2-5 花葬 (1)
面白かったらブックマークってやつを…
風華のゲスな笑み。
花の怪物もなぜか汗を掻いている。
口を開けて呆然と…。
「俺のことをただのおチビだと思っちゃ痛い目見ちゃうぜ…!」
風華は両手を合わせて目を瞑る。
「バナナ…強炭酸飲料…」
一連の流れを経て、次の瞬間には上記の二つが出てきていた。
しかもバナナは一房、炭酸飲料は1.5Lの大盤振る舞い。
やりたい事は単純だ。昔動画で見たことがあるやつ。
「しめしめ…!恐ろしいだろいいのかあ〜?」
もちろん花の怪物からの返答はない。
これで「辞めて!」とか高い声で言われる方が恐怖でしかない。…て言うかやりたい事が理解できてないと思う。
「よいしょ…」
地面から足を離し、花の怪物の口元に行く。
微かに呼吸をしている様だ…。
臭いのかとも思ったが、流石花と言うべきか。
お金持ちのマダムの様な匂いがした。決して良い匂いだとは思えないが…。
「お口開けなさーい!」
「さもなくば燃やしちゃうぞー?」
かわいい口調で悍ましい事を言っちゃう風華。お茶目でかわいいね。
「…俺にしかできない手で口を開かせてやるか…」
数分後…
かわいい黒猫の尻尾!大きな猫耳!
子供の様な大きなツインテール!
極め付けの白黒のメイド服!
男のくせにロリにしか見えない!
「あまり俺を怒らせない方がいいぞ…」
凄まじい…これほどまでの闘気は見た事がない。鬼…!そう感じさせるほどだった。
次の瞬間ッ!
「お花さぁん!口開けてぇ〜?」
風華の精一杯のあまあまボイス。
高い声はしているのだが女の子と違う声。それがなんだか無性に可愛く思えてしまう。
すりすりと花の怪物に頬を寄せての上目遣い。
ヒゲジョリをしてるみたいでちょっと痛い。
花の怪物に"こうかはばつぐんだ!"
例え花の怪物だと言っても可愛い子には弱いのだ。可愛い子は正義。それが世の常だ。
「グ…グアァ」
花の怪物は魔法をかけられているかの様に従順に口を開く。人が3人入れるほど大きな口だ。しかも歯には蜂蜜の様な液が付着している。
歯磨きしてないのかしら。
「そのままでいてねぇ〜?」
「フガァ…」
「えいッ!」
剥かれた一房のバナナを投げ込む。
そしてそれが胃に落ちる前に強炭酸飲料を注ぎ込む。
おそらく花の怪物の腹の中は今大変なことになってる事だろう。
花の怪物の顔は真っ青になっていて、悶えている。…可愛く見えるのは気のせいだろうか。
「ゲボォッ!」
ここからは見るに耐えなかった。
まぁ結論だけを先に言うと…普通に吐き出した。
汚らしいが…ミミズやモグラなどの地中に住んでいる生物も食べていた様で、それも同時に出てきた。
「ありがとう…!」って声が聞こえた。
幸いなことに消化は全く進んでおらず、綺麗な状態で颯は放出された。まぁネバネバの粘膜に包まれていたが…。
「颯さん…!颯さん!」
声を掛け体を揺らしてみる。
…だが一向に反応がない。
何か良い夢を見ているのか口角が緩んでる。
「舞…ま…まい…そ…そんなとこ…ダメ…」
…今なら殴っても怒られない気がする。
体が勝手に拳を振り上げてしまっている。
全く…体の持ち主が見てみたい。
ザッザッ!
