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ANCIENT -無代譚-  作者: 美朱太
未開の少年たち
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5-1 傘の下の君に告ぐ

それは白昼堂々の犯行だった。


 [警官五名が死亡]


そのニュースに日本中が震えた。

ゴミ捨て場に捨てられた遺体のほとんどが内臓が飛び出ていた。そのうちの一人は頭が潰されていて、その近くには目玉が転がっていた。

その凄惨さは歴の長い警官でも目を覆うほどで、早急にこの事件の解決が求められた。

しかし情報としては監視カメラの映像しか残っていなかった。それ以外の凶器も現場付近からは見つからなかった。

公開された監視カメラの映像には、絡まり合った長い髪…背中からは使い古された釘のようにカーブのかかった大きな骨が、左右それぞれ3本すつ生えていて、その生え際は脈を打っていて赤黒く染まっていた。

インターネットで23万再生止まりのようなフェイク映像だと誰もが思った。

だが実際に警視庁のホームページからその映像は公開されていて、何よりその事件が実際に起こっている事がこの映像の信憑性を後押しした。


 「…とそんな事件があったから気をつけろよ〜」

 「まぁあんな映像エイプリフールの嘘だと思うがな」

授業が終わった教師は大きな口を開けて笑う。

元々この教師は思想強めな人だ。仕方がない。


しかし犯人に見覚えのあった勇と風華は、冷や汗をかいて目と目が合う。そして頷く。

チャイムの後、尿意などどうでもよくなり風華の手を引いて人目のつかない場所に走る。

そこは社会準備室で、理科準備室や音楽準備室に比べたら圧倒的に使用頻度の低い場所だ。

 「…ね…ねぇ俺あ…あいつ知ってる気がする…」

風華の手を離そうとするが、風華は手を離してくれずにその手は震えている。

それもそのはずだ…。

 「風華…大丈夫か?」

 「こ…怖いよぉ…」

綺麗な顔が崩れ瞳は波に揺れている。

今にも泣き叫びそうな表情に思わず抱きしめる。

 「大丈夫だ…あいつは俺がやるからな…」

 「ご…ごめんね…」

 「大丈夫…大丈夫…」

抱きしめる力が徐々に強くなってしまう。

 「い…痛いよ…?」

 「あ…悪い」

上目遣いでこちらを見てくる風華。

それは普段のあどけない姿からは考えられないほど大人っぽく、それでいて子供のように怯えていた。

 「え…!?風華って男だったよね…」

 「あ…そっち系だったのね…」

しまった。クラスメートに見られてた。

しかもこの女子生徒は噂好きで有名だ。

あんまり風華と一緒にいたら多分、噂に尾鰭がついてしまう。全く高校生というのは人の恋愛対象を理解する事をしないのだろうか!

まぁ風華のことは友達としてはloveだが、恋愛対象としては見れない。子供っぽすぎる。ていうかまず男だし。

 「ていうかなんでヴォアが復活してんだ」

 「確か…霊愛さんが燃やした殺したって聞いたけど…」

 「まさか霊愛…俺らを裏切ったのか…?」

 「…俺霊愛さんに一回しか会ってないけど…!確かに悪い顔してた!詐欺師みたいな!」

 「ふんッ…誰が詐欺師だ…?誰が…」

背後にから聞こえる中性的なイケボ。最近のアニメでありふれている声優の様な声だ。

久しぶりに聞いたその声に勇は自然に笑みが溢れる。

 「久しぶりだな迷彩…」

 「違う…」

 「冥界じゃなかったっけ…?」

 「あ…あれ私なんて名前だったっけ…」

 「霊愛だろッ!ちゃんと自分の名前覚えてろ!」

 「…覚えてたのか…ぷぅ…」

 「勇だ」

久しぶりに見た霊愛は大学デビューのイケメンみたいな面をしていた。顔は元々良いが、センターパートにおしゃれな服なのが尚更そう感じさせた。まさにネオ(^v^)ギャル夫。

