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ANCIENT -無代譚-  作者: 美朱太
未開の少年たち
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20/40

3-5 幸せな結末

最近自分のために書いてます。

大蛇と激突するまで…

3…2…1…

 「行くぞッ!黒縄ッ!」

 「死ネェッ!小僧ォォッ!」

龍子相搏つとはこのことだろう。まぁ漢字がちょっと違う事は黙っておこうと思う。


勇と大蛇がぶつかる…!

その直前ッ!


 プルルルル


気の抜ける様な音が二人の間に響く。

勇のポケットから鳴っている訳ではなかった。

 「アチョット待テ」

 「え?」


 プシュッ!


ペットボトル炭酸を開けた時の様な音。

何が起こったのか周りを見渡す。


 「この姿は流石に疲れるのぉ…」

 「え?」

大蛇のうなじ辺りから上半身を出す蛇老。

その手にはスマホが握られていた。

 「あ…あの説明を…」

 「人が電話をするときに話しかけるでない!」

 「あ…悪い…」


 『誰じゃ?ワシは今忙しいんじゃ』

 『蛇老婆さん元気コロか〜?』

この陽気で呑気なおちょくるのがうまそうな声はフロルの声。

蛇老は気を使ってくれたのかスピーカーにしてくれていた。ていうかあまりスマホに慣れてないから、スピーカーになってるんだろう。

 『…』

蛇老は一度勇の目を見た。

だが目と目が合うとすぐに視線を外す。

そのとき見えたんだよね。焦りが汗に。

 『あれ?蛇老婆さん?死んだコロか?』

 『…いやワシは生きてるぞ』

 『良かったコロ』

 『でなんの用じゃ?ワシは今忙しいんじゃ』

 『今沖縄旅行してるんだコロが』

 『お土産何が良いコロか?』

 『ちんすこうじゃな…』

 『OKだコロ〜!』

 『ていうか蛇老婆ちゃんは何してるんだコロ?』

また勇に視線を合わせる蛇老。

ニヤッ…と笑っているが口角がピクピクしてる。軽い知り合いに会った時の様な表情。

後から思い出してその表情をしてみると、ちょっと恥ずかしくてすぐ寝たくなる。


 『今、孫と遊んでるんじゃ』

 『蛇浪太くんコロか?』

 『そうじゃそうじゃ!』

 『また会いたいコロね〜!』

 「…俺は蛇浪太じゃないぞー?」

勇は叫んだ。魂の限り!なんてね。

 『…あれもう声変わりしたコロか?』

 『そうなんじゃ!つい昨日のぉ…』

しばらくの沈黙が続く。

電話が急に途切れた訳では無い。

ずっとフロルの方から黒ギャルっぽい笑い声が聞こえてくる。多分…黄色のビキニを着ている。そして誰にも馴れ馴れしそうなギャルの声だ。


そして画面に映し出される通話時間は4:18を表していた。

 『3ヶ月前に生まれたんじゃ無かったコロか?』

 『…じゃあまた帰ってきたら言うんじゃぞ』

 「勘違いしちゃうバカがいるかも知れないからなー」

 『…蛇老太くん天才児コロか!?』

 『ま…まぁ切るぞ』

 『あ!すいませーんコロ』

 『マンゴーカルメザンロック追加でお願いしますコロ』

 「お一つでよろ…」


 プツッ…


 「フロルの奴元気そうじゃったな」

 「うんそうだな」

 「さて…フロルが無事な事確認したし」

 「ワシもそろそろ帰ると…」

 「…黒縄」


 ビュンッ!


勇が手を出した瞬間に放たれた黒縄。

それは蛇老の腕ごと体を縛る。

あんなに出来なかったコンビネーション技は思わぬところで成功したのだ!

