2-3 恐怖の花の怪物
なんか上手くいきませんでした。
でも面白いと感じてください。
ブクマが欲しいめう…っと。
カラスの行列がオレンジの空を飛ぶ。
黒い羽を必死に動かして何かから逃げる様に飛んでいる。汗を掻いてる様にも見える。
「カーカー!」
「なんだカラスかぁ…」
「…違くね?」
耳をよく澄ましてもう一度よく聞いてみる。
「キャー!キャー!」
少し濁っているが明らかに女子の悲鳴。
「まさかな…」と二人は考えるが、一応砂埃の舞うグラウンドの方を一応見てみる。
「え…えぇ…」
「なんだアイツ…」
深緑色をした謎の植物。ヴォアと似た様な色をしている。
オレンジ色の蕾が聳え立っている。しかもそのつぼみは目の様にうねり動いている。
蕾を覆う花びらがやけに綺麗に見える。
地面からは巨大な茎の様な触手が生えていて、生きているかの様にウネウネと動いている。植物のクセに。
「ははは…」
「流石神様…本当にいるとは…」
「ね…ねぇ勇…俺帰ってもいいかな」
「ダメに決まってるだろ!」
「お前が逃げたら誰が戦うッ!」
「勇が逃げる前提なの!?」
グラウンドの端の人工的に作られた小さな林で、醜い言い争うをしている二人。
あまりにも低レベル。
「キャーっ!」
甲高い女子の声が響く。
「ほら!風華早く行けよ!」
「うん…!分かった!」
「いや!危ないだろ!行くなよ!」
「さっきの声…舞さんの声なんだ」
「行かない手は無いだろ?」
風に靡かれる髪の毛。
目を細めた姿が妙にイケメンに見えてしまう。顔は可愛い顔してるはずなのに…なんでだろ。
「えっと…確かこうか!」
風華は両手を合わせて目を瞑る。
「刀…刀…」
ブツブツと呟く風華。
恐怖で頭でもおかしくなったのだろうか。
…だがしばらくすると風華の頭上に白い煙が渦を巻いてくる。あの夢で霊愛が出てきた時の様な…。
「刀ッ!」
カツンッ…!と音がすると白い煙が消える。
そして地面を見るとそこには一本の刀が落ちていた。それも模擬刀ではなさそうだ。
「ふん!怖いんだったら怖くていいもんね!」
「だ!誰が怖いなんて言うもんか!」
「じゃあ早く行こ?」
「おう!」
「あ!そうだそうだ!勇にはこれ!」
また両手を合わせる。
そして一連の流れを経て白い渦が消える。
「はい!ナイフとジャージ!」
緑色のジャージと普通のナイフ。
それもそのジャージは早朝に散歩しているお父さんが着ていそうなもの…。
最高に恥ずかしい…。
しかも風華はニヤニヤしている…。中学時代の小悪魔な性格で出てしまっている
「早く行くよ!」
いつの間にか髪の毛を結んで、上の制服を脱いだ風華。長い髪の毛を綺麗に一本になって、Yシャツになっている。なんかイケメン要素が強い気もする。
走っていこうと靴紐を結ぶ。
ふと風華の方を見てみると…
なぜか空を飛んでいた…。
あの時の霊愛の様に飛んでいて、飛んでいるという点で驚かない自分に驚く。まさか風華が…!って点でしか驚きがない。
「な!なんでお前が空飛べるんだ!あとどっからこれ出したんだよ!」
「説明は後!」
「先行ってるよ!」
それだけ言われるとビュンッ!と風を切る音が聞こえる。
そして風華のいた場所を見るとそこには誰もいない。脱ぎたての制服だけがポツンと置かれている。普ッ通ーに置いて行かれた。
「あ…あいつ何個能力貰ったんだ…」
もちろん勇は飛ぶことは出来ない。
なので例の謎の植物が生えているところまで走る事しか出来ない。下はジャージ上は普通の制服で走るとなるとなかなか恥ずかしい。
かと言って上下制服は動きにくく、上下ジャージはおっさんが過ぎる。
なので人目を気にしながら走り抜ける。
「おいっ!お前は誰だ!」
目の前の謎の植物に刀を向ける。
ギロリッと花びらの中心が動く…。
追いついた勇は息を切らしながら風華の肩を掴む。
「お前がそれ言っちゃ…はぁ…ダメだろ!」
「えっ!?なんで?」
「一応主人公は俺だ!」
「キャラ薄いのに…?」
「うぐ…」
無神経と言うのか無邪気と言うのか…
心無い一言が心に突き刺さる。
目の前に花の怪物が居るのに、いつもの雰囲気でくだらない言い争いをする二人。
「キョエェェ!」
「ヒュルルルルッ!」
地面が揺れるほどの咆哮を放つ花の怪物。あいつどこから声が出てるんだろう。
恐怖よりも先に来る不快感。海で聞く鯨の鳴き声の様だ。
二人の全身に鳥肌が駆ける。
ブォンッ!