 「んで…なんでヴォアが蘇ってるんだ?」

 「さぁな…私にもわからない…」

 「霊愛さんがちゃんと処理しなかったんじゃないんですかぁ〜?」

久しぶりのメスガキ風華。中学以来。

ふにゃふにゃと霊愛に詰め寄る。

しかし霊愛は簡単に風華を弾く。

 「あうっ!」

 「うるさいぞ!女面詐欺師め」

 「ひ…酷い…」

 「ていうか私はヴォアの死骸をちゃんと昇魂場に置いておいた」

 「昇魂場(しょうこんじょう)?」

 「あぁ死んだ地球外生命体の魂を浄化させる場所だ」

 「普通の奴は死んだら魂は離れる」

 「だがヴォアの様な悪生(あくしょう)の奴は魂と体がこびりついて離れない」

 「ほう…水垢みたいなもんか」

 「そんな奴らの魂と体を切り離す場所なんだ」

説明を終えると霊愛は髪をかきあげる。

目は泣き疲れたように真っ赤で、擦りまくったのか少し腫れていた。

 「それのけつ拭きで霊愛が来たのか」

 「その通り…ヴォア討伐の担当は私だ」

 「はぁ…マジでどうしよ…」

 「なんかヴォアはちゃめちゃわちゃに強そうになってたよね」

 「もしかして…"改念(かいねん)"…」

 「なんじゃそりゃ」

 「…うろ覚えだが…能力の底上げを出来る能力だった気がする」

 「無難に強そう…」

 「まさかヴォアがその能力を持っているとな…」


 キーンコーンカーンコーン


チャイムの音が社会準備室に響く。スピーカーに埃が溜まっているのか詰まっている。

 「風華マズい授業始まるぞ!」

 「次の授業は鬼の清塚だよッ!」

 「し…!しばかれる!」

 「待てッ!そんな事よりヴォアをどうにかしなきゃいけないだろ!」

 「まッ!来ないだろ!後でいいでしょ!」

 「うんそうだよね!」

教室に逃げようとする勇と風華の腕を掴む霊愛。その目は真剣で額から汗が流れていた。

 「バカッ!」

 「ヴォアの狙いは杏という少女だッ!」

 「なんだって!?」

二人の声が偶然揃う。

眉が上がっているのもおんなじだ。

 「つまり…ここにアイツが来るって事か…!?」

 「神様が言うには早ければ今日にも来る…」

 「…このままだとみんなを巻き込んじゃうよ!」

 「今すぐにみんなを逃がすぞ!」

 「逃がすってどうやってだ!?」

 「ふっ…都合の良い事にここには男にモテる風華と…女にモテそうな霊愛がいる…」

 「な…何をするつもりだ…?」

 「決まってるだろ…?」

数分後…風華と霊愛の二人は各教室を回っていた。

それも風華は男受けのするセーラー服。

ポニーテールと頬の横に垂れる触覚が、清楚系の高校生らしい可愛さを引き立てる。フリフリ動くポニーテールがもうそんじょそこらの女子高生と何も変わらない。むしろ女子高生より可愛い。…風華なら当たり前か。

 「みんなぁ〜!私についてきてねッ?」

左肘を可愛らしく曲げて右手を前にかざす風華。それはいわゆるアイドルポーズだ。

鼻の下を伸ばす生徒は、簡単に風華についていく。あの鬼の清塚もついていった。

 「風華が全力出しちゃダメでしょ…」

 「あの子正統派の可愛さもいけるの…!?」

 「それにしても男子は単純ね〜」

 「そうだね〜!」

あまり喋ったこともない女子生徒の声。


男子生徒が全員教室から出ると次は霊愛が入ってくる。霊愛はジャージ姿だ。

だが前の勇の様にダサいジャージではない。

陽キャのイケメンって感じだ。しかも優しくって性格の良いイケメンの雰囲気がある。

もう普通に人間の域を超えているくらいのイケメンだ。いや霊愛は人間ではないというツッコミは野暮だぞ。

 「さぁ子猫ちゃんたち俺らも行こっか…?」

 「ひゃい〜!」

 「わ…わぉん…」

それは犬だ。

あの女子生徒たちも簡単についていった。

まるでペットの様だった。

 「さぁ…これで思う存分戦えるかな…」

ポツリと呟くと後ろから女子の声が聞こえる。

 「…勇」

この声は杏の声だ。

背中には杏の頭が当たっていて…静かに時が過ぎていく…。

 「杏…」

 「あのお二人さん!?急がないとマズいんじゃないの!?」

静かな時は慌ただしい舞の声で終わる。

そうだった…もう時間が無さそうなんだった。

もう少し杏の額を感じていたかった…とは思うが口では絶対に言えない。

 「杏…安心して風華の元に居なよ」

 「…勇大丈夫だよね」

 「あぁ大丈夫だ」

 「頑張ってね…勇っ!」

トン…ッと背中を押される。

するとガソリンの様に徐々に力が注がれてくる様な感覚になる。不思議だが…本当に感じた。

 「杏ちゃん!危ないから早く行こ!」

 「うわん!分かったよ舞ちゃむ!」

杏と舞は二人仲良く手を繋いで、先に行っていた霊愛たちに合流しようと走り出す。

 

数分後…

一通りの準備が済んだ勇は自分の席に座る。

相変わらず教科書が散乱してて汚い。

 「…風華たち…ちゃんとやってくれたよな…?」

 「さぁて…久しぶりの戦い腕がなるな…」

自分がこの物語を面白いと思っているけれど、案外見てくれる人は面白いと思ってないかもしれないと考えると、悲しみand悲しみです。


次の投稿は6月3日です

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