案外適当にやってみることにも意味があるのかも知れない。知らんけど。

 「お前いくら持ってるんだ?」

 「…しょ…所持金1万8千円じゃ」

 「え結構持ってるな」

 「そりゃ買い物に来ておったからな」

 「お前らが居たからこんなに荒れたんじゃ!」

 「最期に言いたいことはそれだけか?」

黒縄を縛る力がさらに強くなる。

蛇老の額からは大量の汗が流れ落ちる。

 「あ!あーあ!酷いんじゃ!」

 「フロルは逃してワシは殺すのか!?」

 「差別じゃぞ!いけないんだぞ!」

 「…殺すことはしない」

 「だからその大蛇をしまえ!」

 「わ!分かっておる!」


約40分後…

大蛇をしまった蛇老とフードコードの椅子に座る。風華もそこにはいた。失神してる。失禁はしていないから安心してほしい。ていうか高校生で漏らす奴なんていないだろw。

まぁいるだけで未だに蛇に括り付けられている。

ちなみに大蛇は特殊な製品みたいだ。

元々大蛇だった蛇老。

その脱皮後の皮が、あの大蛇なんだそうだ。

空気を入れて中に入れば肉付けが完了するみたいだ。片付けは空気を抜けばいいらしい。

それのせいで30分もかかったのは黙っておいてやろう。でも凄い製品だ。

 「さて…再延長戦」

 「単刀直入に言うぞ」

 「な…なんじゃ?やっぱり殺す気なのか!?」

 「弁償しなさい!」

 「…分かった」

 「や…やけに素直だな…」

蛇老はポケットから財布を取り出す。

ちなみにもう服は着ている。安心してほしい、まだ蛇老のヘソすらほとんど見てない。

そして財布から数枚の札を取り出す。

 「ほいじゃあ帰るぞ」

 「15000円!?」

 「…流石に多すぎた様じゃな」

1000円札5枚に手を掛ける蛇老。

その手を力強く握る勇。その手は長風呂上がりの様にシワシワで、骨が当たってしまうほど細かった。

 「…足りる訳がないだろ!?」

 「ぼ…!ぼったくりじゃ!」

 「…貯金どんくらいあんだ?」

 「7千万じゃ」

 「え…えぐぅ…」

 「流石に渡さんぞ!これは孫の蛇浪太の為の貯金なんじゃ!」

いいおばあちゃんだ。勘違いで襲ってくること以外は…。

見た目もそこらへんにいそうなおばあちゃんだから、きっと孫には優しいんだろう。

 「そのお孫ちゃんも地球に住んでるのか?」

 「そ…そうじゃが…」

蛇老は"へ"みたいな目を見開く。

あの小ささはどこへやら…まぁまぁ大きい目。

横長の目だからか不気味な目をしてる。カモメみたいな形をしている。

 「…っ!孫や息子に手を出すなら…」

 「ワシはお前らをここで殺す…」

 「…俺はお前と違って大切な人が死ぬ悲しみを知ってるよ」

 「そんな酷いこと俺には出来ないさ…」

 「…ふわぁっ!?」

カッコつけた後に目を覚ました風華。

もっと早くに目を覚ましてもらって見返したかった。あの生意気の風華を涙目にさせたかった。でも呑気な風華の方が好きだ。

 「…いやぁ!蛇ぃ…!」

…何も言わなくても泣き出した風華。

まだまだ赤ちゃんにしか見えない。

 「で…ワシの孫で何をするつもりなんじゃ!」

 「何もしない!するのはお前だ」

 「な…何をさせるつもりじゃ!」

 「も!もしかしてワシの体を売らせ…」

 「もう消費期限切れだろ!」

 「切り干し大根みたいな体しやがって!」

 「言い過ぎじゃ…」

目に汗を浮かべる蛇老。

最近は結構暑くなってきてるからしょうがない。

 「それより…何をすれば…」

 「ここで大道芸人として生きろ」

 「大道芸人…じゃと…?」

 「そうだ」

 「ほ…ほもほも…」

スマホを片手に[大道芸人]と調べる蛇老。

