3-1 君がいた夏
ミスチルも好きです
面白かったら感想かブクマよろひくお願いひまふ。
今日は特に眩しい。雲も眠っているのか、太陽がこの世界に一貫している。
こんな日はどこにも行きたくない。行きたいと言う人が大半だろうが…暑いのは嫌じゃ。
初夏を超えた6月中旬。梅雨との狭間。
午前10時にもなってまだ寝ている勇。
「んおっ…」
「ふがっ…ごぉ…」
汚いイビキを掻きながら寝ている。
ベッドから左足は落ちて、体は半分落ちている様なもんだ。この状態でベッドの上に止まっている。勇の体幹は余程のものだ。
隣の部屋にいる杏は今日はいない。
それは友人とショッピングモールに行ったからだ!全く陽キャは暑さを感じないのか…?
今日も何事もなく休日が終わる。土日というのはこういうので十分だ。
そう思っていた矢先枕元にあるスマホが震える。
顔を動かさずに手だけでスマホ取り、画面を見る。黒い画面には目が半開きの自分が映る。
…ブッサイク…なんて事はないが。
「なんだ遥真かよ…」
'遥真"とは本名 神崎遥真。
今はクラスが違うが中学生の頃は三年間クラスが同じで自然と仲良くがなっていった。
風華とも中学2年生の頃に話すようになり、遥真は風華とは特に仲が良い。何か危ない関係を疑ってしまうほどに…!
まぁだが遥真は風華の下半身マグナムについて知っている。だからそっちの気では無いと信じたい。下半身マグナムを知っているから…ってのもあるかもしれないがやめてほしい。
遥真は成績優秀!身長も高くて野球部に所属している!しかもレギュラー入りしてる。ムカつくことに顔もいい。まぁアホだが。
颯といい名前だけの勝也といい遥真といい…この物語に出てくるのはイケメンしかいないのであろうか。多分イケメンにしとけばいいだろ!ってきな事でイケメンにしてるんだろうが。安直だ。
明言されていないが風華も顔単体で見れば…イケメン寄りだ。まぁ全体的には可愛い要素が強いのだが。
遥真の欠点を一つだけあげるとするのなら…
絶望的にモテない。出会いがないわけじゃ無いし、いいところまでは絶対に行く。
だがいつも肝心なところで失敗する。デートにはいけるがそこで遥真の恋の物語は一区切りが着く。
性格が悪いとは思えない。むしろいい奴だと思う事も結構ある。
ただノンデリなところはあると思うから…
女子のコンプレックスにずけずけと踏み込んでいたと簡単に予想できる。漬け丼。
それを指摘できずに彼女を欲する化け物を生み出していた。
そんな遥真からメッセージが届いている。
『"今暇?"』
『"忙しくなることもあるかも知れない"』
『"つまり今は暇だな"』
『"そうなのかも知れない"』
『"よしじゃあ…"』
しばらく遥真とのラインを続けていた。
電車に揺られながら海を眺める。
隣には半袖短パンの遥真。
坊主姿がよく似合う格好だ。短パン小僧。
スッカスカの電車にはスマホをつつく人がチラホラと見えるだけで、それ以外は一人の少女の後ろ姿が見えるのみ。
現在向かっているのはショッピングモール。
そう!杏が友人と共に一緒に行っている所だ。
だがこれで自ら行きたがったら恥ずかしい。
なぜなら杏がショッピングモールに行っていることを知っているからだ。
だから「まぁ〜付き添ってやるか…」ってな感じで遥真には付き添うことにしている。
本当は嬉しい。杏に会えるかも知れない。家以外の場所で。
「なんでまたショッピングモールなんだ?」
「カラオケとか行くだろ?男子高校生なら」
「俺ってモテ無いじゃん?」
「まぁモテてないよね」
「…それで俺のモテない理由を考えて見たんだけどさ…」
「やっぱアプローチが足りなかったんだよな」
「むしろアプローチし過ぎなくらいだろ!この前なんて初デートで薔薇持ってったって聞いたぞ!?」
「やっぱりお前はモテない側だからそう判断するのは仕方ないな」
普通なら一触即発の発言。
だがこんな会話は日常茶飯事だ。
心の中で遥真をボコボコにするだけで勘弁してやろうじゃないの。流石に実力差がありすぎるぜ…。
「で…それでなんでショッピングモールに行くことになるんだ?」
「分かってないな…ショッピングモールで本命にプレゼントを買うのだよ!」
「も…もっと頑張るところがあると思うけども…」