間髪入れずに二人の間に触手が放たれる。
残像だけが二人の目に入る。
ブロワーの様な風音に耳を塞ぐ暇もない。
「避けろッ!」
「ひゃい!」
砂を蹴り上げて地面を飛び上がる。
軽く飛んだはずなのに5m…いや10m近く飛んでいる!高所恐怖症の人は多分無理なほど高い。
触手はグラウンドの地面に突き刺さる。
砂埃が舞っていて見えないが確実に避けれた…。
「どッ!どうする!?」
「とりあえず…!」
「出てこい黒縄ッ!」
黒い煙が勇の袖を纏う。
そしてニョロニョロ…と音を立てずに袖から縄が現れる。蛇の様だ。
何か特徴があるわけではなく、ただの黒い縄。
運動会でしか使われない綱引きの綱の様に螺旋状になっている。
「も…文字通り黒縄だな…」
「まッ!まあ!とりま行けッ!」
「行け!行け〜!」
風華の子供の様な声援も後押しをする…。
だが黒縄はそっぽを向く。
まるでヘソを曲げている子供の様だ。
「行かないけど…?」
「早く行け!」
口調を荒げてもそっぽを向くのは変わらない。
声が聞こえないから憶測でしかないが…
むしろ頑固になっている気がする。
「も!もしかしてこの黒縄さんって自我持ってるんじゃないの?」
「そ!そんなことあるわけないだろ!」
「こんなのただの縄だぞ?」
パチンッ…!コ…
音と共に頬に痛みが走る。
辺りを見渡しても風華しかいない…。
「何すんだ!風華!」
「違うよ!黒縄さんだよ!」
「寝ぼけてるのか!?」
「違うよ!」
黒縄はふよふよと空を漂う。
何も気づかない勇を嘲笑っている様にも見える。…相手はただの縄だと言うのに無性に腹が立つ。
それと共に、こいつが自我を持ってるとも理解する。
ズドッ!
地響きの様な音が聞こえる。
「グファッ!」
それと同時に腹部に激しい痛みが走る。
おそらく風華と話していた隙を突かれあの触手で攻撃されたのだろう…。体が風船の様に軽くなる。
下に見えていた木々を徐々に見上げる形になる。
ガンッ!
壁に激突して背中に痛みが走る。
コンクリートの破片が起き上がろうとする手に刺さり、少量の血が流れる。
「痛ぃ…ここ痛ぃ…」
こんな事言ってるが、正直思ったよりは痛くない。
これも神様がくれた能力のおかげなのか…。アーメンアーメンと。
臓器にもダメージは無いようですぐに立ち上がれる。
…だが問題は痛みよりも周りの視線だった。
壁の崩れる轟音が鳴った事により、辺りの生徒が勇の元へ集まってきていた。学校内にいた生徒も息を切らして出てきていた。
下はジャージ…上は制服。片手にはナイフ…。
体に走った痛みより周りの視線が痛い。
笑われる…とも思ったが皆、困惑が強いのか何も言わない。むしろそっちの方が恥ずかしさを増幅させる。
頬は徐々に赤くなっていく。
熟れるのが早いトマトの様だ。美味しそう。
ズザッザッ!
