6-2 ミッドナイト・クラクション・ベイビー
あの夢から数日後の現世では…
楽しい楽しい夏祭りが開催されていた。
この地域はそこそこ栄えている。ので祭りもそこそこ多くの人がいて屋台も多く出ている。
流行りのものから…定番の焼きそばやたこ焼き…お面など…。
もちろんこの祭りは近所の人全員が行くのだが今年は少し訳が違った…。
「玲那ちゃんいいの?私まで居ちゃって…」
「良いですぞ〜?」
「それにしても浴衣似合ってますぞ舞殿〜」
「い!いやんっ!」
いやらしい手つきで舞の腰回りを触る玲那。
玲那は見た目ははちゃめちゃに可愛いが中身はかなりのおっさんなのだ。
舞は頬を染めて玲那の手を退かす。
「あ!ずるい!玲那!ウチも舞ちゃむのお尻に触れたい!」
「えぇっ!?変態だぁ!止めてよぉ!」
美少女三人がイチャイチャしながら祭りを横断する。思わず一般人どもは道を開ける。
男女問わず「可愛くね?」とマジトーンで言うほどのビジュアルを持っている三人。
玲那は黒色の薔薇柄の浴衣に長い髪を編み下ろしヘア。
杏は紺色の朝顔柄の浴衣に低めのお団子ヘア。
舞はピンク色の牡丹柄の浴衣にハーフアップヘア。
三者三様の美少女が祭りに降臨すると、男子どもからは地鳴りのようなざわめきが連鎖する。
…それは置いておいて…普段は杏と玲那が一緒に遊びに行ったりしている。だが今日はその中に舞がいる。
杏と舞は超仲がいいのだが、玲那と舞は超仲良しとまでは言えない。まぁ玲那は舞のこと可愛いから大好きだが。
玲那の辞書には「夏祭り」=「恋の予感」と書かれている大の恋愛好き(他人の)の玲那。
彼氏がいない杏…そして舞を連れていくしかなかったのだ。
「舞ちゃむ今日颯に誘われなかったんだね」
「あ…あはは〜」
「誘われてたな!?」
「…うん」
「なんで行かなかったの!?」
「颯くんとお祭り行きたい人なんてこの世に何人も居ると思うの!」
「だからどう断ろうと思ってた時に玲那ちゃんが誘ってきてくれたんだよぉ!」
「颯と行きたいなら玲那の誘いなんて断って良かったのに〜」
「うぇ〜ん私かなちぃ〜」
杏と玲那は顔を近づけて笑い合う。
すると舞は複雑そうな笑みを浮かべる。
「ひ…酷いこと言うんだけどね…」
「しょ…正直最近颯くんと色んな所に行き過ぎててね…」
「ちょっと…良いかなぁ…って思ってたところに玲那ちゃんから連絡が来たの…!」
「利用する形になっちゃったけど!玲那ちゃん達と遊べるし楽しみだったよ!本当だよ!」
「私玲那ちゃんと杏ちゃん大好きだよ!」
上目遣いでぴょんぴょんとジャンプをする舞。
大きな胸が揺れて二人の目は釘付けになる。
杏と玲那は本当に男子高校生並みだ。かなりぷるっぷるんって揺れている。顔も相まって好き。
「本当に私のこと好きなの?舞」
「うん大好き…!」
「…ふむふむじゃあ結婚しよっか」
「えぇっ!?け!結婚!?」
「ど…どうしようお父さんに聞かないと…!」
「冗談だよ!?」
アワアワしだす舞。DJのようだ。
本当にこの子は純粋なんだと親のような気持ちになってしまう。
「もう舞と結婚したい男の子いっぱいいるんだから…」
「え…!こんなブーでプニプニな私だよ!」
一歩間違えれば嫌われるくらいの言葉。
だがこんな困った眉をしているのだから本心で言っているんだろう。迷子になったくらいには困っている。
「舞はプニプニじゃない!」
「玲那ちゃん…!」
「だからもっとご飯食べよっか」
「本当にプニプニじゃないの…?」
「うん!むしろ痩せてる!」
玲那は嘘をつくのが下手くそだ。
玲那は嘘をつくと逆に真剣な眼差しになる。
玲那の魂胆としてはいっぱい食べてる舞が見たいのだろう。マヂでわかる。
大食いな女の子は可愛い。大食いなのに体重気にしているのがはちゃめちゃに可愛い。
「じゃあお腹いっぱいになるまで食べようね!」
「りんご飴ぇ…焼きそばぁ…たこ焼きぃ…唐揚げぇ…いっぱい食べるぅ…」
暴食の化身となってしまった舞。
顔に似合わない涎をダラダラと垂らしている。いや…むしろ顔に似合っているのか!?
