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ANCIENT -無代譚-  作者: 美朱太
未開の少年たち
2/10

1-2 ほころび

今回からちゃんと動きます。

サブタイトルは決まってません。

失恋から一週間ほどが経った昼休み。

本来なら今週は杏と食べてる予定だった。

だがいつもの様に風華と男二人。

一定層羨ましがる男もいるだろうが…全く嬉しくない。…全くと言ったら嘘になるが。


屋上前の階段で弁当をむしゃむしゃと食べる。

一週間では数年患っていた恋の病なんて癒る訳がなく悲しくても学校へ向かわなければならないのは学生の辛いところだ。


悲しみに浸ってぼやけた視界のまま食べ進める。

それを見兼ねた風華は弁当から好きなおかずを選ばせ、それを渡してくれていた。これが一週間続いている。

なんとも風華らしい行動。

だがもうちょっと愚痴を聞いてくれたりとか、慰めてくれてもいいとは思ってしまう。

まぁいつも風華の優しさを無碍にできず…

下手な慰めをしないでくれてありがとう…と言いたくもある。

今日も今日とて自分で作った弁当を見せてくる。

 「別にいらないけど…」

 「ダメだよ!食べなきゃ!」

 「授業中お腹なったら恥ずかしいでしょ!」

 「それは今日の風華じゃ…」

 「忘レロ!」

子猫の様な威嚇。


今日の3限の時間は理科だった。

映像を見て学ぶ時間だったのだが…風華はお腹を鳴らしてしまった。

それだけならちょっと恥ずかしいだけなのだが…

その時の映像に映っていたのが蛙。

しかもゲロ気持ち悪いやつ。

人の食文化をバカにしないという考えは高校生には無かった。

容赦なく「ゲテモノ喰い」と名前がついた。

訂正しても意味をなさなかったし…

残念としか言いようがない。

風華は恥ずかしそうな顔をしていたが…面白かったので助ける訳がないよねって話で…


 「もう選ばせないから!今日は唐揚げだよ!」

 「ほら今日は風華様の特大サービスだよ2個もあげちゃうからね!」

 「…だから忘レロ!」

 「ん…分ふぁった」

流石冷凍食品と言ったところか…

冷めても美味しい。

なぜか肉汁があってそれが舌に落ちると口に旨味が広がる。

人間が生み出した最大の発明はテレビでも複利や電気などではなく冷凍食品だと思う。

まぁその電気がなければ冷凍食品は作る事ができないのもあるが…

昼飯時になると舌が敏感になるのか、米を掻き込むだけでも旨味を感じる。

やはり人間こそ至高…

草食ってる場合じゃねぇ!!


 「美味しい?」

 「うん美味い美味い」

 「良かった!」

風華の様に呑気に生きれたら…と何度も考えてしまうが、風華も風華でなかなか大変な思いをしてるのは知ってる。気安くはそんな事は言えない。

スマホをタップして時刻を見る。12:10まだ昼休みの時間はある。

こうしてスマホを弄るのは校則に違反してる。

陽キャたちはそんな校則知ったこっちゃねぇ!と教室で普通にスマホを使うのだが…そんな度胸二人にはない。

先生がまだまだ怖いお年頃なのです。

 「ミートボールいる…?」

 「いらない…」

 「怒ってる!?」

 「怒ってない…」

めんどくさい彼女みたいな事を言い出す風華。

弁当箱は全く減っていない。

リスみたいに口に詰め込んで食べているのに…元々の口の小ささが原因だろう。

眉間にシワの寄る勇を見ていられないのか、ミートボールをご飯の上に置く。

 「無理して慰めなくていいのに…」

 「でもひゃ…一番そばにいる友達がひゃ」

 「悲しんでるのに何もできないのひゃ辛いひょ」

いい事を言ってくれているのだが…肝心なところで口に詰め込んでいる…。

だが風華の目は相変わらずマジな目で、それに応えないとまた意味のない問答が続きそう…

ということで笑顔を作る。

 「それはありがとう」

 「うん!いいよ!」

風華は可愛らしく口角を上げる。

ミートボールを食べてご飯を掻き込む。

これで勇の昼飯は終了。

隣の風華を見てみるとまだ半分以上も残っている。

勇の弁当よりも少し小さいくらいなのに…

こいつ本当に男か…?

いつもと違ってなんとなく気まずい…

いつもなら適当にゲームやアニメの話をしてるのに…。今日はそんな気が起きない。

弁当箱を巾着にしまうと用事を思いついた様に立ち上がる。

 「ちょっと腹痛いからトイレ行ってくる」

 「んん!気をつけて〜!」

腹が痛いのなんて当然嘘だ。

ただちょっと一人になりたかっただけだ。


勇がいなくなった一人の階段で頭を抱える。

それはミートボールが消費期限が切れていた事を思い出したからではない。

どうやっても勇が笑ってくれない事だ。

笑ったと言えば今日の3限の…

いやあれは忘れなくては!

