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ANCIENT -無代譚-  作者: 美朱太
未開の少年たち
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6-5 baby stardust

そして場面は変わって勇は…

 「け…毛虫…!?」

木の上にいた。

急に知能が猿になった訳じゃない。しかも最近の猿は木に登らないらしい。動物園のボス猿が講演会で前言ってた。

木の上に登っている理由はただ一つ。

ちょうどこの真下には血に塗れた遥真がいた。

周りを囲んでいる人々は軽蔑の目を向ける人や、スマホを遥真に向けている人もいた。

警察官が到着していたが…幸い群衆の壁に入り込む事ができずにいた。

ちなみに被害に遭った人は病院に運ばれた。

その間にも人の壁が遭ったせいで到着が遅れた事は黙っておこう。メディアがどうのこうのより客観的に自分を見てみよう。

 「人がいて邪魔だな…」

 「ちょ…ちょっとくらい脅かしても怒られないよな…?」

勇は太い木の枝に両手のひらをつける。鷹や梟の様な格好をしている。

 「ヨシ…行ってこい!」

木を伝わせて黒縄を遥真が手元付近に仕込む。

それを数秒のうちに何度も…何度も…。赤いタンバリン…じゃなくって心臓の様に送り込む。

そして大勢の人の視線が遥真に向くと同時…

仕込んだ黒縄を一気に放出する。


 ビュンッ!


その後の光景は…凄惨なんてものではなくて、小規模な劇団の練習風景の様だった。

 「へ!蛇だッ!」

たまたま遥真を近くで見ていた男子高校生が叫ぶ。相当驚いたのか女の子みたいに高い声。

遥真の手元付近を這いずり回るその蛇の様な黒縄にビビり散らかし、指を指しながら逃げるその男子高校生。

瞳の見えない真っ黒な異様な蛇にビビった群衆は、遥真の事などどうでも良くなり走って逃げる。

 「ギャァァァ!?」

 「だずげでぐれぇぇぇ!」

…ちょっと黒縄の小悪魔的な部分が出てる。

ビビらせる対象がいなくなった黒縄は遥真の体付近や顔付近を這いずり回る。

遥真は泣き叫んで声が枯れている。

平泉成のモノマネをしてる誰かのモノマネの様な声をしていた。


 ブチブチッ…!


ありえない音と共に遥真を縛っていたロープが八方向に裂ける。間違えなくロープは新品だった、強度は問題がないだろう。

目の前で親戚の様な同胞がブチ切られる姿を見た黒縄は、颯爽と勇の服の中は逃げ帰る。

 「お…俺助けなくて良かったくね…?」

 「ゆ…勇ッ!?」


 シュッ…!


恐怖のあまり、コアラの様に木に抱きついてしまった。いや…あんなバカ力を目の当たりにしたら誰でもこうなってしまう。

 「おい!降りてこいよー!」

遥真は勇の乗っている気を揺する。

地震が起きたのかと思った。それくらい揺れていた。

 「や!辞めてくれ!死にたくないッ!」


 スポッ…


鮮やかな音と共に空中へ放り出される勇。

いや…勇が放り出された訳ではなかった。

遥真は木を抜いたのだった。大きなカブを抜く話は小学生の頃見たことあった、でもあれは複数人で抜いてた。

元々木のあったところには大きな穴が空いている。おそらく根っこからちぎったのだろう。化け物だ…こんなことできるのは遥真と舞だけだろう。


 ドォンッ!


