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ANCIENT -無代譚-  作者: 美朱太
未開の少年たち
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15/42

2-5 花葬 (2)

面白かったらブックマークを….

 「で…でもお前攻撃届かないだろ!」

 「そうだと思ってたんだコロが」

突然…ッ!目の前からフロルが消えた。

消えた…と言うより薄らと影が見えた瞬間にいなくなった…。

 「懐空いてるコロよ?」


 ドォォンッ!


 「グフッッ!」

風華の腹にあの触手が突き刺さった!

風華は簡単に吹き飛ばされる。血を吐きながら…。

 「風華ッ!」

 「お前も…危ないコロよ?」

腹に飛んでくる触手。

だが勇の顔には焦りがなかった…。


腹部に当たるとトンッ!と軽い音が鳴る。

先ほどの風華とは大違いだった。

 「痛覚が死んだコロか…?」

 「お前…腹を殴るのが好きだな…」

 「…腹にあの縄を巻いた…コロね」

 「大当たりだ…!」


 ブンッ!


両手を丸めた拳がフロルの後頭部に襲いかかる。その勢いは風を切る音が後ろに横たわる風華にも聞こえるほどだった。


 「グフゥッ!」

フロルの花びらが地面に触れるが完全に倒れることは無かった。寸前のところで足に力を入れたのだろう。ふくらはぎが引き締まっている。

 「痛いコロ…」

 「だが…近づかれた時点で負けコロよ?」

フロルの右腕の触手が勇の左手に巻き付く。

そしてもう一方の触手は勇の腹ではなく、顔面を狙っていた…。じゃんけんをするかの様に構えている。

 「マズいな…」

目だけで後ろを振り返るが風華は倒れている。どうやら先ほどのフロルの攻撃が良いところに入ってしまった様だ。腹を抑えもがいている。

僅かな希望が潰えた勇は汗を流す。

 「終わりだコロ…ッ!」

眼前にある触手が放たれるッ!