玲那に手を握られ舞は連れていかれる。
その後ろを杏は静かに着いていく。まるで忍者。
一方その頃…女子と反対方向の場所に集まっていた男子達。もちろん浴衣を着るなんて文化は男にはない。ましてや男子高校生、自分の思う最高のファッションに仕上げてきている。
勇は普段校則で禁止されているワックスを付けて令和男子の髪型をしている。服装は無地Tに余裕のある青っぽい黒のズボン。
遥真はもちろん坊主。非常口マークのような絵が描かれている黒い服。そして海パンのような水色の短パン。顔がイケメンな割に残念だ。
おにぎりにしか見えない…。おそらく中身はツナマヨ。筋子ではないことは確かだ。
そして…風華は…あれ風華がいないぞ?
「…あれ?風華は?」
「あぁ〜早くしないと美女が逃げちゃうゾ〜」
玲那と遥真は結託していた…!
実は玲那には作戦があったのだ!
それは…
「誰かの恋のキューピッドになる作戦」
偶然会ったフリをして男女仲良くさせてそのままLOVEにしてやろうというやつだ。
その犠牲者となったのが杏と舞、勇と風華。男二人からしたら天国でしかない。可愛い子と夏祭りを回れるのだから。
だが女子二人からしたら苦痛でしかない。
友達と遊ぶと思っていたら好きでもない男と回ることになるんだから。たまったもんじゃない。まさに一方通行だ。
「おまたせ〜!」
風華の声がどこからか聞こえてくる。
周りを見てみると、老夫婦…家族連れ…そして肉食獣に追われる草食動物のような人。
…長い髪の毛がふわふわと浮いている。
「あ風華だ」
「あ…本当だね」
「だじゅげでぇぇ!」
唾混じりの叫び声が響き渡る。
二人の体は自然と動いてしまっていた。
「逃げるゾ」
「あん…」
二人は足に力を入れると飛び上がる。
そして知らない人の家の屋根へと着地する。
雪国なもんだから屋根が斜めになっている。沖縄や関東だとこれが珍しいんだろう。
当たり前だと思うのは怖い。
「遥真ッ!お前もッ!?」
「あれ?前メッセージで言ったゾ?」
「あ…!そうだったけか?」
「既読つけてなかったゾ!」
ブロックしてるんだから仕方ないだろ!
なんて言えるわけがない。言ったらダルいことになってまう。ていうか遥真はスタ連し過ぎだ。夜11時ごろにスタ連してくる。ブロックされるのも必然だ。
しばらくすると風華は頬を膨らませて浮かんでくる。なぜか女物の浴衣を着させられていた。
「なんで助けてくれなかったの!」
「いやあの人たち怖過ぎるだろ」
「サングラスにリーゼント…緑髪の人とか…北九州の成人式でも行ったのか!?」
「お金下ろしにコンビニ行って出たら後ろからついてきてたの!」
「俺本当に何もしてないの!」
「ていうか遥真なんでここに登れるのッ!?ドーピング!?」
遥真はだるそうな表情をする。勇の一番嫌いなやれやれ系の主人公みたいだ。
「一言で言ったらドーピング」
「二言で言ったら…?」
「神様ドーピングだ」
「仲間だぁ!」
遥真は風華の顔をじーっと眺める。
風華もそれに負けじと顔を近づける。しかもぷくーッ!と頬を膨らましている。
不思議な風が吹く 不思議な時間が過ぎる。
「なによ」
「風華は俺が絶対に守るわ〜」
「彼女できなかったら無理やりそのブツ取って結婚するわ〜」
「そんな…!俺の股間取られるの確定ッ!?」
「ひ!酷いゾッ!?」
「勇どうする!?玲那さんに彼女がいて遥真ならおかしくなっちゃった…」
「あいつは元々だろ?諦めろ」
遥真は風華を抱きしめる。
悶え苦しむ風華をよそに勇はスマホをつける。
遥真の顔が頬に擦り擦りするととジョリジョリして痛い。…そして風華には何故か髭がない毛根すら無い。
「あ玲那がなんか怒ってる」