「ていうかお前も杏が好きなんなら…」
くだらない遥真の恋愛観は右から左に流す。
それよりも何やら聞いたことがある声がする。
「えぇ〜!そうなんですかぁ!」
優先席の声から女の子にしては低めの声。
「悪いトイレ行ってくる」
「え?分かった」
「ちゃんと流せよ〜」
「流すに決まってんだろ!」
ちなみに家では何回か流し忘れる。そう言う時は大体謎の水分などで姉に笑われるだけだ。謎の物体などではなく助かる。
遥真の話を途中で切り上げてその声の主のところへ向かう。
そこには優先席に座る老人と話す風華がいた。
しかもにゃんにゃんして猫を被っている。
「私は〜」
精一杯の女声を出して風華は老夫婦と話す。
はっきり言うと風華の女声は下手くそだ。
だがいつも夜中に一人で練習している。
まぁ言いたくはないが…地声の方がよっぽど女の子っぽい。杏とかそっち系統の声をしてる。
可愛い女の子の顔から低めの女の子の声。…刺さる人には刺さるんだろう。自分には刺さらない。
「あっ…!」
風華は勇の姿に気づく。
困った表情からすぐ、勇に気づくとにぱぁ〜と花が咲くような表情になる。
やはり表情と顔だけは女の子だ。
「勇く〜ん!」
「あらぁ…お友達かい?」
「はい!ちょっと待っててくださいね!」
勇は風華の肩を掴み背伸びをする。
そして口を勇の耳に近づける。
あざとすぎる。
「たすけてくんろぉ…」
どんな甘い声で甘い言葉を話されるのか…
内心期待していたが聞こえてきたのはカスカスの女声。
「声がぁ…出ないにゃぁ〜…」
「いや…友達が来たので行きますね〜とか言えばいいだろ」
「勇!天才だよッ!」
勇の耳元から口を離すと、老夫婦と顔を合わせる。風華に褒められて嬉しかったのは墓場まで持っていこうと思う。
「お母さん!お父さん!」
「私お友達が来たからあっち行くね?」
「あらぁ…もっと話したかったわぁ…」
「ごめんね…」
「あらあら…悲しい顔はしちゃダメだわよ」
「可愛い顔が勿体無いわ」
おばあちゃんに頬を触られ、風華は微笑む。
その姿を見ておばあちゃんも仏の笑み。
その光景を見て勇も笑みが溢れる。
何だこの幸せなシーン…。これをみるだけで生きている意味がある。
「じゃあね!」
風華は老夫婦に手を振り遥真がいる先へと向かう。それを勇は歩いて追い掛ける。なんかスター女優のボディガードをしている気分だ。
「どうしてあんな事になったんだ?」
「う〜ん…おじいちゃんが足が悪いみたいでね」
「手伝ってたら2人の会話に巻き込まれちゃったんだ」
「…そっか」
なんて良い子なんだろ。
「おぉー!風華ー!」
遥真は風華を見るやいなや風華に抱きつく。
嫌がった表情を見せそっぽを向く風華。こいつ本当は女の子なのか!?
「何よ」
「頼む…!去勢してくれ…!」
「なんでよッ!」
「良いだろぉ〜?減るもんじゃ無いしよ〜」
「減るよ!?一本減るよ!?」
「まぁいいや俺には本命がいるしな!」
「お前には勝てるわけがない本命がな!」
「勝つ気無いけど!?」
「てか本命って?」
風華が尋ねると遥真は自慢気な顔をしてる。後方彼氏面候補ベンチ入り。
まだ付き合えるとも決まっていないのに…。
ていうか過去の失恋を味わっているのにこの表情ができるのは逆にすごい。
「お前らとおんなじクラスの田淵玲那だよ!」
田淵玲那は学年でもトップクラスにモテている。男子の間だけで採られた[第二回好きな女の子ランキング]では1位に選ばれた。2位の倍の票差をつけていた。
優勝候補の杏や舞はそれぞれ、杏は3位、舞は7位だった。
この学年は女の子のレベルは本当に高いのだ。まぁその分男の顔面の平均点はだいぶ低いが…。男からしたら天国でしかない。いやはや眼福眼福。
「本当に仲良いのか?」
「確か…前の人はそんなに仲良くなかったみたいな話聞いたよ?」
「うるさいうるさい!俺は本当に仲良いんだゾッ!」
ちなみにこの「ゾッ!」と語尾を強めるのは遥真のくせだ。どこかの赤い服で黄色の短パンのジャガイモ小僧を思わせる。
遥真は仲が良いと自称しているが…第三者視点の勇と風華から見たら…。まぁ仲は良いけど遥真くらい仲良い子は五万といる。
だが恋は盲目ゆえ…何を言っても聞かないと知っている。なぜなら勇と風華もその恋の病気にかかっちゃってるから!