その中で人混みを掻き分けてくる少女がやってくる。酷く慌てていて息も上がっている。
「勇くん…っ!」
「大変なの!」
駆けてくる少女は舞だった。
舞は上下ジャージ姿。少し親近感を覚える。
が…おばさん臭くないのは顔が可愛いせいなのかも。
「颯くんが…!颯くんが…!」
「あのお花のお化けに食べられたのっ!」
「…!?なんだって!」
颯が食べられた…。
その言葉に辺りは騒然とする。
取り乱す者も現れて場は一気に混乱する。
「颯くんが!?」
「あいつが…嘘だろ!」
流石の人気の高さが窺える。
ほとんどの人が悲しみの声をあげている。
一方何も知らない風華は飛びながら触手から逃げている。
…あの口のない花にどうやって食べられたのが気になるのは薄情もんだろうか。
「食べられたのはいつ頃だ…?」
「サッカー部の練習が始まってすぐ後だから…まだ10分も経ってない!」
「分かった…」
袖からはまた黒い煙が現れる。
勇は手のひらに刺さったコンクリートの破片を抜きながら歩き出す。これを抜く方が痛ぃ…。
「アイツがもし生物なら消化には数時間掛かるはずだ」
「人の命が懸ってる…」
「協力してくれ」
黒縄は「待ってました!」と言わんばかりに袖から勢いよく飛び出してくる。
さっきの黒縄とは大違いだ…。活き活きしてる。
黒縄はコクコクと頷く素振りを見せる。
「でどうしよっかな…」
カッコつけたものの…特に何も思いつかない。
「うおっ!なんだ!」
突然黒縄は伸び始める。袖のどこにそんな長く隠れているのか…。
黒縄はプールサイドの柵を掴む。
そして尻尾の様に背中から出たもう一本の黒縄は校舎内の柱に括り付けられる。窓は空いている。
「ど…どうするつもりだ?」
背中から出てきた黒縄に引っ張られる。
なぜ引っ張られてるのかは分からない…。
だが勇の背中はひんやりと冷たい校舎の壁面に触れる事になる。
「な!な!何すんだ!?」
プールサイドの柵に括り付けられた黒縄は少し勇の体を引っ張る。
パチンッ!
校舎内に括り付けられた黒縄が離れる。
瞬きをした瞬間には大空に放り出されていた。
説明が難しかったが弓矢と同じ原理をやったのだろう。
「う…!うわぁぁ!」
情けなくてか細い声。
よくあるアニメの様に空を飛ぶ事は出来るはずもなく…普通に垂直に落下する。
このまま落ちたらはちゃめちゃに痛いだろう。
だって20mくらい上にいるんだもの…。
何か抵抗する手段は無いかと周りを見渡す。
勇は真下にあるものを見て少し微笑む…。
「うぎゃぁぁ!」
叫びまくる風華の声だ。
真下には風華を追い回す触手の付け根があった。
風華は刀を持っているくせに逃げ回ってる。情けない…。
「い…行けるッ!」
「ウリャァァ!」
ナイフを両手に持ち振りかぶる。
スパンッ!
気持ちの良い音が鳴り響く。梱包に使われるプチプチを潰すよりよっぽど気持ちいい。
ドォッンッ!
風華を追っていた触手は力無くグラウンドの砂に叩きつけられた。
まだ細胞が生きているかのように少し動いた後に、完全に動きは止まる。気持ち悪い。包丁を入れられた魚の様だ。
あの花の触手を切ったとて…落下が止まるわけでは無い!"詰み"という言葉が思い浮かぶ。
どうやっても地面に無傷で着地ができるわけがない。諦めた勇は静かに目を閉じる…。
勇は考えるのを辞めた…。
「にゃぁぁ!」
謎の子猫の叫び声…。
不思議なことに地面に打ち付けられた痛みは無い。
「セーフ…!」
ゆっくり目を開けるとそこには天使…。
いや息を切らしている風華がいた。
天使に見えたのはプカプカと空に浮いているからで…だが天使の顔には似合わず額からは汗が流れている。…し息を切らしてる。きっとすんでのところで助けてくれたんだろう。
「ばぁ〜!」
大きな口を開けているつもりだろうがちっちゃな口。ミニトマトが3個くらいしか詰め込めなさそう。
口を閉じると満面の笑みを勇に見せつける。
何と言うかそういうプレイにも思えてくる。
そんなお店行った事はないが…。
風華は地面に着地して勇を下ろす。
そして風華は某タヌキ型ロボットの様に懐から刀を取り出すと…カッコつけて触手に刀を向ける。
呆然と風華の背後に座る勇。
予告ホームランの様だ。
「死んだ勇の仇!」
「取らせてもらうぜ!」
「カッコつけるのは良いけど…勝手に殺すな」
その挑発に乗るかの様に触手は真正面に風華の元へ放たれる。その勢いは先ほどの比では無いほどの速さだった。さっきが草野球レベルならこっちはプロ野球レベル。
…野球は見たことがない。ルールも知らない。前乱闘の動画にハマっていたのは内緒だ。
「風華ッ!危ないぞッ!」
「あたいに任せんしゃい!」
「一人だけなら良いけど!後ろには俺がいるんだぞ!」
「慌てなさんな…」
不安に駆られた勇は静かにナイフを取り出す。
風華に触手が突き刺さる…ッ!
その直前風華はスルッ…と触手を避ける。
「ちょ!バカ!俺に当たるじゃんか!」
「安心せぇ…!」
風華は振り上げた刀を力いっぱい振り下ろし刀を触手に叩きつける。
スパンッ…!