試行錯誤しながら勇の好きなおかずを探しているが…見つからない。

でもミニハンバーグとスイートコーンは良い反応を示していたけど…

次の日に持ってきたら全然嬉しそうじゃなかった。悲しい。


孫が美味しいと言っていたお菓子やアイスを、次に来た時のために買っておくおばあちゃんの様だ。

それもこれも喜んでほしいからで…

純粋な風華の優しさには胸を打たれるところがある。まぁやり方は変えた方がいいが…。

 「どうするべきなのか…」

一人の時間をたっぷり使い真剣に悩む。

だがそうこうしている内に昼休みの時間も短くなっていく。

弁当食べきれない問題ものしかかってくる。

すると下で走ってくる物音が聞こえる。

勇かな?…と階段の影からチラッと覗く。

そこにはある少女がいた。すぐに隠れてしまったせいで誰か顔ははっきりと見えなかったが…

手にはスマホを持っているのが見えた。

校則違反…!人のことを言えないが…。

階段登ってきたらどうしよう…と考えているとその下の少女の話し声が聞こえる。

 「お父さん…」

 「うん…大丈夫」

 「今日は…うん…」

この低い声は間違いない…

階段付近にいる人物は杏だ。

まだ食べきっていないが箸を置く。

よく聞こえる様に階段から目だけを覗かせる。

杏は少し視線を落としていた。

 「ちゃんと振ったよ」

 「来たらダメだよ…」

 「うん…それじゃあね…」

電話を切るとすぐにスマホを制服の胸ポケットに突っ込む。

非常に軽い会話だった。測ってはないが一分間も電話をしてないと思う。

だがその会話で分かることもあった…

まだ弁当は残っているが弁当箱蓋を閉める。

今日の夜…夜ご飯とまとめて食べよう。

 「なんか嫌な予感がする…」

風華が杏の謎の電話を聞いているとは知らずに勇は呑気に過ごす。

4,5,6限の授業も勇はほとんどボーっとしていた。

先生に話しかけられても完全にスルーしていた。余程眠かったのか…それとも本当に腹が痛くなってしまったのか…。わからない。

放課後の清掃を終わらすと友人たちと会話をして勇は学校から帰っていく。もちろん一緒に帰るかどうか聞かれた。だが「大事な予定がある」と言ったらすぐに引き下がってくれた。

そして風華は勇が告白した例のグラウンドの隅の林に向かう。

5限の体育の時間の終わりに杏をこの場所へ呼んでいた。

だが目的は告白ではない…


杏より早く来ていた風華はゴクリと唾を飲む。

「まだかなぁ…」と足を動かしながら待っていると杏が現れる。

 「風華!どうしたの話って!」

 「話しっていうか聞きたいことががあって…」

 「あ!そうなの!」

杏とは中学の頃は仲良かった。

でも中3になると杏は先に陽キャ街道を歩み…風華は陰キャ街道を下っている。

だから話せない訳ではないが…上手く話せるとも言えない状態だ。

それに加えあまり喋りが得意ではない。

気まずい空気を感じ取った杏…

風華の肩を叩くとピクッと毛を逆立てる。

まるで猫の様だ。

 「ていうか!こうして風華と二人っきりで話すの久しぶりだね!」

 「た…確かに…」

 「じゃ!じゃなくて!杏ッ!」

杏の肩を掴んで話せない様にする。

杏は目を丸めて風華を見る。

風華と杏は身長がまるまる一緒なのでこうしてみるとしまいの様…。

言うことをまとめた…だが何か危ない気配がする。…言うしかないか。

 「杏って!幸せだと思う?」

 「え…えと…どうゆう意味?」

 「いや!宗教勧誘とかじゃないんだよ!」

 「え…」

 「ただそのさ…!最近元気ないじゃん?」

 「ま…まぁそれが勘違いだったら良いけど!」

 「え…」

慌てて訂正に訂正を重ねる。

だが杏はBOTのように「え…」と繰り返すだけで…口は塞がっていない。

女の子に言ってもいいのか分からないが汗も出てきている。

そんなまずいことを言ったのか…簡単に誤解は解けなそうだな…と思うが別の説明は思いつかない。

再度説明を繰り返そうと杏を見る。

なぜかピクピクと跳ねる目尻…それと口が震えている。

そしてもう日は下がるしか無いのに風華の影が不自然に伸びている。

確実におかしい…

 「…ッ!」

聞き間違えで無かったら今耳元で「ニチャッ」と下品に口が開く音が聞こえた。

荒い息遣いにドブの様に臭い息。

そして普通の人間でも分かるほど背後から突き刺さってくる殺意。

草食動物が肉食動物の殺意に気がつかない訳がない。

 「…ングッ」

脈を打つ速さが揃わない…

荒い呼吸がずっと整わない…

これが恐怖というものなのだろうか。

体を動けないのでは無く動かしたくないと思ってしまう。刺激をしてしまったら一瞬にして命は無い…心臓を直で掴まれている様だ。

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