「そう言えば昨日杏が玲那とショッピングモールに行くって言ってた様な…」
「ま!マジか!?」
「おん…風呂上がった後に聞いたぞ」
「ふ…風呂?」
「え?昨日杏とお泊まりしたの?」
「は?」
「風呂…ふろ!フロアで聞いた…」
「ま…まぁ勇も失恋直後だから…」
「頭がおかしくなったんだな…うん…」
何か大事な事を隠して大事な物を傷つけられた気がする。本当だったら今すぐボコボコにしてやりたい。
だがこんな大勢の前でボコボコにしてしまったら二人があまりにも可哀想だ。
…本音は返り討ちに合いそうだからってのは黙っておくことにしよう。
「玲那さん…俺あの人ちょっと苦手だなぁ…」
「まぁ風華は苦手そうだよな」
「なんでだ?あ風華はインキャだもんなぁ…陽キャの可愛い女子は怖いもんなぁ〜」
見ての通り最低である。冗談っぽく言っているが多分ガチで思っている事だ。
お前は人間じゃねぇ!
「否定できない自分が憎い…」
「ていうか風華はなんでここに居んだ?」
「それは…!」
何かこう重々しい雰囲気だ。
持病が悪化したとか、痔が悪化したとか…。そんな感じの雰囲気がある。風華は痔じゃないが。
「普通に買い物だよ?」
「殴って殴って殴ってやろうか?」
「…てことは風華も一緒にショッピングモール行くのか」
「うん!」
「行くんだけどさぁ…」
なぜか遥真の胸に頬を寄せる風華。声も気持ち色っぽくなっている。
遥真は当然の如く顔を真っ赤に染めている。
はっきり言ってしまうと…だいぶキモい。
「お願いがあるのぉ〜」
「な…なんだ?」
「…奢って?」
「え?」
「欲しいの全部ちょ〜だい?♡」
こいつは自分の使い方をよくわかっている。いやもう分かりすぎてだめだ。男として大事な物を捨てている気がする。
そんで遥真は…
「お!おう良いぞ!」
ちょろすぎる。めっちゃ口角が緩んでる。
多分今水を飲ませたら全部出てくることだろう。日本にいるのにマーライオンが見れる。多分遥真がいるところが観光名所になる日は近いな…こりゃ。
それから電車で20分…バスで10分…合計30分掛けて到着したのは…
超特大ショッピングモールだッ!
ここにはなんでもある!一階にはスーパーや、あの「starter max」や「コレダッ!珈琲」。
2階にはゲームセンターや「有印悪品」、「L0ET」などの雑貨店。
3階にはなんと映画館がある。
県内最大級のショッピングモールだ!
そしてここには杏と玲那がいる…!
おそらく世の男子どもはこの二人の姿に目を奪われているに違いない…。
そのうちの一人と一緒に住んでいることも知らない愚民どもに、自然と笑みが溢れる。
それはさておき…ショッピングモールに着いた男3人は、早速女物の品物がある雑貨店に向かう。
「う〜むやはり女の子ものの店は緊張するな」
「男3人は流石に恥ずかしいね…」
「お前は見た目ほとんど女の子だから良いだろ!お前のその顔面で一発で男って分かる方が少ないぞ!あッ!そーれ!あッ!そーれ!」
…とか言ってみたかった。
だけど周りの視線があまりにも痛い。
周りはカップルだらけだ。女は可愛く男は髪がなかったら中の中。そんなありふれたカップル…略して「ありップル」が周りに溢れかえっている。全員同じ顔だ。
たたでさえ男2人、女1人とかいう小規模逆ハーレムとして周りは見ているのに…あんなツッコミをしたらさらに視線をもらってしまう。
「お前は見た目がほとんど女だから良いだろ!お前のその見た目で一発で男だって分かる方が少ないぞ!あッ!そーれ!あッ!そーれ!」
ほとんどおんなじ事を言っている遥真。
口調は遥真の荒さに寄っているが…こんな奴と考えることが一緒だとは…。
今夜は枕が濡れそうだ。
「俺らなんてただの変態だゾ?こんなとこにいたら」
「まぁまぁ〜ここに居なくても2人ともだいぶ変態だし〜」
何も言っていないのに謎にDISられた。
「とりあえず早く買い物終わらせよう」
「そうだね!」
一通り買い物を終わらせた。
終わってから気づいたが…遥真1人だけで買い物させれば良かった。その間に別の所で買い物をすれば良かった。
それに気づけないうちはまだ友達想いなんだろう…。なんつって…。
「あれ!?勇と遥真と〜!」
高くて透き通って綺麗より楽しさを感じる声。
the 陽キャってな感じの声で全身に緊張が走る。インキャの血が疼いちまってんだ。
声の方向を見てみると…
そこには遥真の本命の田淵玲那がいた。その横で杏は手を振る。
玲那の笑顔に遥真の顔が真っ赤になる。…キモい。
だがその笑顔はどうやら遥真に向けられたものではなさそうで…。
「風華ちゃ〜ん!」
玲那は風華のことを「ちゃん」付けで呼ぶ。この学校では玲那だけだ。それには理由がある。
玲那は風華の事を完全に女の子だと思っているのだッ!
