7-1 turn over?
にょす!
海に行くまであと3日…。
海に行く…ということは水着を着るということだ。海に行くのにプールの授業で使う様な水着を使うわけにはいかない。
それは別に好きな人がいるから!とかじゃない。自分の体を少しでもよく見せるため。
つまり水着を買うということは自分のためでしかないのだ!誰のためでもない!
満場一致で女性陣は水着を買いに行く事になった。ちなみに主導したのは玲那でも舞でもなく杏。自分の体型が一番気になってるのだ。この中でスタイルがかなり良いというのに…。
少女達はショッピングモールに来ていた。ここは蛇老が荒らした所だ。もうすでに修理が済んでいる。
「海楽しみだね!」
怖い顔をする杏と玲那と対照にニコニコの舞。
ふわふわの真っ白な膝下くらいのスカートがよく似合うボブだ。しかも今日はカチューシャつけてる。可愛い。
「海楽しみだね!じゃないのよ!」
「海に行くって事はいろんな人が水着を着てるんだよ!」
「つまり!海は女同士の戦場でもあるの!」
「ほわぁー!ほえぇ…」
玲那の圧に口が小さく開いてしまう舞。タクティカルゴーグルの様な口の形をしている。
「まぁ確かに舞みたいに胸の大きな女の子は水着とか拘らなくてもいいけどね?」
「え…?私胸大きかったの…?」
「え?無意識自慢してる?流石の舞でも撫で撫でしちゃうよ?」
「そ…そんな事ないけど!他の女の子の胸見た事ことないから…!」
「確かに舞ちゃむプールの着替えの時1人でコソコソとめっちゃ早く着替えてた!」
「舞よく考えてみなさい!」
一瞬で舞の背後に回り込む玲那。
舞の胸を掬い上げる様に持ち上げる。ずっしりと重そうな胸をしているが…柔らかそう。推定Eカップ。
「ひゃにゃう!」
「可愛い水着に…可愛い顔…そしてたわわな胸…こりゃ颯も落ちちゃうでしょ!?」
「あははぁ…そっかぁ…」
「えぇ!?全然嬉しそうじゃないじゃん!」
「こんな事言っちゃったらあれだけど…」
「あ…あんまり嬉しくないかなぁ…」
「えぇ!?颯なんて女の子が追い求める理想の男じゃん!」
「イケメンで高身長だ…将来有望…親もお金持ちだよ!?」
「も…もしかして舞ってB専なの…?」
「そ!そうゆう事じゃないもん!」
「颯くんのことイケメンだと思うことはあるけど」
「私あんまり自然体になれないって言うかぁ…」
「えぇ!?それなのに2人きりでカラオケとか水族館とか行ってるの!?」
「あうぅ…」
自分でも酷いことをしている自覚はあったのだろう。舞は唸りながら下を向く。そんな舞も可愛い。小さな手をギュッと握ってる。
その様子を見た玲那は口を大きく開けて慌てる。
「そ!そういう意味じゃないんだよ!?」
玲那は舞の顔覗き込み尋常じゃない汗を流す。
好きな女の子を泣かしてしまった小学男子みたいだ。
「私は舞が颯の事好きだから一緒に遊びに行ってるのかなぁって!思っただけなんだよ!」
また舞は俯いて拳が震えている。
玲那の言葉に反応する事はない。でも玲那の言葉にピクッとなってるから聞こえてはいる。
気まずい雰囲気がはちゃめちゃ流れてる。
玲那は愛しの舞ちゃむに無視されて凹んでる。
その様子を感じ取った杏はとある行動に出る。
「そういえばね!この前美味しそうなお店見つけたんだよ!」
「お…お店…?」
「ほら!舞ちゃむ甘い物大好きじゃん?」
「だからこの店どう!?ここ安いし美味しそうだし…!」
慌てる手でSNSを開いて見せる。
その写真には美味しそうなパンケーキが数枚にわたって流れていた。あの辛口で有名な"所持金タマーケット"も高評価してた。
その写真を見ると舞はぐ〜と熊のいびきの様なお腹の音を鳴らす。
「お…おいししょぉ…」
「ここのお店ここから近いんだよ!」
「えぇ!?ほんとぉ!」
明らかにテンションが上がっているのがわかる。ぴょこぴょこ跳ねて語尾も上がっている。
なんてわかりやすい女の子なんだろう。
だが突然舞は肩を落とす。しゅん…。
「…私今甘い物禁止してるんだった…」
「え?なんのために…?」
「そ!それはね…!」
「海に行くまでに少しでも痩せておきたくって!」
「最近は夜ランニングとかもしてるんだよ!」
「ま…まぁランニングの後にはコンビニのスイーツ食べてるけど…」
最もらしい理由を述べた後にそれを打ち消す言葉だ。…だがそれよりも疑問が杏にはあった。
「舞ちゃむってもしかしてさ…」
「んにゃ!?違うよ!?違うからね!」
頬と耳を真っ赤に染めちゃっている舞。やっぱりこの子は表情が出やすい。最近のヒロインって感じだ。
「ん〜?何が違うんだ〜?」
思わずニヤニヤしてしまう杏。
玲那と同様、杏も人の恋愛事情が好きなのよ。まぁ女子高生の共通の話題だからだろう。
玲那がピクッとした。何か感じ取ったのだろう。萎れてた 玲那がちょっとずつ近づいてきた!