そこからの記憶は若干薄れていた。

吹き飛ばされて十分に距離を取ることもできず、ただただあの速さの触手を喰らっていた。

もう何時間も経った気がした。まだ数分も経っていないが…。

意識を失うことは無かった。

ただ一途に風華が起きることを信じていたから…。


 「はぁ…はぁ…まだ倒れない…コロか…?」

息遣いが荒くなってしまっているフロル。

勇の顔は限界がないほどに腫れてしまっている…。と思ったが途中から顔面を黒縄で守っていたおかげで痛みだけで、腫れてはいない。

 「まだ…やるか?」

強がっているがもうやめてほしい。


フロルは右腕の触手を離して距離を取る。

さっきの様な奇襲を警戒してのこと。

フロルと勇の距離は3mほど…。

 「凄いじゃん…」

勇の右手には弱々しくナイフが握られていた。

もう希望のなくなった攻撃手段だ。微かに切った触手の液が付着しているだけだ。

それ以外のものは何もついていない。

 「なぁ…避けないでくれよ…?」

勇は最後の手段としてナイフを投げつけた。

その速度は瀕死のトンボの様に遅くよろよろと蠢きながらフロルへと向かっていく。

一度休憩してから避けることも可能なほど遅い。

 「無様だコロね…」

フロルは顔を逸らしそのナイフを最も容易く避ける。


突然黒い布が目の前に掛かったかの様に目の前が真っ暗になった。最後のニヤけた顔がやけに恐怖心を沸かせた。

鳥肌が立ってしまった。

顔に掛かった黒い布を退かそうとするものの顔の前には何もない。

次第に痛みがやってきて状況を察する。

 「な…なんで目が潰されているコロ…?」

 「俺の黒縄がお前の目を潰したんだよ…」

 「あの縄は濡れたら使えなかったはずだコロ!」

 「お前が想像するより奥深くからお前の目を狙っていたんだよ」

 「最初っからな…」

 「あのナイフは!」

 「ちょっと時間を稼ぐためのブラフだ」

 「お前が無駄に時間を使ってくれて良かったよ…」

 「ふっ…」

 「な…何がおかしいんだ?」

状況は一転して圧倒的な優位のはず…。

だが変わらず…いや先ほど以上に余裕の表情を見せるフロル。いや表情は見えないか…。

 「…私の目はただの捨て駒…」

 「この両腕の触手にも自我があるコロッ!」

 「お前の負けだァッッ!」

 「コロ!」

一直線にこちらは向かってくる2本の触手。

まだ最初に殴られた腹が痛く…脳みそも揺らされて自分が何をしたいのかも分からない。

避けたいのに体が動く事を許してくれない。

…負け…その言葉が脳裏をよぎる。

 「させるかあッッ!」

高い叫び声が背後から聞こえる。


 ズバァンッ!