今時のおばあちゃんらしくフリック入力がだいぶ遅い。一秒に一文字が限度みたいだ。

 「…なるほどのぉ」

 「これって稼げるのか?」

 「200万〜650万くらいだってさ」

 「完全実力主義の世界だから…蛇老の蛇の操作能力なら稼げるんじゃないか?」

 「まぁ俺は弁償の仕様知らないけど…」

 「こりゃ結構な額だろうから頑張れよ」

 「…ワシが稼いだ金から弁償代が引かれるのか?」

 「いや…お前が稼いだ分の半分くらいをここの店舗に落とすんだな」

 「ま…まぁ適当に頑張るかのぉ…」

 「まっ!ご老体なんだから無理すんなよ〜」

 「風華そろそろ帰ろうぜ」

 「しょ!しょれより!たしゅけて!」

滑舌まで赤子の様になってしまっている。

ジタバタとチャイルドシートに座っている子供の様にしか見えない。

これを可愛いと思う思う層がいるのが驚きだ。

もちろん勇は頭を撫でてからその蛇を解く。

 「ありがとね!」

 「まぁ良いってことよ」

 「じゃ帰るか〜」

 「お前も早く帰れよ警察が来るかも知れないし」

 「あ…監視カメラと録画機ちゃんと壊しておくんだぞ!」

 「バレたら色々大変だろ?」

 「な…なんか勇も焦ってない?」

 「言うな…」

約3000円の野菜ども。

これは色々な場所に遊びに行く事になる…であろう高校生には痛い出費なのだ。

黙って蛇老に払わせた方がいい。元はと言えば蛇老が悪いんだもんね。

 「ふわぁ…」

 「勇!おんぶして!」

 「なんでだよ」

 「蛇が怖くて足が動けないんだよ!」

 「…ロリガキめ」

 「俺ロリじゃないんだけど!」

勇は膝を落として風華を背負う。

筋肉があるからか少し重たい。…が横を向くとモチっとした肌が当たる。

顔と体のバランスがイカれてる。

顔ももうちょっとシュッとなるはずなのに、可愛げのある程度のモチュッと具合。体は筋肉がある…。

 「じゃあ早く帰れよ〜」

 「あ!フロルにもよろしくな」


 「ふっ…勝俣勇と佐藤風華か…」

蛇老は二人の名前が書いてある紙を破る。

 「な…何してんだ」

 「お前らの殺さない決意しかと見た…」

 「…他の誰にも成せない決意じゃ」

 「えへへ…褒められたね勇」

 「そうだな…おほほ」

 「しかし…」

 「時にその決意が邪魔になる」

 「その決意を破る決意も必要になる」

 「しかと心得よ」

 「分かってるさ」

 「じゃ!仕事頑張れよ」


そうして二人はショッピングモールから出ていく。まぁ歩いてるのは勇だけだが。風華はずっとおしゃべりをしていた。無邪気だ。


 ブー


これは屁ではなくスマホから出てきた通知音だ。二人ともアイドルだから屁はでない。ビジュだけはアイドルだ。


 「何かきてるよ?」

 「なんで書いてある?」

 「えっと…」

 「玲那さんからだ!」

 「遥真が瓦礫に巻き込まれたって」

 「なんだそれだけか」

 「…!って!ヤバいじゃねぇか!」


そのメッセージと共に残された[日笠佐内病院]へと向かう。

静かな病院。慌ただしく走る看護師。

集中治療室の前の椅子で座る杏と玲那。俯いていた。

 「…」

 「私のせいで…」

 「はぁ…はぁ…」

 「遥真は!?」


 ウィーン


タイミング良く集中治療室の自動ドアが開く。

医者の顔は明るくも暗くもない…不思議な顔をしていた。

 「ほ…本当に遥真さんに瓦礫が当たったんですか?」

 「は!はい!大きな瓦礫が…」

この瓦礫は大蛇が天井を突き抜けた時に飛んだ瓦礫の事だろう。

 「おかしいなぁ…」

 「遥真の頭がおかしいのは元々です…」

 「a hold me tight(アホみたい)