「あ〜?舞ちゃむもしかして〜!」
「好きな人いるの!?」
大事なセリフを玲那に取られてしまった。
でも玲那が嬉しそうだから万事ok!
「ひゃう!」
驚きのあまり舞は杏の腕に抱きつく。
…巨峰の様な乳房が当たっているでござる。
「で!どうなの!?好きな人いるの!?」
「べ…!別にいないよ!」
「颯じゃないんだったら遥真?あ…いや案外勇ってことも…」
「勇はないんじゃないかな!舞ちゃむは遥真とお似合い!」
「わ…私彼氏いるもんっ!」
その叫びに杏と玲那は放心状態になる。
文字通り空いた口が塞がっていない。絶望の瞳で舞を見つめることしかできない。
玲那に至ってはちょっと泣いている。
「…か…彼氏いるの?」
「う!うん!」
「何歳っ!?同じ学校!?写真は!?」
「え!えっと…!」
恋愛大好き性の玲那の心は踊り出す。
質問のたびに一歩ずつ詰められていて、ついには舞は壁際にまで追い詰められる。
…そして玲那は徐々におかしな点に気づく。
「彼氏いるっていつから…?」
「え…えっと!えと…!去年の7月からかな?」
「じゃあ彼氏いる状態で颯と2人っきりで遊んでいたって事?」
「そ…そうなっちゃいます…」
その言葉を聞いた玲那は、舞の握りやすそうな二の腕をがっしりと掴む。
いつものにょほほーんとした目ではなくテスト当日の様に真剣な目で舞の目を見る。
「それはいくら舞でも許せないよっ!」
その声には怒りが含まれていた。
「颯にも舞の彼氏にも酷いことしてるよ!」
「私だって男の子と遊ぶ時はあるけど絶対に2人っきりでは遊ばない!」
「は…はい…」
「いい?舞にとっては遊びかもしれないけどね!」
「颯やその彼にとっては舞は特別なの!舞を思う気持ちは本物なの!」
「その気持ちを弄ぶのは許せない!絶対にダメっ!」
世の中のモテる事を自覚している人にはブッ刺さるであろう言葉。しかもこれをモテる玲那が言うからこそ刺さる。
玲那な本気の言葉に、舞は力なく地面に内股座りで座り込む。
「嘘なのぉ…私彼氏いないぃ…」
「いた事もないぃ…ごべぇん…」
舞は大粒の涙を床に落とす。
「えっ?なんで嘘ついたの!?」
「わたち今分からないのぉ…!」
「あんまり冷やかされたくなくってね?だからね?嘘ついちゃったの…」
「うわぁ!そうなの!」
「私の勝手で怒っちゃってごめんね?」
「うう…玲那ちゃん嫌いにならないで…」
母性。そんな言葉が玲那の頭を埋め尽くす。
可愛い子がちゃんと甘えてきている。
破壊力…抜群である。
「でもね…わたし最低だって分かってるの」
「颯くんが私のこと好きなのを知ってるのに…いっつも勘違いさせる様な事しちゃって…」
「前に告白された時…あんまりはっきりと断れなくって…私のせいだって分かってるんだけどね?」
「あにょつまりそのね?」
「傷つけずに断るのってどうやったらいいのぉ?」
舞の本音を聞いた玲那は大きく頷く。
だが舞を甘やかそうとする目はしていない。
「傷つけずに人を振る事は絶対にできないよ」
「告白してくるってことはそれほど舞のことを思ってくれてるんだから」
「だからはっきりと断って早く別の恋を歩ませてあげるのが最大の優しさなんだと…私は思う!」
あまりにも正しい言葉に舞は頷きまくる。
普段はふざけているが玲那は恋愛面に関しては完璧に答えを出してくれる。今の彼氏が初めての彼氏だって言うのに…全く…天才か?