またも綺麗な音が鳴り響く。でもプチプチには勝ててない。
そして同じ様に触手は切り落とされる。
あまりにも綺麗な太刀筋…そういえば風華は中学の頃剣道部に所属していた…。まぁほとんど見学で大会では応援常連だったらしいが…。
それが活きてる…訳はないがその一振り一つで触手はすぐに息絶える。
「みてみて!すごいでしょ!」
「それがなかったらカッコよかったのに…」
「素直にかっこいいって言ってよ!」
「ていうか!颯が食べられたらしいぞ!」
「颯さんが…?だ…誰に?」
「あのバケモノの腹の中だ…」
「なんだって!?」
しばらくの沈黙が二人を包む。
「…分かった」
「分かったってど〜…」
一目花の怪物を見る…。攻撃してこないか心配だからだ…。何もしてこないと知ると再度風華を見る。
すると風華は服をたくし上げていた。
風華は男だ…そんな事分かっているのに、なんだか胸の奥から何かが込み上げてくる。
男のくせに女の色気を出してやがる。
「なんで顔赤くなってるの〜?」
ニヤけている…。こやつ分かっているな。
目を細めて色目を使っている。
小悪魔の様にニヤついて顔を近づけるが、勇は断固としてそれを見ない。見たらどうなる事やら…。
「見ちゃダメよ〜」
「み!見たくないわ!」
嘘だ。
顔だけは地球が始まって以来の美少女…
だが上の服を脱いだ体には筋肉が付いている。
細マッチョというやつなのだろうか。
風華は飽き性なのに良く筋トレを続けたな…と感心してしまう。いつもなら3日も経たないうちに飽きるのに、筋トレだけは一年は続いている。
「…でどうするつもりなんだ?」
「あの怪物の腹の中に入って助けてくる」
「バッ!バカなこと言うな!危な過ぎる!」
「危なくても…!」
「舞さんが悲しむかもしれないなら…俺はやるよ」
「確かにそれはカッコいい」
「けどその考えちょっと危険すぎるかも」
「chatGPTなの!?」
ナイスツッコミ!
それより風華の上半身はコンプライアンス違反。
一応乳首は隠しておくべきだろう。
「じゃあどうすればいいの?」
「そ…!そうだな…」
風華のカッコつけを止めてなんだが…特に案などない。風華は首を傾ける。相変わらずあざとい。
このままだと本気で突っ込んでいきそうで、脳がフル稼働する。
テスト中はずっと固まっているくせに…。根っからのヒーロー気質だな…こりゃ。
マムシ作戦…!マムシは腹から出てくる。
これはちょっと違うか…。
ならば嘔吐作戦!これは下品すぎる…。
それならば…
「俺の黒縄を使う…とか?」
「どうやって?」
「どうにかして黒縄をぶち込んで颯を回収する…!これでどうだ?」
即興で考えたら割に…我ながらいい方法だ。
まぁそのどうにかがむずいんだけどね。
「うんうん!天才!天才!」
風華は壊れた人形の様に縦に首を振るのが止まらない。無邪気だね。
「でもさ…」
風華はゆっくりと花の怪物を指を指す。
触手を2本落とされた花の怪物。
状況の悪化に顔色ひとつ変えない。ていうか変えれない。
だが徐々に花の怪物は変わっていく。
オレンジ色の蕾が徐々に開いていく。
ドス緑色と赤紫の粘り気のある液体を吹き出しながら。そして液体が落ちた部分は凝固する。
ついに完全に蕾が開いた状態に変わる。
蕾が開くとワニの様な顔が姿を表す。
花びらも開いて顔の歪さを際立たせる。
充血した真っ赤な目がこちらをジッと睨みつける。
エラの様な花びらから紫色の液体が漏れ出る。
どこかの大怪獣映画の敵キャラのようだ…。
あれも確か花だったし…パクリか?もうネタ切れか?
