラなんだろう。

 「当たり前でしょっ!」

 「あ…あはは…」

恐怖で乾いた笑いしか出てきてない。

一方何も話していない翔はというと…。

 「…」

あまりの恐怖に白目を向いて気絶していた。


 ドンッ!


流石にまずいと思ったモカは翔と…ついでに虎之助をガードレールに投げ飛ばす。なんと悪手なのだろうか。モカのお嬢様っぷりが垣間見える。

 「い…痛い…」

生き返った翔は大きなタンコブを撫でる。

 「あ!あんたたちがふざけてるのが悪いんだから!」

 「フンっ!早く行くよ!」

 「はい…」

大人しくなった翔と元々おとなしい虎之助はタンコブを抑えながらビーチに向かう。

その間にも懲りない翔は美女の胸をチラチラと見ている。もちろんその美女の反応はかなりの好印象。イケメンってなんでこんなに幸せなん?

モカの眉がピクピクしているのを見た虎之助はちぢこまりこ。

 「はぁ…」

ビーチにたどり着いたモカは大きくため息を吐く。

 「よいしょ…」

服を両手をクロスさせて掴み制服をたくし上げる。えろい!はっきり言ってえろいよ!

翔や虎之助のみならず、周りの筋肉隆々なイケイケな彼女持ちでさえセクシーなモカに視線を奪われる。

 「うぉぉぉ!」

そして綺麗なヘソが見えて細くシミもないウェストを超える。数cmモカの体が露わになるとともに男の欲望も増していく!

ついに待望の胸!胸だ!お乳だ!

目に焼き付けようと男どもは前のめりになりモカの姿を見つめる。

 「え?」

 「は?」

 「ま?」

こんな反応になるのも当然だ。

なせまならその胸の部分にあったのは予想していたお餅ではなく…肩紐のある紺色のシンプルな三角形のビキニ。さほど大きくないお乳でもこの水着なら映える。

下が水着だったとしても目の前で脱いだ事実は変わらない。男どもは鼻の下を隠すのに必死だ。

 「なんだよ〜!コティも泳ぐつもりだったか!」

胸を見ながらモカに近づく翔。

モカは殺した蝿を見るように翔を睨みつける。

 「何言ってるの?」

 「海熊は海に生息してるんだから海に潜らなきゃダメでしょ?」

 「ま…まぁそうか…」

 「早くフールもオルルも服脱いで!」

 「いや…僕…下水着じゃないんだけど…」

 「俺も下普通にパンツだぞ?」

 「言い訳しないでっ!」

フックを外してファスナーを下ろしスカートを勢いよく脱ぐモカ。やはりその下はビキニで男性陣は肩を落とす。

期待しすぎだと思う。こんな美人が目の前でビキニに着替えてるんだからもっと喜ぶべきだ。


制服を畳み終えておしゃれな机に置いたモカ…。するとモカはその場にしゃがみ虎之助の股間を前に顔を合わせる!

 「モ!モカっ!?モカ!何するの!?」

 「…?」

不思議そうな顔をして虎之助の、制服のズボンのベルト通しを握りしめる。

モカは険しい顔でものすごい力でズボンを下ろそうとしている。

周りの男からの羨む目…そして必死にズボン越しに股間を睨むモカ…。

虎之助は前髪に隠れた目が潤みながら必死に抑えることしかできない。

 「早く脱いでっ!」

 「こんな事してる間にも海熊は迫って…っ!」

 「や!やめてよ!」

 「…っ!」

突然ズボンから手を離したモカ。

だが相変わらず綺麗な顔に似合わず険しい顔をしている。

 「何かすごいのが来るにゃ…っ!」

口元から猫のように白く長いヒゲが生え、宝石のように輝く瞳孔が縦長になる。

そして体を唸らせながら周りの人々を睨みつける。

 「もしかして海熊が来たの…?」

 「違うにゃ…!」

 「また別の人型の能力者が3人にゃ……」

サラサラな髪の毛を揺らしながら辺りを見渡すモカ…。尾骨から生えた黒い尻尾がフリフリと揺れている。なんというか下品だ。

 「いたっ!あいつらにゃ!」


 ビュンッ!