地面に当たると勇の気が抜け気絶する。

上手い事を言った気がした。


 「いやいやお前…」

 「いや!」

誰かいるのだろうか、地面を伝う足音と二色の声音。それに急かされる様にゆっくりと目を覚ます。

 「ん…?」

目を開けると颯と仲良さそうに話す颯がいた。

目覚めに悪いほどのイケメンだ。

 「でも本当に良かったよ…」

 「ちょうどお前を助けに行こうと思ってたところなんだよ」

 「なぁ…本当のこと言えよ」

颯の肩に手を置く遥真。

この空間だけに謎の緊張感が走る…。

 「え…?…ど…どうして嘘って」

 「どうせ捕まえられてる俺見て殴りに来ただけだろ?」

遥真は大きな口を開けて笑う。

颯は尋常じゃない量の汗を流していた。そんなに遥真の息は臭かったのだろうか?いや!ここは遥真の名誉のために言っておくと…弁当を食った後の口の匂いが常時するだけだ。

 「び…ビビらせやがって…!」

 「ん?なんか言ったか?」

 「い…いや!とりあえずみんなに合流しよう」

颯は何故か焦っている。話す速度も普段と違ってだいぶ早くなっている。

 「舞ちゃん?と杏さん…?とれなさんがいるところに行こうよ」

 「…なんか颯さっきから変じゃね?」

 「舞にちゃん付けしてるし…杏にさん付けしてるし…玲那に至っては名前間違えてるし…」

 「なぁ…」

今度は勇が颯の肩に手を置く。

またしても微妙な空気感に…遥真は口を挟む暇もない。

颯の汗を流し…瞳のはキョロキョロと魚の様に動く。目が泳いでいる。

 「お前…」

生唾が颯の喉を通るのがはっきりと映る。

それを見た勇は少し口角をあげる。

その表情はどこか不気味だった…。刑事映画のラストの主役の刑事の様なオーラがある。

 「熱中症じゃねーの?」

 「ば…バカで助かった…」

 「え?バカって…?」

 「じょ!冗談冗談!勇斗!」

 「え?誰それ?」

 「こ!これも冗談!」

頭でも打ったのだろうか…。それとも何かに影響を受けてキャラ変をしてしまったのだろうか?

