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18-6 gravity

 「紅蓮姉さん…私は何すれば良いんだ?」

 「…」

 「邪魔にならないように離れたところにいててほしい…」

これはつまり戦力外通告ということだろう。

だが霊愛は知ってか知らずか…普通に納得した表情でそそくさと紅恋の側から離れていく。

…霊愛とは初対面だった気がする。

何を話せば良いのかがわからない。

 「あ…あの…あの姉さん大丈夫なんですか?」

 「そのハゲヅラで敬語は気持ち悪いから辞めろ…」

 「こ…このイケメンが…」

 「あとさっきの質問だが…」

 「多分紅恋姉さんは時間を稼ぐつもりだ…」

 「え…でもあの姉さん相当強いんだろ?」

 「俺あの時外にいたけどとんでもないオーラだったゾ?」

 「あのおチビの風華…普段とは全く様子が違うな…」

 「普段は猫のように愛らしい顔をしてるのに…」

 「今は獲物を殺す獅子のような顔をしている」

 「…じゃあ手伝った方がいいんじゃねぇべか」

遥真の問いに霊愛はただ紅恋を見つめるだけだ…遥真もそれに釣られて紅恋をみるが、ただただ美人すぎるなぁって思うだけだ。

 「…私は勇を病院に運んでから戻ってくる」

 「だからお前は紅恋姉さんを手伝って欲しい」

 「…え?」

 「悔しいが私にはこれっぽっちも実力がない」

 「だがお前には相当強い能力が備わってると見受けられる…」

 「頼む…紅恋姉さんを助けてやってほしい…」

霊愛は真面目な顔をしながら頭を下げる。

なんと弱気な姿で自信がないのだろうか…なんて酷いことを遥真は思うことはなかった。

その霊愛の姿は自分の弱さを知り姉を助けてほしいとただ願う…そんな理想的な弟にしか見えなかった。

 「分かった…勇のことを頼んだゾ…」

 「…紅恋姉さんを任せた」

 「おうよい」

 「…あ霊愛だっけ」

 「そうだけどぅ…」

 「自分のことこれっぽっちも実力がないって言ってたけどさ…」

 「それならここに戻ってくるなんて言わないからな…うんうん…」

 「お前がなんで勇と遥真と仲良くなってるか分かった気がするよ…」

 「ふ〜ん…」

 「…俺も霊愛が勇と仲良い理由が分かるけどな」

 「え?なになに?」

霊愛はマギー審司のように耳を大きくする。

心なしか嬉しそうな顔をしているから…勇と仲良い理由が分かったのはこれが原因だ。二人とも顔に出てておバカだからだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 「んじゃ…健闘を祈るぞハゲ…じゃなくってハゲ真」