 「悲しい色やね…」

医者もアホだと言う。他の誰が言うよりも説得力が違いすぎる。

 「いやいや!違くてね…」

 「外傷も内因も無いんだよ」

 「内因も無いん…」

風華も頭を打ったのかクソつまらないダジャレ。自分で言って自分で笑ってるし。

 「つ…つまり?」

 「な…なんで気絶してるのかが分からないんだよね」

 「そんな!遥真は私を庇って…それで瓦礫が当たったんですよ!」

 「その瓦礫はどうなったか覚えてる?」

 「え…えと…」


---

1時間前…

 「勇たち遅いね…」

 「大丈夫大丈夫…勇はきっと大丈夫」

 「あらぁ〜?夫婦みたいですなぁ〜」

 「勘違い勘違い」

 「でも風華ちゃんが心配だなぁ…」

 「風華ちゃむも大丈夫だよ〜」

 「あらぁ妹さんですかぁ〜?」

 「ウチより可愛い子は妹にはいりません!」

女子の会話は弾んでいる。

今はショッピングモールから出たすぐそこにある子供服屋に向かっている。

もうすでに他の客は車や自転車で帰っていて、駐車場にはビニール袋や買い物袋が転がっているだけだ。

その後ろで玲那の背中に見惚れる遥真。

玲那は胸は小さいがスタイルは神だ。

黒のハイウエストのワイドパンツに黄土色のVネック。性格に似合わない大人っぽい服。話してみたら可愛らしいのがギャップ萌えだ。

まぁそんな事はどうでも良くて…遥真は玲那のケツを追いかけてる。

 「ねぇ遥真!なんで風華ちゃんと勇は仲良いの」

 「まさか…!出来ちゃってるとか!?」

 「え…まぁえとその…風華が勇を好きなんだよ!」

 「風華ってよく勇と一緒にいるだろ?そう言う事なんだ」

 「キャー!風華ちゃんあんなあどけない顔して案外積極的なんだ〜!」

 「ていうか遥真好きな人いないの〜?」

今度は打って変わって遥真の隣を歩く玲那。

こんなの誰でも恋してしまう。しかもあんな無邪気な笑顔を近距離で見せられるんだから。

 「…お…俺は別に好きな人とかいないし…」

 「嘘つけ〜」

 「舞とか杏とか好きなんじゃなーいの?」

 「そ!そんなの興味ないから…」

こんな顔をしているが案外奥手だ。

 「えぇ〜遥真カッコいいのに〜!」

その瞬間、遥真の頭に華が開いた。

小さな遥真が脳内を踊り狂い遥真の門出を祝福する。玲那の笑った顔は明るく透き通っている。

今すぐに抱きしめたい。…そんな事はできないが…。


 ドォォンッ!


響き渡った轟音。

 「な!なんの音!?」

 「…玲那!遥真!急ごう!」

二人の手を握る杏。


 「でも…中にいる方が安全なんじゃ…」

 「…た…確かに…!でも中は危ないし…」


 グルゥゥゥッ!


重々しく響く風を切る音。

…音の方向を頼りに上を振り向く。

 「…あ!あれは!?」

隕石よりも小さいがそれと勘違いするほどの瓦礫。4m…いや5mはありそうなほどの大きさだ。

 「玲那!走って!」

 「で…でも…」

玲那の足は震えている。老人会にいる人の様なポーズをしている。

 「あ…足が動かないの…」

 「そ!そんな…!」

話している間にも近づいてきている瓦礫。

苦悶の表情を浮かべている杏。

 「私はいいから…!二人は先に行って!」

 「杏!先に行ってろ!」

今まで黙っていた遥真の叫び声。

 「俺が玲那を連れていくッ!」

 「…任せたよ!」

杏は走って逃げていく。


 ゴォォォッ!


 「ウオリャァァッ!」

迫り来た瓦礫はついに遥真と玲那を捉える。

眼前に迫った瓦礫はさらに大きく見えた…。

 「クゥッ!」

玲那を持ち上げようと腰を掴む。

だが予想以上に重く…

 「遥真!逃げて!」

 「俺が逃げる訳ねぇだろォッ!」


 BAGINッ!


遥真の頭頂部にあの瓦礫が命中した!

…遥真を押し潰して…玲那も…

なんて事はなかった。

瓦礫側が粉砕した。綺麗に粉々になった。

雪の様にパラパラと降り積もる瓦礫だった物。

 「遥真大丈夫!?」

 「ん…!?」

遥真の顔に近づいた玲那。唇が綺麗だ。

心臓が破裂しそうなほど早い。

 「んあぁっ!」

…バタッ


---


 「…ふむふむなるほど」

 「…と…とりあえず瓦礫が当たった事が原因で倒れた訳じゃなさそうだね」

 「…まぁとりあえず目が覚めたら帰れるからね」

 「じゃあそう言う事で…」

医者は一礼をすると踵を返して事務所へ向かう。

 「まぁ…原因は玲那に近づきすぎたから…かな」

 「それ以外考えられないもんね」

 「風華ちゃんが喋った!」

 「って男ぉぉっ!?」

 「ごめんね…言いづらくって…」

 「いやいや!嘘でしょ…!?」

 「杏そうだよね!?」

 「風華ちゃむは可愛い可愛いだけの男の子だよ〜」

 「嘘!?こんなぷにぷにで可愛いのに…」

玲那は風華のほっぺを摘む。

スライムの様にむに〜と伸びる。年長さんの女の子にしか見えない。

 「ていうか私に近づいたから倒れたってどうゆう事!?」

 「そりゃ玲那のこと好きだからだろ」

 「え!?遥真私のこと好きなの!?」

 「私彼氏いるんだけど!?」

 「…そうだよね」

あの風華でも知っている情報だ。

あの風華も知っているんだ。勇と遥真以外誰も友達と言える友達がいない風華でさえだ!

 「別の学校の超イケメンの人だよね」

玲那の彼氏はこの学校で言う颯ポジションだ。

つまりは完璧スペックっていうことだ。

 「遥真に直接言うのは気が引けたから言わなかったけど」

 「ま〜た失恋だな遥真の奴」

集中治療室の前で大笑いする四人。


それとは対照に一人枕を濡らす男がいた。

 「か…彼氏いたんかい…」

一人の病室がやたら広い気がした。

3話が終わったので、5月29日(金)から4話に入ります。

良かったら見ていってあげてください。

苦手な戦闘シーンがないので見やすいと思います。

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