波が防波堤に打つ様な激しい音が聞こえる。

体のどこを触っても怪我がない。

どうやら体に当たった時の音では無さそうだ。


ヌチョヌチャ…と泥を歩く音が前から聞こえる。

 「…ふっ…またつまらぬものを切ってしまった…」

この生意気なボイスは風華でしかない。

 「風華…!お前起きたのか!?」

 「うん…そしてあの触手を切ったのさ…」

薄らと見える視界で目の前を見る。

そこには2本の触手が転がっていた。

そしてその奥には切られた腕を見て放心状態のフロル。

緑色の液体が付いた刀身を汚物を見る様な目で見ている風華。可愛い。

 「風華!早くあいつに止めを!」

 「お!俺そんな事したくないよ!」

 「勇がやってよ!」

 「…そこそこ痛いから刺すなら早く止めを刺すコロ!」

 「いやだよ!」

 「なんでだコロ!」

 「だ…だって一緒にふざけ合った仲だもん…」

 「しかも名前も教えてもらったんだし殺したくないよ!」

 「全くあんたって子は…」

 「俺とおんなじこと考えてた」

 「真っ先に殺そうもしてたコロよ!?」

…この話は数分続いて結局は殺さないことになった。理由は可哀想だしってことで…。満場一致だ。

 「痛いコロだから早くプニちゃんの元へ連れていくコロ」

 「歩けるだろ歩けよ」

 「そうだよ!」

 「あとプニちゃんってネーミングセンス無いよ!」

 「そ…そんな…お腹ぷにぷにで可愛いのに…」

3人横並びであの花の怪物の元へ向かう。

勇は右腕の触手を持って、風華は左腕の触手を持っている。結構重いと思っていたが案外軽い。発泡スチロールを持っている気分だ。


そして花の怪物の元へ辿り着く…。

 「あ!風華くん!」

 「名前決まったんだよ!」

 「ほ…本当に考えてたんだ…」

舞と風華が普通に話している…。なんか感激。

あんなにキョドっていたのに大人になったのね…。なんて親でも無いのにそんなこと思ってしまう。


舞は花の怪物のお腹を指を指す。

 「プニちゃん!」

 「え?」

 「プニちゃん!」

 「え?」

 「プニ…っ!」

 「いつまで続けるんだ…」

 「ど…どうかな?」

 「う…うんセンスあるね」

 「やったね!プニちゃん!」

花の怪物は舞と目を合わせて笑う。

なんて可愛い空間なのだろう…。


そこに腕のないフロルが舞に近づく。

 「お主…ただのロリだと思っていたけどセンスあるコロね」

 「え…えと…腕大丈夫なんですか…?」

 「これはプニちゃんの口の中に入って小僧二人が持っている触手を入れたら勝手にくっつくコロ」

 「…プニちゃんの口の中って便利なんですね!」

この笑顔!ま…眩しすぎる…。これじゃフロルも成長しちゃうよ。ちょうど雨受けてたし。ウケる。


そしてフロルはプニちゃんの口の中に入って腕がくっつく。ついでに潰れた目も治っていた。だいぶ雑な説明だが…あの中で何が起こっているのかが全く分からないのだもん。

 「ふっふっふっ!」

 「ま…まさか!裏切るつもりか!?」

 「んなわけないコロ」

 「お主らも一回プニちゃんの口に入ってみるコロ」

 「その顔の怪我とか全部引くコロよ」

 「え…えぇ…なんか嫌だ…」

 「拒否権はないコロ」

 「プニちゃん!飲み込んじゃダメだよ!」

厳しくも愛のある舞の声。お母さんみたい。

プニちゃんは大きく首を動かして頷く。

短い間でこんなに躾が出来るとは…将来はブリーダーになりそうだ。知らんけど。


ぷにちゃんの口の中はとても温かかった。

口の中だから臭いとも思ったがむしろ花の香りが広がっていて心地よかった。

しかも腹痛や脳震盪が治っていくのがはっきりわかる…。幸せだ。鍼治療をしている様な気分。

風華の顔もとろけていてスライムの様で口からはよだれが出ている。


 「ンバァッ」

プニちゃんの口の中から出ると二人の顔はスッキリしていた。サウナで整う環境がプニちゃんの口の中にあったのだろう。

 「よしプニちゃん良い子だ」

 「さて…」

 「帰るのか?」

 「私たちは本来はこの地球に居てはいけない存在だコロ」

 「そりゃな」

 「そしてお主たちに負けたのだ…ならば帰るしかないコロ…」

 「おうそうか早く帰れ」

 「ひ!酷いコロッ!」

フロルはプライドが無いのか…地面に膝をつけて勇のお腹の辺りで顔をすりすりする。

よく妊婦のお腹に頬を寄せる夫がいるだろう。完全にそれだ。

ヒゲをジョリジョリされているみたいでちょっとチクチクする。きゅうりみたいに小さなトゲが付いているんだろう。


流石に嫌だからフロルを引き剥がす。…なかなか引き剥がせなかったのはフロルのために黙っておこう。

アイドルの握手会のスタッフの気分だ。

 「…人間は薄情ものだコロ」

 「あ!あんなにボコボコにされたんだぞ!」

 「それなのに許してやってるんだから十分だろ!」

 「い!いつかリベンジしてやるコロからな!」

 「103年後の今日暇だけど…」

 「お主死んでるコロが!」

 「チッ…」

 「てかどうやって帰るんだ?」

 「ふっふっふっ!良いこと聞いてくれたコロね」


某3分のクッキングの曲が流れ始めた。

 「まずプニちゃん俺を食べるコロ」

 「アムッ!」

プニちゃんがフロルを食べた。

 「そしてプニちゃんが全身に力を入れて…」

 「飛ぶッ!」

 「あ!ちょ!」

髪が背後に回るほどの暴風と、あの音楽が聞こえなくなるほどの轟音。

最後に情けないフロルの声が聞こえた。

本当にまだ帰りたくなかったんだろう。


 「…帰ったね」

 「あいつ…バカだったな」

 「バカだったね…」

本当にバカだ。


フロルたちの消えていった空を見上げると、後ろから足音が聞こえる。

 「…風華くん!背中大丈夫だった…?」

 「あ…あれ?なんか治ってる…」

こいつも十分にバカだ。


しばらくして…

颯が目を覚ました。

周りには颯と仲良い男女がいて…花に囲まれるプリンセスの様な待遇だ。

颯の目覚めを祝福するかの様に雨も止んだ。

 「て…天使…?」

 「天使はこっちでしょ…」

颯が天使だと思っていたのは風華だ。

まぁ未だにメイド服を着ているから勘違いしてしまうのも無理はない。

風華は怒った顔をして颯の手を舞の頬にもっていく。

 「舞…」

 「大丈夫?」

 「うん…どこも痛くない…」

ちなみに颯があまりにも汚かったのでホースで洗い流した。イケメンフェイスは崩れてない。


上半身だけで起き上がると舞の両手を包む。

舞は少し戸惑った表情をして颯を見つめる。

新婚の朝みたいで腹立たしい。

風華は不満そうな顔をして立ち上がり、お山座りで観覧する勇の元へ向かう。

その側には杏がいて、仲良く話している。何故だ。


 「俺と付き合ってほしい!」


 ズテッ!