 「…霊愛多分名前知ってんな」


一方その頃…風華と対峙した紅恋はというと…

 「…創造…厄介だな」

 「…舞さんと颯さんを傷つけた紅恋さん」

 「今度は勇のことを傷つけようとしてるの?」

 「…違う…私はお前の暴走を止めるためにやってきただけだ」

 「お前も勇という男も傷つける気なんて私にはない」

 「創造…刀…」

 「俺の邪魔をするなら…斬るよ…?」

 「…そうするのなら…私は止めるだけだ」

 「紅飱(こうそん)…」

紅恋が片腕を前に出すとそこからは、長く細い木の棒が現れてその先端には平均男性の頭部くらいの鉄の塊が付いている棒が出てきた。

相当重そうな棒だが…それを容易く持ち上げ風華へと向ける。やはりフィジカルがやばすぎるんだと思う。

 「そ…そんなかっこいい事しないでほしいんだが…」

 「俺の登場が霞んでまう…」

 「…あ…坊主どうしたんだ?」

 「アンタの弟さんからアンタを守れって言われたから来たんだゾ!」

 「…それは結構だが足は引っ張るなよ」

 「腕は引っ張ってもいいのか…」

 「…コイツは本当に人間なのか?それともハゲ猿なのか…?」

 「猿は余計だ」

 「ハゲは認めるのか…」

くだらない会話を終えると遥真は紅恋の隣に立つ。遥真も身長が高いのだが、紅恋も女の人の中だと身長が高いから高身長カップルみたいだ。紅恋の身長は推定175cm以上。

 「まぁあの創造が厄介なのは事実だが…」

 「あの風華という男がその創造を理性的に扱えてない事が不幸中の幸いだ」

 「…そうだな」

 「まず動きを奪え」

 「足でも折ってな…」

 「そして…次は気絶させるんだ」

 「そしたらおそらくだがあの風華という男の暴走は止まるはずだ」

 「…う〜む」

 「なんだ?」

紅恋は遥真の視線の少し下でキョトンと首を傾げている。美人だからか…こういう何気ない仕草だけで天使たる所以をわからせられる。

そんな紅恋を遥真は仏頂面…ではなく真顔で迎える。

 「不満でもあるのか?」

 「う〜んいや…アンタは相当戦闘をこなしてるからそれが間違いないんだろうけど…」

 「俺は風華の足を折るなんてことはできないし…もしアンタが風華の足を折ろうとしたら…」

 「俺は絶対にアンタのことを止めると思う」

 「足を引っ張るなと言っただろ?」

 「う〜んだからさ…俺は〜風華を攻撃できないんだよなぁ…」

 「足を引っ張らないと約束しただろ!?」

 「…難しいことを言うつもりはないからさ」

 「頼むッ!風華のこと俺に任せてくれッ!」

両手を合わせて神様に頼むように頭を下げる遥真。…いや目の前にいるのは神様に結構近しい存在の天使だから比喩ではないのだが…

紅恋も天使のくせが出ているのか少しばかり上から目線をしたいのか、腕を組んでドヤ顔をしている。

 「…私は笑伝様から直々に風華という男の暴走を止めてこいと言われた…」

 「これは俗に言う天命というやつだ」

 「それに対してお前はただ個人の願望で止めようとしている…」

 「それはなぜだ?」

 「そんなの決まってんだろ?」

 「アンタもあのイケメン金髪小僧が誰かに傷つけられたらいやだろ?」

 「それは…家族だからで…」

 「…アイツには…風華には家族がいないからなぁ」

 「俺や勇とかが友人…?いや家族…?っていうのも恥ずかしいんだけど…」

 「ほ…ほ…ほら…友…友…友達ぅぃ…ってやつだから」

相当勇気を出していったのだろう…遥真は満足そうな顔をしているが頬を真っ赤に染めている。

紅恋はそんな遥真を一目見ると…きしょ…って思うとともに一つの疑問が浮かぶ。

 「…もう一つ疑問が浮かんだ」

 「ん?なんだ?なんでも聞くゾ」

 「な…なんでそんなクサイセリフ言ってるのに友達って言うのが恥ずかしいんだ?」

 「…今の戦いに関係ないこと以外の疑問は俺には答える義務がない!とっとと安全な場所で俺の戦勝祈願をしていてくれ」

 「…戦勝祈願はしないが…」

 「…風華のことを任せたぞ」

 「あぁ…」

ついに話しを終えた紅恋は電柱に背中を預ける。そしてポケットからタバコを取り出したり…それを吸わずに戻したり色々としている。…多分霊愛に言われて禁煙してるんだろう。

二人の会話が終わるまで律儀に待っていた風華は、紅恋がいなくなったのを見ると一方足を踏み出す。


 「…遥真…邪魔だよ」

 「ん〜確か6-1くらいの時に風華のことを力づくでも止めろ!って笑伝ってハゲ神様が言ってたけど…」

 「まさかこんな展開になるとはなぁ…」

 「遥真は…みんなを傷つけた人に味方するの?」

 「…俺は地球の味方だ」

 「?」

 「つまり…俺が止めないといけないんだよなぁ…」

 「…ごめんね…遥真」


 ビュンッ!


風華のいたところには砂埃が舞い…

そして次の瞬間には遥真の目の前に風華が現れる。その表情はブージアの手を折った時のように…涙を流していて、その瞳の奥には入りきれないような闇が広がっていた。

 「殺しはしないよ…」

 「憑依…玄武…ッ!」

風華は右腕だけで日本刀を下から振るい…遥真はそれに応じるようにして両腕に深緑のオーラを纏わせ、腕をクロスさせる。


 キィィンッ!