その瞬間ッ!モカは砂を蹴り上げ勢いよくその人物の元へ飛びつく。数mもあった距離を一瞬にして詰める。

 「いて!」

あまりの素早さに砂埃が舞う。

 「ニャァッ!」

距離を詰めている最中に生えた爪でその人物を斬りつける。体ではなく空気を切り裂く音が響く。


 「ぬおぉ!?なんだぁ?」

その人物は間一髪でその攻撃を避けたのだ。

そして炎天下に燃える砂浜に転がり体勢を崩す。

 「…!なかなかやる様にゃね…!」

砂浜に四つん這いの体勢になり、お尻を高く上げ鋭い眼光でその人物を見るモカ。モカはやっぱり男の劣情を舐めすぎている。いやらしい目で見られてるのが分からないのだろうか。

真剣なモカとは対照にその人物はモカなんてどうでも良さそうだった。

 「あっちぃぃぃッ!」

 「背中の皮膚が焼けるゾッ!」

背中だけで砂浜から飛び上がって暴れる男。

このコサックダンスを踊っている男は遥真だ。

そしてこの同じ様に慌てているのは風華。そして遥真を見て爆笑するのは勇だ。確定した。

 「遥真ッ!多分それ水で冷やしたほうがいいよ!」

 「早く海の中に入った方がいいよ!」

 「あひょ!分かったゾ!」

風華に言われた通り遥真は海水に飛び込む。

勇はそれを見て何か嫌な予感がするが…それを言う気なんてさらさらなかった。

 「あひゅぅ…」

水に浸って心地がよさそうだ。

だが徐々に遥真の顔が真っ赤になってくる。

勇の予想通り海水の塩が焼けた全身に突き刺さったみたいだ。茹でタコな様に真っ赤。

 「ギャァァッ!痛ェェッ!」

遥真は水面を揺らして飛び上がる。

そんな遥真を追撃する様に直射日光が痛めつけられた肌を攻撃してくる。

 「ギャァァッ!」

あまりにも悲惨。

風華もさらにアワアワしてきている。本当にアドバイスをしてあげたつもりだったんだろう。

優しさが時に仇となる。ノートにそう書いとこう。

 「あ…あんたたちなんなんにゃ!?」

 「ははは…ごめんなさい美人な猫ちゃ…」

 「あ…あれ?猫ちゃんって話せるっけ…」

 「…!?ど…ど変態ぃぃッ!?」

遥真は痛みで顔を真っ赤にしてた。

でも風華はそれとは真逆で顔を真っ青にして海へと逃げ込んでいた。

モカは美人な顔に似合わず大きな口を開けて呆然とすることしかできない。こういうのをギャップ萌えというのだろうか…かなり好きです。

 「…?」

 「い!いきなりなんなんだ!」

 「遥真も…風華も!大怪我じゃないか!」

 「にゃんで私のせいにゃ!?」

 「そのデカブツはともかく…あの男女は自滅にゃよ!?」

 「死んだアイツらを愚弄するのか!」

 「この猫娘(クゥニャン)め!許せん!」

 「な…なんかアンタにはついていけないにゃ…」

大丈夫だよ!とモカに言って撫でたい。そしたら目を瞑って膝の上に乗ってきそうだ。

翔も虎之助も呆れている。多分陽キャの翔もこの独特な陰キャノリについていけない。こっちサイドであろう虎之助も…。

 「ていうか!アンタら能力者にゃろ?」

 「…まぁなんかそうなった」

 「猫娘はコスプレが好きなのか?」

 「私はこれが能力なのにゃ!」

 「バカにするにゃ!」

 「…ッ!」

口調がキツイ子が「バカにするにゃ!」って可愛い事を言うの…しかも不意に…。

…勇も同じことを思っているだろう。めちゃくちゃヒロイン適正あるじゃんと。

 「あ…アンタたちは誰から能力を貰ったにゃか?」

 「えっと…これは天国の神…」

 「いかんいかん…天国のボケ老人から…」