風華は転んだ。

さっきのフロルを彷彿とさせる転び方。

こうなるのも不思議ではないだろう。

だって知らない化け物に食べられて吐き出されて目を覚ましたら告白。そんなの誰も予想できない。

 「えっ!?」

 「ひゅーひゅー!」

舞は戸惑いの声を上げる。それに反して颯の告白を盛り上げる生徒たち。

困惑する舞に背後の女子に大きな声で言う。

 「正直になっちゃえ!」

この声は杏だ…。全くどっちの味方なのだろう。

その声に決心が着いた舞は颯の目を見る。


こんなの予定調和でしかなかった。

何も面白みのない。イケメンが美女を喰らう。そんなの数十年続いている文化だ。

でも…それでも嫉妬心は消えることはない。

涙を流すことでそこから新たな芽が出るなら良いが…それは叶わず古い芽に執着する。

あの颯の笑顔をこの先ずっと憎んでしまう。

別に颯が悪い訳でも無いのに…。

自分の弱さを間接的に突きつけられている気分だ。何故こんな思いをしなければいけないのだろう。


 「ご…ごめんなさい!」

ほら舞も振っているし…。

…ッ?え?

 「え…えと今なんて…?」

 「ごめんなさい…!」

あの笑顔はどこへいったのか颯の眉は徐々に下がっていく。そして上がっていく風華の口角。

あんまり性格が良くないと嫌われるぞ!

 「私ね!颯くんのことそういう目で見てなくって…」

 「もちろん!颯くんをかっこいい!って思ったことあるよ!」

 「でもお兄ちゃんみたいな感じでね!」

 「でもねでもね!颯くんイケメンだから私みたいなブーな女の子じゃなくって可愛い女の子と付き合えると思うの!」

舞は気づいていないのだろう。

その振った理由を連続で言われるのが一番心に刺さる事を…。

なんとか理解しようとする心にどんどん理由が積み重なっていくと心が耐えきれなくなる…。


颯はカチカチの笑顔を作る。

多分今なら殴っても笑顔のままだ。

 「チャ…チャンスは…あるって事カナ?」

 「う…うん」

その言葉を聞くと颯はいつものイケメンスマイルに早替わりをする。

 「じゃあ明日から舞にガンガンアプローチするから!覚悟しておいてね!」

今までも散々アプローチを仕掛けていた。

それ以上のアプローチをするとなると何をしでかすかが全く想像がつかない。

普通にお尻とか触りそうだ。限度など知らなそうだし。イケメンだし。

花も恋も散り際が肝心。なんつって。


颯はグラウンドを走り去る。

口ではあんなに格好つけていたが、大勢の前で振られたのは流石にキツかったんだろう。

…告白のタイミングもだいぶ変だったし。

あの後普通に颯は家に帰って寝たらしい。

病院にも行かなかったみたいだ。


その場は颯が振られた事で持ちきりで、勇と風華が戦っていたことなどみんな忘れていた。


そして現在…

 「これからもあんな奴が来るのかな…」

 「フロルみたいなノリが分かる奴なら良いんだけどな」

 「良くないでしょ!グラウンドめちゃくちゃなってるし!」

 「確かに学校に来るのはやめてほしい…」

今は先生にこっぴどく叱られて砂を戻したり…プニちゃんの液体が着いた箇所を拭いたりしている。

なぜ戦った後にこんな事をしなきゃいけないのだろう。

何も関係ない舞と杏が手伝ってくれているのが唯一の救いだ。

二人揃っているだけで目の保養になっている。

いやはや眼福眼福。

 「てか気になったんだけど…」

 「なに?」

 「風華って能力なんなんだ?」

 「飛んだり何か出したりしてたけど…」

 「まず一つ目は飛行!」


----

能力の説明サイト[飛行の使用例]

tier,A!当たり!