遥真の腕に日本刀が触れると、日本刀は容易く折れ…刃先は地面へと落ちていく。

 「ごめんね…」

 「能力…解除」

遥真は風華に腕を触られると、その纏っていた深緑のオーラは綺麗さっぱり消えていく。

その様子を見た風華は地面を蹴り上げ、その蹴り上げた方の足の膝を尖らせる。

それは徐々に勢いが増し遥真のガラ空きの腹へと向かっていく。

 「ゴファッ!」

膝は遥真の鳩尾へ直撃し、遥真の口からは唾の混じった薄い血が吐き出る。

 「…ゆっくり寝ててね」

 「こ…この野郎…本気で蹴ったな…」

 「ダメだよ…寝てなきゃ」

 「俺は午前1時〜9時までしか寝ないタイプなんだよ…」

 「…学校の始業時間は8時40分だよ?」

 「学校側が勝手に言ってるだけだろ…?」

 「てか俺が寝ちゃったら…お前を止めるやつがいなくなっちゃうだろ?風華…」

 「…」

風華はそれ以上の追撃はせずにその場から離れ遥真と十分な距離を取る。

支えのなくなった遥真は腹部を押さえながら片膝をつける。だがその目はジーッと風華のことを優しい瞳で見ていた。

 「…さっき紅恋さんとなんの話してたの?」

 「最近の政治とか…ではなくって風華の暴走をどうやって止めるかの話だゾ」

 「…俺の暴走?」

 「な〜んか風華は時たま何かあると暴走するみたいだからなぁ…」

 「しかも暴走すると誰彼構わず攻撃してくるし…俺でさえ普通に攻撃してくるからなぁ…」

 「…全く危なっかしいバブバブだぜ」

 「俺が遥真を…攻撃…?」

 「やっぱり無意識だったのか…」

 「…ご…ごめん…」

冷静さを取り戻したのか…風華は目を大きくして俯き、小さな頭を掻きむしる。

…何やら風華の様子がおかしくなっている。

 「ごめん…ごめん…」

 「俺…俺遥真のこと…大好きなのに…大好きなのに…」

 「ごめん…ごめん…」

 「嫌だ…嫌だ…ごめん…遥真…俺のこと嫌わないで…」

 「…風華」

風華は大粒の涙を流している。

だがさっき流していた涙とは違う…幼児のように純粋な涙で、その涙は簡単に掬えてしまえそうなほどだった。

 「…みんなを傷つけるなら俺こんな能力要らないよ」

 「みんなに嫌われるなら…俺生きてたくないよ…」

 「勇も…遥真も…杏も…舞さんもみんな大好きなのに…」

 「みんなを傷つける自分が大嫌いだよぉ…」

いつもの綺麗な顔が崩れて涙と鼻水に汚されてしまっている風華。

もうおそらく暴走状態は解除されてるのだろう。あの頭を乗っ取られるような殺意は綺麗さっぱりなくなっている。

その少女のような風華の表情に思わず引き込まれそうになる…

 「…自分で自分のことを好きなやつの方が少ないゾ」

 「…」

 「でも…それは自分の嫌なところを自分が1番知ってるからで…別に悪いことじゃないんだゾ」

 「むしろその自分の嫌な所の方が…他の人が好きになる理由になってるかもしれないんだゾ?」

 「…うん」

 「ていうか第一に!俺も勇も杏も舞も風華の事大好きだからな!」

 「こ〜んな顔可愛くて優しくて…でもたまにかっこいい風華のことをみんな好きだゾ!」

 「は…遥真ぁ…遥真ぁ…!」

 「ごめん…ごめん…!」

 「うわぁぁん…!」

また大粒の涙と鼻水を流す風華。

そして風華はその顔のまま遥真に抱きつく。…遥真のお気に入りの服は風華の鼻水と涙で汚れてしまう。でも…こんな無邪気な風華だから怒る気にもならない。

 「…まさか霊愛が帰ってくる前に終わらせるとはな」

 「…私唯一の成功体験だな」

 「う…ウグゥ…!」

 「どうしたんだっ!?」

 「あ…鳩尾蹴られたと思ってたけど…アバラ折れてるのかも…」

 「…ウワァ…」

 「…!次は男みたいな女!どうしたんだっ!?」

 「の…脳震盪だったんだぁ…」

クラクラな風華と腹を抑えている遥真。

アワアワとして辺りを見渡す紅恋。

そして紅恋はとあることに気づく…

 「あれ…?ブージアとクシュは…?」

 「そ…そんなことどうでもいいから…早く俺たちを病院に…」

 「…そんなことって!私と霊愛はあの二人を捕まえにも来たんだぞ!」

 「た…助けてくれぇ…」

うるうるなお目目で紅恋を見上げる遥真と風華。…遥真はゲテモノだが、風華は安定の可愛さを持っている。

 「う…うがぁぁ!仕方ないっ!」

 「…病院に行く!あの短髪もそこそこに心配だからな!」

紅恋は黄色の霊道を開くと、遥真と風華を抱き抱える。いや抱き抱えられているのは風華だけで、遥真は短い髪の毛を掴まれて運ばれている。

 「む…むにぃ…」

紅恋のデカパイに潰されている風華。

それを羨ましそうにみている遥真。

怪我をしていながら欲には従順な二人に、紅恋は少し人間の欲深さを知ってしまった。


 「風華は華凜様と比べたら…弱いわね…」

 「でもあの能力だけは…」

 「あっ!真里せんせーい!」

pc部の女子生徒が手を振ってやってくる。

pc部なのになぜシルバーウィークに部活があるのかかは校長先生に聞いてほしい。

 「あ〜!みんなど〜したの〜?」

次の投稿は水曜日です

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