「玲那さみゅは杏と舞ひゃんと一緒に行ってゆんじゃないにょ?」
頬擦りされながら話す風華。
遥真は少し汗を流す。何か裏があるかのように…。
「分かんないけど早く公園行くぞ」
「ひゃーい!」
遠回りになるが人混みを避けて公園へ向かう。
テクテクテクテク…
「舞いっぱい食べてね〜」
「んあっ!むぁむぁむむっ!!」
舞の机の前には焼きそばのプラスチックの入れ物。唐揚げが入っていた紙コップ。その他複数。
乱雑に置かれている訳ではなく綺麗に一つ一つ置かれている。
舞のチビチビの体のどこに入るのだろう。それより舞の懐事情が分からない。
「お腹いっぱいになるまで食べてね!」
「うぁむ!わふぁった!」
無邪気な返事。
「もう良いでしょ!遥真離してよ!」
「お前本当に男か…?めちゃ良い匂いするんだけど…」
「遥真が汗くさ過ぎるんだよ!…あ!」
「え…俺汗くさいのか…」
ショックで思わず手を離す遥真。
その隙に風華は勇の隣に走っていく。
仲良いのだが仲悪そうに歩いてくる男三人。
それに気づいた杏は手を振る。
「あっ!勇っ!」
白白しく手を振る杏。
もちろん同じ家から出発してるから知っている。昨日も一緒にゲームする時に夏祭り行く話をしていた。
「な…なんで風華が可愛い浴衣着てるの…?」
「俺着させられたんだよ!」
「ううん…来る時にはもう着てた」
「嘘つかないでよ!追われてたじゃん!」
「こいつお金せびってた」
「辞めてよ!」
勇と風華のくだらない言い争い。
杏もその楽しそうな姿に笑みが溢れる。
その背後からひょこっと顔を出す美少女。
顔の2倍ほどあるわたあめを持った舞だ。まだ食べるのだろうか。
「なんの話してるのぉ?」
あざとすぎる声。
「舞ちゃむは気にしなくても良い大人の話だからね」
「私みんなと同い年なんですけど!?」
「もう誕生日来たから杏ちゃんよりお姉さんなんですよぉ〜?」
「ありゃそうだっけ?」
「そうだよっ!」
杏の顔に自分の顔を近づける舞。いやはや眼福眼福。
その後ろから舞の食べた物を袋に入れ終わった玲那がやってくる。
「遥真〜!」
「あ!過去の女!」
普通に終わっている。
あれから遥真は玲那とは友達の様な関係になっている。もちろん彼女なんてできていない。
「そうそう!遥真くん怪我はもう大丈夫なの?」
「お!おう!この通りピンピン元気だぞ!」
「やっぱり遥真くんのパワフル笑顔を見なきゃ始まらないよね!」
遥真の眼前は女神でも降りたのかと思うほどの神の光景。両腕を胸に近づけ無邪気な笑顔を見せる舞。
思わず顔を真っ赤に染めて顔を背ける遥真。
「あ…ありがとうな舞…」
「別に何もしてないよ?」
あざとく首を傾げる。舞は天性のモテ女だろう。破壊力がダンチ魅惑のパンチ。
「もう私風華に最初に連絡したのに〜!無視したでしょ〜!」
「あはは…ちょっと走ってたの…」
玲那は風華に近づいてほっぺを突く。
風華は恥ずかしそうに笑っている。
「…へぇ」
「どうしたの?舞ちゃむ」
「ううん!なんでもないよ!」
舞は玲那を連れて走り去る。
また食べることに集中するのだろうか…。
「舞…いや…舞honey」
「絶対俺のこと好きじゃん…」
「恋の終わりには恋が始まる…ありがとう神様…」
遥真はブツブツとくだらない事を呟いている。
風華は何か舞と話したいと目を合わす。
そして偶然いや必然?目と目が合う。
プイッ…
頬を膨らまして舞はそっぽを向く。
明らかに無視されている風華。
見つめ合うと素直におしゃべりできないのかもしれない。
遥真は夏なのに春の始まりを感じる。
それとは対照に…
「君を忘れたいと…思うほどに…君を愛してしまった…」
マイナー曲を単語で歌いながら、木に頭を打ち付ける風華。
小雨の涙を流して木に抱きついている。