どこかで聞いたことのある足音。
振り向かなくても分かる…。これは舞の足音だ。さっき聞いたばかりだから。
「颯くん!死んじゃヤダよ!」
目尻に涙を浮かべる舞。
好きな人のこんな姿を見ていられない。
邪魔をしない様に静かに立ち上がる。
風華はクールに去るぜ
「颯さんは眠ってるだけだよ」
「しばらくしたら起きると思う…」
しまった…話したい欲が抑えきれなかった。
「え…えと風華くん…何その格好…」
忘れていた…完全に女装していたのだった。
しかもゴリッゴリのゴスロリファッション。
それなのにカッコつけて去ろうとしていた…。
思い出すだけでも恥ずかしい…。
「え…えと…」
「風華くんって男の子だよね…」
「えと…うん…」
「なんで私より可愛いの!?」
グンッ!と顔を近づける舞。
まつ毛が長くてまつ毛同士で絡みそうだ。
初めて見えたが舞の眉毛は薄い気がする。
「そ!そんな事より俺はあの花の怪物をやらなきゃいけないんだよ!」
「危ないから舞さんは颯さんを….」
「で…でも…あの花のお化け…」
舞は花の怪物を指を指す。
きっと大きな口を開いて睨みつけている事だろう。それかよだれを垂らして食べようとしてるのかもしれない…。
恐る恐るその方向を見る。
「あ…あれ…?」
「グアァ…」
花の怪物は顔を近づけてきていた。
なんでか顔が真っ赤になっている気がする。
今にも頬をすりすりしてきそうなほど近い。
「ど…どうした?」
「グァァァ…」
頭部を下げて目を瞑る花の怪物。
「よしよししてほしいの?」
「グアァ…」
「うん」と言っている様に目を瞑る。
なんだか可愛らしい。大型犬を飼っている人はこう言う気分で飼っているのだろうか…。
いや大型犬と花の怪物を比べるのはサイズが違いすぎる。
15m近くあるんだもの…。頭を下げてるからギリギリ顔が見えるだけだ。
「よしよし…」
頭部がゴツゴツしているが…足ツボの様でちょいと痛いがそれ以上ではない。むしろ気持ち良い。
その花の怪物に近寄る舞。
危ない…と手をかざすが舞は気にしない。案外度胸あるのね。
「近くで見るとなんか可愛いね」
「ワンチャンとワニのハーフみたい」
「そ…そうかなぁ?」
…今まで知らなかったが舞の感性は独特だ。
いや…と言うかだいぶ変だ。
少なくとも犬には見えない。…うさぎに見える。
「名前は何が良いかなぁ…」
「ペットにする気なの!?」
「だ….だって懐いてるんだし…放しちゃったら可哀想だよ?」
「こんな大きな子飼えません!」
「元いた所に戻してきなさい!」
「はーいってここだったね!」
めちゃくちゃ笑っている舞。可愛い。
まだフロルが少し遠くにいるって言うのに…ッ!ていうか勇の事を忘れてた。
初めて近くでみる舞の笑顔が可愛すぎて忘れてた。
これは…勇が悪いと思う。影薄いし…。
「じゃあ!舞さん…!」
「この子のこと任せたよ」
「任せて!」
「名前考えておくね!」
やっぱり舞は変で呑気だ。
その頃勇は…
「ふっふっ…コロ」
「ちょっと待って…!あと1ステージ!」
なんでこう言うゲームは一回やると止まらなくなるのだろう。別に楽しいわけじゃないのに…。これはまるであれだ…何も思いつかない。
「せっかく早く終わったコロに…」
「み…見てなかったんだけど…なんで早く終わったんだ?」
「雨が降ったから技の速度が上がったんだコロ!なんで見てないコロ!」
「でもお前疲れてないじゃん」
「雨だと疲れなくなるんだコロ!」
すごい大事そうな事をポロポロ話すフロル。
自分のことを話すのがそんなに楽しいのかドヤ顔が薄ら出てきている。
…て言うかなかなかにピンチだ。
「じゃ…じゃあ俺が待ってた時間は無駄ってことか…?」
「そういう事になるコロね」
「ズルいだろ!」
「ズルいとはなんだコロ!」
「私の水千をズルで避けたくせにコロ!」
「ズルって言うな!作戦だ!」
「じゃあ私のも作戦だ!」
「たまたまだろ!」
「うるさいコロ!」
この問答はしばらく続く…。
と思っていたがそれは杞憂だった。
「風華キックッ!」
フロルの背後から突然現れた風華。
つま先をピンと伸ばしてフロルの後頭部を狙っていた!これは偶然なのだろうか…。
ズドンッ!
鈍い音と共にフロルは蹴り飛ばされる。
それも勇の方に…
「来んなよぉッ!」
「ふっ…!」
ドヤ顔で着地する風華。3点着地を決めている、某蜘蛛の男の様だ。
「ヒーローは遅れてやってくるのさ!」
「ッ!あれ?勇は?」
二度顔を回してみるが…勇はいない。
「こ…ここだぁ…」
声がした、下を見てみると何故か勇がいる。
しかもフロルと仲良く一緒にいる…。
いつの間に踏んでしまったんだろう…。
「あ…ありゃ!?」
「な…なんでも良いから早く退いてくれ…!」
「そうだコロ…!早く退けコロ…!」
多勢に無勢か…!仕方ないここは退くしか無い…。本当はもっと身長高い気分を味わってたかったのに…!