だから今みたいに普通に風華を抱きしめている。玲那の方が身長が高いので、玲那の胸が風華の頬に当たって潰れている。
…正直言ってかなりズルい。玲那は顔だけみれば本当に美人…。天真爛漫な性格もなかなかに…良い。しまった…。玲那は胸は小さいのだった。
「風華…嘘だろ…?」
「な…なんで…」
死んだような目で玲那を見ている遥真。
気持ちもわかってしまう。目の前で好きな人が親友に寝取られ?てしまったのだから…。
…ちなみに風華も死んだような目をしている。
抱きしめられてると言っても軽ーくじゃない。風華の骨なら簡単に折れそうなくらい強い。
だが声を上げないで苦しんでいる。
声を上げてしまったら男だとバレてしまう…。
「…遥真えっと…」
「ま…また失恋…?」
目の前で友人が失恋しているのを見る…。
これほど面白いものは無いよねって話で…。
どうせ遅かれ早かれこうなっていたのだもん!
笑いそうになるのを堪えるのに必死になる。
「笑いたきゃ笑えよ…」
「…良いのか?」
「もう良いんだ…玲那は…もう」
「いや…本当に笑うぞ?」
「お前!一応主人公だろッ!?」
「ま…まぁまぁとりまちょっと休もうぜ…」
遥真の背を撫でながら風華に背を向ける。
その遥真の背中は…汗が染み込んでいて臭かったのは墓場まで持っていこうと思う。
ちなみに風華はその間も抱きしめられていて、苦しそうに手を伸ばしていた。ちゃんと見てた。
「お…俺はいつもこうだぁ…」
巨体に似合わない細すぎる声。
「うんうん…いつもこうだな」
「失恋して…また恋して…好きになってもらって…なぜか失恋して…」
「うんうん…全部勘違いで片想いなんだよな」
「え…えと…」
「うんうん…クズなのは仕方ないよ」
「お!俺そこまで言ってないゾッ!?」
「ううん…実は言ってた」
「気づかなかった」
将来壺を売りつける相手は遥真に決まりだ。
色々事情を知っている側からしたらなかなかに面白いもんだ。
風華は男だってことを言わないのには理由がある。それは玲那のためだった。
新年度で同じクラスになった玲那と風華。
それまでは全く関わりが無かったのだが…風華の可愛さが玲那の目に止まって会って数秒で抱きつかれた。ここから分かる通り玲那は無類の可愛いもの好きだ。…今度女装をしてみようと思う。
それから…毎日の様に抱きつかれ…玲那の膝の上に座り…羨ましいことを散々してきた。
それで今更「じゃじゃじゃーん!実は俺!男でしたー!」とか言ったら玲那は死んでしまうかも知れない。死なないにしても恥をかいてしまうのは確定だ。
…まぁ結論最初に言わなかった風華が悪い。
遥真が失恋してしまったと思った事も…遥真が一生彼氏できないことも…遥真がノンデリなのも!元を辿れば全部風華が悪いのだ。
悔しいことに事情を知れば遥真は失恋してないのだと気づくだろう。
実際に風華は抱きつかれてしめしめ…と思ってる節もあると思う。なんかイラついてきたな…。
一方その頃風華は…
今週土曜まで仕事があるのでワンちゃん投稿がズレるかも知れやせん。