あまりにも不憫な風華。
可哀想に思った杏と勇は風華に駆け寄る。
「ま…まぁ…風華!舞ちゃむにも何か事情があるんだよ!」
「うぅ…ありがとう…」
「恥ずかしくなった可能性もあるだろ?」
「え…なんで…?」
「だってお前この前、舞の胸で寝てたじゃん」
「…え?」
この反応この目を見開いた表情。本当に舞のふかふかのお胸で寝ていた事を覚えていない様子。
「お…俺そんな事しちゃったの…!?」
「覚えてないのか?」
「うん…」
申し訳ないのか悲しそうな表情を浮かべる風華。やっぱりこの子は真面目なのだ。
「…うぅなんで覚えてないんだぁ…舞さんの匂いだけでも思い出したいのに…」
「おっぱいの感触は我慢するのに…」
「えキショ」
「キモいなぁ…」
突然の総スカン。
杏も勇ももうすでに風華に背を向けて、遥真たちの元へ戻っていく。
「あぅ!冗談だよ!2%冗談だよ!」
「あんな可愛い顔してどすけべなの…ウチの風華は…」
「玲那に抱きつかれてた時も何も言ってなかっただろ?そう言うことだ」
「なるほど…」
悲しいが自業自得。言いたい事も言えないこんな世の中じゃPOISONだが、言いたい事を言い過ぎてもPOISONだ。反町隆史にBIG respect
二人仲良く歩き去っていく…。
追いかけようと風華は走り出すが、そこに突然の壁が現れる。
「いて!」
このほとんど筋肉の存在は遥真だ。
「なぁなぁ…」
優しく手を差し伸べてくれる遥真。
やはり持つべきものは巨大の友達だ。
ここだけの話、勇もこの前杏の下着姿見たとかはしゃいでた。むっつりスケベよりもどすけべの方がモテるのだ。歴史が証明している。
遥真はどすけべだから仲間だ。
「舞にめちゃくちゃスルーされてたけどなんかしたのか?」
その言葉に風華の頬から涙がツーンと流れる。
しかもまぁまぁ大きな声で舞は玲那と話していたから、おそらく聞こえていないものの近くの老夫婦には聞かれてる。…いや聞こえてない可能性の方が高いか。
「お前って本当に空気読めないな…」
「えっ!?でも舞完全の風華の事見てどっか行ったぞ?」
「遥真ってそんな性格悪かったっけ!?」
「玲那に彼氏がいて…次は舞に惚れたからってライバルの風華をいじめるなよ!」
「なんでだよ!そんなつもりないし!」
「ただ単に気になっただけなんだしッ!」
「風華が悲しんでるのを見てなんとなく察しなよ!」
「そうだぞ!」
暴走する杏、遥真、勇の三人。
言い返しが徐々にヒートアップし、関係ないところまで飛び火する。「汗臭い…」だとか「スタ連すんな!」とかまで…一方的に言われてるだけの遥真。
燃え広がりは止まる事を知らない。
このままでは何も知らないあの老夫婦までもDISられるかも知れない。
おばあちゃんおじいちゃん好きの風華は、その前には止めたいと考える。…が目の前に立っても止まらない。
風華は涙を抑えて三人の前に立つ。
「あ…あのぉ…」
「何っ!?」
「大体勇もねぇっ!」
味方だったはずの勇にまで攻撃し始めている杏。もうすでに危惧していた事態に陥っている。このまま話しかけたらこっちに飛び火する可能性もある…。
だが風華はまた足を一歩踏み出す。
「け…喧嘩しないでほしいなぁ…って」
「なんでだよ!風華のために怒ってんだろ!」
「そうだよ!」
「俺は…俺が悪いのか…?」
「遥真が悪い訳じゃないんだよ!」
「俺はみんなが仲良くしてる方が好きだから…仲良くしてほしいなぁ…って」
「ダメかなぁ…?」
両手を合わせて首を傾げる風華。よく言えば自分の魅せ方を分かっている。悪く言えばあざと過ぎる。
「ごめん…!ウチ言い過ぎた!」
「俺もごめん…!」
勇と杏は同じタイミングで頭を下げる。
ブンッ…!