その1,「あんな事いいなぁできたらいいなぁ」がまさかの再現可能に!?

これがあればどんなに高いところも登れちゃう!しかも高速で動けちゃうぞ!

クラスのアイドルあの娘も俺のこの飛行にメロメロ!


注:飛んでいる最中は周りからの視線が気になります。

あまりにも上空に上がると呼吸が続かなくなるので注意しましょう。

良い子は非行をしない様に!yeah!

----


 「このサイト変だね…」

 「最後が特にな…」

変なyeah!


 「じゃああの道具出してたのはなんの能力なんだ?」

 「ふっふっふっ…それはね!」

 「sozo?って言うらしい」

 「town?」

 「not!」


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能力説明サイト [SOZOの使用例]

tear,Sッ! 大当たりッ!

その1,「くぅ〜あれがほしい!これもほしいもっともっとほしい!」そんな時はSOZOを使おう!

これがあれば頭に思い浮かべたものを自在に作れるぞ!これであの娘にプレゼントをあげよう!


注:1895年のアップデートからお札の複製は禁止されました。このサービスは現在ご利用できません。

プレゼントを作ってあげた場合、責任は一切お取りすることができかねますのでご了承ください。

----


 「らしい」

 「大当たり…だと…」

 「なんか面白そうに見えたから取ったら大当たりだったんだよ!」

 「お前変なツボも面白そうだから買うなよ」

 「分かってるよ!?」


男同士の会話を咲かせている間…。

杏と舞の二人は女子トークに花を咲かせていた。

心を寄せる殿方との親睦の進歩や、殿方への不満や愚痴を語り合う。そして同じ者を狙わぬかを探る行為。いわば恋バナである。

 「杏ちゃんって勇くんのこと好きなの!?」

舞の突拍子も無い問いに杏は飲んでいた水を吹き出す。マーライオンの様だ。

水吹き出しのオリンピックがあれば銀メダルは確定と言えるほどに水は飛んでいた。

 「うわぁ!新記録!?」

 「ゴホッ!変なこと聞かないでよー!舞ちゃむ!」

 「ご!ごめん!でもなんか最近杏ちゃんも勇くんずっと話してるし…」

 「そ!そんなこと言ったら舞ちゃむは颯とずっと喋ってるけど好きじゃないんでしょ?」

 「う…うん…そうだけどぉ…」

 「じゃあ舞ちゃむはなんで振ったの?」

 「え…えと颯くんはイケメンだし!優しいから舞みたいな人と話してても楽しくないと思って…」

 「本当は?」

 「あんまりグイグイ来られるのが苦手で…って!言わせないでよ!」

 「しめしめ…!」

 「でも私もお誘いを断ったりしてこなかったし…」

本当に申し訳なさそうに俯く舞。

今すぐに撫でちゃいたくなるくらい可愛い。

この子は本当に良い子なんだろう。

 「じゃあ舞ちゃむ好きな子はいないの?」

 「うん!いないよ!」

 「勝也とか仲良いじゃん!あいつはどうなのよ!」

勝也とは野球部のエースで将来はプロ入り間違いなしとも言われる野球界の超新星。

まさか序盤に野球で例えていたのが伏線だったとは思わなかっただろう。自分でも思わなかったもの。

しかも勉強は県トップ。顔ももちろん良し。性格も良し。マジで良い奴。

スペックで言えばあの颯とも互角なくらいだ。

 「クラス違うし…身長が高すぎるよ〜」

 「チビチビ…」

 「あっ!風華は!あいつチビだよ!」

 「風華くん!?うーん」

風華との事を思い出す舞。

だが風華とのことは思い出せるほどなく…今日のあの出来事のことだけを思い出す。

 「えっ…えぇ!風華くんかぁ!」