そんな事はどうでもいい!颯をどうやって食べたのかが判明して嬉しい…!と感じてしまった…。
だが一つはっきりしていることがあった。
「怖いめうぅ…」
怖い。
「勇…似合わないよ?」
「そ…そんなこと俺が一番知ってる…」
あんな怖いやつを見たくない。
だが風華に背中を押されると見るしかない…。
「フレ〜!フレ〜!勇ッ!」
「や…!やっぱお前が…」
「俺の能力黒縄じゃないも〜ん!」
「ぐぬぬ…ッ!」
「じゃあファイト!」
ゆっくりと花の怪物の元へ歩いていく…。
その足取りは遅く…足も震えている。
「お!おい!」
必死に威嚇をしてみても言葉は通じない。
…正直そっちの方が嬉しいのは黙っておこう。
「言葉が通じないなら仕方ないか…!」
「よし颯は諦めよう!」
腕を組み頷く。そしてソーッと踵を返す。
…その背後の光景を見て鳥肌が立つ。
「頑張ってっ!勇頑張って!」
「ファイト!」
「よく分からないけどがんば〜!」
運動会の時に足の遅い子を応援する様な声援。
正直言って応援されると注目されてしまうから、黙ってみていてほしい。それが1番ありがたいから…。
というかこっちは怖い中、戦ってるっていうのに!なんでこんなに他人事なのか…。
…颯の事など時が経てばみんな忘れる。
だから逃げても良いとも考えていたが、ここまで人に見られるとそうもいかない。
女子の割合も多い…。ここで頑張れば…モテるかもしれない。いやでも…杏がいるのに良いのだろうか…。
「ふんッ!ご期待に応えよう!」
「それで良いけど!流石にちょろすぎるよ!?」
「いくぞ!黒縄ッ!」
ビュンッ!
黒縄は花びらの一つ花弁に括り付けられる。またあの大ジャンプと同じ様にして…。
そして引っ張る!力いっぱい引っ張る!
「とうっ!スーパージャンプ!」
花弁を弾いて飛ぶと大空に羽ばたく。
鳥になったような気分だ…。このままどこまでも行けそうだ…!
だが狙うのはただ一つ…。
花の怪物の腹の中だけ…!
蹴伸びの姿勢になって蕾の中目掛ける。
「あ…俺入らないのか…」
「行けッ!黒縄!」
黒縄は勢いよく袖から飛び出す。
そして直進して蕾の中に侵入する!
「よし…!」
中はぐちょぐちょでかなり気持ち悪い。…気がする。
その中でも颯と思われる人型の体を黒縄で縛りつけ、釣りの様にクイクイと動かす。
するとそれに反応するかの様に黒縄の先は動く。
「戻ってこいッ!黒縄!」
波を打ちながら戻ってくる黒縄。
こんな危ないことはもう二度としたくない。
瞳を閉じて一度深呼吸をする。
「コロ…コロコロ…」
子供のおもちゃの様な音が聞こえる。
それとほぼ同時のタイミングで腹に痛みが走る。今まで感じたことのないレベルの痛み。夜にたまにくる腹痛なんて比にならない…。
「ブフゥッ!」
口からは血が吹き出す。
勇の体など簡単に吹き飛ばされ、グラウンドの地面に体は擦れる。
ちょうどそこにいた風華に止めてもらわなかったら、おそらく道路に飛ばされていた。
「い…痛ってぇ…」
「勇!大丈夫!?」
体には擦り傷が無数にできていて、風華からもらったジャージやいつも着ている制服が破けている。残念だがもう使えなさそうだ。
「コロコロ…情けないコロ…」
服に付いた砂を払いながら目を開く。
「…ッ!?」
目の前には人型の花…怪物とは言えない。
人間の体に顔が花。UMAと言われれば納得できるほどの異様な姿。
腕には切られたはずの触手の小さくなった版が付いていて蛇の様に動いている。
花の中央には大きな充血した目が付いている。
それがギョロギョロと動き勇と風華を見比べる。なんとも不気味だ。
「お…お前がさっきの花の怪物か…?」
「失礼だコロね…」
人型の花のボウアンドスクレープ。今時こんなことをする人がいない。
紳士のような振る舞いだが、花からは蜜の様な粘り気のある液体が流れ落ちる。よだれかな?
顔を上げると花弁は揺れる。
「私は花憐士キラル・フロル…」
「お主らを殺しに来たのですよ…」
「勇さん…風華さん…」
その言葉に目を丸める。
会ったことのない怪物に名前を覚えられている。そのことに恐怖で一瞬眉を顰める。
その姿を見たフロルは「ふふっ」と笑い声を漏らす。低音のイケボ…だが見た目には恐怖を覚える。
「無駄話はもういいでしょう?」
「遺言は聞く気はありませんから…!」
右腕についた触手が2人目掛けて飛んでくる。
先ほどよりも早い…ッ!世界レベルだ。
しかも狙いも先ほどよりも正確だ…ッ!
次の投稿は15日の19時です。
2-4と2-5を同時に投稿する予定です。
あと正直ブックマークがなんなのか分かりません。