突然遥真のつむじが見える。ちょっと禿げてる。
「俺もごめん…!ホントごめん…!!」
三人が頭を下げている。
その光景を見て風華は小さく微笑む。
杏は口の中に空気を溜め込む。
それに続いて勇も…遥真も…。
「ぶふっ…!ウチら祭りの日に何してんだろうね!」
杏の笑いに続いて、他の二人も声をあげて笑う。
「ぷッ!本当に何してたんだ!」
「俺血液足りてなかったのかもなぁ…もう一回入院しよっかな?」
「またショックで?」
ツボに入った三人…
このまま笑って暮らせればいいね。
だがそこには風華の姿はなくなっていた。
「うむ…良かった良かった…!」
風華は木陰から笑う三人を見ていた。
そして…屋台のある場所とは反対に足を踏み出す。
「ふ〜ん悲しい顔してるのに〜?」
この少し生意気な声は玲那の声だ。
「あれ…!?舞さんは…一人?」
「そうでちゅ〜!風華ちゃんのだいちゅきな舞ちゃんはおトイレでちゅよ?」
「だ!大好きだなんてそんな…!」
「舞さんには颯さんがいるから…俺なんて…」
「俺なんて出る幕が無いって言うつもり〜?」
「うん…」
「でも…舞さんも俺といるより楽しそうだよ…?」
「私は舞は風華と話してる時がまだのびのびしてる様に見えちゃうけどなぁ〜」
「それは俺が…見た目が女の子っぽ…!」
「んむぅっ?」
語る風華の口を閉ざす玲那。
別にオシャレにキスして止めた訳じゃ無い。全盛期の木村拓哉じゃないんだから。
普通に手で口を止める。
「風華は自分を卑下し過ぎだよ?」
「確かに颯はイケメン…勇は良いやつ…遥真は面白い!」
「大体の周りがすごいって思う人は優し過ぎるんだよ!」
「風華も周りばかり考えすぎてるんだよ」
「だから舞が幸せかなぁ?っとかばっか考えちゃうの!」
「たまには自分の幸せを第一に考えてみるのも手だと思うよ?」
「あぁ!別に無理に頑張れ!なんて言わないよ!」
「舞なんて爆モテの売れっ子おチビちゃんだからね!倍率高いんだから!ウチの子は!」
「玲那お姉ちゃんん…!」
玲那の予想とは泣き出す風華。自分では我慢しているつもりなのか、口元に力が入っている。
「私お姉ちゃんじゃ無いんだけど!?」
「玲那お姉ちゃん好き…」
「きょ…今日だけで可愛い子二人に好きって言われちゃった…どっちと結婚すればいいの…!」
「俺ちょっと気持ちが落ち着くまで一人で回ってるね?」
「うん!絶対戻ってくるんだよ〜?」
「はーい!」
風華は元気に手を挙げる。
玲那はその無邪気さに顔が蕩けてしまう。
一礼すると走り去っていく風華。
その姿を見届けると玲那もみんながいる公園に向かう。
あの仲直り三人組の中に、トイレから戻ってきた舞も合流していた。
玲那に気づいた杏は声を上げる。
「あれぇ?風華は!?」
「うーん課題かなぁ?」
「あ…確かに風華終わらないって騒いでたし!」
「昨日風華に勉強教えてたもんなぁ杏…相当焦ってるんだろなぁ」
「え?なんでそれ知ってんだ?」
「…俺も一緒に勉強してたし…」
我ながら完璧な言い訳だ。少しキョドってしまったのが少しマイナスポイントだったが…。
舞は話についていけないのか話している人の顔を追いかけるだけだ。
「あの子最近遅くまで私と勉強したがっちゃってるんだよね〜」
「それもビデオ通話で!全く可愛い…」
「え!?玲那も風華と勉強してたの!?」
「えぇ!?杏も…!?私だけだと思ったのに…」
勇は見た。その言葉に眉を顰める舞を…。
ちなみに玲那も見た。
「…やっぱり…風華くんはぁ…」
小声で何かを呟く舞。
その表情は怒っている様に見えた。
「舞ちゃむどうしたの?」
「えっ!?いや?」
「なに〜?」
「玲那ちゃんと杏ちゃんは連絡先交換してるんでしょぉ?」
「もちろん勇くんも遥真くんも…」
「私だけ風華くんの連絡先知らないなぁって思ってね!」
「そっか!きっと風華にも事情があるんだろうね!」
「そうだよね〜」
何回も首を縦に頷く舞。
舞は小さな手提げバックからスマホを取り出す。そして特に何も送られてきていない通知欄を見る。
その舞の手は小さく震えているのが見えた。
そして玲那は気づいてしまったのだ。
「これ私が悪いのかも…!?」と…。
長い長い夏祭りはまだ始まったばかりだ。
土曜休みの日は日曜日も投稿しようと思います