「よいしょ!」
既に泥になってしまったグラウンドの地面に着地するとよろけてしまう。泥に浸かりそうだった。危ない。
もう既に泥に塗れてるフロルと勇が同時に立ち上がる。汚い。
「大丈夫コロか?」
「何がだ?」
「そこの女がここに来たことによって私のプニちゃんが…」
フロルは花の怪物のいる後ろを指を指す。
ドヤ顔をしている様な雰囲気だ。
だが次第にその表情も変わっていく…。
「な…なんであんなに少女に甘えてるんだコロ?」
「そ…それにお主のそのメイド服…」
「わ!私のプニちゃんを色仕掛けで落としたコロか!?」
「え…えへへまさか本当に効くとは…」
自分で自分の頭を撫でる風華。
アザトース…ではなくてあざとい。
おまけにベロなんか出しちゃって…将来が心配だ。
「風華…Yシャツから上裸…そんで次はメイド服…」
「服装コロコロ変わりすぎだろ」
空気が揺れた…気がした。
「お前今なんて言った…コロ?」
「ほら風華聴かれてるぞ」
「で…でも勇のこと指さしてるよ…?」
「お…俺…?」
「お前だコロ…ッ!」
「服装コロコロ…って…」
「…ッ!」
「私のキャラ付けをとるんじゃッねぇッ!」
両腕から放れた触手。
あの"水千"なんてより早かった…。
どうやら本気で怒っているみたいだ。フロルを煽った時はまだ本気ではなかったようだ。
…でもこう言うのは自分の美学が馬鹿にされて〜とかでキレるものだと思う。少なくとも普通の奴ならそうだ。
「風華ーッ!」
「えっ!?何!?」
「いや風華が殴られた時ように…」
「まだ大丈夫だよ!」
「…なんで大丈夫なんだ?」
二人は避けることを諦めて普通に話していた。足に力すら入れていない。
だがあんなに早く放たれたものが数秒経ってもまだ届いていない。配達中になっているのにも関わらず、ずっと届かない荷物の様だ。
許せん…まぁ土日を使って届けてくれるその優しさに惚れてしまう。格好良い。
「見…見るんじゃねぇ!」
「コロ」も忘れているフロル。
目にも止まらぬ速さで触手を繰り出しては戻し…また繰り出すを繰り返しているのは確実。
だが何故か届いていない。
その恥ずかしがる顔から、理由がなんとなく分かってしまう。
「も…もしかして…届かない…?」
「ブフッ…風華!あんま言っちゃダメだろ!」
現在、二人とフロルの距離は10mも離れていない。…なのに届いていない。
「…1…1mも…伸びてブフッ…」
「言うんじゃねぇ!」
「…!」
「おいそこの女!ほっぺに空気溜めてんじゃねぇ!」
さっきから女とか言ったりしてるがこれは風華の事だ。
「だ…!だって!プフッ!」
どうやらフロルはスピードが速くなると距離が短くなるみたいだ。"水千"くらいの速さだと10mは伸びていた。
…が今は雨が降っている。
技の速度が早まると言うことは常時短いまま…。
「へ…へへさっきはよくも焦らせてくれたなぁ…」
チャンスだと知ると調子に乗る勇。
こいつ恥ずかしくはないのだろうか。
「今度はこっちから行くぜッ!」
大きく足を踏み込み走りだす勇!
本当はここで転けたら面白いものの調子に乗っている勇にそんなこと知ったこっちゃない!
「行くぜぇ!黒縄ぁ!」
もう本当に醜いくらいの声を出す勇。人とは優位に立つとこんなにゲスな顔が出来るのか…。
フロルの目の前で飛び上がると拳を振り上げる。フロルの顔の中央を狙っている。蕾と言うか目だが…。
ギョロ…
黒縄は出ている!ちゃんと出ている。
だがぬれ煎餅の様にしなしなだ。
おそらく…黒縄は水に弱いのだろう…。
「あ…チャンス…」
ドォンッ!
触手が腹に突き刺さった。
しかもあの1mしか進まないあのスピードで…
それは猛烈な痛みだった。
夏の日に放置された弁当を食べた翌日の腹痛の様な…得体の知れない痛みだ。
血は出ないが…内臓を直に殴られている気がする。
「グフッ!」
勇はちゃんと吹き飛ばされた。10mくらい。
「バカだぜ…あいつ…」
「ご…ごめんなさい…うちの勇がおバカで…」
「ぐ…ぐおおっ…」
勇は痛みに悶えている。
顔が泥に塗れて少し口に入っている。
惨い…が可哀想だとは思えなかった。
調子に乗っている罰だな…。
ちゃんと説明を読まなかったのが悪い。
「綺麗なものには棘がある…」
「そう言うものだろ…あ…コロ?」
フロルを覆うオーラが変わった。
息も詰まる様な空気感に風華は気圧される。
「勇…早く起きて」
「なんか様子が変だよ…」
「りょ…了解です…」
腹部を押さえながら立ち上がった勇。
今にも転びそうなほど足が震えている。
痛いのもあるだろうが恐怖の面が大きそうだ。
「さぁ第二ラウンドの…始まりだ…コロ…」
すぐ(2)は出ます