「なんて理由をつけて断ればいいの…?」
「理由なんて言わない方がいいの!」
「相手が颯なんだから…きっと分かってくれるはずだよ」
玲那の優しい言葉に舞は涙が溢れる。
それに釣られて玲那はまた涙を流す。
何が何だか分からない杏も、一応このビッグウェーブに乗らなきゃ!と目薬をさす。
それにしても…この映像どこかで見たことがある。確か…体育の授業で風華のことを舞が助けた時だ。あれと重なるところが多い。…まぁ今は舞が教えられている側だが…。
「玲那お姉ちゃん…」
「舞…!もしかして生き別れの!?」
「いや!違うでしょ!」
「私長女なんだけどね?ずぅっと昔からお姉ちゃんが欲しかったの」
「私のお姉ちゃんはきっと…玲那ちゃんみたいに可愛くって優しい人だったんだろなぁ…って毎日思ってるの!」
「可愛いが大量発生!」
舞への保護欲が暴走し、全細胞が活性化する。
明らかに自分の何かが変わってしまう…その恐怖心で唇までも震えてしまう。
「杏っ!パス!気持ちが抑えきれそうもない!」
「こ…!このままじゃ私!男の子になっちゃう!」
「何言ってんの!?」
「は!待て…!今男の子になったら舞と…」
「落ち着いて!息を吸って…吐いて…」
「玲那が男の子になったら玲那の彼氏を裏切ることになるんだよ!?」
「はっ!う…裏切るべきなのかも…!」
「玲那!?あんたさっきあんなにいい事言ってたじゃん!」
「うぅ!戻れぇ!私の保護欲!」
店内に響くほどのその叫び声。他の客が慌てて駆け寄ってきている。それもそうだ…。
玲那は意味不明なことを叫んだ後に倒れたのだから。
そして1時間後…。
何事もなかったかの様に杏が見せてきたSNSのお店のパンケーキを食べていた。水着はもう買った。舞や杏のエロい水着を期待していた人は残念だが妄想だけにしてもらいたい。
「舞のせいで大事になったじゃんか〜!」
「ご…ごめんね…」
「冗談だよっ!?」
「て言うか舞ちゃむ甘いもの食べていいの?」
「き…!聞こえないもん!」
舞は小さな口で大きなパンケーキをぱくぱく食べている。耳と目を瞑っているし。ていうかパンケーキをBIGにしている。舞らしい。
舞ちゃむは多分、間違えて食べちゃったみたいな設定でパンケーキを食べてるんだろう。間違えてBIGを頼んでしまったのだ。可愛い。
パンケーキの上に巨大なアイスクリームが載っている。バニラ味のアイスだ。
さらにその上には粉砂糖が散らされていて、ハチミツとチョコが混ざったソースがこれでもかとかけられている。
お皿の隅にはイタリア料理の様にラズベリーなどのベリー系の果物が敷き詰められている。
フランス料理の様だ。
このパンケーキは見た目だけじゃない!
外見だけ良くても中身が終わっていたら一瞬の流行りとして終わる。それは人も食べ物もそうだ。
このパンケーキの生地の中にはきな粉が混ぜられているのだ!自家製のきな粉。
その中にはお店自慢の細かく砕かれた甘いナッツが練り込んであり、この店のパンケーキの美味しさを際立たせる。
素材の一つ一つがこのパンケーキを美味しくさせる鍵を握っているのだ。
なんと!このボリュームで1300円!だがこれに400円追加するだけでこの店特製パフェが食べられる。人気トップ1,2が食べれるのだ!
この物価高のこの世の中の時代に…なんと!良心的なのだろうか。しかもバチくそでかい。普通の大きさで大盛りラーメンのどんぶりくらいでかい。舞のやつはその1.5倍で2枚ある。
「まぁむ!美味しい〜!」
「ほっぺ落ちちゃう〜」
「…で舞の好きな人って誰なの?」
「ゴホっ!ゴホっ!」
粉砂糖が喉奥に舞ったのだろうか。舞だけに。
「急に変なこと言わないでよぉ!」
「いや結局舞ににゃんにゃんされて分からなかったし」
「感じ取ってよ!友達でしょ!?」
「えぇ!?人の好きな人って分かるもんなの〜?」
「好きな人じゃなくって…仲良しな男の子ね」
「杏は知ってるの?」
「ん〜?だって大体見てたら分かるくな〜い?」
「ま…まぁ杏ちゃんが思ってる人じゃ無いけどね!?180度違う人だよ!」
「ウチが想像してたのは反町隆史だから…」
「可愛い系の一つて事かな!?」
「にゃおんっ!?」
多分舞は前世は猫なのだろう。猫耳も見えてきた。
「で…!でも私も杏ちゃんの好きな人知ってるも〜ん!」
「うっふ〜ん?言っちゃっていいのかしら〜」
小悪魔な笑みを見せる舞ちゃむ。
八重歯がメスガキ感を際立たせる。
「え?大丈夫だよ?玲那も普通に知ってるし」
「え!?」
「う!うん!知ってる!」
「えぇ!?そんなに自分の好きな人って言って良いものなのっ!?」
「好きな人を共有してくれたら協力してくれる可能性もあると思うけどね〜?」
「た…確かにっ!」
杏と玲那はニコニコとした笑みを作る。
揺れ動く舞の心が瞳で分かってしまう。
昔舞ママが教えてくれたことを思い出す。
…普段ヘニョヘニョしてる人が笑顔だと…変なことを考えていると言うことを…。
そのことに気づいた舞はお顔を真っ赤にする。
「私を騙して言わせようとしてない!?」
「ちっ!勘の良い子供だぜ!」
「ちなみに私杏の好きな人知らないしね」
「お…!恐ろしいわぁ!」
その後も女子たちの恋愛話は続く…。
水着を買いに行くだけだったが…いつの間にか仲良くなって終わった。ハッピーエンドだ。
次の投稿は24日水曜日です。
天地獄のはぐれ者です。
7話は長くなりそうだ。