少なくともさっきまではこんな冗談を言うやつではなかった。

 「と!とにかく行こうぜ」

そうして3人は公園へと歩き出す。

颯はあのネズミの国に初めて来たみたいなキョロキョロと周りを見渡す仕草をとる。

勇はその姿を横目で見る。まるで恋する女子の目線の様だ。

 「いやぁ…遥真凄いよなぁ…」

 「あぁそうだな…」

遥真もニヤけている…。

そして颯を見て何かに気づいた様な顔をしている。

 「な…何だよ!二人とも」

颯は何故か動揺して汗をダラダラと流す。

 「やっぱおかしいもんなぁ…」

勇はそう言うと颯は足を止めて二人を見る。

それを予見していたかの様に勇も足を止める。

顔に似合わず汗を流す颯と、顔に似合うゲスな笑みを浮かべている遥真。

 「多分ここにはいないだろ?」

 「颯はさ…」

 「お…!お…!俺ならこ…こ….こ…ここにいるだろ!?」

うまそうな鶏の様な動揺の仕方をしている。

あとあのニヤけていた遥真も不思議そうな顔をしていた。

 「…何言ってんだ?颯ならここにいるだろ?」

 「お…お前気づいてたんじゃないのか?」

 「お…俺は腹減ってたから屋台から簡単に盗めると思って…」

 「ダメだぞ」

いくら人がいないからって盗むのはダメ。

少しの気の迷いが出るのは人間仕方ないと思うが、実行するのは犯罪になるからダメだ。

 「ていうか!颯がいないってどうゆう事だ?」

 「ここにいる颯は真犯人…」

 「つまり遥真の事を陥れようとした奴なんだよ」

 「えぇッ!?本物にしか見えないゾ?」

 「そうだよ!逆に勇斗!お前が変身してるんじゃないか!?」

 「あっれれ〜おかしいぞ〜?」

某メガネ小僧。いやメガネ名探偵の様な生意気な声を出す勇。あの小僧はあの声優が天才的だからこそ許される言葉。

勇の声は低めだから全く合わない。おっちゃんの声優がこれをやっている様なもんだ。

面白さはあってもキャラにはあっていない。

 「確かにおかしいな!」

 「まだ何も言ってないぞ?」

 「あ…セリフ早かったな…」

 「俺は変身なんていってないもーん!」

 「あと俺勇斗じゃないぞ〜?おかしいぞ〜」

早くこの喋り方を辞めてもらいたい。

面白さよりもストレスが溜まってしまう。

しかもどこからかあのどでかいメガネまでも出している。全く似合わない。

 「あとそれに…」

勇はキョンシーの様に手を直前に突き出す。

 「な…何をする気だ!?」

 「行け!黒縄…!」


 ボヨッ…


誕生日クラッカーの様に最初勢い良く出て、最後には力無く地面に落ちる黒縄。

遥真と颯はそれをジーッと見ているだけだ。

 「おそらく真犯人は見た目を似せれるだけで…能力までは真似れない…」

 「そして俺の黒縄は自我を持っている」

 「本物の俺じゃなかったらまず指示通りに動く事すらしないだろ?」

本当のことを言うと本物でも指示通りに動く事は少ないが、カッコがつかないと恥ずかしいので言わない。これは言わない。

 「じゃあ勇は偽物じゃないって事だな!」

 「能力を出すなら俺だってできるゾ?」

遥真は一歩前に出て左腕で右腕を押さえる。


 -その瞬間空気が怯える様に震え出す-


太陽の見えた空は瞬く間に緑色の雲に覆われる。雨も降っていないのに雷がありとあらゆるところに降り注がれる。

感電してしまったように体中にヒリヒリと緊張が走る。

 「憑依ッ・玄武…ッ!」

緑色の雲が遥真の右腕に降り注ぐ。

アスファルトの地面にはヒビが入り破片が緑色の雲の中に混ざり、勇の頬が少し切れる。

遥真の額からは汗が流れるが…雲の勢いに呑み込まれる。

そしてしばらくすると遥真の右腕には緑色の雲がまとわりつき、空は嘘の様に晴れ渡る。

 「はぁ…はぁ…これで俺は白って事だろ?」

 「は…はひッ!!」

落ち着いた遥真は勇の方を見る。

勇と颯は仲良く抱き合って空いた口が塞がないでいる。能力の差にも驚くが規模が異次元でしかない。

颯と抱き合っていたことに気づいた勇はすぐに颯を押し離す。颯に似合わず汗臭かった。

 「そ!そんなんされても…!俺能力もってないし…!そんなんで俺を犯人って言うなよ!」

 「何言ってるんだ?全員が平等に説明できないと意味がないだろ?」

勇の視線を感じ取った遥真は颯と向き合う。

そして少し早口のまま口を開く。

 「先週あんなに能力見せてきただろ?」

 「それを見せてくれればいいんだよ」

 「簡単な話だろ?」

 「そ…そうだったな…」

勇と同じ様にして両腕を前に出す颯。

そして既存の日本語を並べ替えて作るKREVAスタイルの様な呪文を唱え始める。


その姿を見て勇は少し口角を上げる。

 「行け…ッ!」


 ビュンッ!


凄まじい速度で放たれた黒縄は颯の体を掴む。

 「グッ!?」

黒縄に掴まれた颯は苦しい表情を浮かべる。

そりゃ鳩尾を力強く縛られてるのだからそうなるのも当然だろう。

 「颯は能力なんて持ってないぞ…?」

 「…暗殺失敗か」


 ブォォッ!


黒縄に縛られた颯に黒いモヤが掛かる。

逃げられた…!?とも思ったが黒縄はちゃんとその人物のことを掴んでる。

遥真は慎重に近づこうとする。怖いもの見たさで肝試しに行く中学生の様だ。

その姿を見た勇は左腕だけで遥真を静止する。

 「あんま近づくな…!こいつはアホだが強そうだぞ…」

 「わ…分かったゾ!」

 「ア…アホとは失礼だな…」

黒いモヤが消え…その人物の姿が見える。

…赤黒いヘルメットで顔は見えず時期ハズレのマフラーをつけている。右腕の肘したには刀がついていて左腕には金属の何かがついている。

それだけでは厨二病要素の強い敵に見える。

だけどそんなことどうでもいいくらい服装がダサかった!エクササイズをするのか青色ベースのノースリーブに黄色のズボンを履いている。

下に何かパッツパツのを着ているのか肌に沿って黒い服を着用している。

 「ちょ…ちょっと…縛る力弱めてくれ…」

 「あ…うん」

颯の姿とは違って体の大きくなった黒ヘルメット男。体が瓢箪の様に絞られてて少し可哀想に思えてくる。

流石に痛そうだから黒縄の縛る力を緩める。

 「バカめ…」


 シューパパパーンッ!


瞬く間に体を巻いていた黒縄が切られる。

ヘルメット男はドヤ顔をしている。

ヘルメットのシールド越しに見えているのに気づいてないのだろうか。

 「フッ…お前もアホだな…」

 「え〜と…勇と風華だっけか?」

 「…?」

名前が間違えてるのなんてどうでもいい。

ファッションセンスが無さすぎて右から左にそんなこと流れていってしまう。

 「…」

 「おい!聞いてるのか!?勇と風華…」

 「はっ!」

 「風華風華なんて言ってるけど風華なんていないぞ?」

 「え!?何を言ってる!そこの170cmくらいの男が風華で…そこのデカブツが勇だろ?」

 「違うわ!」

 「え?じゃあ風華って奴は…?」

 「全然別のところにいるけど…」

 「ま…まぁ…色々あったけどそれじゃあ…」

完全に締め作業に入っているヘルメット男。

そして頭を抱えてブツブツと何かを呟く。

 「ち…父様に叱られる…!」

 「あ…そうだ…よく考えればお前らを殺してから…風華という奴を連れ去ればよかったのだな…」

 「私とした事がそんな単純なことに気づけないとは…」

右腕の謎の金属を前に出して2人に向ける。

銃口を突きつけられたかの様な緊張感が走る…。

 「VAID様が次男…!コンダー…!いざ参るッ」

コンダーと名乗るヘルメット男。

右腕についた金属は真っ赤に熱され高熱の光を帯びる…。

 「…アイツなかなか強そうだぞ」

 「お…おう!」

終わらなかったので6-6まで続きます。

次の投稿は水曜日です。

書きたいシリーズが多すぎて時間が足りまへん。

6つくらいあるのにこれしか進められてない。悲しい。

付き合ってからを書く作者の気持ちが知りたいです。

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