 「え!?なになに!?何があったの!?」

水を得た魚のように調子に乗る杏。

そして少し屈んで舞の顔を見る。ニヤニヤの杏。

 「違う!風華くんずっと女の子みたいだと思ってたから…」

 「案外男らしくってびっくりしただけ!」

 「あの子かっこいいところあるものね〜」

 「杏ちゃん!いじめないで!」

弱々しい声で声を上げる舞。可愛い。

 「ていうか風華くんは勇くんが好きなんだよ!」

 「な…なんでそうなるのよ…」

 「だって風華くんいっつも勇くんと一緒にいるし!」

 「それだけ!?」

 「もしそれが本当だとして勇はどうなのよ!」

 「案外満更でもないのかも…!」

 「風華くん顔だけ見たら嘘みたいに可愛いし…!もしかしたらそっち路線も…!」

 「あぁんっ!これは直接聞いてみるしかないのかなぁ…!」

舞は散々一人で語った後、顔を上げる。

…そして徐々に顔が青ざめていく。


そこには女子の会話を盗み聞きして、戸惑っているインキャ男子二名がいた。

舞の衝撃発言…流石に戸惑うことしかできないだろ。

恥ずかしい事を聞かれた舞は顔を真っ赤にする。それもまたかわゆす。

それを隠す様に二人の前で頭を下げる。

 「別にバカにしてるわけじゃないよ!」

 「ただ風華くんが男の子好きならそうなんだ〜って思っただけだよ!」

 「…信じてくれる?」

少し顔を上げて視線を上げる舞。上目遣いになっている。破壊力抜群だ。

風華は照れている顔を見られまいと顔を背けて目を瞑る。

 「お…俺…女の子の方が好き…」

 「あっ!やっぱりそうだよね!実は私もそうだと思ってたんだよ!」

 「嘘じゃないよ!本当に思ってたからね!」

必死で言葉を紡ぐ舞。

それを見て風華は堪えていた笑い声が漏れる。「ふふっ」てね。イケメンしかやっちゃいけない笑い声だ。

その様子を見た舞は目を大きくして顔を近づける。

 「いや!本当だよ!嘘だって思ってる!?」

 「俺は別に勇のこと好きじゃないよ」

 「でも勇が俺のことを好きなのかもしれないけど…ね?」


 パチンッ!


綺麗な音がもう暗くなった空に響く。

舞と話す風華を微笑ましいと思っていた勇。

だがそういう発言は許せん。

 「いったぁ…!」

 「舞なら信じそうだろ!」

 「流石に私でも分かったよ!」

猫の様な威嚇。風華にそっくりだ。

それを宥める勇。ツンデレな猫の怒りを鎮める飼い主の様だ。

その様子をみた杏は舞を引き剥がす。

そして帰路についた。

 「ごめんね勇くん」

 「全然大丈夫…ブフッ…」

先ほどの舞を思い出して笑いを堪えきれない。

 「風華!夜は危ないから舞ちゃんを送って行きなさい!」

 「大丈夫だよ!私強いもん!」

 「ダメ!舞ちゃむ弱いから!」

 「えぇ!?私強いけどなぁ…」

 「舞ちゃむも風華もつべこべ言わない!」

 「夜が深くなる前に帰りなさい!」

 「風華も襲われるかもしれないし…」

 「風華に…じゃないんだな…」

十字路で四人は別れて帰った。


風華は緊張して手と足が一緒になっていたらしい。舞が率先して話題を出してくれてなんとか会話は止まらずに舞の家まで着けたらしい。(風華談)

 「じゃあウチらも帰ろっか!」

 「そうだな…」

なんて幸せなんだろう。

結局風華ではなくて杏と帰ることになるとは…やっぱり男と帰るより杏と帰る方が嬉しい。

長いので土日使って適当に呼んでください。

3話は新キャラが登場します。

2話は短くする予定だったのに…

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