 「…っ?フール…オルル戦闘準備にゃ…!」

その言葉に翔と虎之助は面倒くさそうにモカの両隣に立つ。…なんでこんなにかっこいい佇まいになるんだろう。やっぱりビジュがいいからなのか…。

 「あ…!悪い!」

 「今頃謝っても関係ないにゃ…!」

 「お…俺は無神教で無神経だから…!」

 「でも神様も神を信じることを強制しろなんて言ってないだろ!?」

宗教問題の本質に踏み込んでしまう勇。

場合によっては消されそうだ。

だが目の前の3人はそんなことどうでも良さそうだった。

 「…!アイツのあの余裕…たくさんの人を殺してきたツラをしてるにゃ…」

 「ぼ…僕にはそんなに悪い人には見えないんだけどなぁ…」

 「俺もアイツらはただの愉快な頭のおかしい奴らにしか見えないけどな〜」

 「油断するにゃ!」

 「あの男のツラ…!完全犯罪者のツラしてるにゃ!」

 「…」

心にブッ刺さる言葉を悪気なく発するモカ。

勇は余裕そうな表情をしてるが心は泣いている…。いくら笑っても…心は泣いている。僕には分かってるんだよ〜なんつって。

 「アイツらは神の使いにゃ…!」

 「また地球に攻めて来るつもりなんにゃっ!」

 「やるしかないのねぇ〜」


 バサァッ!


翔の背中からは漆黒の翼が生える。両手を広げてもまだ届かないほどの鷲の様な翼だ。

太陽の光に反射して輝いていた金髪の髪の毛は、みるみるうちに雪の様に鮮やかな色の白髪に変色する。…厨二心がくすぐられる。

そうしてバサバサも空へと羽ばたく。

 「はぁ…頑張ろうかなぁ…」

虎之助は長い前髪を後ろに持っていき結ぶと、歯がギザギザと鋭く尖り背中からは黒色の背鰭が生える。翔には見劣りするものの…元からのビジュも相まってかっこいい…。

だが勇の表情はクールのままだった。

 「ふッ…3対1か…」

 「俺も舐められたもんだぜ…」

あまりの迫力に3人は汗を流す。

普通の海水浴ではまず見えない光景に…他の客も思わず見入ってしまう。まぁ大概の人は引き締まっているモカの尻を見てる。憧れや下心も入り混じる視線にモカは気づかないのだろうか?

 「…舐めたら…死ぬぜ?」


 ピュンッ…


情けなく手首から出て来る黒縄。

目の前のかっこいい登場に黒縄は遠慮をしている様だ。多分made in japanだ。知らんけど。

ていうか今まで勇が服を着ていたから気づかなかったが、黒縄は手首から出てくることが多い様だ。

 「早く能力を見せるにゃ!」

 「…ふッ…俺の本気を見せたくなかったんだがな…」

 「必殺!」

終わっていた空気感はその勇のポーズで、また張り詰めた空気へと逆戻りする。

モカもゴクっ…と生唾を飲む。

 「あ…あやとり!」

 「ながれぼし!」

両腕から出した黒縄を操り、あやとりの「流れ星」を披露する勇。これがあやとり世界大会で勇が賄賂を渡していても最下位を記録するほどのクオリティ。

 「…わ…悪かったにゃ…」

 「ごめんにゃさい…辛かったにゃね…」

辛い時は優しさが胸に刺さってしまうもの。

勇もモカの優しさに思わず肩が震えてしまう。

 「とりあえず…人がいない所に行こうにゃね?」

あんなに冷たかったモカから母性が醸しでる。

そして4人…とゴミの様にモカに手首を掴まれる風華と遥真。

誰もいない場所までこの4人と2個は歩き出す。

次は水曜日どす。

最近死にたくなる事が結構あるからジャルジャル見て癒されてます

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